「たきな、おつかれ〜!」
「・・・、」
模擬戦終了の合図とともに起き上がった千束はたきなへ労いの言葉をかける。
しかしたきなから反応がないため不思議に思い彼女へと視線を向けると、そこには銃を構えたまま固まるたきなの姿があった。
「・・・お〜い!たきなさ〜ん?」
「・・・、」
「反応がない・・・。」
千束は彼女へと歩み寄ると目の前で手を振るがやはり反応を示さない。
この状況にどうすればいいか考える千束、頭を悩ませながらたきなの周りを回り続ける彼女は何かを閃いたのかたきなの背後に回ると彼女の脇へと手を伸ばし、
「それ〜、こちょこちょ!!」
「・・・!?!?ちょっなんでs、キャハハハ!?」
彼女の脇をくすぐり出した。
初めは反応を示さなかった たきなだが次第に固まっていた表情は崩れ気がついた瞬間に笑いだした。
それを見て面白くなったのか千束はくすぐり続け、状況が分からないたきなは身体をよじりどうにか逃れようとするが千束はそれを許さない。
「千束さクフやめ・・・てアハハハ!!」
「ここがええんか〜、」
「〜〜!?執拗いです!!」
「痛ッ!?!?」
たきなは千束に辞めるように頼もうとするが彼女は聞く耳を持たずくすぐり続ける。彼女の楽しそうな表に怒りを覚えた たきなは千束の脛を蹴る。
その痛みに蹲る千束と解放され息耐えたえで彼女を睨みつけるたきな、2人はお互いに落ち着くまで口を開くことなくしばらくの時間が過ぎた。
「脛蹴らなくても良くない?」
「止めないのが悪いんですよ。」
「だってたきなが無視するんだもん!」
「無視なんてしてませんよ。」
「じゃあなんで反応してくれないの?」
「・・・。」
「あっ!目を逸らした!・・・自覚あるんでしょう!」
「・・・そんなことよりも模擬戦の結果は?」
「話そらすな〜!!」
千束が頬をふくらませながら文句を言うと自覚があるのかたきなは顔を逸らしながら模擬戦の話を振る。
「いえ、本当に分からないんです。」
「・・・どういうこと?」
「千束を見つけたところまでは覚えているんですが・・・そこから記憶が曖昧で、」
「・・・マジで?」
「はい、」
模擬戦時のことを覚えていないというたきなに驚きの声を上げる千束、彼女は何か考える素振りをすると眉間を青く染めたフキを指さす。
「アレたきながやったんだよ。」
「私がですか?」
「そう!凄かったよ〜、フキの弾を避けてズドンッて!」
「避けた?・・・当たらなかったじゃないんですか?」
「避けてたよ?あの時のフキの顔見せたかったな〜。殴られた後だったから余計面白くて!」
「私が・・・それとやっぱり殴ってたんですね。」
「やっぱり?」
「誰かを殴ったような気がしたので・・・。」
千束の言葉に銃を持つ右手へと視線を向けるたきな、彼女は銃をカバンにしまうと右手を目の前に出すと閉じては開くを繰り返す。千束の言葉を上手く理解出来ないのか首を傾げながら同じ動作を繰り返し続けるたきなだが突如崩れ落ちるように座り込む。
それを見た千束は慌てて彼女を支えるとその背中を優しく摩った。
「大丈夫!?」
「・・・緊張が解けたのでしょうか?突然力が抜けて、」
「とにかく1度どこかで休もう?」
「・・・そうですね。」
たきなに肩を貸し立ち上がらせると千束は足早に模擬戦室を出ていく。そして廊下にあるベンチを見つけると彼女を座らせた。
「ありがとうございます。」
「いいって、私メガネとか返してくるからここに座ってて!」
千束はそういうと彼女のかけるメガネを取ると廊下の奥へと消えていった。
「なんだったんでしょうか?・・・ひゃっ!?」
「・・・おつかれさん、最後のあれは良かったぞ。」
「羽東さん、揶揄わないでください。」
「ごめん、ごめん、お詫びにこれどうぞ。」
千束の消えていった廊下を眺めるたきな、心ここに非ずと言うべき状態の彼女の首筋を冷たい何かが撫でる。
突然のことに悲鳴をあげた たきなが咄嗟に後ろを向くとそこには缶飲料を3本持った駿がおりそのうちの1本を自身へと近づけていたため彼が犯人だとわかる。イタズラだと分かり顔を赤くするたきな、そんな彼女に彼は頬を掻きながら謝ると缶を1本彼女に渡す。
「ありがとうございます。」
「・・・どうだ?」
「よく分かりません・・・何をしたのか自覚がなくて、」
「それでいいんだよ。・・・ゆっくり理解していけば、」
「そうですか・・・羽東さん、」
「どうした?」
駿の曖昧な問いに同じく曖昧に返すたきな、その答えを聞いた彼は天井を見上げると小さく笑った。
それを見た彼女は倣うように同じく天井を見る。
そこにはただ天井があるのみで変わったものは存在しない。なのに彼女にはそこに何かがあるように感じられた。
「・・・いつまでも他人行儀というのもなんなので駿さんと呼んでもいいですか?私のことはたきなでいいので、」
「いいけど。・・・本当に変わったな。」
