ヘドロだけれどヴィランじゃねえぞ   作:へどろぶいらん

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第1話

やぁどうも緑谷クン、元気にしてる?いやしてないのは解ってるけどね

むしろあれで元気にしてたら、こうして声をかけたりしてないし。

 

君、無個性で雄英を目指してるんだって?

尊敬するし、応援するよ、いや皮肉じゃなくて本当に。

俺もある意味、君と似たような境遇だからね

 

いや、うん、まぁね俺は確かに強個性だと言って差し支えないと思うよ

物理攻撃はほぼほぼ無効、本気で殴ればコンクリだって砕けるパワーもある

隙間があれば大抵の所には潜り込めるし、接触さえすれば麻痺毒で相手を制圧できる

柔らかボディーは人を受け止めるクッションにもなるし、変形する体で対象を囲えば防御も完璧さ

普通に考えて、何故スカウトの声が無いのかってくらい優秀な個性だと思うね。

じゃあ何でスカウトされないかって?それはね

 

※ただしイケメンに限る

 

はヒーローにも当てはまるからだよ!

母はスライム、父は毒生成、生まれた俺はヘドロボディ!

個性が発現した時はヴィランの攻撃を受けたのかって大騒ぎだったね、そりゃ息子がいきなりヘドロになりゃあね。

これが俺の個性だって解った時の母の嘆きようは凄かったね

ゴールデンバウムちゃんから生まれた子供がベトベトンだもん。

え?ゴールデンバウムちゃん知らない?まぁ昔のソシャゲだからね、スマホでググってみてよ、可愛いから。

そんでまぁ、形状変化を鍛えればイケメンになれるはずだって厳しく鍛えられたけど、結局そこまで細かい制御は効かなくてね

そんなことより、母が整形美人・・・いや個性美人?とにかく作った顔だった事の方がショックだったんだけど

まぁこんなヴィランみたいなモンスターボディ、周囲からの風当たりも強くてさぁ

父がもう一人子供を作ろうって言っても、またヘドロが生まれたらどうするの!って。

どうしたもんかね生まれたら。

俺はそれでも品行方正に生きてきたんだよ?

でもねぇ、人間ってのは見た目から入ってくる生き物で、ヴィランっぽいって偏見はどうしてもなくならない訳よ

ヒーローになりたいって言ったら、クラスメイトには何言ってんだこいつ?みたいな顔されるし

親は応援はしてくれてるんだけど、逆にお前の見た目じゃヒーローになる以外ヴィランしか就職先は無いぞみたいな顔してるし。

まぁ俺の場合はまだ重度のイジリで済むんだけどさ、俺がこっちに越してくる前の学校にシンソーって奴がいたのよ

こいつが会話した奴を洗脳するって個性をもってるせいで、まともに会話してくれる奴がめっちゃ少ないの

つか友達って言える奴、俺しか居なかったんじゃないかな?

ちょっと今どうしてるか心配になってきたわ。

いやシンソーの事を今はいいんだ、何を言いたいかって言うと

君は自分が何の能力も無い無個性だと思ってるかもしれない。

でも俺達からすれば、ヴィランに見えないという素晴らしい個性を持っているんだよ!

 

「・・・えーと、塀泥部君、それは僕を励ましてくれてるのかな?」

 

現代社会、8割の人間が個性と呼ばれる超能力を持って生まれる中、数少ない無個性である少年、緑谷出久は

ヘドロボディの巨躯を持つ少年、塀泥部 威乱を見上げながら困惑していた。

 

中学三年生の春、威乱は親の仕事の都合で埼玉の名部中学校から、静岡の折寺中学校へと転校した。

そして編入したクラスでは、無個性である緑谷に対するイジメ紛いの行為が常習的に行われていた。

威乱は日頃から声をかけるタイミングを見計らっていたが、強個性である自覚がある威乱は、下手に話かけても

緑谷のコンプレックスを刺激してしまうかもしれないと尻込みしていたが

担任教師の配慮に欠ける発言によって、彼の志望校が自身と同じ雄英である事を知った事を切っ掛けにして

下校中に声をかける事にしたのだった。

 

