「ほれほれ、千束ちゃんはここでっすよ〜!」
「なんすかアイツ、めっちゃイラつくんすけど!」
「落ち着け、どうせ闇雲に撃っても当たらない。・・・慎重に行くぞ、」
たきなが走り出した頃千束達は廊下を挟んで睨み合っていた。
廊下の影から奥を確認するフキは2丁の拳銃を持ちこちらに手を振る千束に舌打ちをしながら横で興奮しているサクラを宥める。
「一応これを持っとけ、」
「ありがとうございます。・・・でも先輩は?」
「・・・予備がある。」
フキは彼女が1度落ち着いたことを確認すると自身の銃を渡しバックからもう一丁の拳銃を取り出した。
「チッ・・・余裕かましやがって、」
「こっちから攻めませんか?」
「ダメだ!ただの罠だぞ、」
「ここから撃てばいいじゃないっすか、射撃には自信あるっす!」
「だから余計にダメなんだよ!・・・よく覚えとけ、アイツはs、」
「忘れ物ですよ〜!」
千束から目を離し会話を続ける2人、自信満々に廊下へと出ようとするサクラを止めていると一丁の拳銃が床を滑ってきた。
「それ私の!?・・・クソ!」
「馬鹿!戻れ!」
あからさまな挑発とともに返された愛銃を見て怒りがピークに達したサクラはフキの静止を聞かずに前に出る。
すぐに引き戻そうとするフキだが彼女は既に千束に銃を構えており数発の銃声が鳴り響いていた。
「威勢がいいねぇ〜、」
千束へと襲いかかる弾丸、彼女はそれを呑気に見ていると少し首を傾げ左手を腰に置いた。
すると弾丸は彼女の髪や脇の間を縫うように通り抜けてしまい後ろの壁に緑色のシミを作る結果だけが残る。
怒りから残弾を考えず連射してしまったため引き金を引いても乾いた音が鳴るだけで弾が出なくなってしまった銃、それに気づいたサクラが慌ててリロードしようとした時、彼女の目の前には既に千束の姿があり彼女の手を掴んでいた。
「・・・あっ!」
「ほいさ〜!」
掴まれた腕を引かれ前のめりにバランスを崩したサクラ、そんな彼女に千束の蹴りが襲いかかる。
蹴りを確認し慌てて対応したサクラだが動くのが一瞬遅く腹部を蹴られてしまう。
蹴りの痛みから銃を落としよろけてしまうサクラ、そんな彼女に千束はスライディングの要領で角にいるだろうフキへと牽制射撃を行いながら接近、体勢を整え始めていたサクラの手を引くと足をかけて転ばせる。
「まず1人・・・ッ!!」
「・・・なんで?」
「・・・やっぱりダメか、」
千束が背中を床に強く打ち付けられ硬直したサクラに銃向けようとした瞬間、彼女はバックステップで後ろに飛んだ。
なぜ撃たないのか不思議そうにするサクラ、そんな彼女の目の前、ちょうど千束がいた場所を数発の銃弾が銃声とともに通り過ぎる。
彼女は慌てて音のした方を向くとそこには腹這いの状態から起き上がろうとしているフキがおり彼女は千束へと銃口を向けながら彼女が銃を構えようとしたタイミングに撃つことで、牽制しサクラと床に落ちていた彼女の銃を掴むと物陰へと引っ張り込む。
「・・・大丈夫か?」
「はい、・・・すいません私が不甲斐ないばかりに、」
「気にするな、初めて千束とやる奴は大体こうなる。」
「なんなんすかあれ?」
「羽東のやろうの同類だ。」
「あの人とってことは化け物じゃないっすか!?」
「・・・化け物?」
物陰から様子を見ながらサクラの疑問に答えていくフキ、彼女の一言を聞き驚きの声をサクラがあげるとそれを聞いた千束が反応する。
「化け物ねぇ〜。駿が化け物か〜。確かにそうかもね・・・。」
「マズっ!」
「・・・ならもう1人の化け物も味わってみる?」
千束のいきなりの変化に困惑するサクラの横で焦りの色を見せるフキ、そんな2人を横目に千束は銃を両手でしっかり抑えると目を瞑り左手の人差し指で右手の甲を軽く叩き始めた。そのリズムは初めはゆっくりとしていたがその速度は叩く度一定間隔で早くなる。
それを見たフキとサクラが彼女へと銃撃をしたその瞬間、千束の姿が2人の前から消えた。
「消えた!?」
「・・・ッ!後ろだ!!」
消えた千束を探して周囲を見渡すサクラだが彼女を見つけることが出来ずフキへ声を掛けようとした時、フキは叫びながら転がるようにその場を離れる。
「ヒッ!」
「・・・。」
フキの言葉にサクラは慌てて後ろを振り向くとそこには銃口を彼女の背中に密着するように構える千束の姿があった。
先程までの天真爛漫な姿が嘘かのように無表情のまま構える千束、その目は薄らと赤く光っておりそれを見たサクラは短い悲鳴をあげる。
「サクラ!クッソ模擬戦なんかでそれを使うな!」
「・・・。」
サクラから彼女を引き剥がすために銃口を向けるフキだが既に遅く数発の銃声とともに背部を青く染めるサクラ、それを見たフキが舌打ちをしながら文句を言うが千束は無言のまま彼女へと詰め寄る。
姿を消しては現れを繰り返し徐々に距離を詰めていく千束、そんな彼女に抵抗するように発砲するフキだが当たることはなく壁を染めるだけで終わってしまう。
撃ち続けたため弾切れになってしまったのかフキがマガジンを抜きカバンから換えを取り出すと千束は彼女の背後に姿を表した。
千束は先程サクラにしたように銃を構える、そして引き金を引こうとしたその瞬間、彼女の眉間に銃口が向けられていた。
「・・・!!」
突然の状況に千束は驚きながらフキ状態を確認する。
彼女はマガジンを左手に持ちながら右足を胸付近まであげていた。
その姿から弾を残したマガジンを途中まで抜き足で無理矢理押し込んだのだろうと想像する千束、彼女の驚く表情を見て口角の上がるフキだったが、
「ざ〜んねん!!」
「!?」
「うぉおおお!」
いつもの表情に戻った千束によって崩れ去る。
千束が倒れるように弾を躱しすと、そこにはこちらへと拳を振り上げながら走ってくるたきなの姿があったのだ。
いないはずのない人物の乱入に動揺を隠せないフキの頬にたきなの拳が突き刺さる。
それにより体勢を崩したフキだが崩れた体勢のまま同じく体勢を立て直そうとしているたきなへと銃口を向け正確に彼女の眉間へと射撃を行った。
その銃弾は吸い込まれるようにたきなの眉間目掛けて進んでくるが彼女は僅かに首をそらすだけで躱してしまう。
「なに!?」
「・・・!?」
「・・・だから言ったでしょう?」
躱した本人すら動揺する状況で目を見開くフキ、そんな彼女に千束は声をかけた。
その声に無意識に振り向いてしまうフキ、その目には大の字で寝転ぶ千束の姿があり彼女は笑みを浮かべている。
「見る目がないねって。」
彼女の言葉同時にフキの身体は青く染まる。
それはこの模擬戦の終わりを告げる合図となった。