リコリス・リコイルの世界でレジスタンス活動   作:素人目

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自分らを、誰がレジスタンスなんて呼び始めたのだろう?

実際の所は、少しばかりイリーガルな夜逃げ屋だ。それ以上でもそれ以下でもない。


割りに合わない仕事

 

日本は平和な国だ。でなければ、治安の良さ世界一位の座を取れるわけがない。それも6年連続で。

 

少なくとも、表向きは平和で平穏な素晴らしい国だ。

 

 

小さなテレビをつければ、あの電波塔事件から10年がたったというニュースが映る。あと、この国が如何に治安が良いかとかも目に入る。

原稿を読み上げるニュースキャスターはいい顔だ。何も知らなければ、自分もニコニコ顔に成れただろう。最近、テレビは天気予報以外をいい気分で見れなくなっている。深刻なテレビ離れだ。

 

 

意識をテレビからスマホに移し、とある写真投稿サイトを開く。お気に入り登録をしている投稿者が、新しい写真をアップしていないかを確認するためだ。

 

最近の活動記録に、早朝の景色が載っている。タイトルは『街の目覚め』。なかなかに綺麗な風景画像だ。写真にくっついているGPS情報が見当たらなければ、なおさら綺麗に見えただろう。

 

パンと野菜ジュースで腹ごしらえをし、出かける準備をする。

 

 

非合法かつブラックな仕事の始まりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………

 

 

 

写真のGPS情報をもとに、白い軽ワゴンを探す。何度もやってきた経験が生きたのか、目当ての車はすぐに見つかった。

 

 

「おぉ〜い、加藤〜」

 

「そんな声をださなくても聞こえますよ。時雨さん、今日はおねがいします」

 

「あぁ、写真投稿から1時間ぴったりだな。早く乗ってくれ」

 

 

勧められるままに、後部座席に乗る。ベルトや軽金属、合成樹脂を組み合わせた機械が足元にある以外は、そこらにある車の中と同じだ。

 

 

「さっさと着込んでくれ。いつもどうり、外から見えないようにな。あと、外骨格のバネは全部縮めておいたぞ」

 

「っと、ありがとうございます。……珍しいですね。いつもは自分でやれと言うのに」

 

 

 

 

外骨格。

 

いわゆる身体強化ツールだ。といっても、人工筋肉やモーターを仕込んでいるわけではない。

この外骨格と言うのは、弱い関節を補強すると共に、体にかかる負荷を分散させつつ、フレームを通して負荷を地面へと逃がすものだ。

 

つまり、生身の状態よりも、重量物を運びやすくなる。また、転倒や高所からの落下の衝撃を柔らげ、被弾や格闘戦における衝撃すら吸収するように出来ている。

そして、人の動きを徹底的に効率化し、移動に関与しない動きや筋肉を移動に役立つようにエネルギーを回生する。

 

挙句の果てに、外骨格によって関節が補強されたことを脳が認識すると『もっと筋肉を使っても大丈夫』と判断され、筋肉が全力に近い力を発揮しだす。体のリミッターが開放され、結果として身体能力が向上する。

これのおかげで、ほぼ全身に防弾プレートを仕込んでも動きが鈍らない。

 

……このようにとても役立つ外骨格だが、全身の筋肉がくまなく酷使されるので、疲れて筋肉痛になると地獄を見る。そうなれば、まず動けない。

 

 

そして、自分たちが使う外骨格には、更に仕掛けが施されている。その仕掛けを作動させるバネを縮めるのが大変なのだが……

 

 

「サービスだよ。今日は大仕事だからな。銃密売のグループが花さんに目を付けられたらしい。メンバーは14人。時間的に間に合うか少しあやしい。久しぶりにドンパチするかもな」

 

「……戦闘が起きないことを願いましょう」

 

「なんの為のガス銃だ?まあ、吉田の班も参加するらしいから、少しはマシだろうよ。仕事はいつもと変わらん。護衛および亡命の手助けだ。現場周辺は人通りはほぼない。監視カメラは未確認。ゴーストタウンと言っていいな」

 

 

花さんって、確かリコリスの隠語だったか?高校生で暗殺家業にいそしむ奴らだ。ちゃんと人生楽しめているのだろうか?

