妖従者と霊操者の現代録   作:謎の通行人 δ

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初の悪霊退治

とりあえず今後の方針が決まって特になにか起こることもなく一週間と少し経った。今俺は事務所で霊被害の報告をリョウから受けている。

今のところやってるのは今までと変わらず霊被害の対処だけ。とはいえ来ているのは整霊のイタズラレベルのものばかりだ。

ちなみに、あれから三日後、整霊が戻ってきていたが刹那が気付いた様子はなかったから多分整霊は見えてない。まあ整霊の被害とかほっといても問題ないものばっかりだしな。現に今のところ来てる被害見てみろよ。

 

・急に花瓶が落ちて割れた

・人魂を見た

・何もないところで急に躓いて転けそうになった。が、転けそうになっただけで何かに支えられて転けはしなかった。

 

こんな感じ。

まあ、最後に関しては触れちまってるからちょっと問題がありそうだが、まあ助けられたっぽいし悪意があったわけじゃなさそうだ。力のある整霊だっていることはいるしな。結局整霊と悪霊の違いは残った未練や感情が正か負かなだけだし。

急に花瓶が落ちたってのは典型的なポルターガイストだろう。継続して何かあるわけじゃないらしいから多分イタズラ。人魂は…イタズラか事故か。整霊の核になる魂の部分はたまーーに見える人がいるからその可能性が高い。カメラとかにはものによっては映る。まあでも特に何もされなかったらしいから事故かな。

 

まあこんな感じだ。ちなみにどこからこの依頼が来てるのかというと、霊に会った人の恐怖や不信感をリョウが感じ取って報告してくれてる。怨霊は人のそういう感情を元に人を襲うから読み取れるんだと。範囲はほぼガ日本を網羅するレベル。それで3件…うーん、多いと取るか少ないと取るか。と、4件目をリョウから聞く。

 

《コノ辺リニ悪霊ガ出タラシイ。遠目ニシカ見テナカッタミタイダケド、昨日襲ワレタ報告出タ。》

おっと、悪霊被害か。遠目に見てた人を襲えるっていう情報的には昨日生まれた強めの悪霊か、もしくはどこかで力をためてたか。どちらにせよ知能がありそうだな。

 

《以上ダヨ。》

 

「(了解、悪霊被害の概要を教えてくれ。)」

さて、と。

 

「刹那、今日の夜方悪霊退治行くが、来るか?」

 

「今日ですか?」

 

「ああ、らしい。」

詳しい情報をリョウから聞きつつ言う。

 

「整霊が見えなかったのはあれだが、整霊のいざこざに首を突っ込むことはそうないからそこはまあ正直良いんだ。むしろ大事なのは悪霊が見えるか、戦う相応の力があるかだ。確認がてら行ってみるか?」

 

「い、良いのであれば。」

 

「じゃあ今日の夜11時頃に行くからな。」

さて…リョウが言うには襲われたのは身長170弱、20代後半の男性、仕事帰りか何かの途中でその悪霊を見かけたところ襲いかかられた、と。

相手の姿は暗くてよく見えなかったが鋭い爪のようなもので引っかかれたらしい。

場所は…ここからちょっと離れた路地辺りか。

大きさや霊力からした悪霊のレベルは中位ぐらい、と。なるほどなるほど…中位程度ならまあ問題ないか。ただ知能があるってのは面倒そうだな…

ま、何とかなるか。

 

──────────

─────

 

「さて、行くか。」

というわけで午後10時40分。一度家に戻った俺は黒のパーカーを取って羽織る。夜に紛れるためだ。他の人に見られるとちょっとまずいしな。服の上から羽織れる大きめのこのパーカーだが、どういうわけか暑くも寒くもならないようになってるから冬でも寒くないし夏でも暑くない。

 

「…とりあえず事務所に寄って、刹那を連れ出してからあそこ行くか。」

事務所まで普通に走って大体10分。近い。学校より近い。

というわけで事務所に寄って刹那を呼ぶ。と、数十秒せずに刹那が降りてきた。

 

「って、服装そのままなのか。大丈夫なのか?」

 

「?何かまずかったですか?」

うーん…まあでかい問題はないんだが…

 

「いや、下手に人に見つかると噂になりかねんからな。霊が見えてないやつならともかく、見えてるやつだと余計。」

霊は信じてる人信じてない人いるだろうが、どちらにせよ見つかると面倒だ。が、

 

