「あそうだ、で、あの黒服共は何だったんだ?」
と、刹那はあぁ、と少し頷いてから、
「護衛兼世話係といいますか…適当にあしらっておいていい人達ですよ」
とのこと。
…護衛…兼…世話係…!?
「もしかして刹那って結構お嬢様だったりする?」
「そう、ですね…あまり好きではない話ですが、結構…はい」
マ?
うーん…マ?(2回目)
「えマジ?いやそれはそれですげえけど…こんなところでウロウロしてていいのか?それ。あの黒服共も言ってたが、家無断で出てんだろ?」
と、刹那は大きくため息をついて言った。
「別に良いんですよ。どちらかというと私がこんな体質なので、家に引き止めるために身分だけ上がったと言いますか、親が無茶苦茶したといいますか…まあ…窮屈なんですよ、あそこ。というか帰りたくないです。私の能力は妖怪の統治と人界の平定で普通の人にはできない事なので下手に外に出られると困るんでしょうが、私のことも使える道具ぐらいにしか考えてないんですよ。…あのとき、下手に覚の能力なんて使わなければよかった…」
「……なるほどな」
ボソッと刹那は言ったが、生憎聞こえた。
覚の読心を通して知ってしまったものならそれは事実なんだろう。うーんなぁ…よし、
「何があったか、話してもらっても?…いや、話したくないなら別にいいが」
「…聞いてもらってもいいですか?」
と、刹那は小さく下を向いて言った。
「ああ、こっちから頼んだしな」
と、刹那は堰を切ったように話し始めた。途中これまでの彼女から見えていた冷静な部分からは考えられないような激情も見られたが、拾えるところは拾ったし、内容もそれなりに分かった。要は刹那の家はかなりヤバいということだ。雑だが、正直一言で言うならこれに限る。
耐えられなくなるほどの親や使用人達からの圧力、贅沢をするためのお金は刹那が警察の特殊な科から報酬としてもらっていたものであったこと、下手に外に出させてもらえずに友人すら作らせてもらえず、半ば軟禁状態だったこと、覚の能力で読んでしまった家族や使用人達の心の底等々…
途中泣きそうな状態にもなっていたが、最後まで吐いたようだ。
「はぁ…すみません、みっともない真似を…」
10分ほど続いただろうか。俺は苦痛ではなかったが、話している最中の彼女の顔はかなり苦しそうだったようにも取れる。
にしても…絵に描いたようなやべえやつだな、刹那の親。やばくね?家無断で脱走しようとして殺されかけるんだぜ?話も聞いてもらえないらしいし、使用人含め誰か特定の人と仲良くなることすら許されない状況だったとか。
ちなみに今こうやってここにいるのは、力づくで逃げてきたかららしい。このアパートの事も知られてないらしい…が、これ時間の問題だぞ…一日かからずに俺のところまでたどり着いてるからな、向こう。
俺が刹那の立場だったら数日で壊れるな。…いや、リョウが暴走するのが先か。何か過保護だからなぁ…こいつ。
今朝の事件とか。
「構わねえが…今朝あの黒服共に話しかけてたが大丈夫なのか?」
と、刹那はコク、と頷いた。
「あのあと
…それ俺に変な評価立たないか?まあ良いけど。
「それに、家から抜け出せて一日も持てればこっちの勝ちのようなものなんです。絶対に私の居場所はバレることはありません」
「一日かからずに俺のところまで突き止めたんだぞ?バレるのも時間の問題だと思うんだが…」
と、刹那はふっ、と笑った。
「そういうときのための私の能力です。粗方の妖怪たちには私の親達の顔を
やべぇ。至極やべぇ。
隠し神が何なのかは分からないが、名前と用途的に物や場所を見えなくする、つまりは隠す妖怪なんだろうな。あと鼠小僧ってのは…そのままか。お金を盗んでくるやつかな。しかも見えないときた。
ってことは守備対策共にバッチリじゃねえか。
「やべえな。でも万一見つかったらどうするんだ?」
「まぁ無いと思いますが…それでも防ぎようがなかったら
逃げ道も確保済みだった。ぱーふぇくと。
つかそこまでできるんだったら逃げ出すのも簡単だっただろ…
「…あ、今そんなに出来るんなら普通に抜け出せるだろうとか考えましたね?」
「覚か?」
「
うぉっとぉ怖ぇ。つかルビ…ルビィ!
「…今でこそ簡単に呼べますが、前はそうもいかなかったんですよ。正式な手順を踏んで数分かけて呼ぶしかなかったんです。そんなに時間をかけてたらすぐ見つかって…いえ、何でもないです。それに、こんなに連続で妖怪を呼べるようになったのもつい一月前ぐらいですしね」
…今一瞬言い淀んだな。…まあ、そういうことか。
にしても意外だな。あんな大妖怪達呼んどいて連続で呼び出せるようになったのが一月前か。呼べるようになってからの成長率半端ないな。
「あのテストと称したのは、私のテストでもあったんですよ。力を制限した状態でどれぐらいできるのか、の」
わおマジか。つか本当にあれ力制限してたんだな…俺に勝機ねえな。
と、刹那はパンッと手を叩いて表情を変えた。
「さて!辛気臭い話はこれぐらいにしておいて、です。ここを事務所にするのであれば、名前と方針を決めないといけません。とりあえず方針ですが、昨日話したものに追加して、妖怪や霊そのものから来る依頼と、警察の特別異常体捜査課、いわゆる特異捜ですね。そこから来る間接依頼の二種類の依頼のほぼ全てを受託することにしようかと考えてますが、どうですか?」
妖怪だけじゃなく霊の方も入ったのか。にしても全部…全部か…
「妖怪の方はともかくだが、霊被害って結構多いぞ?地縛霊とか面倒だしな。」
実際そうだ。小さなものも数えれば毎日起こる。
俺とて全部カバーしてたわけじゃない。
「翡翠さんはそれをやってた、と?」
「や、全部はしてない…つかできないか。俺の体が3つあっても足りないな。俺の場合は優先度を分けてより危険で優先度の高いものからやっていくことにしてた。低いものは放置の場合もあるな」
実際してるし。まあ、優先度の低い依頼ってのは大体整霊のいたずらとかそこらへんの場合が多いからな。整霊は悪意がないからそこまで甚大なことにはならない。デカくなってもちょっとした怪奇現象が起こるぐらいだな。誰もいないのにドアが閉まる、とかのそんなレベルだ。そういうのはすぐ止む。
悪霊退治あたりになるとまあ…2週に1件ぐらいか。それなりに起こってはいるが、大きな被害になる前に成仏させるからまあ、そんなに大変なことにはならない。怨霊レベルの被害はまだ起こってない。どうなるんだろ。リョウが直々に話を合わせたりしてくんないかな。対悪霊で長けりゃ解決に3、4日かかるのにそれより面倒とか絶対大変なんだが。
「まあ、一応私も荷物になるような真似はしないつもりですから。妖怪被害の際も翡翠さんが足を引っ張るようなことはないでしょうし」
と、刹那の声に意識を戻らせる。
いやー…おもっくそ引っ張りそうなんだが。特に妖帝の話を聞いたあたりからその感覚が顕著。
「で、です。名前が問題なんですよね…」
「…名前、いるか?妖怪と霊の問題請け負ってんのここぐらいだろ?識別する必要は無いと思うから別にいいんじゃないか?」
「うーんそれはそうなんですが、こう…格好が付かないじゃないですか」
そ れ そ う い う 問 題 か ?