リコリス・リコイル 比翼の花弁   作:0IN

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Let's Run away With our Hearts

「・・・なんだよ。」

 

「・・・プッ!」

 

 

たきなと別れ模擬戦室に着いた千束は目の前の人物から目を逸らしていた。

彼女目の前にいるのはフキであり、普段と変わらず赤い制服を来ているのだがそれは普段のものとは違った。

 

 

「イメチェンしたの?」

 

「・・・そう見えるならてめぇの目は腐ってるぞ。」

 

 

フキの制服が赤いことは変わらない、しかし赤すぎるのだ。スカートやバック、ボタンまで全てが赤く染っており布自体が少し湿った印象を受ける。

それを見た千束は必死に笑いを堪えようとするが耐えきれず笑ってしまったためフキは怒りの形相で彼女に詰め寄った。

 

 

「駿はやっぱりいい仕事するねぇ〜。」

 

「これのどこがいい仕事だ。」

 

「遠目だと分かりずらくかと言って近くだと分かりやすい他人には悟られずにいじるには最適だと思うんだけど?」

 

「・・・こいつ、」

 

 

掴みかかろうとするフキだが千束はそれを簡単に避けると揶揄うように彼女の周りを回り始めた。

その行動を見て肩を震わせるフキ、そんなやり取りをしている2人の横でサクラは何かを探すように辺りを見渡していた。

 

 

「あれ〜?これで全員でしたっけ?・・・誰か足りないような。」

 

「作戦だ作戦!エースの体力は温存しといてんの!」

 

「あいつは任務以外で戦えるようなやつじゃない。」

 

「人を見る目がないねぇ〜。よくそんなのでファーストやってんね?」

 

「お前こそその制服は飾りか?ゴムしか撃てねぇ腰抜け。」

 

 

サクラの一言に千束は自信ありげに返すと聞いていたフキが鼻で笑い挑発の言葉をかける。それを聞いた千束が挑発し返すと2人はお互いを睨みながら顔を近づける。

 

 

「なんだとてめぇ?どこ中だこらぁ!」

 

「ぁあ?頭ん中ゴムになったのか?電波塔の麓で茶でも入れてろや!」

 

「なんだとこらぁ!」

 

「ぁあ!」

 

「あんたら・・・仲良いっすね!」

 

 

徐々にヒートアップしていく2人、それを見たサクラは楽しそうに呟くと2人は途端に静かになり同時にサクラへと視線を向ける。

 

 

「・・・サクラ、お前も頭ん中にゴム詰まってんじゃねぇのか?」

 

「ちょ〜と何言ってるのか分からないんだけど?耳大丈夫?」

 

「・・・あれ?なんで私責められてんすかね?」

 

「・・・あれ見て仲良いとか言える奴がまともなわけねぇだろ。」

 

「えっと・・・いい耳鼻科紹介しようか?」

 

「酷くないっすか!?」

 

 

辛辣な言葉を受けるサクラ、彼女が半泣き状態になっていると千束は首を傾げながら彼女へと近寄る。

 

 

「・・・君、なんかさっきと違くない?」

 

「そうっすか?・・・私は私ですけど?」

 

「いや、さっきまでいや〜な奴感バリバリだったのにいきなりフレンドリーって言うかなんて言うか?」

 

「・・・おめぇと同じに考えてすぐ行動に移すんだよ。」

 

「だからか〜。よろしくねサクラ!」

 

「よろしくお願いするっす!千束さん!」

 

「いきなり素直になって〜。このこの〜!」

 

「・・・なんで意気投合してんだお前らは、」

 

 

唐突に意気投合する千束とサクラ、それを呆れた表情で見るフキはため息を吐きながら銃を取り出し最終確認を始めた。

 

 

『では始めるぞ、いいんだな?』

 

「おっと、始まるみたいだ。またあとでねぇ〜!」

 

「こっちも負けないっすからね!」

 

 

アナウンスとともに両サイドに別れる3人、彼女達が配置に着いた瞬間、

 

 

『双方、実戦だと思って臨むように・・・始め!』

 

開始の合図が出された。

 

 

 

 

「・・・したいこと。」

 

「やっぱりここにいたか・・・。」

 

 

アナウンスの流れる中、たきなは俯きながら噴水近くのベンチに座っていた。

その表情は色々な感情が入り交じっており、その様々な感情を抑えることが出来ず困惑していることが見て取れる。

1人思考にふけるたきなは自身以外の声に気づいて顔を上げるとそこにはこちらに向かって手を振る駿の姿があった。

 

 

「リコリスって本当好きだよなここ。」

 

「千束さんもそう言ってました。」

 

「・・・悩んでるみたいだけど千束になんか言われたか?」

 

「犯人は千束さんで確定なんですね。」

 

「そりゃ、当たり前だろ。・・・アイツがこう言う時に首突っ込まないと思うか?」

 

「・・・思いません。」

 

 

彼はたきなの座るベンチのすぐ隣のベンチに座ると1度背伸びをして彼女へと視線を向ける。

 

 

「・・・したいことは何かと聞かれました。」

 

「ま〜た、難題を押し付けたもんだな。・・・アイツはやりたいこと最優先だからいいが普通簡単に思いつくことじゃないから。」

 

