後日談 第1話
俺の住んでるログハウスは悟空が仕事に通っていた程度にパオズ山と近い。そんな感じなので悟飯も悟天も、たまーにうちに泊まりがけで遊びに来ていた。
で、うちでやることと言ったら悟飯は読書、悟天はゲームだ。俺はゲームクリエイターとしての資料本がそこそこあるから悟飯の知的好奇心が刺激されるらしい。逆に悟天はゲームの中でもちょっと難しいストーリーのある謎解きとかRPGとか、その辺が好きであるようだ。見事に理系と文系が分かれている。
「兄弟でも悟飯と悟天ってだいぶ違うよな」
「まあなー。やっぱマレビトからもそう見えるんか」
「両方に悲劇と喜劇は両立するって話をしたことがあるけど、見事に反応違ったしな」
昼休憩中の悟空が茶を飲んでいる横で、俺はタブレットを使って提出されたシナリオの推敲中。その合間の雑談がてら口にしたら、息子の話題だからか悟空もすぐに反応した。
つーかあれに関しちゃ悟飯が天然ってだけな気もしないでもないが。
俺のした質問はこうだ。
とある山の北の麓と南の麓にそれぞれ老夫婦が住んでいた。ある日、北の夫婦は怪我をした鳩を、南の夫婦は怪我をした鷹を拾い、それぞれ大切に世話をした。怪我が治ったので二組の夫婦は世話をしていた鳥を放した。鳩と鷹は山の上で出会い、鷹は鳩を食い殺した。
北の夫婦にとっては大切に世話した鳩を食い殺された悲劇だが、南の夫婦にとっては大切に世話した鷹が獲物を狩れるようになった喜劇である。
「悟飯はなんて言ったんだ?」
「真顔で鷹と鳩の生態の解説してきた」
「あー、あいつそういうとこあるよな」
「天然ってこういうこと言うんだなって思ったよ」
「悟天は?」
「本当にあったことは一つしかないのに不思議だねって」
まあ、今回のこれは例え話だが、サイヤ人にとっては他人事って訳でもない。サイヤ人に対して憎しみを持っている奴にとっちゃ惑星ベジータの消失は喜劇だが、消されたサイヤ人とか抵抗して敵わなかったバーダックにとっちゃ悲劇だろう。
フリーザだって、地上げした星の先住民にとっちゃ悪の帝王だが、高い金で、すなわち“金を払う”という行為だけで住める星を提供してくれる流浪の民にとっちゃ救世主に近い存在にもなり得る訳で。
そんで、サイヤ人ってそんなに寿命が長い訳じゃない。数百年単位で生きる種族がサイヤ人に恨みを持ってた場合、悟空世代の死後に恨みが悟飯やら悟天といった次世代に向く可能性だってゼロじゃない。
そんな感じで、まあフックとして例え話を出してみたんだが、性格が出るなあと思った訳だ。
「で、悟天にそんな話をしたら、マレビトさんはいつもそんな風に考えてるのって聞かれたから、ゲーム作るときはそうだぞって答えたんだが」
「マレビトが何考えてるのかわかんねえのいつもだろ」
「お前定期的に暴言吐くよな」
タブレットの文章に赤ペンを引きながら答える。でも悟空にも何考えてるのかわかんなくて助かるわ、たまに嫉妬で狂いそうになる時あったし。今後も嫉妬に揺さぶられない自信ないし。
「とにかく、その会話でそういう物語とかが気になるようになったらしくてな、最近自作のシナリオとか小説渡してくるようになったんだよ」
「へえっ、オラそういうの読まねえしな」
「だろうな。添削頼まれてるんでそれには応えてるんだけど、近々賞とかの応募についても教えようかと思ってな。場合によっては賞金も発生するし、親の悟空には話通しておこうかと思って」
「オラはいいけど、チチには?」
「もうしてある」
その辺、チチは寛容だった。まあ悟空も武闘大会でドカンと賞金もらってこい、みたいな感じらしいし、武闘会か小説賞か舞台が違うだけで大会で金稼ぐって発想としては悟空と似たことしてるしな。
やっぱ根っこの部分から見た目から似てんなこの親子。
「マレビトが見てんなら安心だな」
「何言ってんだ、苦労すんのお前だぞ」
「オラ?」
「これから先、悟天は間違いなく口が回るようになって屁理屈を理論武装できるようになるぞ。んでチチと戦って決着がつかなかったら駆り出されるの父親のお前だぞ?」
ガツンと言ってやるだ悟空さ!と悟空を引っ張ってくるチチが見える気がする。それは悟空自身も同じだったのか、悟空がむっと口を閉じた。
しばしの沈黙。うん、この短編なかなか面白かったな。誤字脱字もかなり減ったし。
悟天への褒める点とアドバイスをまとめていると、悟空がじっとりと俺を見ながら口を開いた。
「にいちゃん、オラ虐めてたのしい?」
「わりと」
あ、拗ねた。