リコリス・リコイル 比翼の花弁   作:0IN

2 / 24
Welcome to the new world

「・・・転属ですか?」

 

「今日からリコリスが1人こちらに配属されることになった。」

 

 

ビルでの事件から数日、彼はとある喫茶店にいた。

カウンターに座る彼にコーヒーを出しながら話をする褐色の男性の言葉に聞き返すと、彼は困った表情をしながらそう述べた。

 

 

「・・・しっぽ切りですか?」

 

「ああ、先日の機銃掃射の件でな。」

 

「千束にこの話は、」

 

「もうしてある、」

 

「・・・完璧に忘れてますねアイツ、」

 

「・・・否定は出来ん、」

 

「・・・それは置いといて、まあ、いいんじゃないですか?左遷にはもってこいですからねここは、なんせ問題児の集まりですから、」

 

「その筆頭の片割れが君だがな。」

 

「それは自覚してますよ?・・・千束と2人でDA引っ掻き回しましたからね、」

 

「あの時はこちらもヒヤヒヤしたんだぞ?」

 

「でもそれがあったから今があるんですしいいじゃないですか、」

 

 

困ったような表情をしながらも笑っている2人は何かを思い出したのか空を見上げる。

 

 

「さて、話は終わりだ店を開けるぞ。」

 

「了解です、先生」

 

 

飲み終えたカップを男性に渡すと彼は店の奥へと入っていった。

 

 

 

 

「あ〜あ、どこかにいい男落ちてないかしら、あんたもそう思うでしょう?」

 

 

昼過ぎ店のカウンターで1人の女性が酒瓶を煽っており、その奥から彼は清掃をするのだろうか、箒を持ちながら通り彼女の横を過ぎようとすると、声をかけられたため振り返り呆れた表情を向ける。

 

 

「ミズキさん昼間っから何言ってるんですか、・・・仕事中くらい酒やめてくださいよ、店の評判に関わるんですから。・・・あと興味ありません。」

 

「いいのよ、どうせここは客少ないんだから、そんな事よりあんたいい男知らない?」

 

「知ってるわけないでしょう、俺の交友関係7割が女性で3割がおっさんですよ。同年代の男に知り合いなんていませんし、・・・いい男と言うなら先生くらいですかね。」

 

「結局おっさんでしょうが、」

 

「でも、いい男だと思いますよ、渋くて落ち着いてて、出来る男って感じですし、」

 

「なに〜、もしかしてそっち系なの〜?」

 

「叩き切るぞ、呑んだくれ!!」

 

「ちょっ待っ!?」

 

 

彼が手を上げると彼女は酒瓶を頭上にあげて盾がわりに様子を伺う。

それを見た彼はため息を吐きながら手を下ろすと店内の清掃に戻る。

 

 

「確かにかっこいいとは思いますけど・・・憧れですよ。」

 

「私には分からないわね。・・・でも知り合いの大半が女性って普通の男子からすれば気狂い案件じゃないかしら?」

 

「そもそも自慢する相手もいませんし、知り合いの女性の大半が・・・ね?」

 

「そうなるか〜、」

 

 

遠い目をする彼に、いたたまれなくなったのか彼女は目を逸らすと、入口のドアから少女が中を覗いていた。

少女はこちらに気づくと店内に入り2人の前までやってくる。

 

 

「いらっしゃいませ・・・て感じじゃなさそうだな。」

 

「本日付けで配属となりました井ノ上(いのうえ) たきなです。」

 

 

長く艶やかな黒髪をした少女、たきな は自己紹介をするとまっすぐにカウンターに近づきそこに座る彼女に目を向ける。

そしてこちらの音に気づいたのか厨房から彼が先生と呼ぶ男性が出てくると少女を見て軽く微笑んだ。

 

 

「来たか たきな。」

 

「・・・あぁ、DAクビになったていうリコリスか、」

 

「クビじゃないです。・・・貴方から学べとの命令です、千束さん。」

 

「・・・?」

 

「この人は千束じゃないぞ。」

 

「そうなのですか?」

 

「ここに座ってる呑んだくれは中原(なかはら) ミズキさん、元DAの情報部だった人で、こちらの褐色男性はミカさん、こちらも元DAの訓練教官だ。」

 

「誰が呑んだくれよ。」

 

「あんただよ。」

 

「元情報部に元訓練教官・・・ですか、どうしてこちらに?」

 

 

元という単語に疑問を覚えたたきなが首を傾げると、ミズキが嫌そうな顔をしながら口を開いた。

 

 

