「お前の〜、なんで来たんじゃ」
「自分から来たわけじゃないんで勘弁してくれ。さっさと移動すっから」
「そうしろ」
老人の方の界王神にせっつかれて座標を探す。場所は……元ナメック星でいいか。貰っといてよかったと思う日が来るとは思わなかった。
「なんでマレビトさん、いなくなっちゃうの?」
「稀人だからな〜、神様は俺が邪魔なの」
「ええ!?そんなの酷いよ!」
「仕方ないんだからひっつくな!巻き込むから!」
チビ二人がくっ付いてくるのでなんとか引き剥がして……だめだ、片腕しか無いせいで片方引き剥がしてももう片方が引っ付いて抜け出せない。手が物理的に足りない。
未来悟飯ヘルプ。
「なあ老界王神さま、それはちょっとひどいんじゃねえのか?」
「酷いもなにもあるか。稀人は本来ここにいてはいけない存在なんじゃよ」
「悟空、お前自分の家の冷蔵庫の下にネズミが棲みついたとして追い出さずにいられるか?そういうことだよ」
なんで俺、界王神と一緒に悟空を説得してるんだろう。
「分かったらこいつら剥がすの手伝え」
「……わかんねえからやだ」
「ワガママか!」
「マレビトはサイヤ人でもあるが?」
「肉体だけはね?魂は別枠だ」
ベジータの問いは、正解でもあるし間違いでもある。肉体はこちらの生まれだから、この肉体にいる限り、ドラゴンボールという世界に存在していられると言う、それだけの話だ。
そのやりとりを見ていたデンデが、横からそっと口を挟んできた。
「どちらにせよ、今はマレビトさんよりブウのことを優先すべきでは?」
「ドラゴンボールが現ナメック星にあるだろ?それ使って地球は復活させられるはずだろ」
「ああ、その手があったか」
「つーわけで案出ししたから俺はいなくなる」
「「だめ!」」
「うるさっ」
親父二人を見上げたら、チビを止めるどころかよくやったそのまま押さえとけ的な視線で頷かれた。おい!!!
シカトされたまま、これからどうするかの相談を現界王神と親父たちが始めてしまった。ええ、俺どうすりゃいいんだ?
ため息つきたい、と言わんばかりに隣に老界王神が座った。
「…………いやあの、うちのサイヤ人が悪い」
「随分と好かれたのう」
「みてーだな。別に、何をした訳でも無いはずなんだが」
俺がいようがいまいが結末は変わらない。ブウは倒されてハッピーエンドになると決まっている。
生きてる以上それなりに足掻いてきたが、何かを成した訳でも無いし……
「?マレビトさん、おじさんを助けたんだろ?」
「……?何が?」
「だってラディッツおじさん、マレビトが居なかったら俺は死んでたって言ってたよ」
「んな訳あ……る!?」
…………思い出した!!!ラディッツ、そういえば敵枠だった!!!
「何が“何もしてない”じゃ。十分好き勝手やっとるわ」
「直接は何もしてねえよ!!!なんかよく知らんけどバーダックが地球に行った結果のバタフライエフェクトじゃねえか!!!」
「そのバタフライエフェクトの始まりはお前さんじゃろ」
「くそう否定できねえ」
なんか脱力した。最後の最後でとんでもねえ原作改変引き起こしていたことに気づいて地面に倒れ込む。でももう知らん、あとちょっとでラスボス撃破だろ?ついさっきブウとの最終戦闘始まったし。まあほっといても勝つだろ。悟空とベジータ揃ってんだし。
あと、俺にできることは何も無い。本当に、これが最後だ。
「……一千年はどうじゃった」
「長かったな。生憎本来の寿命が百年くらいなもので。死んだらせいせいするか?」
「そう言い切れる訳でもないわい。少なくともそこの若いモンはな」
「ん?」
若い方の、現界王神(ポタラ合体のすがた)が俺を複雑そうに見ていた。なんだその視線。
「あなたが宇宙の平和に貢献する姿は知っていましたが、本来あなたはこの世界に関係のない存在です。だというのに何故、ここまで力を貸してきたのですか?」
「俺は平和とか正義とか勇気とか愛が好きだ。少なくともそういう世界でそうやって育てられて、ヒーローに憧れた。だからアンパンの妖精の真似事をして、黒獅子とか、天の道を往き総てを司る男とか、指輪の魔法使いを目標にした。
そういう生き方をすれば、少なくとも、元の世界の家族に『俺は元気です』って胸を張って伝えられるだろ」
お腹が空いている人と食べ物を分け合って。
子供を温かいお風呂とお布団で育てて。
寂しい人には寄り添って。
辛い時にこそ、希望を見せる。
自画自賛になるのは恥ずかしいが、まあ、なんとかやってきたんじゃあないだろうか?
