なんにもない真っ暗な空間に孫悟空と俺がいる。なんでここに来れたか、は……ドラゴンボールだろうか。ここは神様であれば誰でも来れる。ドラゴンボールは神様が作った。ドラゴンボールは神様にできることができる。
うん、納得。
「で?貴重なドラゴンボールの願いを使ってなんで来た」
「にいちゃん、生き返りたい?」
「あ、聞きにきたのか。やめとけやめとけ、稀人なんざ抱えても面倒なだけだから。界王神の反応見ただろ?」
「……それなんだけどよ。なんで界王神様は、みんなマレビトが嫌ぇなんだ?教えてくれよ」
「おまえ、俺に聞けばとりあえず何かわかると思ってないか?」
「マレビトにもわかんねえのか?」
「仮説ならあるけど、長ったらしいぞ。聞くか?」
「うん」
あ、聞くんだ。
何やら真剣な顔になった悟空を前に、どう説明したものかと首を捻る。
「……まず、この世界は俺が元いた世界から見て漫画だったってのは言ったな?」
「うん」
「漫画ってことはな、それを描いた人がいるんだ。そしてその人と俺は、建前上は同格なんだ」
少なくとも、俺と漫画家は同じ時代を生きていた。成し得たことも、名声も、影響力も、遠く及ばない。それでも最低限度、俺はその人と同じ扱いを受けていた。
同じ金を払って同じサービスを受けられる。同時に病院に駆け込んだとして俺の方が重症なら俺から治療を受けられる。
少なくとも、その程度には。
「それを、最高神は感覚で察知してるんだろうな。俺自身に自分たちが干渉することはできるが、原作者と存在が同格だった者に干渉したくない。敬う理由も好きになる理由もない。もちろん庇護なんてしたくない。せめてどっか知らない場所で辛うじて生きてろ、って話になる」
それを、咎めるのはあまりしたくない。そう思ってしまう程度に、稀人というのはイレギュラーだ。
「……?よくわかんねえけど、マレビトが悪いわけじゃないんだよな」
「よく分かんないのかよ」
「界王神様がマレビトを嫌いでも、オラは好きだし。なあ、生き返りたい?」
「だから言っただろ、やめとけって」
「ちげえよ。オラ、にいちゃんがどうしたいか聞いてんだけど」
鋭い言葉に、思わず言葉が止まった。真っ黒な瞳は俺をじっと見つめていて思わず顔を背ける。
「生き返りたくねえっていうならいいんだ。でもにいちゃん、やめとけってばっかり言うだろ」
「……まあな」
「オラ、にいちゃんが生き返りたいなら界王神様に、にいちゃんを仲間はずれにしないようにお願いすっからさ」
「…………」
……正直なところ。
本当にこちらの主張が通るなら、頼みたいことは山のようにある。
こちらの世界を健康な身体で生きてみたい、とか。再現に届かなかった幾つかの技を試してみたい、とか。完成しなかったゲームを完成させたい、とか。
ここに放置されるんじゃなくて、死んだらちゃんとあの世に行きたい、とか。
「…………」
生き返れるのならそうしたいに決まっている。
元々、死にたくなかったのだ。
でもなあ。
「でも俺、バビディに洗脳されるような邪心を持った稀人だぞ」
「そん時はオラが止めるよ」
「…………ふはっ、そうか」
そっか。悟空が止めてくれるのか。
そうだよなあ。俺の方が強かったときなんて随分と昔の話だよなあ。
あんなに小さかったのに、こんなに心強く育ちやがったなこいつ。背は伸びすぎだと思うけど。
ちぢめ。
おっと、思考が。
「そうだな。じゃあ、頼んでいいか?」
「!にいちゃん、生き返りたいんか!?」
「そうだな。生き返るにあたっての頼みは三つ。一つ、嫌気性症候群を治した身体がいい。二つ、死んだ後はほかの魂と同じようにあの世に行きたい。転生するかどうかは任せる。三つ」
すう、と勿体ぶって息を吸い込む。なるべく不敵に笑って、三つ目の条件を口にする。
「生き返ってからもう一度死ぬまでの間は、稀人でいること。仲間外れを継続してくれ」
「……へ?にいちゃん、仲間外れ嫌なんじゃねえのか?」
「普段はな?でも、もしかしたら今後、この仲間外れが役に立つことがあるかもしれない。使えるものはなんだって使う、折角のジョーカーをみすみす手放すのも惜しいと思ってな」
