ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~ 作:伊達 翼
場所は旧校舎内、オカルト研究部の部室らしい教室。
そこのソファに俺とイッセーは並んで腰掛けていた。テーブルを挟んで正面にはグレモリー先輩と姫島先輩が座っていて、左右には木場と塔城がいる。
ちなみにイッセーには当然の如く茶が出ていた。一応、客扱いなのか俺にも茶が出されるが…。
………………なんで茶が出てんだ?
部活、だよな?
いくらここが部室(?)とは言え、客人に茶が出る部活なんて珍しくね?
物凄く今更な疑問が湧いてきたが、そんなことを言っても今は仕方ないので、話に集中しよう。
「それで…天野夕麻について、探偵さんはどこまで掴んでいるのかしら?」
いきなり俺に話の矛先を向けてくるグレモリー先輩。
「本来なら依頼人以外の前でこんな風に報告はしたくないんだがな。まぁ、今回は事情が事情だけに勘弁願うぜ?」
一応、隣にいるイッセーにも断りをいれておいてから…
「天野夕麻が悪魔と敵対している堕天使だってのは知ってますよ。ただ、イッセーに近付いた動機なんかはわかりませんね。ま、俺を襲ってきたのは自分の事を調査してるのが目障りだったから、って感じでは?」
俺は淡々と自分の持ってる情報を公開した。
「!?」
隣にいたイッセーは俺の口から『堕天使』やら『襲ってきた』なんて単語が出てきたことに驚いているのか、俺を変な目で見る。
「そう。確かに、自分の痕跡を消してた彼女なら、そう考えてても不思議ではないわね」
「!!?」
しかもグレモリー先輩の方も何の疑いもなく俺の言葉に同意しているもんだから、イッセーはグレモリー先輩の方も驚いて見つめていた。
「天野夕麻がイッセーに近付いた目的を…知ってるんですか?」
俺の問いに、グレモリー先輩はしばし考えてからこう言った。
「そうね。イッセーも昨夜遭遇しているから言うけど、あの男は堕天使。そして、天野夕麻というのはその男と同じ堕天使なの。私達悪魔と敵対している勢力の一員よ」
「ちょ、ちょっと待ってください! 悪魔に、堕天使…って言われても…それってフィクションみたいな話ですよね?」
グレモリー先輩や俺の会話を聞いてたイッセーが思わずといった感じでそう言うが…。
「イッセー。あなたも見たはずよ? 黒い翼に、光の槍を…そして、
再び、だと…?
グレモリー先輩の言葉に気になる単語があり、俺は眉を顰める。
「そ、それは…そうですけど…!」
グレモリー先輩の言葉にイッセーも何かに気付いたようだ。
どうもイッセーは昨日の晩に堕天使と遭遇し、死ぬ間際にいたらしいな。
そして、次のグレモリー先輩の言葉に俺も驚く。
「それに、あなたは天野夕麻に一度
「なに…?」
イッセーが、一度殺されている、だって?
「こ、殺されたって…あ、あれは夢で…本当に起きたことじゃ…」
夢だと…?
いや、だとしても何故それをグレモリー先輩が知っている?
それに殺された人間が生きているのもおかしい…。
どういうことだ…?
俺とイッセーが共に混乱している様子を見て…
「論より証拠ね。イッセー、今から私の言うことを聞いて、それを実行しなさい」
「え? あ、は、はい…!」
そうしてイッセーはグレモリー先輩の言う通りのことを実行するべく行動する。
具体的に言うと、イッセーが漫画のドラグ・ソボールの主人公の必殺技を本気で物真似するという、何ともシュールな光景だった。
傍から見てる分には、何とも可哀想だな、としか思わなかったのだが…。
カッ!!
