「どうも〜。」
「リコリスの義務は果たさないくせに、ライセンスの特権は欲しいんだな。」
「DAの仕事もたまにはやってるじゃないですか。・・・それにその特権がないと困るのは楠木さんもでしょう?」
「千束、司令の前だぞ!」
楠木の嫌味の籠った言葉に千束は気にすることなく返すとそれを横で聞いていたフキが咎めるが彼女は気にすることなく話を進めた。
「たきな・・・なんで追い出したんですか?」
「命令違反だ。聞いてるだろう。」
「だけど、仲間を救った!」
「その結果、千丁の銃の行方は以前不明だ。商人は殺してはいけなかった。」
「そのためならリコリスが死んで良いってことですか?・・・それにこれ見たでしょう?」
感情を見せない平坦とした口調で喋る楠木に声を荒らげる千束、彼女は握っていたスマホを操作すると1つの画像を出して楠木に見せる
「取引時間間違えてた司令部のせいです〜。楠木さんにだって責任あるでしょう?」
「おい、千束!」
「それにあの作戦の時何かトラブル起きてませんでしたか?・・・例えば通信妨害とか、」
「・・・それを言ったのはアイツか?」
「先生が通信障害受けたって言ってたんで調べてたみたいなんです。・・・そうしたらあそこ一帯が一時的に通信途絶になってたらしいですよ?」
「他人の処遇を心配する前にもっと働いて欲しいものだがな。遊びでお前達にライセンスを出している訳じゃないんだぞ。」
「あー!誤魔化した!」
「やめろ!」
楠木の態度に徐々にヒートアップしていく千束は、それを見て我慢出来なくなったフキは彼女の肩を掴み止めに入るがその手を振り払い今度はフキへと視線を向けた。
「だいたい、状況判断が出来なかった現場リーダーにも責任があるんじゃないですかねぇ?」
「仕方ないだろ、通信障害で司令部とr、」
「フキ、」
「ッ!」
「やっぱりトラブル起こってたんじゃないですか!・・・ラジアータでモニターされてるのにどうしてそんなこと起こるんですか?」
「・・・ただの技術的トラブルだ。」
「いやいやいや、ちょっと楠木さん?ラジアータをクラックされたってやばすぎでしょう!」
責めるようにな千束の言葉に反論しようとするフキだがそれは途中で楠木に止められる。
しかしその一言で確信した千束は楠木へと再び詰め寄るが彼女はもう話すことがないと足早に部屋を出ていった。
千束は彼女を追いかけようとするがそこでフキに止められる。
「楠木さん!」
「やめろ千束!命令も聞かず独断専行するリコリスなんか使い物にならねぇ。・・・それだけだ。」
「それを言うなら指示がなければ動けないフキだって使い物にならないでしょう!」
「なんだと!てめぇだって使い物にならねぇだろうが!」
「使い物にならないならなんで急遽私達があの事件に呼ばれることになるの!・・・いつも、いつも問題児やら使い物にならないやら言うけど、結局そっちでどうしようもならないから呼ばれてるんじゃん!」
「チッ・・・変なとこまで似やがって、」
「楠木さん!たきなをDAに戻してあげて下さいよ!」
「・・・もう後任が来てるんだよ。」
早急にフキと話を終わらせた千束は外に出ていった楠木へ呼びかけるがそこには既に誰もおらず、その声だけが廊下に響いていた。
「・・・楠木さん、ご苦労さまです。」
「お前か、千束に入れ知恵するなら他の仕事をしろ。」
「俺はただ事実を言っただけですよ?仕事の件もしっかりとしてますし・・・それにあれはそっちのミスでしょう?」
楠木が廊下を歩いていると背後から声をかけられる。
その声に聞き覚えのあった彼女は眉間に皺を寄せながら振り返るとそこには駿の姿があった。
「アレはお前じゃないだろうな。」
「あの時現場にいたんですから出来るわけないでしょう。・・・それにする気あるなら出来ることを教えてませんよ。」
「だろうな、お前がそんな単純なミスを犯すはずがないだろう。」
「わかってるなら聞かないで下さいよ。・・・そうだこれ、」
彼女の八つ当たりじみた言動に彼はため息をつきながら答えるとふと思い出したからようにポケットからUSBを取り出し彼女へ渡す。
「頼まれていた事件当日の周辺5時間前後の車のGPSのログです。」
「・・・そうか、」
「・・・抜けがありましたよ。その動きも記録しましたのでどうぞご活用下さい。」
「・・・ご苦労だった。」
彼は彼女がUSBを受け取ったことを確認すると肩の力を抜く。
それからしばらく無言が続くと先程までの軽い雰囲気とは打って変わり真剣な眼差しを彼女へと向けた。
「仕事もちゃんと終わらせましたし一言・・・ラジアータを過信しすぎない方がいいですよ。」
「・・・。」
「・・・ラジアータが完成して既に10年以上経ちます。確かに現在まで世界最高峰のAIではありますけど上位勢には既に丸裸にされてますよ?」
「・・・。」
「もうそろそろAIの防衛パターンにアップデート入れないとまた今回みたいなことになります。」
「だが、現在までそのような報告は無い。」
「そうですか・・・。上位勢はやる気がないだけでいつ襲ってくるか分からない、それだけは覚えておいて下さい。これは嫌味でもなんでもありません、DAを案じて言ってるんです。ここには大きな恩がありますから、」
「・・・覚えておこう。」
「・・・それで結構です。」
素っ気ない態度で答える楠木、それを見た彼は満足そうな表情を見せると彼女を置いて足早に廊下を進んで行く。
そして彼女から彼の姿が見えなくなる寸前、
「・・・ありがとうございます。」
「・・・なんのことだ?」
「わかってるでしょう?」
「・・・さっさと行け。」
「それでは失礼します。」
彼は1度振り返りそう伝えると今度こそ廊下の奥に消えて行く。
「・・・クソガキが、」
それを見送った楠木は彼から渡されたUSBへ視線を落とすと小さく笑い、来た道を引き返して行った。