とりあえず刹那は部屋で寝かせて氷枕を敷いておいた。袋も一応二つ置いてからアパートを出る。
「じゃ、案内してくれ。」
「了解。」
場所はそれほど遠い場所じゃないらしい。自転車で行けるとのことで、一度家に戻って自転車を漕ぐ。と、
「わわっ!?な、だ、だだだ誰だい!?」
「ん?どうした?…というか俺あんたの名前聞いてないな。俺は翡翠っていう。」
「あ、僕の名前は坂本って言うけどそれより!何か黒いもやもやした人がいるんだけど!?目が赤く光ってるし!なんか…すごい嫌な感じがするし!」
あー、リョウか。
《嫌ナ感ジトナ…?我ニ向カッテ言ッタカ…?》
「わああぁぁぁ!?喋ったァァァァ!!!??」
リョウの声がすると同時に坂本さんの叫び声が響く。…俺の頭の中で。
「賑やかだなぁ…つか坂本さんお化け苦手なのか?」
「無理無理無理無理無理無理無理です!自分の体見て毎回鳥肌立たせてましたから絶対見ないようにしてたぐらいには!」
マジで無理な人だった。そうかー…リョウは俺の体に居候してるっつったが、正確には体というより魂に寄生してるっていう言い方の方がしっくりくるから、行きたいところに行けるんだよな。手だけに寄生させてる坂本さんの所にも当然行けるわけで。
「そいつ、俺の体に昔っから居候してる怨霊のリョウ。格としては圧倒的に坂本さんより上だけどまあ気のいいやつだから気にしないでくれ。」
「気のいい奴って無理だって!?何か威圧感すごいし指尖ってるしなんか睨まれてる気がするししかも怨霊って完全にやばい人だよね何もしないから来ないでくださいぃィィ!?」
めっちゃ早口だな。滑舌がいいこと。
《主、我ソンナニ怖イカ…?》
「一般人から見たら怖いだろうな、俺はもう慣れてるが。こないだの黒服共も固まってたろ。」
あいつらなー。まあ常識を逸脱した存在が目の前に現れたらそりゃビビるわな。
「坂本さん、悪いがそいつを外に引っ張り出すと俺が死ぬから我慢してくれ。多分何もしないはず。」
「多分!?多分って何!?襲われる可能性あるの!?」
まあ、怨霊だし。俺に何か過保護だし。変なことしたら軽く魂をこう…グチュっと。…とは言えんわな。
「まあ、可能性はゼロじゃないってだけだな。よほど変なことをしない限りは問題ない。それに、そこらへんはリョウも分かってるだろ。」
まさか手当たりしだいに攻撃したりはしないだろうな。俺に止められるのは分かってるだろうし。
「そ、そう、かな?」
《ウム、我モ一応高位ノ怨霊ダカラナ。話位デキル。》
話す前に見知らぬ黒服達に怨霊召喚しながら殺意マシマシで対峙したやつはどこのどいつだろうな。
まあそれはさておき。
「坂本さん、ここらへんか?」
「!そうだね、ここからもうちょっと行って…そこだ。その左の大きめの家だよ。」
なるほど。…部長と言うだけあるのか金はあったみたいだな。家がでかい。
…さて、と。
「こっからはリョウにも頼む。リョウ、
《了解。》
と、俺の体が黒い靄に包まれ、空間に溶ける。
「!?なんだいこれ…?」
「一時的にリョウに魂を貸して俺の体を霊みたいにしたんだ。物もすり抜けられるし飛べるし周りからも見えない。」
怨霊に体を貸したら怨霊と同じように見えるんじゃないかと思われそうだが、俺の霊力はほとんどリョウに渡してるから俺自身の霊力はかなり力のある整霊レベルなんだよな。怨霊解放で段階に応じて霊力を解放してもらうって感じ。伍式時点で俺の元の霊力量になるから、普段は元の俺の霊力の半分以下だ。つまりまあ見える事はない。
まあ、あんまり使いすぎると戻れなくなるんだけどね。
んじゃ、侵入させてもらいますか。
不法侵入だが今回ばかりはこいつが100%悪いし生憎証拠が残ることはない。だって霊体だもの。み○を
…まあふざけてないで。
一人暮らしっぽいな。寝室は…こっちか。お、いたいた。
これが部長ねぇ…まあ、何というか…太ってるな。そこはいい。
「(とりあえず、坂本さんはこいつに取り憑いてくれ。)」
「と、取り憑くってどうやるんだい…?」
そうか、普通の霊はそうそうやったことないだろうな。
「(そうだな…俺に霊力波を撃っただろ?あれの威力を最っ大まで落として、霊力で相手を包み込むんだ。んで、ちょっとづつその霊力に自分を溶かしていく感じかな?俺も補助するからちょっとはやりやすいはずだ。)」