物真似をした直後、イッセーの左腕が輝き、光が収まるとイッセーの左腕には凝った装飾をした赤い篭手が装着されていた。
「な、なんじゃ、こりゃぁあああ!?!」
当のイッセーも驚いていたが、俺も驚いている。
「それがあなたの
などとグレモリー先輩は説明している。
「その神器を危険視したからこそ、堕天使は…天野夕麻は、あなたを殺したのよ」
「………………」
その説明に言葉もない様子のイッセー。
「……なるほど。神器も千差万別とは聞いてたが、こういう代物もあるのか」
俺も俺で復活した思考でイッセーの篭手を興味深く観察する。
「探偵さんも神器のことを知っていたようだけど…どうしてかしら?」
すると、グレモリー先輩が俺にも話の矛先を向けてくる。
「ノーコメント……ってのは無理そうですね」
「えぇ。こうしてイッセーにも教えているんだもの。探偵さんも神器を知った理由を教えてちょうだい。でないと…私達もそれ相応の対応をしなくてはならないもの」
俺が発言を拒否しようにも、それではグレモリー先輩達がただで帰すわけがないと悟った俺は…
「天狼。いいな?」
俺は、胸ポケットにいる存在に声を掛ける。
『…………致し方あるまい。今は宿主の安全を第一に考えよう』
しばしの沈黙の後、天狼も仕方ないとばかりに言葉を発する。
「今の声は?」
「俺に宿った神器…その中に封じられた存在ですよ」
グレモリー先輩の質問に答えながら、俺は胸ポケットにしまっていた白銀のカードを取り出してみせる。
「カードの形をした、神器…?」
俺がカードを取り出すと、怪訝な表情を見せるグレモリー先輩達。
「ま、本人曰く、今回初めて目覚めたみたいなんで…『召喚』」
そんなグレモリー先輩達に軽く説明した後、俺は天狼を呼び出すべく言葉を発した。
ポワァ…
カードが白銀に淡く輝き、カードの中から後ろの空間に向けて光が溢れて天狼が顕現する。
『やはり、悪魔の根城であったか…』
顕現した天狼はスンスンと鼻を鳴らし、周囲の匂いを確かめるようにして言葉を発する。
「なっ…」
天狼の出現にグレモリー先輩達も驚いていた。
「こいつの名は『天狼』。本人曰く『力はあるが、名のない存在』だそうですよ? ま、名前は俺が付けたんですがね」
俺は背後に佇む天狼について簡単な説明をしてみた。
「こんな存在が封じられた神器ですって…? これじゃあ、まるで…!」
グレモリー先輩はどこか緊張気味に何かを言っているが、なんだっていうんだ?
「探偵さん。その存在がどういうものかわかっているの?」
「さぁ?」
グレモリー先輩の質問に俺は肩を竦めてみせると、グレモリー先輩は苦虫を噛み潰したような苦々しい表情を作る。
だって、知らないものは知らないのだ。
それに…こいつがどんな存在だろうが、今は俺と共にあるんだ。
なら、それでいい。
第一、こんな存在がまだ他に六体もいるのだというんだ。まだ明かす必要はないが、いずれはこの情報も共有して捜索に協力してもらおうかな。
そんなことを考えていると…
「……こんな存在を他の勢力が見逃していた? いえ、今回初めて目覚めたですって? そんなことが有り得るの? 何の冗談よ…」
グレモリー先輩は独り言ちるように呟いていたが…
「とは言え、俺はこいつが一緒にいるってだけで、普通の人間ですよ?」
そのことだけはちゃんと伝えておくことにした。
「……いつ、目覚めたというの?」
「確か、一昨日くらいですね。ちょうどその時にイッセーが最後に行ったって言う公園に出向いてまして…そこで堕天使に襲われた際に、強く思ったんですよ。生きたいってね。そしたら、この通りですよ」
俺はグレモリー先輩の問いに答える。
「神器は想いの強さに呼応する。それだけ、探偵さんの想いが強かったのね」
「ま、生きて帰りたい理由があるんでね」
グレモリー先輩の言葉に俺はそう付け加えておく。
「頭の痛い問題ね。それで、他に聞きたいことはあるかしら?」
「まだまだ色々とありますが…そうですね。この場にイッセーがいる理由を聞いても?」
こうなったら、聞けるものは色々と聞いておこうか。
「彼も悪魔だからよ」
「なぬ…?」
「えっ!?」
俺が疑問の声を上げると同時にイッセーも驚いたように声を漏らす。
「正確に言えば、天野夕麻に殺された彼は瀕死の状態だった。その際、私がその場に呼ばれたので、彼を助けるために悪魔に転生させたの」
「イッセーに呼ばれた?」
「これよ」
そう言ってグレモリー先輩はとあるチラシを見せる。そこには小さな魔法陣が描かれ、『あなたの願いを叶えます!』という文字があった。
「どうも、配っていたこのチラシをイッセーは持っていたようなの。そして、本来なら朱乃達が呼ばれるところを私が呼ばれた。その際に、イッセーを悪魔に転生させたのよ」
そう言うと、グレモリー先輩の背からコウモリの翼のようなものが広がり…
バサッ!
