リコリス・リコイル 比翼の花弁   作:0IN

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Malaise, in Side Squirrel

「ウォールナット!?」

 

「・・・。」

 

「やられた!・・・出るぞ!」

 

「・・・いいよ。」

 

「・・・。」

 

 

ウォールナットに呼びかける たきなを横に駿は外に出ようとするが千束に手を捕まれ止められる。俯いたまま強く彼の手を握る千束に彼は返すように手に力を込めると歯を食いしばった。

ウォールナットの死亡を確認した たきながミカへと連絡をとる中、駿はドア内から彼の死体を確認する。

そこには横向けに倒れるリスの着ぐるみの姿がありその前面には無数の風穴がかけられていた。穴からは赤い液体が流れておりそれは地面を侵食するように染め上げる。

 

 

「・・・これは、」

 

「・・・作戦は失敗、店長からすぐに緊急車両が到着するため遺体と荷物を回収して現場を離脱しろ、との事です。」

 

「了解、俺は遺体をやるから2人は荷物を頼む。」

 

「分かりました。」

「・・・。」

 

「・・・一応慎重にな、依頼主の大切なモノだったんだ。せめて一緒に供養してやりたいからな。」

 

 

 

そういうと彼は外を警戒しながらウォールナットの身体を建物内に移動させる。

それの横で たきながスーツケースの移動させる中、千束はただ呆然と動かないウォールナットを見ていた。

 

 

「・・・すみません。」

 

「たきなのせいじゃない・・・。」

 

「・・・。」

 

 

その後3人は現場に到着した救急車に乗り込みその場を後にしていた。

千束と たきなは後部席に、彼は後部扉を背に座りながら担架に載せられたウォールナットを見つめる。

その空気は重く普段どのようなことがあっても明るく振る舞う千束ですら表情に影を落としていた。

 

 

「・・・すいません、これなのですが、」

 

 

重苦しい空気の中、彼は突然立ち上がり運転席へと足を運ぶと運転手にスマホを見せて何か話し始める。

すると運転手は頷き足元を漁る動きを見せると彼に何かを手渡した。

 

 

「駿、何やってるの?」

 

「・・・ちょっとな、」

 

 

彼の行動が気になった千束が声をかけると振り返り担架の前に移動する。

そして彼が右手を上げるとそこには、

 

 

「・・・起きてくださ〜い。」

 

 

缶ビールが握られておりそれをウォールナットの頭の上で揺らしていた。

 

 

「起きないと俺が飲んじゃいますよ〜。」

 

「駿、ふざけないでよ!」

 

「ふざけてんじゃねぇよ。・・・まあ、見てな。」

 

 

駿のふざけた行動に千束は怒りの声を上げるが彼はそれを軽く受け流し缶ビールのプルタブに指をかけた。それを見た彼女が怒りの形相で彼を殴ろうとしたその時、

 

 

「それは私のよ!!」

 

 

車内に叫ぶ声が響き渡った。

突然のことに拳を振り上げたまま動けなくなる千束、駿がそちらへと目を向けていると何者かに缶ビールが奪い取られる。

彼から缶ビールを奪い取った犯人、

 

それは担架に寝かされているウォールナット本人だった。

ウォールナットは奪い取る勢いのまま起き上がると頭勢いよく外すとそこからミズキが姿を表した。

 

 

「「えっ!?!?」」

 

「暑っつ!ビール、ビール!!」

 

「・・・やっぱりミズキさんか。」

 

 

いきなりのミズキの登場に変な表情のまま固まってしまう千束とたきな、それにお構い無しと言わんばかりにビールを飲み始める彼女を見た駿は深いため息をあげた。

 

 

「え?えっ!ちょっ!待っ!ミズキ!なんで!?」

「ど、どどど、どういうことですか!?」

 

「落ち着け2人とも、」

 

「えっ!先生!?」

 

「いっぱい食わされたか〜。」

 

 

