「…で、」
午後4時ジャスト。
昨日も来た事務所兼拠点と言っていたアパートの一室に来て座っている。前には昨日と同じく刹那が正座している。
「…話してくれるな?」
「はい。…とりあえず、今翡翠さんが疑問に思っているのは「龍骸について」と「私の正体」、「あなたの身の変化について」ですよね」
「そうだな」
「では、龍骸についてです。というかここに私の正体についても混ざります。…まず、翡翠さんがおっしゃった通り龍骸というのは私のことです。龍骸というのは…その名の通り、龍の血を引いているところから取られた物です」
龍…!?いきなりすごいのが出てきそうな予感。
「かつて…妖怪が普通に人と共に生きていた頃…大体1200年ほど前…平安時代頃ですね。その頃には妖怪に秩序などと言うものは無く、己の存在を維持するために人を驚かせたり、不思議な現象を起こしたり…場合によっては命を奪ったりすることで恐怖心を煽っていました。人は人でそれに対抗するべく陰陽術などを編み出し、妖怪の弱点であった、人のみが持ちうる霊力を用いて退治、成仏させることができていました。こういった関係で妖怪と人間は成り立っていたんです。ここまでは良いですか?」
「おう」
つまりは両者共にどちらかが力を持ちすぎないようにしていた、ってわけか。
「…しかし、ある時その均衡が破れてしまいました。妖怪の中でも特に力を持つものが現れてしまったんです。それより人間は妖怪達に順位をつけて呼び方を改め、一定以上強い力を持つ者を
なるほど…まあ、恐怖が餌になる妖怪達に対して存在自体が恐怖の象徴になってしまえばそりゃ無限に強くなるも同義だわ。
…ん?つか、普通の妖怪はそのまま妖怪って呼ばれてたとするなら3種類にしか分類されてないのか…?昨日刹那が言ってた餓者髑髏とかは大妖怪って言ってたが…あれはどこに分類されるんだろうか。
と、再び刹那が、話をスタートさせた。急いでそっちに耳を傾ける。
「そんなときでも、安倍晴明達などのような名のある陰陽師たちや高名な僧たちのように戦い続ける人もいました。が、人と妖怪ではあまりに力の差が大きすぎました。純粋な力も然り、寿命という縛りを加えられた人間にはできることもかなり限られてしまいましたから。…そんな時、人間たちに味方したのが龍でした」
なるほど、ここで龍が出てくるのか。
「元々龍も人間に恐れられるものの一つでしたが、どちらかといえば単なる畏怖とは違い、信仰心の方が強かったことにより神格化されていた龍は、人々の心からの願いに応えてトップだった妖皇を鎮めて妖怪達を統治、このままでは世界そのものの均衡が破られてしまい、後戻りができなくなると判断して世界を妖怪達の住まう妖界と人達の住まう人界に分け、それぞれを結界で隔てました。そして、片方の世界に影響を及ぼしすぎると判断された者をそれぞれの世界に封印しました。…ここまでが前置きです。質問はありますか?」
なるほど…じゃあここで聞いてみるか。
「えーと、昨日刹那は餓者髑髏の事を大妖怪って呼んでたよな?大妖怪ってのはどこに当たるんだ?」
と、刹那はあぁ、と少し首を振り、
「大妖怪というのは一般的な妖怪よりも力を持った妖怪の総称です。妖帝や妖皇は言う間もなく、普通の妖怪でも上位となれば大妖怪になり得ます。ちなみに餓者髑髏は一応妖帝ですが、下あたりですね」
「あれで下か…」
マジか。妖帝ってエグいな。となると、あれより更にえげつないのが妖皇…うっわ絶対会いたくねぇ…
…ん?ちょっと待てよ?