「うおっ!?」
隣のイッセーの背からも同じような翼が広がる。間近で見てたせいで俺も驚いたが…、。
「ええぇぇぇぇ…」
当のイッセーも困惑極まれり、といった感じだ。
「そういうわけで、彼はこの私、リアス・グレモリーの眷属として、このオカルト研究部に勧誘するために呼んだんだけど…まさか、探偵さんに依頼を出してた挙句、その探偵さんまで真相に近付いてた上に神器持ちだなんて思いもよらなかったわ」
「なるほどな…」
俺の登場は完全に予想外だった、ってわけか。
「他に聞きたいことは?」
「なら…悪魔、堕天使、それと天使の関係について聞いても?」
そこで俺はグレモリー先輩から悪魔について聞くことになった。イッセーに説明する意味もあるのだろうが、なかなか興味深い話だった。
まず、冥界…いわゆる地獄という場所が存在し、悪魔と堕天使がそこの覇権を巡って争い、領土を二分しているということ。
さらに天界と呼ばれる神に仕える天使が住む場所もあり、悪魔と堕天使を問答無用で倒しにくるそうだ。
悪魔、堕天使、天使。この三勢力は三すくみの関係であるらしい。
悪魔は人間と契約して代価をもらい、力を蓄える。堕天使は人間を操りながら悪魔を滅ぼそうとする。天使は人間の信仰心を活用して悪魔や堕天使などを滅ぼす。
そういった関係が太古の昔から続いているのだそうだ。
それらを聞いた俺とイッセーは…
「ふむふむ…」
「………」
俺が妙に納得している横で、イッセーは事実を噛み締めているように見えた。
「あとは、神器についても軽く説明しておきましょうか」
そう言ってグレモリー先輩は神器についても軽く説明してくれた。
どうも歴史に名を残す人は大抵の場合、神器を持っていたという。
その力で歴史に名を残したのだとか…。
今だと人間社会レベルでの発現する神器が多く、世界的に活躍する人などにも宿っているらしい。
しかし、稀に悪魔や堕天使などを圧倒する神器もあるらしい。
今回、イッセーが狙われたのはこのせいだという。
可能性が高いからといって、殺されるのも嫌なもんだな…。
ま、今は俺もその対象の一人かもしれんが…。
それらを聞いた上で、グレモリー先輩は俺に問い掛けてくる。
「探偵さん。あなたは、これからどうする気?」
「どうする、とは?」
俺の答えは決まっているが、一応どういう意図があるのかは聞いておきたい。
「今回の件であなたもまた狙われている可能性が高い。ならば、私の元に来ないか、という誘いよ?」
勧誘ですか。そうですか。なら、答えは既に決まっている。
「俺は…」
この選択が吉と出るか、凶と出るか…。
それは今後の俺の動き方や考え方次第で、どうとでも変わるんだろうな…。