TS少女はその恋に気付くのか? 作:愚者かくあるべし。ぺしぺし。
※書き直し前のやつなので読まなくて結構です。
それは愚かな傍観者から。
結論から述べるとするならば。
そのTS少女は恋をした。
焔の様な恋をした。
だがしかし、彼女はその感情に気付いていない。
果たして、彼女はその恋に気付くのだろうか?
。 。 。 。
突然だが、この話を聞く上で一つ、頭に入れておいて欲しいことがある。
それは何か。私の事はそんなに詮索しないで欲しいと言う事だ。ああただ勿論、気になるならば君なりに考えてみれば良い。
おや。なら何故態々そんな断りを入れたかって疑問に思っているね?簡単な事さ。
私は謂わばナレーション、語り部、まあ呼び方は何だっていい。つまるところ、私は只の舞台装置なのだよ。
だから考察することなんて殆どない。私は読者諸君が無為な時間を消費してしまうのを恐れたから、態々こうやって断りを入れたのさ。
はいはい。今は関係のない無駄話はもう終わり。
そろそろ本題に入ろうじゃないか。
さてさて、憚らずに言うのであれば
そうだな。まずは彼女について触れるとしよう。
彼女の容姿を一言で喩えるとするならば…陳腐ではあるが
これだけを見れば庇護欲を誘われるものであるが、彼女は決して誰かに守られなければならないような人ではない。
どんな状況であれど自分のなせる最大限の結果を目指し、未知に出逢えば必ずや既知のものとする。そんな信念を彼女は持っている。
実に素晴らしい、文句のつけようがない。
だが、其れでは覆せない程の汚点*1が彼女にはある。それ故に私は彼女を奇怪であると評したのだ。
そう、彼女は。
彼女は、女性であると同時に男性でもあるのだ。
此れは法螺や比喩の類ではない。純然たる事実である。
此れはモナリザに宜しく両性具有ということでも、昨今話題であるマイノリティに類することでもない。
訳がわからないという顔を君がするのも無理がない。私だって、その事が理解できた時には思わず空を仰いださ。まあ私には空を仰ぐ事など出来ないのだがね。ふふふ。失礼、無駄話が過ぎたようだね。
一気に省かせて説明させてもらうとするならば、彼女は超常的なナニカによって性転換、所謂TSをして生まれ変わったのだよ。…私も存外にサブカルチャーに染まってしまったようだ。
とまあそんな経緯がある故に彼女の精神は実に不安定だ。
希望と絶望を一緒くたに混ぜたような、そんな色だ。
自分は存在してはいけないとだなんて自己嫌悪に陥りながらも、その本心では消えたくないと願う。そしてその相反する抱えていることに気づきまた自分を責め立て、それで許された気になる。
私から所感を述べるとするならば、実に面倒臭い。実に鬱陶しい。実に勝手だ。
だが、其処も愛おしいという事でこの話を纏めるとしよう。
そんな、普通とは違う事情を抱えている彼女の人生だが…つい最近まで、彼女にとっては灰色といって差し支えなかった様だ。
ただそれは虐められていたと言うわけでも、家庭環境が劣悪であったと言うわけでもない。寧ろ逆にであると言える。
その容姿と性格故に周りから一目置かれ、沢山の人が彼女と親しくなりたいと思っている。実際、休み時間になれば彼女の周りにはいつも人だかりが出来ている。
家族だってそうだ。先ほども述べたように実に庇護欲を誘われる容姿をしているし、駄々をこねたりもしない。家事の手伝いも率先して行い、いつも感謝と労いの言葉をかけ続ける。こんな子供、誰が憎めるというのであろうか。
側から見れば薔薇色としか思えない人生。だがそれは彼女にとっては違うようだ。彼女にとってはそれすらも灰色というのである。本当に、実に勝手である。此れの何が不満と言うのだろうか。
だが、彼女からすれば仕方ないという理由があるようだ。成程。
ではその言い訳を聞いてみることとしよう。
◇ ◇ ◇ ◇
私の二度目の人生は灰色だ。
色づいたことは一度もない。
私は異端だ。私はこの世に生まれるべきではなかった。
私には前世があった。
何の変哲もない、くだらない人生だった。
だけれど、夢があった。
他人に言えば、鼻で笑われる様な夢だけど。
それでも夢があった。
私は諦めなかった。
どれだけ嘲笑を浴びようとも、諦めなかった。
夢へ向かって歩み続けた。
そして。漸く、漸く夢が叶うその瞬間!
突然今まで感じたことのない様な苦痛を感じ。
私は死んだ。
死んだ筈だった。
: : :
目が覚めた時、そこには白い世界が広がっていた。まるで、端など無いというかのような。
だけど、そんな事に気が付いたのは後のことで。
私が先ず思ったことは。
『ここは…何処だ?』
ふと周りを見渡す。何かないものかと目を凝らすが何もない。
ただ無だけがそこにあった。
それに気がついた時。私には訳が分からなかった。
何故だ、何故だ、何故だ?
何故私は目を覚ました?私はあの時…そう、あの時に死んだ筈ではなかったのか。
まさか、生きていたとでも言うのか。
いや、違う。だとしたらここは何なんだ。こんな空間が世にある訳がない。
まさか。
気がついた時にはもう遅かった。
私は気が狂った。
ただただ慟哭し続けた。
けれど、一切肉体的に疲れることはなくて。
いい加減、精神的に疲れてきたと思ったその時。
図ったかの様に。
いや、実際図られたのだろう。
不思議な声が響いた。
その声曰く。
“我は神に類する身である“
”汝の末路。いや実に滑稽且つ劇的だ“
”我は汝が気に入った”
”故に汝にもう一度生を与えよう“
”嗚呼只、蘇るわけではないがな“
巫山戯るなと思った。
私はお前の娯楽の為に生きてきた訳じゃ無い。
私は心残りはあれど、生にしがみつきたいわけでは無いのだ。
そう声に出そうとしたのに。
何故か声にならなくて。
そして神はもう一度こう言って。
”精々、玩具として波瀾万丈な人生で我を楽しませてくれ“
やはり私の声は声にならなくて。それでも叫んで。
そして視界は暗転し、再び目が覚めたら。
: : :
嗚呼死にたい。生きたくない。
日々心の中で思う癖に。
机の引き出しからカッターを取り出して、私は。
…私は行動に出られなくて。
嗚呼、死ねない。
◇ ◇ ◇ ◇
ははっ。何度聞いても笑える言い訳だ。
悲劇のヒーロー、いや、ヒロインにでもなったつもりか。
お前が幾ら苦しもうと関係ない。
お前のせいで消えた灯があることを知らない癖に。その灯を奪ってお前は生きている癖に。生かしてもらってる癖に。
何が、死にたくないだ。何が生にしがみつきたい訳ではないだ。
お前こそ巫山戯るな。
…失礼。少し感情的になりすぎたよ。
ナレーションに私情を挟むだなんて、私は語り部失格だね。失敬失敬
兎も角。
此れから始まる話はチープな恋愛話であると同時に、実に不快な男の話でもある。
それでも聴きたいと言う物好きがいるならば。
…まあ居ないだろうが。
どうか、ご静聴いただきたい。
文章、むずかしい。