「嫌気が差したのよ。孤児を集めてあんた達リコリスに殺しをさせるキモイ組織に、」

 

「その点は激しく同意、でもあんたはそれよりも出会い求めてでしょうが、」

 

「あの職場、出会いなんてこれっぽっちもないのよ!」

 

「・・・知らん!もう面倒臭いから寝てろや!」

 

「ッ!?!?」

 

 

先程から執拗く絡んでくるミズキに苛立ちを覚えた彼は、酒瓶を奪い彼女の口に突っ込むことで強制的に黙らせた。

 

 

「・・・まぁ、いつもの事だ、気にしないでくれ。」

 

「はい、・・・それで千束さんはどちらに?」

 

「アイツなら今外に出てるけど、もうそろそろ帰ってくるんじゃないかな?・・・おっと、自己紹介がまだだった俺の名前は羽東(はとう) 駿(しゅん)、役柄は一応リコリスのサポートだな。普段はここ喫茶店《リコリコ》の従業員をしてる。」

 

「司令から聞いています。・・・問題はあるが優秀な方だと、」

 

「・・・あの人まだ根に持ってるな。確かにDAの問題児なのは自覚してるが道徳的にはまともだから安心してくれ、・・・っと、帰ってきたな。」

 

 

各々が軽く自己紹介をしていると、店の入口から元気な声が響いて来たためそちらに目を向けると、店の中に2つの大きなビニール袋を持った千束が入ってきた。

 

 

「先生〜、大変!食べモグの口コミでこの店のホールスタッフが可愛いって!!これ私のことだよね!」

 

「私のことだよ!」

 

「「冗談は顔だけにしろよ、酔っ払い(寝言は寝て言え、呑んだくれ)」」

 

 

千束の言葉に文句を言うミズキに2人が辛辣な言葉を投げ掛けると項垂れる。それを気にする様子のない彼女は たきな に気づくと彼女へと近寄る。

 

 

「あらリコリス、・・・てかどうしたのその顔?」

 

「やっぱり忘れてるよ・・・。」

 

「例のリコリスだ。・・・話したろ、千束。」

 

「えっ!!」

「!?」

 

「今日から相棒だ。仲良くしろ、」

 

「この子が!」

 

 

ミカの言葉に千束は目を輝かせると、たきな の手を握り詰め寄った。

 

 

「よろしく相棒!千束で〜す!!」

 

「い、井ノ上 たきな です。よろs、」

 

「たきな! 初めましてよね!!」

 

「は、はい、去年京都から転属になったばかりなのd、」

 

「おぉお〜!!転属組!!優秀なのね、歳は?」

 

「16です。」

 

「私が1つお姉ちゃんか〜。でもさんはいらないからね。ち・さ・とでおっけ〜!!」

 

「は、はぁ・・・。」

 

「こら千束、彼女が困ってるだろう。もう少し大人しくしろ。」

 

 

先日の機銃掃射のごとく言葉の弾幕に たきな が困惑していると駿は千束を宥めるが、彼女のテンションは下がることを知らず たきな の周りを跳ね回りながら彼へと反応した。

 

 

「だって相棒だよ。相棒!!初めてなんだもん、嬉しいじゃん!!」

 

「なんだ。・・・俺はお前のこと相棒だと思ってたのに、お前はそう思ってなかったのか・・・、悲しいな、」

 

「ちょいちょい!?・・・え、えっと、駿は相棒だけど相棒じゃなくてもっと別な・・・えっと!?」

 

「あはは!・・・冗談だよ。」

 

 

悲しそうな表情を見せる駿に、千束がオロオロし始めると彼は表情を一転、大笑いしながら彼女を揶揄う。

 

 

「ちょっと!ビックリさせないでよ!!」

 

「弾幕トークするお前が悪い、」

 

「な〜にを〜!!そっちだって熱入るとするじゃん!」

 

「こっちはちゃんとTPOわきまえてるんだよ。無差別にばらまくお前と一緒にするな!!」

 

「私が無差別テロリストとでも申すか!」

 

「そうだろうが、いつもいつも気になり次第即凸りやがって、こっちの苦労も考えろ!」

 

 

売り言葉に買い言葉でお互いにヒートアップする2人、ついには取っ組み合いにまで発展してしまったそれにミカは呆れた表情を見せながら たきな をカウンターへと促しコーヒーを出した。

 

 

「ああなったらしばらく終わらない、これでも飲んで休んでてくれ、」

 

「は、はあ・・・。」

 

 

たきな が状況を飲み込めずただ頷く中、その背後で床を転がりながらじゃれ合う2人を見てミカは優しく微笑んだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。