「・・・。」
逃げ出すように部屋を出ていった たきなは1人佇んでいた。
そこは吹き抜けになっておりガラス張りの天井から天候が悪く少し暗くなっているがそれでも優しい光が降り注いでいる。彼女の視線の先には大型の噴水がありただそれを無言のまま見つめている。
「ここだと思った。」
「・・・。」
「リコリスはみんな好きだもんね〜。ここ、」
フキの言葉により何も考えられなくなっていた彼女が噴水を眺めていると後ろから声が聞こえる。振り返るとそこには千束の姿があった。
「・・・この寮で暮らすことはDAに拾われた私達みんなの憧れ、この制服に袖を通した時も・・・。」
「・・・嬉しかったよね。」
たきなの言葉に千束が続くとたきなは驚きの表情を見せながら彼女を見つめる。それを見た千束は微笑みながら彼女へと歩き寄った。
「そんな意外そうな顔しないで、私だってそうだよ。」
「・・・なら、千束さんにはわかるでしょう。ここが目標だった、それを私は奪われた!」
「・・・。」
「どうしてこんな・・・。」
千束の自身のことを制定する言葉にたきなは今まで溜め込んでいたものを吐き出すかのように叫ぶ。
「たきなを必要としている人が街にはたくさんいるよ。ここじゃなくなって、」
「貴方はDAに必要とされてるからいいですよね!私には・・・私の居場所はもうここにはない。」
それを聞いた千束がたきなに語り掛けると、彼女は怒りの形相で千束に声を荒らげる。
普段自由にしているのにここぞという時はDAに頼られる千束に怒りの声を投げつけるたきなだが、その声は徐々に小さくなっていき最後には消え入るようなか細いものになっていた。その声・・・その思いの根本には怒りとは全く別の感情が感じ取れる。
「・・・ごめんなさい。」
「たきな・・・。」
「わかってます。全部自分のs、」
「全然わかってないよ!」
「ッ!?」
謝罪の言葉を述べると俯き身体ごと視線を逸らすたきな、千束は心配そう声をかけながらに彼女へと手を伸ばすが、次に彼女の口から出た一言でその雰囲気は一変する。
千束は声を荒らげながらたきなの肩を掴み顔を向けさせると両肩を抑えて険しい表情で顔を近づける。
「どうせ自分のせいとか言いたいんだろうけど、それじゃぁ、たきなはあの子が死んでも良かったっていうの!」
「そ、それは・・・。」
「目的のためなら仲間の命すら捨て石にするんだとしたらたきなは犯罪者達と同じだよ?」
「いいえ、ちg、」
「違わないね!確かにリコリスは死と隣り合わせの存在だけどそれは仲間を見捨てていい免罪符なんかじゃない!!」
「・・・。」
「自分の近くにいる人すら救えないで知らない人を・・・社会を救えると本当に思ってるの?」
「・・・。」
「もし思ってるならリコリスなんてやめた方がいい。」
「・・・なら、どうすれば良かったんですか、」
たきなの心を抉るように放たれる千束の言葉、言葉が紡がれる度に崩れ出す彼女は声を濡らしながら千束へと問いかける。
どこで間違ってしまったのか?
どう行動すれば良かったのか?
何を間違えてしまったのか?
そして、
・・・どうすればこの苦しみから開放されるのか?
彼女の心の底から発せられたその言葉に千束は微笑みながら彼女の横へと立つ。
「あの時たきなは仲間を救いたかった。それは命令じゃない・・・でしょう?」
「はい、命令はきていませんでした。」
「なら自分で決めたってことでしょう?」
「そうなんですかね?・・・私にはよく分かりません。気づいたら機銃を持っていて、」
「それはね、たきな・・・自分の本当の思いなんだよ。」
「・・・思い、ですか?」
「そう!仲間を助けたい・・・その思いが強かったから無意識に身体が動いたの、それってすごいことなんだよ!」
「・・・なぜです?」
「だってそうじゃない?それは命令じゃなくて自分の心に従った行動なんだから、つまりたきなは心の底から仲間が大切で守りたいと思えるとっても優しい子だってことなんだから!」
「・・・優しい、」
千束の言葉にたきなは自身の両手を見ながら不思議そうに首を傾げる。
「よく覚えておいて、他人に優しくなれる人は強い。どんなに辛いことがあっても戦い続けられる人だってこと。」
「そうですかね。」
「・・・それにたきなの境遇とは関係ないよ。」
「ッ!!」
優しい声色で紡がれる言葉それはたきなの
その不思議な感覚に戸惑いながらも余韻に浸るたきな、しかしその感覚も次に紡がれた言葉により消えてしまう。
「あの日、通信障害があったって本当?」
「ええ、数分ですが技術的トラブルだと・・・。」
「・・・ハッキングだよ。」
「ラジアータが!?」
たきなは驚愕した。・・・ラジアータ、それはDAが誇る世界最高峰のAIの1つであり稼働してから1度も崩れたことの無い難攻不落の要塞でもある。
それがハッキングされたということはDAの全てが筒抜けになってしまうということなのだ。
「それ、DAの気密性を担ってる最強AIだよ?全てのインフラの優先権を持ってるのに通信障害なんてありえない。」
「ハッキング・・・それで取引時間が。」
「でも、そんなことは報告出来ないからリコリスの暴走ってことにしてたきなをって!えっ、どどど、どこ行くの!?」
千束の言葉を聞いたたきなは走り出す。
それ見た千束は慌てて止めると彼女は勢いよく振り返った。その目は先程とは違い真っ直ぐとした目をしている。
「理不尽です。司令に話して!」
「ちょい!ちょちょちょい!しら切られるだけだってば!」
「ならどうすれば!」
再び走り出そうとするたきなの腕を掴むと引き寄せて、そっと抱きしめる千束、いきなりのことに身体を硬直させながら戸惑うたきなへと彼女は優しい声で語りかけた。
「・・・たきな、今は次に進む時、」
「・・・。」
「失うことで得られるものもあるって、」
「・・・。」
「たきながあの時ああしなかったら私達出会えなかったんだよ?」
千束の言葉に惚けた表情するたきな、彼女が身を任せ身体の力を抜こうすると背後から喋り声が聞こえた。
一瞬にして意識を引き戻された たきなは声を方に視線を向けるとそこには2人を見て笑う少女達の姿があった。
「私は君と嬉しい!」
「ちょっと!」
「嬉しい!嬉しい!」
少女達にジト目を向ける千束、彼女はなにか思いついたのか笑いながらたきなを抱き上げた見せつけるようにその場を回り始める。
「誰かの期待に応えるために悲しくなるなんてつまらないって!居場所はある、お店のみんなとの時間を試してみない?それでもここが良ければ戻って来たらいい、遅くない・・・まだ途中だよ。チャンスは必ず来る。その時にしたいことを選べばいい。」
「・・・したいこと?」
「そう!私はやりたいこと最・優・先!・・・まあ、それで失敗も多いんだけど。」
「・・・確かにそうですね。よく怒られてますし、」
「ちょいちょい、今はそれ言っちゃダメ!・・・とにかく1度考えてみなよ、本当にやりたいことはなにかなって?」
「・・・。」
「まあ、今はたきなに酷いこと言ったアイツらをぶちのめしたいのでちょっと行ってきますよ。」
「・・・。」
『01,00より状況演習を開始、リコリス各員は当該時間までに・・・、』
そういうと笑いながら歩いていく千束、その後ろ姿を見つめるたきなの耳に模擬戦のアナウンスが届いた。