まれびとの旅   作:サブレ.

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第九話

俺を挟んで、目の前にはドラゴンボールを力づくで奪おうとした……ピラフ様とその一味?が、背中には悟空たちが、俺を挟んで向かい合っている。とりあえず、ブルマたちが怪我しないように剣で光線銃の類は全部ぶっ壊した。ヒエっと悲鳴が上がる。

 

「……お前らがドラゴンボール集めてるのはよくわかるけどさあ、盗むのはまあいいとして、罠にかけるのとか銃口向けるのはちょっとダメだろ」

「盗むのもダメに決まってるでしょ!?」

 

俺がぶっ壊したからいいものの、この三人、殺してでも奪うつもりだったに違いない。流石にそれは看過できん。まあ実力差がそこそこあるせいで、三人揃って完全に萎縮してるんだけど。もう戦意はなさそうなので、剣を鞘に納めた。

 

「……まあそっちがドラゴンボール集めてんのは否定しないけど、改めて聞くわ。ドラゴンボール譲ってくれないか。嫌ならいいけど」

「は、はいぃ!!!もちろんですっ!」

 

ものすごい勢いで差し出されたドラゴンボールにちょっと閉口。いやまあ、実力差的に脅したと捉えられるのは分かるけど、それはそれとしてなんかこういい気分はしない。ただ、そう思われる行動をしたのは自分だ。

 

「……ブルマ、七つ目揃った」

「へっ!?ど、どうもありがとう」

 

受け取ったドラゴンボールをブルマに渡せば、旅の目的は叶ったも同然だ。後ろを振り向けばヤムチャがビクッと肩を揺らした。

 

「……欲しかったら話し合えよ。それか、それでゲームでもやって決めるとかさ」

「にいちゃん?」

 

……このあと、素直に話し合うも、譲り合うも、騙し合うも自由だが、そこに俺が居たら邪魔だろう。壊れた穴からおあつらえむきに外が見えるので、そこから退出した。

あー、やっちまった。

 

+++++

 

「……はあー」

 

だいぶ離れた場所で大きくため息を吐いて地面に横になった。ほんっと、やってはいけないムーブをしてしまったことに自己嫌悪が止まらない。落ち込んだ気分を無理に上げようと空を仰いだ。

なんか悟空の顔がある。

 

「ご、悟空っ!?」

「や、にいちゃん」

「ビビらせんなよ……」

 

若干心臓がバクバクしてる。近づいてくる気すら感知できないとかどんだけ落ち込んでたんだ俺は。ここが地球でよかった。宇宙だったら死んでたかもしれない。

 

「にいちゃん、なんで落ち込んでんだ?」

「んー、ちょっとな。嫌いなやつとおんなじことしたなーって、自己嫌悪してたんだよ」

 

主に自称宇宙の帝王とか、フから始まってザで終わる奴とか、冷蔵庫みたいな名前の奴とか。

 

「にいちゃんはにいちゃんみたいな奴が嫌いなんか?」

「嫌いじゃねえよ。それに、俺と大嫌いなアノヤローが同じってのはまずない」

 

主に強さとかな。今の俺じゃ逆立ちしても勝てんわ。一瞬で宇宙のチリと消えます。まあそれを差っ引いても、同族にはなりたくねえなあ。

自分を嫌いっていうのは、口が裂けても言えない。この身体には俺の魂のほかに、この身体に本来入っていた魂があるから、その悪口になることは言わないと決めている。いい奴だしな、あいつ。

悟空の頭の向こう側では、ブルマとウーロンとヤムチャとプーアルとピラフ一味が車座になってトランプをしている。どうやらカードゲームでドラゴンボールの使用権を決めることにしたらしい。

平和なことで何よりである。強さも、こんな風だけに使えればいいのにな。

 

「悟空はさあ、これから亀仙人のところに弟子入りするんだっけ?」

「うん!」

「そうかあ、頑張れよ。それから、満月は絶対に見るなよ」

「!にいちゃんも、満月の夜に出るっていうすんげえ怪物知ってんのか!」

「おう知ってる、見たことある」

「すげえな!オラのじいちゃんそいつに踏まれてペッチャンコになったのに!」

 

……表情を取り繕えているだろうか。

悟空がじいちゃんだという孫悟飯を慕っているのは、亀仙人との短い会話でも理解できた。それを自分の足で踏み潰した、なんて、答えてしまっていいのだろうか。

それに、サイヤ人はフリーザの手で滅ぼされたはずだ。加えて僅かな生き残りのうち、王族がフリーザ軍に従っている。残りのサイヤ人がいるとフリーザの耳に入りでもしたら、どうなる?