「だから、気にすんな。所詮は稀人の戯言と偽善だ。俺が俺自身を保つためにやり続けてきた生き方だ。界王神は界王神としての生き方をしてくれりゃ、俺は何も文句はねえよ」
自分の世界を最優先に守ろうとする。この世界で一番偉い者として当たり前の話ではないか。むしろ仕事を放棄して寝こけてる方がキレる。助走付けてドロップキックする。
「……あなたは、驚くほど善良ですね」
「そう見えるようハッタリとカッコを付けてきたからな。神様を欺けたとは、中々上々」
「それでも、やはり我々はあなたが苦手だ」
「だろうな」
ふぁ、と欠伸が漏れた。
「俺がもうちょい自分勝手で悪いことするような人間だったら罪悪感なく追放できたのになあ」
「自分で言うことですか?それ」
「事実そうじゃん」
「そうですけど」
界王神と話してるとこあれだけど、ねみい。
「俺は俺を追い出そうとする奴は嫌いなんで、界王神は嫌いだから安心しろ。心の中でバチくそ文句言いながら大人しく追放されるから」
「マレビトさんを追い出そうとする奴は俺たちがやっつけてやるよ!」
「やっつけんな」
「いたっ!」
物騒なことを言い出すトランクスにデコピンしたら中々いい音が鳴った。ここ数年デコピンしてなかったけど腕は落ちてないな。
「最後だよく聞けチビ。俺は正義とか平和が好きだ。その正義とか平和を守ろうとする界王神が死後の俺の魂をこの世界から追い出すというのなら、逆らうつもりはない」
「でも、愛でも勇気でもないじゃん」
「…………慣れろ」
「「やだ!」」
頑固だなおい。
「じゃあさ、マレビトさんが追い出されたら僕たちでお迎えに行こうよ!」
「それいいな!ママにジェットフライヤー借りようぜ!」
「お母さんにお弁当も作ってもらおうよ!」
「遠足か?」
世界の狭間にジェットフライヤーで乗り付け……ブルマとブリーフ博士ならできそうだから怖い。未来ではタイムマシン作ってたし。
だけど、本当に世界の狭間に落っこちた俺を誰かが迎えにきたら……嬉しいかもなあ。
「……んじゃ、期待してるぞ」
「うん!」
二人が満面の笑みで頷いたので、大きく息を吐いて、目を閉じた。流石に眠気が限界に来ていた。
そして、一度落ちた意識を再び覚醒させると、そこは真っ暗な空間だった。セルゲームの時に来た場所、当然バーダックはいない。
とうとう肉体限界きたか。まあブウにゾンビ呼ばわりされる程度には死んでたからなあの身体。手足の感覚がないし、文字通り魂だけの存在になった。
「ま、上々か」
ブウ戦まで持たせて、よく頑張ったよ。
そんじゃ後は、意識を閉じて、考えるのをやめて───
「オッス、にいちゃん!オラ悟空!」
「は?」
意識を呼び起こす。めっちゃ聞き覚えのある声がしたので、魂を無理やり人型にして瞼を上げる動作をした。
目の前に孫悟空がいた。
いや、なんでだ。