「結界を張るので大丈夫でしょう。」

とのこと。張れるのか、結界。まあ俗に言うバリアだな、ドーム形もしくは球形の。結界内のものを外から見えなくさせるっていう性質もある。

というわけで問題の路地まで来た。と…

 

「………」

 

「翡翠さん?」

…刹那は感じてないか。これ結構やばめの霊圧だな…割と強い。どこが中位の悪霊だ、これならワンチャン上位の悪霊ありえるぞ…と、

 

「ウボロオアァォォォ…!」

 

「ひっ…!」

路地の奥から何かをぐちゃぐちゃと鳴らせながらナニカが迫ってくるのを感じた。…来たか。

 

「来るぞ、刹那。」

の声と同時に路地から肉を溢しながら唸るモノが現れた。こいつが件の悪霊か。身長は約2メートル、体は色んなところがボコボコグチャグチャしてて緑色、なんか体の至るところに顔があって霊圧は結構やばい、と………どこが中位の霊だよ!完全に上位悪霊じゃねえか!

 

「こ、これ…」

と、刹那は震えていた。まあ…初見ならそうなるよなぁ…

 

「…結界張って隠れててもいいぞ。」

 

「っ…そういうわけにはいきません…!展開…夜結界《満月》!」

と同時に辺りから像が消える。空を見ると、三日月だったはずの月が満月になっている。相手の悪霊も不審に思ったのか少し動きを止めている。

 

「…来て…餓者髑髏!」

 

「シャラガアァァアアア!」

と、刹那がどこから出したのか扇を出し、振り上げると地面から餓者髑髏が這い出た。が…

 

「それ効くのかね。」

生者(と言っていいか微妙だが)の物理攻撃は基本霊には効果がない。一方で妖怪に霊力の攻撃は効果抜群らしいが…まあいい。どのみち一回弱体化させないといけないんだし。

と、相手方の悪霊も水の中で叫んだような叫び声を上げ、肉を溢した。と…

 

「…げっ、」

その肉が小さめの霊に変わった。…いや、変わった訳じゃないな。どちらかといえばあの悪霊の分体、傀儡って感じか。いずれも核となる魂は一緒、一つだけだ。

 

「…刹那、餓者髑髏でその小さい奴を倒せるかやってみてくれ。」

 

「わかりました。餓者髑髏、潰して!」

と、餓者髑髏は腕を振るい、小さい肉の塊を潰そうとする。と、

 

「!潰せます!」

腕にあたった肉塊達は潰れて動かなくなっている。

なるほど。…が、だな。おそらく根本的な解決にはならんだろう。消滅してないし、吸収もされてないってことはいづれ復活する。だが、一時でも行動不能にできるのは良い。

 

「分かった、あいつがあれを溢したらそれを片っ端から潰してくれ。」

 

「え、あれの相手は…」

 

「無論俺がする。」

俺は別に悪霊を退治するとは言ってるが、別に力ずくで成仏させるわけじゃない。そもそも霊を成仏させる方法は一つじゃない。

1つは核となる魂を壊すこと。消滅させるんじゃなく、壊す。そうすれば成仏し、冥界で修復される。まあ怨霊とか話の通じない悪霊用の退治方法だな。

2つは未練を諦めさせる。目的がなくなれば霊を構成する思いが無くなり、そのまま成仏する。未練が不可能だったり人道から逸脱してた場合に取る退治方法だ。

んで3つ目。2つ目と重なるが、未練を達成させる。理由は2つ目と同様だ。まあ、普通の霊で助けを求めてきたりとか話の通じる霊用の方法だ。

という風に状況によってものを使い分ける必要がある。

ということで、今回は3つ目を取る。が、今のこの悪霊は霊圧が強すぎてまたもに話ができる状況じゃないから、弱体化させて理性を戻させてから話を聞くことにする。

知能があるなら話はできるはずだからな。

 

「さて、」

と、悪霊が肥大化してこっちを向き、前傾姿勢になった。大きさが2倍近くまで膨れ上がり、何というか…めちゃくちゃ太った。人の形を捨てたっぽくなってる。さて、

 

「やるか。」

「ウラボロオアァァォ!」

悪霊が叫ぶと同時に俺は霊力を纏った。

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