「…こりゃ参ったね。どうやら僕は相当欲深い人間だったみたいだ。」
自分の手を確認しながら目の前の男性は言った。そうだな…とりあえず本人確認しとかねえとな。
「生前のどれぐらいの時期がわかるか?というか坂本さん自身の姿か?これ。」
とりあえずスマホを取り出してインカメで見せる。が…
「あ、霊体は写んねえんだった。」
生憎カメラに霊は映らない。魂だけの弱い幽霊なら人魂になるのだが、ここまではっきり見えるとなると、映らない。と、
「あ、なら。」
と、刹那がフッ、と手を降ると、そこに鏡が出てきた。
「うお、これは…僕だね。死ぬ直前の時の僕だ。」
うん、そうか。……そのシャツどうした…?
立っているのが坂本さんなのは分かった。にしても…そのシャツは…えっと、センスが爆発してるというか…
「えーと、その…特徴的なシャツも坂本さんのか?」
「、あっ…そうだね。妹が買ってきてくれた、んだけど…」
うん、圧倒的D A I K O N。
白Tシャツのど真ん中にデカデカと大根の絵が描かれてて下にD A I K O Nと書かれている。 これが妹のくれたTシャツってことは…
「願いは妹さん関連か?」
あと妹のセンスが壊滅なんだな。
「…ん、そうだね。妹は僕と5つ違いで、今17なんだ。それで、今週の日曜に成人するんだよ。それでいつだったかに、成人の誕生日に綺麗な着物が欲しいって言っててね。成人式に自分の着物で、とびっきり可愛くして行ってやるんだってね。うちは早くに親を亡くしてて結構我慢をさせちゃってたし、あの子も我儘を言っちゃいけないと思ってたのかあんまりそういうのを言わない子だったから、それは叶えてやりたくて…ってどうしたんだい!?」
と、横で刹那が泣いてた。完全に泣いてた。
おいおい…
「うっ…だっ、て…い、良い、話じゃ、な、いですかっ…!」
そうか、こいつ涙もろいのか。…まあ、にしても…やっぱ坂本さんいい人だよなぁ…
とりあえず刹那は頭を撫でつつ収めておく。
「そうだな…日曜か。着物ってそんな簡単に買えるのか…?採寸とかあるだろ。」
「採寸は大丈夫だよ。妹がサイズはこれ!って渡してきてたから。当日までは絶対に見せるな、ってね。」
なるほど。まあ買ったことないから何がいるのか知らないんだが…そうだな…しかし問題は山積みだ。誰がどうやって買うのか、どんな着物を買うのか、どこで買えるのか…うーん…あ、そうだ。
「いっそのこと坂本さんを擬似的に実体化させちまえばいいのか。」
「はっ!?」
「ふぇっ?」
「元々坂本さんレベルの霊なら接触はできる。霊力を過密度状態にして視認可能にして、声は俺を介して…いや、妖怪でいたよな、そういう声とか真似する妖怪。呼べないか?」
刹那の方を向いて聞く。刹那は困惑しながら、
「や、山彦の事…?呼べるけど…」
「それだ。なら視覚触覚聴覚は大丈夫か。過密度状態なら問題なく行動もできるはずだから、こっちから怨霊になる前のギリギリのラインを死守しながら俺が後ろから…いや、リンクを通してでもできるか。どちらにせよ遠隔で俺から霊力を流し続けて、霊力の発散と注入を同程度出来れば…」
「ま、待ってくれないかい!?流石にそれは無茶だ。何言ってるのかよく分からなかったけど、要するに僕の体に翡翠くんが霊力を流し続けて、見えるようにした状態で僕が着物を買うって事だろう?普通霊なんて見えないっていうのにそれを見えるまで霊力を流し続けるなんて…そりゃできれば僕も自分で選びたいけどそれじゃ…翡翠くんが大変なことになる!」
…なるほどね。心配してくれてるわけか。
「うーん、霊力なら有り余ってんだけどな。軽く怨霊を20や30作れるぐらいには。」
怨霊解放を使ってやればできないことはない。それに…
「坂本さん、さっき言ったけど自分自身で選びたいんだろ?妹さんの着物を。誰かを介してじゃない。自分の目で、自分の肌で、自分の感覚で、一つ一つ見て選びたいはずだ。だったらとことん付き合うぞ。中途半端で終わらせるな。妹さんの事を大事に思ってるなら完璧にやり通してみてくれ。…何、俺の霊力の心配はしなくていい。俺と共鳴してたとき見えたろ?リョウの姿。あれ全部俺の魂の中で圧縮に圧縮を重ねられた霊力の塊だぞ?それこそ…近づいただけでも霊を怨霊にできるぐらいに。」
これはマジ。坂本さんがビビっていながらもリョウが一定距離から近づこうとしなかったのはそれを分かってたからだろう。
「う…」
「それに。言ったと思うが、俺は霊の未練を解決させて成仏させるのが役目だ。中途半端で終わらせる気は毛頭ない。オーケー?」
「お、オー、ケー…?」
何故疑問形。
まあ取りあえず了承は貰えた(奪い取った)。
よし、なら…
「どうする?流石に今からは無理かもしれんが…」
「そうだね、流石にちょっと色々ありすぎて混乱してるから…明日でも大丈夫かい?」
「明日は学校があるが…帰ってきてからなら。」
「あ、でも、」
と、刹那が声を上げた。
「確かここらへんで着物が買える呉服店って一軒だけだった気がするんですが…そこ、確か閉店が6時でしたから、多分4時とか5時とかそこからだとそんなに時間が取れないかもしれませんよ。それだったら学校のない土曜日に買ったほうが確実かもしれないです。」
、なるほど。詳しいな刹那。
「…再度迷惑をかけることになってしまうけれど…それでもいいのかい?」
坂本さんはもう一度聞いた。
「勿論。」
「勿論です。」
今度は、重なったのは俺と刹那。と、坂本さんはふぅ、とため息をついて、言った。
「こりゃ生前使ってなかった運が纏まって来たのかな。どうやらいい子達に出会えたようだ。」
坂本さんはハハ、と笑って言った。
そりゃあ…またこっちからも同じ事が言えるんだがな。
「それじゃ、土曜日にここに来ればいいかい?」
「はい。」
「じゃあ…まだちょっとの間、よろしくね。僕はその間に家に戻ってお金と採寸の紙を準備しておくよ。…あぁ、お金はこの時用に貯めてたのがあるんだ。へそくり貯金みたいなのがね。」
と、坂本さんはそのまま飛んで行った。
「さて、と。こっちもこっちでそれなりに準備しとくか。」
「準備…ですか?」
「ああ。山彦を使って声を代替させられるのか、と霊力の過密度圧縮の、な。」
どうもただの謎存在です。
短めですけどキリがいいのでこうなりました。
ちなみにですけど、この小説の中での妖怪とか霊の特性は結構捻じ曲げられてます。山彦の特性とか怨霊の説明とか元々こんなんじゃないんですけど…まあ、良いでしょう、小説ですし。
だから誰かにドヤ顔でこんなこと言ってもほぼ嘘の可能性もありますよってことです。
あと、作者は着物を買ったことすら無いので詳しくは知らないです。
間違ってても叩かないでください。この世界では採寸だけで買えるんですよ。
では、最後まで読んでくださり、ありがとうございました!