 

そんなことを考えながら、外骨格を装着していく。戦闘の可能性が高いから、動作確認は念入りにだ。どっか壊れたら冗談抜きに詰んでしまう。もちろん通信機もチェックする。

動作確認を終えたら、外骨格の上から一回り大きな服を着込む。少々暑苦しいが仕方ない。背中はかなり出っ張っているため、体に当たる部分を切り取ったリュックで誤魔化す。グリップに引き金が複数あるガス銃、ガス弾、ついでにゴム弾をショルダーバッグに突っ込み、顔の見えないフルフェイスヘルメットを被る。これで不審者の完成だ。

 

準備が完了したと同時に、ワゴンが加速する。

 

 

「加藤の願いは通じなかったらしいな。吉田から連絡だ。向かっているビルで銃撃戦発生。吉田の班は密売グループと共に遅滞戦闘中。襲撃者は5人程度、練度は高いらしい。お前は背後から襲え。混乱に乗じて退路を確保する」

 

「わかりました。回収班はどこにいますか?」

 

「今はドローン潰し中だ。場所は後で知らせる」

 

 

回収班との合流地点すら知らされずに、ただ退路を確保しろと?

 

 

「かなりの無茶では?」

 

「確かにな。連絡を聞き逃すなよ?……止まったら左のドアから目の前の通路へ走れ。右側8つ目のビル6階が本拠地だ。____________いけっ!」

 

 

ドアを開け放ち、路地裏に飛び出す。ビルを数えるまでもなく、鳴り響く銃声が場所を教えてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………………

 

 

 

「……ふっきー」

 

「命令は待機だ」

 

「でも……」

 

 

なら、どうしろというのだろう。

最初は順調だった。その証拠に、それなりに居た敵はほとんど倒れている。

だが、あのフルフェイスヘルメットを被ったやつが来てから、状況は悪くなる一方だ。銃弾は確実に当たったはずなのに動いていることは、重い防弾装備を着ているということ。なのに動きは信じられないほど軽快だ。

そうこうしている内に仲間を人質を取られ、更には煙幕を張られた。おかげで中の様子がわからない。

 

話に聞いたことはある。DAの抹殺対象に指定された犯罪者に肩入れする組織。

 

確かレジスタンスと呼ばれていたか。

異常なほど重武装なアンノウン。サードリコリスでは歯が立たず、セカンドリコリスからも逃げ通すらしい。半信半疑だったが、今なら信じられる。現に今、有利な状態から膠着状態に持ち込まれたのだから。ただ一人、加わっただけで。

 

 

________________煙幕がだいぶ晴れてきた。数分前なら、ここで追加の煙幕がきたが、その様子はない。かといって、音が聞こえるから、逃げたわけでもない。階段への通路はこちらが押さえているから当然だろう。手持ちの煙幕は尽きたらしい。

 

 

これで中の様子が見れる。そう思った時だった。

 

すぐ脇の窓がいきなり割れ、破裂音。煙が広がる。

 

 

「………増援かっ!」

 

 

 

 

……………………………………………

 

 

薄汚れた路地を走り、右側8つ目のビル……ではなく、その向かいのビルに入る。時雨さんの言うとおり、ここらへんは廃ビルばかりで侵入は容易だった。おかげで派手な銃撃戦が発生しているわけだが。

 

急いで階段を駆け上がり、戦場を上から打ち降ろせる射線を確保。グレネードランチャー型のガス銃に煙幕弾を装填し、構える。

 

 

密売グループのいる所は、あたかも地獄絵図のようになっていた。所々に死体が転がり、床は赤黒いまだら模様になっている。……当分、生肉は見れないだろう。もしかしたらトマトジュースもだめかもしれない。

 

リコリスと密売グループは、かなり薄れた煙幕を挟んで膠着していた。あそこまで薄れたら、普通は追加の煙幕を張るだろう。てか、人質取っていたのか……

現場にいる吉田さんから連絡が入る。

 

 

『こちら吉田、現在地送れ』

 

「っ、こちら加藤、吉田さんから3時方向、ビルの上階、吉田さんと敵確認。敵情見える」

 

『加藤、敵情送れ』

 

「仕切りの裏、敵3、女学生、武器は拳銃……いや、軽機持ち1」

 

 

あの長髪、拳銃じゃ埒が明かないとみたか。鹵獲した軽機関銃を持ち出してきた。しかも、なんか様になっている。

 

 

『階段は敵背後の通路先、こちらの煙幕は切れた。加藤から煙幕を打ち込んだ後、こちらに飛ぶことは可能か』

 

「できます」

 

『カウントで打ち込め。カバーする』

 

「了」

 

『3、2、1、GO』

 

 

ガス銃の引き金を引く。外骨格の背中にある、複数のバネの1つが伸び、圧縮空気が作られる。圧縮空気は短いチューブを通してガス銃に送られ、煙幕弾を押し出す。

 