「や、やってみるよ。ふっ…」
俺からも、坂本さんの霊力を俺の霊力から抽出して威力を落としながら慎重に部長に流していく。と、少しづつ坂本さんの像が小さくなっていくのが見えた。目は閉じてるから本人は気付いてなさそうだが。
んー…にしても大体の人は守護霊ってのがいて他の霊力が混ざろうとしたり霊が取り憑こうとしたら弾かれるはずなんだけど…この人守護霊いねえな。性格がヤバくて守護霊が弱まりに弱まって消えたか、そもそも守護霊にすら憑かれてないのか。と、
「(よし、坂本さん、もうオーケーだ。)」
「むっ…おお!これが取り憑く感じか…」
部長の枕元に坂本さんが立ってるみたいになった。こんな感じになるのか…?いや、霊力をまだ繋げてるから見えるだけか。普通見えないよな。
「(まずはそいつの意識に溶け込む。取り憑いた状態なら魂の場所がなんとなく分かると思うが、分かるか?)」
と、坂本さんは少しもそもそとして、
「ん、これ…かな?周りとは明らかに違う感じがするね。」
見つけたみたいだな。
「(オーケー。そしたらその魂の中に混ざり込むみたいな感じで入って、そいつの夢の中で延々と呪詛を吐いてやれ。んで、警察に自白させるように言い続けるんだ。例えば…そうだな、「お前が何をやったか私は知っている、早く自白しろ、しなければその度にお前の受ける罰は大きくなっていく…」みたいな感じかな。自分の脳で考えた夢より魂から直結する夢のほうが影響力が大きいから起きても忘れないはずだ。起きても言い続けてやるとそのうち限界にもなるだろ。出来るだけ恨みったらしく、限界になるまで言ってやれ。)」
「了解っ!」
何か声がいきいきしてるな。
「(それじゃあ、とりあえずしばらくリンクを繋げておくから、そいつが自首したらまた連絡してくれ。手段を教える。)」
「分かったよ。…あ、一つ聞いてもいいかい?」
ん?何だろ?
「(何だ?分からない事とかあるのか?)」
「あー、まあ分からない事と言えばそうかな。」
?歯切れが悪いな。どうした。
「いや、こういう言い方をするとあんまり良くないかもしれないんだけどね?なんで翡翠くんは見ず知らずの僕にもこんな感じに接してくれるのかなーって思って。だってもう死んでるんだよ?強制的に成仏させる方法もあるし、というかそっちの方が楽なのになーと思ってね?」
あーなるほど?
「(強制成仏を望んでたのか?)」
「あいや、そういうわけじゃないんだけど、その、ね?それ位こっちが我慢すればいいだろうし、というか戦闘に負けた時点でこっちの生殺与奪…と言えるのか微妙だけど、まあそれを握ってるのは翡翠くんだろう?なら簡単に済む方を選べばいいのに何でかなって。」
うーん、そういう事か。これに関してはなぁ…まぁ、
「(だってよ、嫌じゃないか?生きてる間はこの先大変なことになるからって我慢し続けて、それなのに死んだ後でも我慢させられるとか。少なくとも俺は嫌だね。それに、まあ、長く霊と付き合ってきたからってのもあるんだろうけどさ、話ができる何もしてない相手を殺すってのが、な。まあ殺すってのは正確に言うと違うけど。まあそこは良いとして、とりあえず、せめて死後位はしたいことをしててほしいなってのはあるかな。ま、要は綺麗事とも自己満足とも言える物だ。ただ割と本気で思ってるってのも理由の一つ。)」
ま、最低限人道には則って、な。
復讐とかも基本的には専門家に任せて妥当な判断を出させる。俺はそこに行くまで誘導させる。そこで終わりだ。命を奪わせるような真似はさせない。死者はそこまで生者に干渉すべきじゃないし、逆もまた然り、だ。
「…そうかい。何から何までありがとうね。」
少し坂本さんは笑ってるように見えた。
「(良いんだ。これが俺の役目だからな。んじゃ、健闘を祈る。)」
で、家を出て霊式隠密を解いて家に帰る。
…にしても、坂本さんめっちゃいい人やん。やっぱあの部長許せんわ。人を殺しておいてまだ死人をもないがしろにするようなやつは絶対許さん。
どうもただの謎存在です。
ネタになった…というかサブタイもちょっと違う気もしないこともないですね。
というか今更ですがジャンルは冒険・バトルとなってますが、バトル要素少なめな気もします。
では、最後まで読んでくださり、ありがとうございました!