戦いの中で   作:真冬の朝の炬燵

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 バラバラと響くエンジン音。なんの異常も無いが、何処か疲れ切ったように聞こえるのは不思議なものだ

 

 きっと愛機も疲れているのだろうな

 

 今日も同胞が数多く死んだ

 

 守る筈だった爆撃隊は壊滅だ

 

 直掩もまばらだ

 

 「今朝は40機もいたのにね」

 

 愛機に話しかける

 

 一瞬だが機体が大きく震えた

 

 心さみしい私には返事に聞こえた

 

 

 今日は乱戦だった

 

 敵機と味方の入り混じる乱戦

 

 開きっぱなしだって無線に響く断末魔

 

 今朝まで笑いあっていた家族同然の断末魔

 

 生きた心地がしない

 

 

 私達の隊は新兵が多いの

 

 まだ17.18の青少年

 

 私に好きと言ってくれたあの子も

 

 妹の写真を見せてくれたあの子も

 

 今では集団農場の片隅の残骸なのだろう

 

 

 私はいつも一人、生き残ってしまう

 

 戦わないから死なないのではない

 

 生きる為に戦う。そして明日の命へ繋ぐ

 

 そうして今日まで1年近く生きている

 

 今日もはぐれた敵機を撃墜した

 

 500メートル下に見つけた敵機

 

 敵機は真っ直ぐ飛んでいた

 

 その時の私はなんの躊躇いも無く操縦桿を倒した

 

 機体が降下する

 

 高度計の針が激しく回転する

 

 襲いかかるGは速度が上がるほど強くなっていく

 

 照準からはみ出す程迫った時、敵機の操縦手が此方を向いた

 

 まだまだ若い子だった…

 

 幼さの残る瞳が私を見つめる。絶望と焦燥感が入り混じった瞳

 

 その瞳に引き金を引く指が止まった

 

 その隙に彼は回避行動に移った

 

 敵機は大きく右に逸れた

 

 やってしまった…

 

 私は焦った。でもそれと同じ位安堵の気持ちも強かった

 

 それはいけない感情。ましてや仲間を脅かす敵への感情

 

 我に帰った私はすぐに敵機を追った

 

 幸いすぐに後ろへピタリと張り付いた

 

 ドーパミンで冴える頭は先ほどとは違い、引き金に掛ける指に信号を送り続ける

 

 12.7ミリの機関砲は彼の機体の左右を流れる

 

 溺れるような翼の動きに私は確信した

 

 彼は新兵だ

 

 次の瞬間左翼が吹き飛び、胴体からは火が流れた

 

 煙に巻かれ、錐揉みをしながら落ちて行く敵機

 

 「敵機撃墜!」

 

 無線を開けた私は緊張を解くように叫んだ

 

 しかし返答はない

 

 そう、返答に返してくれる仲間は皆落とされたのだ

 

 次の瞬間何処ともしれない無線が走った

 

 でも聞き慣れない言葉、ドイツ語だった

 

 でもドイツ語が分かる私には聞き取れたわ

 

 彼の最期の叫びを…

 

 「助けて!助けて!脱出出来ない!」

 

 ドーパミンで冴えた頭が絶望に染まる

 

 「ハーネスが外せない!あ…火が!火が!」

 

 やめて…やめて…よ

 

 気がついた時には既に無線は静まりかえっていた

 

 下方の雪原に煙が一つ上がっていた

 

 敵も味方も壊滅した

 

 この世には私1人きり

 

 後味の悪い冬空は、ずっと続いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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