ボスッと、どこか間抜けな発射音がした後、ガラスの割れる音。続けて煙幕弾が破裂した音が聞こえた。

 

ガラスを突き破って屋内に煙幕弾が入ったことを確認した後、開けた窓の枠に乗る。

 

 

「____________いつもだが怖いなこれ!」

 

 

窓枠に乗り上げたまま、中指でガス銃のもう1つの引き金を引く。今度は複数のバネが伸び、作られた圧縮空気は足にあるピストンに力を加えた。

 

 

圧縮空気と自らの脚力が合わさった結果、膝は恐ろしいほどの速度で伸び、体が吹き飛んだ。

実際は自らの意思で飛んだのだが、吹き飛んだという表現がしっくりくる。

この外骨格を着込んだ人間は重心が低くなるので、自然と足が下に来るのは本当にありがたい。

 

 

「__________ツッッ!!!」

 

 

バリンと窓枠に残ったガラスを砕きながら、ビルへの侵入を成功させた。

敵はよく訓練されている。煙幕で見えないから音で推測したに過ぎないが、その場に固まることなく、素早く物陰に身を隠したらしい。

 

だが、やはり混乱はしたようだ。

急に配置を変えたことで、間隙が生まれたらしい。

 

 

「通路が開けたぞ!」

 

 

フルフェイスヘルメットの吉田さんを先頭に、男たちが突撃する。更にはAKの援護射撃。どうにか退路をこじ開けることに成功した。

 

撤退の援護をするために、最後尾につく。

 

 

「って、何やっているんですか!?早く逃げて下さいっ」

 

 

白いジャケットを着た男が、人質片手に通路で仁王立ちしていた。いや本当に何やってるんだ!?

 

 

「……あいつらは怪我人を担いでいる。逃げる時間が必要だ」

 

「それはこちらの仕事!馬鹿ですかっ、無茶ですよ!?」

 

「こうなったのは俺の責任だ。多少の無茶なら、この女が生かしてくれる。________行けっ!」

 

「………ああもう!」

 

 

先を急ぐ。確かに有効な手だし、時間は足りないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………ビルを出たとき、機関銃の音が聞こえた。

 

 

思わず振り返ると、非常階段に制服を着た女子が見える。

もう追手が付いたようだ。

 

 

「しかも赤服かよ!」

 

 

見たところ、一匹狼。つまり単独でことを為せる力量をもつ、最も恐れるべきタイプ。指揮官としての赤服とは訳が違う。……目が合った。

 

ガス銃を打ち込む。大きな破裂音と共に、濃いオレンジ色の煙が広がった。180デシベルの爆音と催涙ガスで怯ませる催涙弾だ。階段を降れないように、更に一発打ち込む。ビル風ですぐに薄れるだろうが、階段は刺激性の煙幕で覆われた。

生身の人間が逃げるときに邪魔になるから使わなかったが、関係ない。

 

そんなこと言ってられない。どうせ白いジャケットの男は、もう生きていないだろう。

 

煙が晴れないうちに、死角に移動する。あんなの、せいぜい気休め程度にしかならない。

 

 

 

『こちら時雨、加藤聞こえるか』

 

「こちら加藤、単独の赤服を確認。見つかった。付かれる危険あり」

 

『時雨、了。降ろした通路の先に進め。追手が来ないことを確認し次第、連絡を頼む。念の為、吉田の班に巡回を頼んでおこう』

 

「加藤、了」

 

『急げ、追加のドローンが来るぞ』

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………

 

 

 

 

 

"あいつが死んだ?ざまあみろ、清々した"

 

 

ワゴンの中で、密売グループの一人が呟いていた。

 

命張って時間稼ぎしたやつに酷くないかと思ったが、逃げる直前まで取引を続けたのはあの男らしい。在庫一掃セールのつもりだったのだろうか?

欲張るとろくなことにならないのは知っていただろうに。

 

 

彼らは、船を使って大陸に逃れるらしい。何もかも違う国での生活は大変だろうが、殺されるよりかはましだろう。

いわゆる国外追放だ。

 

 

帰り際、時雨さんから封筒を受け取る。中を開ければ、変更された連絡先を書いたメモと、報酬金が入っていた。

 

時給換算で考えれば、それなりの金額だ。しかし、命の危険、その他諸々を考慮すると………

 

 

 

「……割りに合わないな」

 

 




相変わらずの低品質。

レジスタンスで使う名前は、偽名という設定です。


できれば評価、コメントおねがいします。
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