「これで2組目っと・・・あっ、今送る座標にいるのでお願いします。・・・はい、今日は多くてすみませんね。まだ何回かあると思うんで待機お願いします。」
先程千束達が駐車場近くの公園の木の影で駿は何処かに電話をかけていた。その服装は普段の
そんな彼は木の影から公園の外へと視線を向ける。
そこには白いバンと数人の男性がおり皆警戒をするように辺りを見渡す中で1人が携帯で誰かと通話していた。
「すまない公園辺りで振り切られた。・・・ちっ!いけすかねぇヤツだ。・・・行くぞ。」
「おう」
通話をしていた男は電話を切ると舌打ちし不満を吐き捨てるとすぐさまあまりに指示をし移動を開始する。
それを見ていた彼も立ち上がると公園を出て裏路地への入りながら電話を出した。
「予定と違ってすまない。ウォールナットだ。」
「はいはい、千束です〜。彼女は たきな。・・・なんかイメージしてたハッカさんとは違いますね。」
「底意地の悪い痩せたメガネ小僧とでも?だとしたら映画の見すぎだよ。」
彼が移動を開始した頃、千束達はウォールナットだと思われる人物の運転する車の中にいた。
「ほら、やっぱり。」
「いやいや、いや着ぐるみじゃないでしょうよ。」
「ハッカーは顔を隠した方が長生き出来るだけさ、・・・JKの殺し屋の方が異常だよリコリス。」
「クマのハッカーよりは合理的ですよ。」
「たきな犬だよ!」
「・・・リスだ。」
彼の言葉に反論した たきなとそれを訂正しようとする千束、しかし2人ともハズレたようでそれを指摘させるとなんとも言えない空気を作り出してしまった。しかしその間も車はなんの障害もなく進み続ける。
「どう合理的なんだ?」
「・・・日本では私達くらいの女の子は基本的に高校の制服を来てるんですよね。」
「まあ、そうだな。」
「私達ってどうしても持つものが多くて私服に合わられるカバンとかだと限界があるんですよ〜。」
「それなら普通にリュックとかでもいいんじゃないか?」
「もう少し年齢が上の大学生くらいならいいんですけど、私達だと若すぎるんですよね〜。だから多くの荷物を入れられるカバンを持っていて違和感のない制服と学生カバンが一番違和感なく街中を動けるんです。だってJKは何処にでもいるでしょう?」
「そもそもなぜ子供を?」
「普通治安世界一の日本で子供が銃持ち歩いていると思います?」
「確かにな。」
「つまり日本で一番警戒されない姿だってことですよ、これ。・・・これ着てたらダメな歳の人達は私服だったりスーツだったりもするんですけどね。そもそもその前に基本は引退ですが。」
「JKの制服は都会の迷彩服というわけか・・・。」
「この大きいのなんです?」
「僕の全て、」
千束の説明に納得したのか感心するような声を出す彼に たきなは助手席にあるものについて質問する。
そこには大きな黄色のスーツケースがありベルトでしっかりと座席に固定されたそれは重厚感のある光を放っていた。
「国外逃亡には身軽な方がいいだろう?」
「いや、アンタの姿が身軽じゃないですけどね。・・・でもいいな〜。私も海外言ってみたい。」
「一緒に行くかい?」
「うち結構な経営難なんですよね。基本私と駿のせいだけど・・・だからそういう余裕はないんですよ。」
「そもそも私達は戸籍がないですからパスポートも取れませんから、それ以前の問題ですがね。」
「もう少しクリーナー代が安ければな〜、・・・ん?」
千束が愚痴りながら天井を見上げていると彼女の携帯がなり始める。気づいた彼女が画面を見るとそこには駿の名前が映し出されていた。
「もしもし、千束ちゃんで〜す。・・・ふむふむ、おっけー。私達の仲間、もう1人の護衛が貴方と話したいらしいのでスピーカーにしていいですか?」
「構わない。」
『初めましてウォールナットさん。俺の名前は羽東 駿、本日の護衛任務に携わるものです。』
「どうも、ウォールナットだ。」