死後の扱いが確定しているのなら、稀人という立場も悪くないと思える。要は使いようだ。
ルールから外されているなんて状況、覆せば戻らないしな。
「それに、悪いことをしたら悟空が止めてくれるんだろ?」
なら、怖いものなんてない。
もちろん、心の中のヒーロー達に胸を張れるような生き方をするつもりではいるが。
「じゃあオラ地球に戻って、みんなに伝えて来る。後でな!」
「おう、ゆっくりでいい、ぞ……!?あ、待ってくれタイム!追加!願い追加!俺としたことが大事なこと忘れてた!!!」
「マレビト!なんだ、大事なことって……!」
慌てて引き返してきた悟空に抱きつこうとしてスカる。そういや魂だけだった俺。真剣な表情の悟空に縋るようにして、ここまですっかり忘れていた大切なモノを叫ぶ。
「剣!!!」
そんなこんなで生き返った。半年以上経ってたけど細かいことは気にすんな。なんか状況的に、元気玉でブウを倒して地球も復活してめでたしめでたしかと思ったら俺が限界迎えてポックリ逝ったんで、微妙に喜びきれなかったらしい。
いや、マジですまん。でも俺の限界マジですぐそこまで来てたからしゃーないと思うんだよ……。
で、俺の体ですが、ついに!気の自給自足ができるようになりましたやったね!千年以上経過してようやく人並みだよ!気が枯渇する勢いで戦っても三日位寝込むだけで全回復!
と思ってたらピッコロに突っ込まれた。曰く
「普通は気の回復に三日も寝込まない」
らしい。
「もしかしてマレビトは、病気のことを抜いても元来病弱だったのかもな」
「それか、成長期で身体が止まってるのでバグ引き起こしてるかだな。このバグいまだに意味不明だし」
まあ健康になったからいいよ。これならやりたいこともできそうだからな。
かつてこの目で見た、超サイヤ人ゴッド。いつかあの領域に辿り着き、神の気を操れるようになる。それを使った鎧装……幻気鎧装と、時を越える技術であるハイパークロックアップ。それらを兼ね備え、さらに俺が千年間続けてきた気を吸い取る技術を兼ね備えることで、気の枯渇を気にすることなく戦える俺だけの新形態!
というのを、自宅庭で悟空とピッコロ相手に高らかに宣言した。いやあ、好き勝手強くなれるっていいね!
「マレビトも、ようやく強くなれるんだな」
「高みを目指して学び変わる。なかなかできなかったけど、今度こそ!」
「いつでも修業相手になろう」
「そりゃ頼もしいな!」
余談だが剣は悟空がちゃんと回収してた。ありがとな……いやほんと。
さて、沢山大変なことがあったけど、ラスボス戦も終わり、しばらくは平和だろう。ならば、俺の目標に向かって突き進むだけのこと!
目指せ、スーパーサイヤ人インフィニティ!
その後、なんか知らんけど破壊神だのなんだのがはちゃめちゃに押し寄せてきたので、俺は心から叫ぶことになるんだけどな。
「───ブウのどこがラスボスだァ!!!」
これにてまれびとの旅は完結となります。色々と反省点や至らぬ点はありましたが、なんとかエタることなく続けられました。最後まで読み進めてくださった読者の皆様、ありがとうございました。
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以下おまけ、オリ主が勝手に動いた場面ランキング
第三位 ブウ編の戦犯モブ二人を助け出すオリ主
書きながら勝手に動いたが、オリ主の性格を考えれば割と納得。プロット段階で想定できなかったのはちょっと悔しいが、16号と合流できたことを考えると結果オーライ
第二位 自宅に無断侵入した人造人間にお茶を出すオリ主
書き終えてからいいのかどうか悩んだが、現実世界でも似たような場面が存在する(ホテルルワンダ)のでまあいいかと採用。アンパンマンリスペクト精神が一番出たのはここかもしれない
第一位 ピッコロを拾うオリ主
なんか気付いたら生まれたばかりのピッコロを拾いに行ってた。完全に想定外の動きをした場面。ピッコロ大魔王の経歴的にオリ主の行動がストレートに刺さったことで擬似親子が爆誕。筆者もビビった