動揺のあまり慌てふためく千束とたきな、それを見た運転手・・・ミカが2人に声をかけると駿は頭を押さえながら床に座り込んだ。

 

 

「プハァ〜!あっ、これ防弾!派手に血が出るのがミソね。クッソ重いけど!」

 

「・・・あの、ウォールナットさん本人は?」

 

「そうだよ!どこいった!?」

 

「・・・そこだろ?」

 

「・・・正解だ。」

 

「「!?」」

 

 

本物のウォールナットではなかったことを知った たきなが本人の所在をミカに聞くと千束も慌てて周りを見渡す。

それ声を聞いた駿が遺体と一緒に積んだスーツケースを指さすと担架に載せられている着ぐるみの頭から声が聞こえる。

 

 

「「追手から逃げ切る1番の手段は死んだと思わせること、そうすればそれ以上捜索されない。」」

 

 

2人が頭だけの着ぐるみから声が聞こえたことに驚いているとスーツケースが開き中から1人の少女が出てきた。

少女の発する声は声色は違うが着ぐるみから聞こえるものと1字1句同じであり彼女を見た駿はポケットへと手を入れる。

 

 

「・・・どういうこと?」

 

「つまり元々仕組まれてたってことだ。」

 

 

状況を理解出来ていない千束の言葉に彼は飴を取り出し口に入れながら答える。

 

 

「では、わざと撃たれたってことですか?」

 

「彼のアイディアだ。」

 

「・・・もしかして私達って、騙されてた?」

 

「まあ、そうだな。・・・駿には気づかれたみたいだが、」

 

「俺も確信持てたのは今さっきですよ。・・・確かに考えてみれば不自然な点がありましたが、」

 

「あれ?私の演技そんなに下手だった?」

 

「・・・そもそも着ぐるみで逃走とかないでしょう。それに命かかってる状況で異様なくらいスーツケースを意識してましたし、それに最後のあれなんて殺してください言ってるようなものですよ?」

 

「あちゃ〜、あそこか。」

 

「そもそもあそこで撃たれてなきゃどうしたんですか?殆ど敵側無力化したわけですし?」

 

「そりゃ、ハリウッドばりの大爆発を用意してたわよ。結局無駄になったけど、」

 

「まあ、早く終わって良かったじゃないか。」

 

「そもそもウチ予算ないんですからそんな金食う演出やめてくださいよ。」

 

 

大人2人が笑い合う中、駿が文句を言っていると少女が千束達の前へと歩み寄る。

 

 

「想定外の事態にしっかりと対処して見事だった。」

 

「ちょ、ちょっ、ちょっと待って?色々聞きたいことあるけど、つまり予定通りで誰も死んでないってこと?」

 

「そうよ〜。」

 

「よかった〜、みんな無事で。」

 

「この子金払い良いから命掛けちゃったよ!」

 

「もぉー!死なせちゃったと思ったし、あぁ〜、もう!よかったー!!」

 

「!?!?」

 

「無事でよかったよほんと、ほんと〜!」

 

 

感極まって少女に抱きつく千束、それを見て周りが笑う中たきなだけは視線を落としていた。

 

 

 

 

 

「いい加減機嫌を直したらどうだ?」

 

「事前に教えてくれても良かったんじゃないですかね?」

 

 

仕事も終わりリコリコに戻ると夜の開店準備を終えた千束はカウンターに突っ伏しいじけだしたため、ミカは宥めるように彼女に声をかけるが彼女はより機嫌を悪くする。

 

 

「だってあんた芝居下手だし。むしろたきなと一緒に自然なリアクションしてもらった方がいいじゃない?」

 

「・・・あれ、俺は?」

 

「あんたはどうでもいいわよ。どうせ気づいたんだし、」

 

「頭かち割るぞ呑んだくれ!」

 

「わっ!ちょっと危ないわよ!?」

 

 