「・・・そうですか?」
「だってリコリコに来た日なんて完全にこっちと関わろうとしなかったろう?それを考えると他人行儀って言葉が出る時点で変わったと思うぞ。」
「そうかも知れませんね。でもこのままじゃいけないと思ったので・・・私にもなんでか分からないんですどね。」
「まあ、細かい事はいいだろ。改めてよろしくな、たきな。」
「はい、よろしくお願いします、駿さん。」
お互いの顔を見て笑う2人、その後も千束を待ちながらたわいのない話を続けていると足音が聞こえ始める。
近づいてくるその音に千束かと思った2人が音の方へと視線を向けると、
「・・・なんだフキか、」
「喧嘩売ってんのか?」
「いいや、だけど売って欲しいなら売るぞ?」
「いらねぇよ。・・・後てめぇにようはねぇ。」
そこに居たのは先程模擬戦をしたフキだった。
彼女を見た瞬間に落胆する駿を睨みつけるフキ、それに挑発めいた返しをすると彼女はすぐに視線をはずしたきなへと向いた。
「お前、模擬戦なんだぞ。後ろから撃てば良かったんだ。」
「・・・。」
「それを突っ込んできて殴るなんて馬鹿げてる・・・。」
「・・・これでおあいこですね。」
フキの言葉に鼻にかけるような笑みを浮かべながら返すたきな、それを見たフキは彼女を強く睨みつけるがたきなは気にする素振りを見せない。
「チッ・・・やっぱりお前、使い物にならねぇリコリスだよ。命令違反に独断行動・・・二度と戻ってくんじゃねぇ。」
「・・・年一で体力測定あるから来ることになるぞ?」
「そういうことじゃねぇよ。てかわかってて言ってんだろ!!」
「たきな〜。迎えの車来たって〜!!」
「・・・千束が呼んでるし行くか、」
「そうですね。」
「無視してんじゃねぇぞ!おい、聞いてんのか!!」
フキを揶揄う駿は千束の声が聞こえるとたきなを連れてその場を後にした。後ろから何か叫び声が聞こえるがそれを無視して歩いていくと手を振る千束の姿があり、
「駿と一緒だったの?・・・てか2人して何飲んでんの、ずるい!」
「ただのコーヒーだよ。お前のもあるからこれ飲んで落ち着け。」
駿から缶コーヒーを受け取り飲み始める千束、その姿を見て彼がため息をつくとたきながそっと肩を叩いていた。
「・・・たきなさぁ、」
「・・・なんです?」
本部を後にした3人は帰りの電車に乗っていた。
車内には行きと違い晴れた空からは夕日が差し込んできておりその光に照らされながら千束はたきなに言葉を投げかけると彼女は窓の外を見ながら反応する。
「私に向かって殴りかかってきただろ?」
「・・・きっと避けると思いましたから、」
「流石の私でも見えてないときついんだけどなぁ〜。」
「なら日頃の恨みとでも思ってください。」
「恨み!?たきなに私ってなんかした!?」
「そりゃ〜ねぇ?」
「ええ、そうですね。」
「なんか2人とも仲良くなってない?」
「「
「気のせいじゃない!!」
千束から飴を受け取ったたきなは目線を変えずに答えると軽口を叩く彼女に辛辣な一言を投げる。
いきなりのことに驚く千束、それを見た2人はお互いの顔を見て頷き合う。
「とにかく、非常識な人だということですよ、千束は、」
「いきなり話変えないで!?」
「いや、非常識なのは事実だろ。」
「自制が出来るだけで駿さんも基本的に同じですからね。」
「・・・なん、だと!?」
「なんで駿は絶望してるの!てかたきな呼び方変わってない?」
「いつまでも他人行儀というのもなんなので、」
「千束はさんつけないのに俺にはつけるんだな。」
「駿さんは年上なので、」
「私も年上だよ!?1つだけど!」
千束の抗議の声に再び窓の外へと視線を向けるたきな、そんな2人のやり取りを見て駿が笑っているとたきなは飴を口に入れる。
「・・・千束は年上に見えないので、親しみやすいというか子供っぽいというか、」
「嬉しいようで嬉しくない!!・・・まあ、それは置いといて、スカッとしたなぁ〜!」
「ええ、とっても、」
いい笑顔と共に投げかけられた千束の言葉にたきなもいい笑顔を浮かべながら返す。
「・・・お二人さん、コレ見てみ?」
「ん?」
そんな2人にいつの間にかスマホを見ていた彼が画面を見せながら呼びかける。
そこには『ボドゲ大会、延長戦中!間に合いそうなら連絡PLZZZ!』というメッセージと共に盛り上がっている
「まだ間に合うみたいだぞ?」
「いいねぇ〜。たきな?」
「・・・わかりました。参加します。」
「よっしゃ!!駿、連絡しといて!!」
「あいよ!」
「あっ、そうだ2人ともこっち寄って!」
「ちょっ、引っ張るな誤字るだろ!」
「いきなり手を引くと危ないですよ。」
「今はそんなこと気にしない!はい、チーズ!」
無理矢理2人を引き寄せて写真を撮る千束、いきなりのことに2人は不満の声をあげるがその表情は晴れ晴れとした笑顔だった。