「・・・落ち着いたか?」
「はい・・・。」
「・・・すみません。」
先程まで取っ組み合いをしていた2人はミカの前で正座をしていた。
彼の呆れた声に申し訳なさそうな表情をする2人だがお互いの脇に肘で小突きあっているため、その姿から全く反省の色が見えない。
「そういえば、私は たきな と組むとして駿はどうするの?」
「そりゃ、フリーに決まってるだろ?好きにさせてもらうさ。」
「それは・・・楠木さんの胃が荒れますな〜。」
「2人ともそこまでだ。千束はまずしっかりと自己紹介をしなさい。」
「はーい!」
「俺は掃除に戻りますね。」
「ああ、頼んだぞ。」
これ以上何を言っても無駄だと理解した彼は大きなため息を吐くと厨房へと戻っていき、それを見た2人も各々の行動へと移っていった。
「改めて私は
「はい、よろしくお願いします。」
「この前のアレ凄かったね〜。その顔は名誉の負傷?」
改めて自己紹介をする千束は たきな の頬に湿布が貼ってあることに気づき聞くが、彼女は気まずそうに顔を横へと逸らした。
「・・・い、いえ」
「・・・ん?」
「だからって殴らなくたっていいでしょう!」
「想像と違ったか?」
「い、いえ・・・そんな事は、」
カウンター奥で誰かに大声で文句を言う千束を見て複雑な表情をする たきな に再び厨房から出てきたミカは声をかけるが先程とは打って変わり力のない声で返事が返された。
「当然?・・・司令司令って、ちょっとは自分で考えなさいよ!・・・駿もそう思うでしょう?」
「俺に振るなよ。・・・まぁ、俺としては弾幕食らった側だからフキの気持ちもわかるが、そもそもなんで撃つ前に止めなかったんだ?」
「だってさ、・・・いつの間にか構えてた?ちゃんと見ときなさいよ!・・・どうせテンパって周りが見えてなかったんでしょう!」
「・・・アイツも変わらないな。」
「化け物ってなによ化け物って!駿はともかく私は化け物じゃないわ!!」
「お前も人を人外扱いするな、・・・千束、変わってくれ、」
「ほ〜い!」
掃除が終わり千束の傍に来ていた彼は頬をひくつかせながら彼女から受話器を受け取る。
「よし!早速仕事に行こう たきな!!」
「はい!」
千束の言葉に反応して立ち上がる準備を始める たきな を見て彼女笑いながら静止する。
「ちょっと待っててね。すぐ着替えてくるからごゆっくり〜。・・・そうだ!たきな!!」
そう言うと店の奥へと消えたため たきな が席に着こうとすると、奥から顔だけを覗かせて来た。
「リコリコへようこそ〜。うっひひひ〜!!」
慌てる彼女の姿を見て笑いながら千束は再び店の奥へと消えていった。
「随分な言いようだな。・・・こっちは今回被害者なんだが現場責任者として謝罪もないのか?・・・俺ならどうせ死なないって、常識考えろ馬鹿!お前今度本部行った時覚えてろよ!」
彼女が消えると同時に受話器を叩きつけるように電話を切った彼は頭を抑えながら振り返る。
「ごめんな、いきなり騒がしくして驚いただろう。」
「いえ、ただ事前に聞いていた情報と違ったため困惑しただけで、」
「聞いた情報って?」
「・・・大隊に怪我ひとつ負わずに制圧、テロ組織のアジトに単身で乗り込んで全員消す・・・とかですかね?」
「前者はともかく後者は誤報だ。・・・そもそも消すのはそっちだろうが、」
「何か言いましたか?」
「・・・いいや?おっと、来たぞ。」
「おっ待たせ〜!!行こう たきな!!」
「あっはい、それでは、」
「気をつけてな。」
彼は2人を見送るとカウンターへと座りスマホを操作し始める。
「本当にDAはリコリスに道徳を学ばせろよ。」
「そんな事したら仕事にならないからじゃないの?」
「わかってますよそれくらい、ただの愚痴です。」
「でも大丈夫かしらね?・・・振り回されなきゃいいけど、」
「そこは大丈夫じゃないですか?アイツ基本的に面倒見いいですし、ただ困惑するだろうな、この近辺は結構濃い人が多いですから、」
「その中にあんたも入ってるわよ。」
「その発言ブーメランです。・・・それにしてもガス爆発ねぇ?」
「いつもの事じゃない?」
「そうですけど、おかしいんですよね。」
「・・・何が?」
意味深な発言にミズキが問いただすと彼はスマホを置き1度天井を見上げた。
「なかったんですよ。」
「だから何が?」
「取引されていたはずの銃火器類がです。」
「・・・へっ?」
「商品というのだから、あれば見つからないはずないのに犯人達が持ってたもの以外なかったんですよ。」
「ちょっとあんたそれ本当なの!?」
「ちゃんと肉眼で確認しました。・・・一応先生にも報告はしましたけど、」
そこで彼は1度会話を止めスマホを手に取るとミズキへと画面を見せた。そこにはミカからのメッセージが映し出されており、
『予想通り、銃は何処にもなかったそうだ。』
画面にはそう映し出されていた。
「元々なかったとかじゃなくて?」
「ならどうしてあんなところで武装集団が屯ってたんですか?」
「それもそうよね。」
「それにアイツが簡単にテンパるとは考えられないんですよね。・・・アイツもファースト、結構な修羅場を乗り越えてますし、何か匂うな。」
「あんたが言うのならそうでしょうね。千束と2人して勘が異常なくらい働くし、」
「・・・そう考えると酷な話ですよね。」
「・・・。」
お互いに無言になり店内を静寂が包む。
「もう考えてもなにと分からないからこの話は終わり!さっさと仕事に戻るわよ!」
「それは同意です。・・・でもその前に酒瓶しまえよ。」
「あっ、ちょっと持ってかないでよ!!」
「一旦没収です!・・・仕事終わりに返しますからしっかりとしてください。」
「・・・藪蛇だったか〜。」
彼はそう言うとミズキの酒瓶を持って厨房へと入っていった。
「ん?・・・千束からか?」
何ごともなく時間が過ぎていきシフトを終えた彼が着替える中、スマホに着信音が鳴ったため電源をつけるとそこには通知が来ており送り主を確認すると千束の2文字が載っていた。
「え〜っと、お泊まりセット用意しといて?・・・何に使うんだ?・・・あとこれは写真?」
彼女から送られてきた唐突な連絡に首を傾げているとメッセージと共に写真が送られてきた。
「ストーカー被害ねぇ・・・なんでこんなの送ってきt・・・。」
送られてきた写真を確認すると、ある一点を見た瞬間彼の表情が驚愕に染まる。
「・・・現場写ってるじゃん!!アイツどんだけだよ!!」
彼はスマホをポケットにしまうと足早に厨房へと向かう。
「先生、先生。」
「届いたか、」
「はい、これどういう状況ですか?」
「千束が受けた依頼にストーカー被害があってな。その被害者の持っていた写真だ。」
「もしかしてSNSに出したり・・・。」
「・・・したらしい、」
「・・・やばいのに狙われちゃってるよ被害者さん、」
「今2人はその被害者を護衛中だ。」
「それで被害者の家に泊まることになったんでしょうね・・・お泊まりセット何処にありましたっけ?」
「倉庫の奥だ。」
「ありがとうございます。それじゃ俺も準備しますね。」
「ああ、頼んだぞ。」
2人は手早く会話を済ませ、彼は厨房を出て倉庫へと向かって行った。