ミズキの言葉に納得する部分のあった千束が頬を膨らませると、名前の出されなかった駿が疑問に思い彼女に問いかける。その返答に頭に来た彼が彼女の頭に手刀を入れようとすると彼女は彼の手を必死に抑えてスマホを操作し始めた。

 

 

「こんな感じで〜。」

 

「えっ?・・・あぁぁぁ!ちょっと何それ、いつ撮ったの!ミ〜ズ〜キ〜!消〜し〜て〜!!」

「やっぱり『命大事に』って方針、無理がありませんか?」

 

「ん?」

 

 

ミズキのスマホ画面には女の子がしては行けない表情をした千束が映されておりそれを見た彼女はミズキにそれを消させようと飛びかかる。

そんないつもの状態に戻った2人に たきなは言葉を投げかけた。

 

 

「あの時、きちんと3人で・・・羽東さんは無理でも2人で動けば今回のような結果にはならなかったはずです!」

 

「でも〜、そうされたら私が困ってたんだよね〜。」

 

「目の前で人が死ぬのほっとけないでしょう。」

 

「私達リコリスは殺人が許可されてます!敵の心配なんて・・・。」

 

「だからって殺していいってことにはならないぞ?」

 

「・・・えっ?」

 

 

それに反応した2人が たきなへと視線を向けると彼女の言葉に対して困ったかのように反応をしめす。それを見た たきなが2人を睨みながら声を荒らげると横から駿が言葉を投げかけた。

 

 

「・・・許可があるからって殺していいのか?」

 

「もちろんです。社会に害となるものを殺すのがリコリスの約目・・・私達はそのために存在します。」

 

「もしもそれが仲間だったとしてもか?」

 

「何を言っているんですか?そもそも仲間であるリコリスがh、」

 

「はい、そこまで!・・・あの人達も今回は敵だっただけだよ。」

 

 

いい合いになる2人、お互いの意見をぶつける中たきなが再び声を荒らげるようとした時、千束が手を叩き意識を彼女へと向かせる。

2人が視線を向けていることを確認した千束はカウンターへと戻りながら言葉を紡ぐと彼は頭を掻きながら厨房へと向かった。

 

 

「誰も死ななかったのはよかった、よかった。」

 

「・・・そういうことじゃないと思います。」

 

「ほら、2人とももうやめなさい。私達も騙すような作戦を立てて悪かった。」

 

 

気にする様子もなくカウンターに座る千束と俯きながら拳を握りしめるたきなにミカはため息をつきながら団子を千束の前に置いた。

 

 

「あぁ〜!先生甘いもので買収するつもり?」

 

「・・・いらないか?」

 

「ううん、食べますぅ〜!!」

 

 

それを見て機嫌をよくした千束が団子を食べ始めると駿も厨房から出てくる。

その手には湯気のたった肉まんがあり、彼はそれに齧り付く。

 

 

「また、それ食べてるの〜。」

 

「いいだろ、こういう気分転換したい時の楽しみなんだよ。・・・一応これ数量限定で入手困難なんだぞ?」

 

「好きなのはわかるけどさ〜。・・・そうだ たきな。座敷に座布団出してきて〜。」

 

「・・・はい、」

 

 

たきなが店の奥に入っていくと千束も食べかけの団子を持って奥へと入っていく。

それを見た駿はカウンターに座ると再び肉まんに齧り付いた。

 

 

「相変わらず切り替え早いわね〜。・・・それにしても、よくそんなの食べられるわね?」

 

「そうですか?・・・少し辛いとは思いますけど普通ですよ?」

 

「何処が普通よ!1回食べたことあるけど酷い目にあったんだからね!?・・・それを食えるのはあんたと千束だけよ!!」

 

「そうですか?上手いんですけどね、麻婆マン。」

 

 

 

 

いつも通りの雰囲気に戻った店内でミズキと喋りながら食べ進めていく彼、そして最後の1口を口に入れようとした時奥から千束の声が響いた。

 

 

「なんかいたよー、今!」

 