「羽東さんにはあるんですか?」

 

「ある、」

 

 

たきなから悩みを聞く彼は軽く笑う。そんな彼を見て1つの疑問を投げかけると彼は迷うことなく返してきた。

 

 

「差し支えなければ教えて貰えませんか?」

 

「そうだな・・・一言で言うなら、アイツ・・・千束の隣を歩くことだな。」

 

「隣を歩く・・・ですか?」

 

「そう・・・アイツは普段あんな感じだが、本当は色々と抱えてるんだ。だけど他人には弱った自分を見せないんだよ。」

 

「・・・。」

 

 

たきなが駿の曖昧な言葉に首を傾げていると彼は天井を見上げながら言葉を紡いでいく。それは普段の千束からは考えられない彼女の側面であり、同時にたきなはそれを別の何かに当てはめ始める。

 

 

「人助けをするのにその人に弱った姿を見せちゃ行けないとでも考えてるんだろうな。・・・だけどそんなんじゃいつか心に限界がくる。」

 

「心の限界・・・。」

 

「きついなんてもんじゃないぞ、無理し続けるんだからな。・・・あっ、言っとくがたまにとるおかしな行動はただの素だからそこは勘違いしないように、」

 

「それはなんとなくわかっているので大丈夫です。」

 

「・・・まぁ、そういうわけだから無理し続けるアイツ(皆の錦木 千束)リコリコで暮らす千束(少女としての錦木 千束)でいられるようにしてやりたいんだ。」

 

「だから隣を歩くと?」

 

「だってそうだろ?助ける対象じゃアイツは無理をする。なら助けられるんじゃなくて助ける・・・いいや、助け合う関係じゃないとダメだからな。」

 

「千束さんのことが大切なんですね。」

 

「そりゃ、兄妹みたいに育ったからな。それに俺も千束に助けられた人間だから・・・ってのもあるか、」

 

「助けられたですか?」

 

「おっと、流石にこの先は言えないぞ?なんせ先生にも教えてないからな。・・・ただまぁ、話がそれたが俺が言えることは一つだけ、」

 

「・・・。」

 

「自分を偽るな。」

 

「ッ!?」

 

 

彼の一言、それは彼女の心に凄まじい衝撃を与えた。

まるで開けることの出来ない扉を壊されたような、

自信を縛る鎖を引きちぎられたような、

どうしてかそう感じるのか彼女には分からないが一つだけわかったことがある。

 

それは、井ノ上 たきな(存在の証明を求める少女)が求めていた答えであること。

 

 

「自分の思いに素直になれ、誰に言われたからじゃなく、命令を聞くだけの人形じゃなく、心のままに動く人になれ、自分自信の抑え込むな。・・・多分それが井ノ上 たきな(1人の誰か)になるためにすべきことだから、」

 

「・・・井ノ上 たきなになる。」

 

 

リコリスとして育てられた彼女には彼の言葉が矛盾に感じた。彼女達リコリスは命令のままに対象を抹消する存在であり、命令に従うことこそが自身の証明となる。

なのに彼はリコリスとしてのたきな(命令に従う人形)を否定しろと言うのだ。

そんなことを教えられてこなかった彼女の頭はその考えを拒絶しようとするが何故か拒絶することができない。

それどころか、

 

『そう!仲間を助けたい・・・その思いが強かったから無意識に身体が動いたの、それってすごいことなんだよ!』

『たきなは心の底から仲間が大切で守りたいと思えるとっても優しい子だってことなんだから!』

 

(・・・あっ、)

 

 

先程千束に言われた言葉が次々と彼女の脳内を駆け巡る。

そして彼女は気づいた、千束が自分に何を伝えたかったのかを、

 

『よく覚えておいて、他人に優しくなれる人は強い。どんなに辛いことがあっても戦い続けられる人だってこと。』

 

たきなはずっと疑問に思っていた。なんで千束があんなにも強いのかと、確かに技術や身体能力もその要因の1つだろうが彼女の本当の強さはそれではなかった。

他人に優しくなれる人が強い・・・それは技術でも力でも知能でもない。

ただ怖いという思いを乗り越え1歩踏み出して行けるからこそが千束の強さなのだ。

 

助けたいという思いを胸に、何事にも臆することなく進んで行けるから、

 

 

「・・・そういうことですか、」

 

 

やりたいこと最優先・・・それはどこまでも自分勝手であり他者のことを考えない行為だが、逆に捉えるとどんな状況だろうと自分の意志を曲げないということになる。

 

彼女にはその生き方が眩しすぎたのだ、だから目を背け考えようともしなかった。

 

 

「羽東さんありがとうございました。・・・行ってきます。」

 

「ああ、行ってきな。」

 

 

だがわかってしまえばもう迷うことは無い。

なぜなら答えは既に彼女(千束)が示しているから、

 

そう思た時には彼女は既に勢いよく立ち上がると駆け出していた。

それを理解した彼女は無意識に動いた身体()のままに動き続ける。

 

きっとそれが彼女の求める答えなのだから、

 

 

「・・・頑張れよ。」

 

 

彼女を見送った駿はポケットから飴を取り出すと口に入れ、立ち上がるとゆっくり歩き出た。

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