「ボイスチェンジャーということはやはり身バレ防止ですね?なら呼び方を変えた方がよろしいでしょうか?」
「別に構わない。・・・名前が知られても姿がバレなければどうとでもなるからね。」
『わかりました。それではウォールナットさん、現在俺が入手した情報をお教えします。何かあれば俺が動くので言っていただければ幸いです。』
「それならまず現状を頼もうか。」
『わかりました。私の現在把握している敵対グループは4組です。その内の3組は確認し2組を捕縛しました。残り1組は情報を得るために追跡中です。』
「そうか・・・他に情報はないか?」
『現在私の追っているグループは男性5人白い大型のバンに乗っています。現在そちらの場所は把握できて居ないみたいですが何処かと連絡を取っていたのですぐに補足されると思われます。今のところはこのくらいですね。』
「そうか、ならこれまで通りソイツ等の監視を頼む、何かあればこちらに報告してくれ。」
『わかりました。・・・それでは失礼します。』
その言葉を最後に通話は切れ車内は静寂に包まれる。
「・・・君達の仲間はかなり優秀みたいだな。」
「そりゃそうですよ〜!なんたって私の元パートナーですから、私が苦手な分裏工作が得意なんです。」
「それ大丈夫なんですか?リコリスとして、」
「大丈夫、大丈〜夫!それで10年間上手く行ってるから!」
「彼女のパートナーは苦労しそうだ。」
「・・・はい。」
笑いながら言う千束に彼は同情心の籠った言葉を たきなへとかける。それに彼女は天井を見上げながら答える。
「どうかしましたか?」
「いや〜。なんか今の話とは別でなにか忘れてるんだよね〜。たきな何か分からない。」
「分かりませんよ。・・・そういえば電車内で羽東さんと何か話してませんでしたか?」
「駿と?・・・あっ!!」
先程まで笑っていた千束が難しい顔をしているため不思議そうに思った たきなは声をかける。千束の返してきた漠然とした言葉に たきなは返答に悩んでいると彼女が電車内で彼と話していたことを思い出した。
それを聞いた千束が考えること数秒、彼女は焦りの色を見せながら叫ぶと再びウォールナットへと視線を向けた。
「やばいやばい!やばい!!どうしよう!?」
「何かあったのか?」
「貴方の姿がどんなか言い合いになって、もしも着ぐるみだったら私が駿の言うことを逆なら駿が私の言うことを聞くってことになっちゃってるんです!」
「・・・人を賭け事の対象にするのはやめてくれないか?」
「どうしよう!?ここままじゃ私が・・・。」
何かを想像したのか顔全体を真っ赤にしそれを手で隠しながら蹲る千束、それを見て たきなは呆れた表情で彼女を見た。
「依頼中に何をしているんですか・・・。」
「だって駿が着ぐるみとか言うんだもん!!」
「現に僕は着ぐるみだぞ?・・・それにしても彼はよくハッカーのことをわかっているね。」
「どういうことですか?」
「先程言った通り僕達ハッカーは顔がバレない方が長生き出来る。だからマスクやらお面やらで顔を隠して生活しているんだ。私生活でもね。・・・特に僕は用心深いことで有名みたいだから、彼はそれを知ってたんじゃないか?」
「・・・もしかして私、嵌められた?」
「たぶんね。」
「駿め〜!!・・・たきな、助けて?」
「・・・自業自得です。」
「そんな〜!!」
千束の悲痛な叫びのこだます中、車内スピーカーから流れる演歌が悲しく流れる。
それからも移動は平和に問題なく続く。
しかしそれは長くは続かなかった。
「あれ?高速に乗るのでは?」
「・・・どうした?」
「いや、それはこっちのセリフですけど?」
本来進むべきルートから逸れる車に疑問を持った2人はウォールナットへと視線を向ける。
そこにはハンドルから手を離した彼の姿とそれでも動き続けるハンドルがあり、
それがこの事態の異常性を示していた。