「なんかってなんだよ。・・・なんで貴方がここにいるんだ、ウォールナット?」

 

「うちでしばらく匿ってくれって〜、散らかすんじゃないわよ!」

 

 

その声に彼が座敷に向かうと襖が空いており、その上段に見慣れない座椅子と機械群があり、それに座るウォールナットの姿があった。

 

 

「座敷童子かなんかだと思った〜!」

 

「匿うってことはしばらくここに住むってことで合ってるか?」

 

「お前らの仕事を手伝う条件でな。言っとくけど格安なんだからな。」

 

「それならこの写真の男を見つけて?あっ、手前じゃなくて後ろの小さい方で、」

 

 

「千束ちゃ〜ん!」

 

 

千束がスマホの写真を見せると先日の事件について頼み事をしていると店内から彼女を呼ぶ声が聞こえたため千束は店内へと戻っていく。

 

 

「・・・これその写真と簡単な情報が乗ってるから使ってくれ。」

 

「・・・借りるぞ。」

 

 

千束を見送ると駿は少女にUSBメモリーを渡す。彼女はそれを受け取るとPCに差し込み操作を始めデータを引き抜くと写真広げ分析を開始した。

 

 

「解像度は補完できたな。」

 

「今日から仲間ね、名前は?」

 

「ウォールn、」

 

「ちょ〜、ちょちょちょい!その人は死んだんでしょう?本当の名前を教えなさ〜い!」

 

「・・・クルミ。」

 

「日本語になっただけじゃん。そっちの方がよく似合ってるよ、よろしくクルミ!」

 

「・・・よろしく千束、」

 

 

座敷に戻ってきた千束は少女・・・クルミに名前を聞くと彼女に抱きつき歓迎のする。

それにクルミはぶっきらぼうに返すとUSBを引き抜き彼に返した。

 

 

「データはもらった、仕事はちゃんとする。」

 

「頼むな。・・・さて、最後の1口を・・・あれ?」

 

 

USBを返したもらった彼はそれをポケットにしまうともう片手に持っていた麻婆マンの食べようとするが彼の手にはその姿がなかった。

それを認識した彼が周りを見渡すと口を動かす千束の姿がありそれを見た彼は彼女へと詰め寄る。

 

 

「お前・・・食べた?」

 

「食べないからいらないと思って、・・・美味しかったです!」

 

「・・・。」

 

「あれ?・・・駿?」

 

「・・・そういえばウォールナットは着ぐるみ着てきたな?」

 

「そ、そうだね〜。」

 

「電車内で言ってたこと覚えてるか?」

 

「いや〜、なんか言ったかな?・・・お弁当の煮卵!駿にはあげてなかったね。」

 

「もし、ウォールナットが着ぐるみだったら言うこと聞くって言ってなかったか?」

 

「・・・。」

 

 

軽いノリで返す千束を見た彼は顔を俯かせる。

それを見た彼女が頬を引き攣らせると彼は今日の出来事を確認してきた。

その瞬間、彼女は話を変えようとするが逃げるが出来ない。

 

 

「・・・井ノ上さん、言ってたよな?」

 

「は、はい、言っていました!」

 

「た、たきな!?・・・でも本人はs、」

 

 

彼の冷たい雰囲気から紡がれる言葉に恐怖を覚えながら答えるたきな、それを見た千束が慌てて言い訳をしようとするが既に手遅れだった。

 

 

「安心しろ、今は命令しない。」

 

「・・・そっか、よかった〜。・・・今は?」

 

「お前が最も辛い時に辛い命令してやんよ!」

 

「ちょっと!!それはなしでしょう!?」

 

「お前が俺の楽しみ奪うからだろう!食べ物の恨みは怖いぞ!!」

 

「ヒィー!助けて誰か!!」

 

 

混沌とする座敷内、怒れる駿とそれに恐怖し蹲る千束にたきなとクルミはお互いの顔を見ると首を傾げるのだった。

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