「励ましと言うか、まぁそんな感じなんだけど、どうよ?」

 

「むしろ個性社会の闇をいきなり突きつけられた気分かなぁ」

 

ドンヨリとした空気を纏って項垂れる緑谷。

個性持ちには個性持ちの苦労がある、という話は解らないでもないが、出される例の闇が深すぎである。

 

「まぁまぁ、とにかくお前は一人じゃねえって事さ!周りに何を言われたって関係ねえ!はみだしもん同士、一緒にヒーローになろうぜ!

そんで、世間の連中の偏見を吹っ飛ばしてやろうじゃねえか!」

 

威乱は緑谷に笑いかけながら、大きな手でバシバシとその背中を叩いて肩を組んだ。

その言葉を聞いた緑谷は一瞬呆気に取られた後、何かを言いたげな顔で口を開こうとする。

だが、すぐに何かを決意したような表情で力強く拳を握った。

 

(彼がこうして話かけてくれるのは、強個性故の余裕があるからかもしれない。それでも、一人でもヒーローになれると信じてくれる人が居るのなら、僕は…!)

 

「ありがとう、塀泥部君、僕は」

 

その瞬間、不たちの近くに巨大な人影が舞い降りた。

 

「もう大丈夫だ、少年!」

 

そういうと、人影は拳を振り上げる。

 

「私が来た!

 

SMASH!!!!

 

威乱は一撃でしめやかに爆発四散した。

 

※※※

 

「まことに申し訳ございませんでしたぁぁぁぁ!」

 

平和の象徴、ナンバーワン・ヒーローことオールマイトは額を地面にこすりつけて中学生に土下座していた。

 

「いや、オールマイトは悪く…無いかどうかで言えばオールマイトが悪いんですけど、仕方が…ないのかな?

同じ地区にヘドロが二人居るって思いませんもん、俺も自分以外のヘドロ見た事ないですし」

 

オールマイト曰く近くで銀行強盗を行ったヘドロヴィランがこの近くに逃走しており、緑谷と肩を組む威乱をみて

中学生がヘドロヴィランに襲われてると誤認したというのだ。

緑谷を保護しようとしたオールマイトだが、当の緑谷に誤解である事を告げられ、大慌てで弾け飛んだ威乱をかき集め

復活した威乱に全身全霊の謝罪を行てっていた。

 

「怪我も無かった事ですし、ヴィラン扱いされるのは慣れてますから大丈夫ですよ、むしろオールマイトにスマッシュされたなんて一生の自慢になるくらいです」

 

「いや、そういう訳にはいかない。君の個性のおかげで大事にはならなかったが、本来なら無実の一般市民に大怪我をさせたかもしれないのだから。

…今は時間が無いが、この償いは必ずしよう。君が傷害で私を訴えるのなら、甘んじてそれを受け入れよう」

 

そう言うと、オールマイトは威乱に名刺を差し出した。

 

「君の都合のつく時に、そこに連絡してくれ!それでは!」

 

天高く跳躍するオールマイトを見送りながら、威乱は渡された名刺を手に震えていた。

 

「やべーって緑谷くん、俺とんでもねえモン渡されちまったよ、早く帰って額縁に入れないと…あれ、緑谷クン?」

 

いつの間にか緑谷も居なくなっていた。

その靴跡は、オールマイトが飛び立った地点の隣で途切れている。

 

「…いや、まさかね。でも無個性でヒーローになるってんなら、そんくらいのガッツはあるんかな?」

 

やっぱ人間は個性だけじゃないな、と威乱は拳を握りしめた。




個性:ヘドロ
基本的な能力・外観は1話のヘドロヴィランに準ずる。
ただし顔と色はベトベトン
寄生能力はないが、代わりに毒が使える
寄生ってヘドロの能力じゃなくない・・・?
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