「それぞれが結界で隔てられてるのに何で妖怪がポンポンここに出てくるんだ?」
と、刹那は少し目を見開いた。
「そこです。…まずそもそもの結界の性質ですが、力を持てば持つほど透過しにくくなる、という構造になっています。そのため、力の弱い妖怪であれば通り抜けることも容易なんです。まあ、それぐらいの妖怪なら人界にそこまで大きな影響を及ぼすこともないでしょうし」
なるほどな、あくまでも封印したのは強力な妖怪だけってことか。
「ただ、問題はそうではない妖怪の方です。…現在、再び妖怪の被害が少しずつ出てきてしまっています。原因は、妖界が封鎖されて長年経ったことによる
一層、真剣さの増した刹那からの圧がかかる。
「妖界外で規模の大きい問題を起こすような妖怪は、それ程に力を持った者である、ということでもあります。…前回の大きな事件が起こったのは2ヶ月ほど前…とある山間部にて大地震が発生、土砂崩れにより周辺の集落が軒並み壊滅し、数百という人が犠牲になりました。…表向きは大地震ということになっていますが、原因は
5時間…!?あの強さの2倍以上を持って5時間もかかるって…どうなってんだよ…!?
「そんな
なるほど…ん?待てよ?骸…
「…その龍自体はもういないのか?」
「はい。妖皇を鎮め終わり、世界を分けた後に力尽き、自然に還ったらしいです」
つまり…
「…妖皇に辛勝した後に最後の力を振り絞って世界を分けた…ってことか?」
「そうですね。辛勝…という言い方が合っているかは微妙ですが。……倒したわけじゃないんですよ、あくまでも力を奪って封印したんです。倒せなかったのか倒さなかったのかは定かではありません。」
龍めっちゃかっこいい事してんじゃん。
…なんて簡単に言えるようなことじゃないってのは分かってる。つまり、妖皇ってのは神格化までされてた龍と互角レベルの強さだってことだ。そう考えると妖帝だって十分化け物レベルって可能性もある。つか餓者髑髏で妖帝の下だとするとだいぶヤバい。こっちの世界に出てくる輩はそんなレベルの奴か……こりゃ大変だな…
「ここまでが龍骸について、と私について、の回答ですね。質問はありますか?」
「…ぶっちゃけスケールがでかすぎて頭が追いついてないが、聞きたいことが出てきたらまた後で聞くわ。先に俺に何が起こってるか話してくれ」
正直こっちの方が気になってたりする。
「分かりました。…とは言っても、こっちの方はあまり分からないんですよね…恐らく私達からの妖力を浴びすぎて半ば妖怪になりかけてるんじゃないか、考えてますが」
…は?
「え、俺が?」
「はい。私の目から見れば、翡翠さんは人間の形をした妖怪と幽霊の混合物みたいになってますよ」
と、刹那は右目だけを小さく光らせて言った。
気持ち悪っ!?何その状態!?
「ありえるのか?それ…その状況」
「普通はありえませんよ。妖力が移るなんて話、聞いたことすらないですし。ですが、可能性としてはそれしかないんですよね…でも、そもそも本来人に妖力が多く入り込みすぎると存在そのものが揺らいでぐちゃぐちゃになるはずなんですよ」
「ぐちゃぐちゃ」
「はい。比喩表現なしにそのままの意味でぐちゃぐちゃです。崩れた肉塊って言ったほうが正しいでしょうか。…肉の塊が蠢きながら動いてるナニカみたいになりますね」
「肉塊」
…うっ、変に想像しないほうが良かったな…モザイク必至だ…つか、例えが生々しいんだよ…
「な、なるほど…じゃあ、なんで俺はそうなってないんだ?」
と、刹那は腕組みをして、少し唸ってから言った。
「そう、ですね…やはり詳しくは分からないんですが、もしかしたら内々で妖力のデメリットを霊力…というよりはリョウさんが相殺しあいながら存在してるのかもしれませんね。ただ、その分の霊力は無駄になってしまいますが」
確かに。相殺する分に霊力のリソースが食われてるとすると非効率だな。それについてもまたリョウに聞いてみるか。今は寝てるっぽいが。
「ただ、単純なエネルギーの量だけで言うなら妖力は霊力の10倍は強いエネルギーを持ちますからね。そこらへんで何とか補ってるんじゃないでしょうか」
なる…ほど?
要は元々霊力の力だったところをちょっとずつ妖力で補ってるから問題なし!ヨシ!ってなってるってことか?
うーん、これはこれで複雑。
どうもただの謎存在です。
正直何いってんだこいつになる可能性ありますが、分からなかったら分からない所を言ってください。修正できるところは修正します。
んー…にしてもやっぱり無名のオリジナルは伸びませんねぇ…
ま、気軽にやりますか。
では、最後まで読んでくださり、ありがとうございました!