俺は、どう答えるべきなのだろうか。

 

「そうか。その大猿、すごく強いんだぞ。気をつけろよ」

「大猿なんか!」

「、そうだな」

 

はえ〜と感心する悟空に苦笑い。口を滑らせた。あっぶね。

 

「ほら悟空、なんかそろそろドラゴンボール使うみたいだぞ」

 

気を逸らすために、ドラゴンボール争奪戦が行われている方を指差した。とっくに太陽が地平線に沈んで、今は完全な夜だ。だというのに、空が闇に覆われたのが分かる。

 

「出でよドラゴン!そして願いを叶えたまえ!」

 

……ん?この声、叫んだのはウーロンか。じゃあ勝者もウーロンなのかな。

ウーロンの声に応えるかのように、七つ揃ったドラゴンボールがカッと光を帯びたかと思うと、空に巨大な龍が出現した。真っ赤な瞳が、呼び出した者たちを見下ろしている。

 

「あれが神龍か……」

「うわーっ、でけえなーっ!あれが神龍か!」

 

あの龍は本当になんでも願いを叶えられるのだろうか。ゲームの勝者らしいウーロンが叫んで曰く『ギャルのパンティおくれーっ!』。

うん、なかなからしい願いではないのかな。ブルマとかヤムチャとか、どう思ってんのか知らんけどさ。神龍が願いを叶えると、七つ揃っていたドラゴンボールはふわりと浮かび上がり、四方八方へと散っていってしまった。

…………えっ?

 

「あー!悟空の四星球!」

「えっ!?オラのじいちゃんの形見の球どっかいっちゃったのか!?」

 

飛び散るって知ってたなら飛び上がって捕まえといたのに!やらかした。落ち込んでるとロクなことしないな俺。すまん悟空。

 

「……とりあえず合流するか」

 

軽く落ち込む悟空の手をとって、ブルマたちの元へと移動。ピラフ一味はかなり悔しいのかゲームの勝者であるウーロンや俺を睨みつけていたけど、武器を徹底的に破壊したせいか手出しできないらしい。まあ、俺はもちろん悟空やヤムチャにも勝てないしな。

 

「ホント、なんで神龍にギャルのパンティーなんて頼むのよ、このスケベ!」

「勝ったのはおれだぜ!」

「そうだぞブルマ。何を願ってもウーロンの自由だ」

 

欲しいって気持ち自体に貴賎はない、それにどう向き合うのかが問題だって画面の向こうの誰かが言ってた気がする。今回ウーロンはギャルからパンティを盗むでも奪うでもなく、神龍に頼んでもらったのだから、それなりに神龍への願いの正しい使い方の一つだったのかもしれない。

いやまじめに。

 

「それよりブルマ、お前ドラゴンボール使い終わったら散り散りになるって知ってたか?」

「まあ、知ってたわよ」

「まじかー……ドラゴンレーダー使える?」

「一年後ならね」

「えー!じゃあ探せるの一年後なのか!?」

「そうなるな」

「じゃあせめて、ドラゴンボールの配置覚えてないか?四星球どこ置いてた?」

「えーっと、この辺か?ドラゴンボールはこんな感じだ」

 

ヤムチャがその辺で拾った棒切れで大雑把な円と、四星球の場所を描いてくれた。方角と高さと角度、それから飛び散った軌道を思い起こして、この図と反映させて……と、

 

「悟空、四星球飛んでったのあっち、だっ!?」

「あっちか!」

 

指差した方角を向いて動揺するも遅い。俺が指差した先には、煌々と浮かぶひとつの満月。四星球が飛んでいった先に浮いていたそれを悟空が見てしまうのは当たり前の話で。

 

やべ、やらかした。

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