ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第十話『いかん。思いの外、人外バトルは生身の人間には危険過ぎた…』

 俺は明香音を家へと送り、一度実家の自室に戻ると、学生鞄を勉強机の上に置くと、すぐさま自室を出て一階に降りる。

 そして…

 

「ちょっと出掛けてくるわ」

 

 リビングにいた親父と母さんに出掛ける折を伝える。

 

「え? 今、帰ってきたばかりなのに?」

 

「何処に行くんだ?」

 

 母さんが驚いたように言うのに対して、親父は冷静に何処に行くのかを聞いてくる。

 

「ちょっと友人と遊びにな。ちなみに明香音は来ない。ま、男同士の付き合いさ」

 

 そう言って俺は玄関に向かおうとすると…

 

「………なるべく早く帰って来いよ」

 

 親父からそんなことを言われる。

 

「……あぁ、わかってる」

 

 親父の言葉に俺はそう返すだけだった。

 

 俺が何をしに行くのかまではわかってないだろうが…何となく察せられたかな?

 

 そうして、俺は玄関から外に出ると、町外れにあるという教会へと向かう。

 

 

 

 教会へと向かう途中のこと。

 

『おい、宿主。何故、悪魔の加勢に向かう?』

 

 カードの中にいる天狼から小言を聞かされる。

 

「悪魔の加勢に行くんじゃない。イッセーの力になりに行くだけさ」

 

『同じことだ。何故、そやつのために動く?』

 

 どうも天狼には理解できないようだった。

 

「友達のピンチに駆け付けなくて、何が友達だよ?」

 

『……意味が分からん。第一、答えになっておらん』

 

 俺の言葉に天狼はそう返してくる。

 

「そう難しく考えるなよ。お前にだって、仲間はいるだろ? 少なくともあと六体は…」

 

『奴等が仲間、か…』

 

 今の俺の発言に天狼は微妙に嫌そうな感じの声音を発する。

 

「そいつらが危機に陥った時、お前さんだって助けに行くだろ?」

 

『………………』

 

 その光景を想像しているのかどうか知らないが、天狼は特に答えない。

 

「それと同じだよ。別に俺はイッセー達の仲間って訳ではない。でも、イッセーとは友達だ。その友達が危険を冒してまで誰かを助けに行きたいっていうなら、手伝ってやらないとな?」

 

 少なくとも、俺はそう思う。

 イッセーはただエロいだけかと言われたら、それは違う。あいつは友達想いで、誰とでも仲良くなれる才能がある。きっと、それは尊いものだ。

 そんなイッセーだからこそ、俺も力を貸そうと思えるんだ。

 

 黙ってしまった天狼を気に掛けながらも、俺はイッセー達の元へと急ぐのだった。

 

………

……

 

・天狼視点

 

 ……同じ、か。

 

 宿主の言葉に、我はガラにもなく感慨に耽る。

 

 我も奴等も同じ神器の中に封じられた存在。目覚めることはなかったが、不思議と夢は共有していた。その夢の中では騒々しかった。口論が絶えん二体に、まだ幼さを残す二体、喧嘩を煽る一体、それらを見て笑う一体…そして、そんな奴等を纏めるべく動いてた我…。

 

 いつ目覚めるともわからぬ悠久とも言える時間の中を目覚めぬまま今まで過ごしてきた。

 その中で、我等はいつしか一体、また一体と散り散りとなり、今では我しかおらず…。

 

 そして、目覚めた我を待っていたのは…この宿主との出会いだった。

 

 極々普通の人間。

 しかし、この宿主の強き想いによって我は目覚め、他の奴等もおそらく顕現したことだろう。

 奴等がどこにいるのかは、我にもわからぬ。

 しかし、いずれ揃うことになろう。そんな予感が、我にはある。

 そしたら、宿主を含め、また騒がしい日々を送ることになるだろうな…。

 

 だが、未来の話よりも、今は目先の状況か。

 悪魔の庇護を拒否しながらも悪魔の元へ…否、友の元へと向かう、おかしな人間。

 

 そうか。こういう人間もいるのなら、我等は…。

 

 我は静かに覚悟を決めるのだった。

 

………

……

 

 こうして周囲が暗がりになり、街灯が照らす時間帯になる頃合いだ。

 教会近くにまでやってくると、見知った人影を含めて三人分の気配を察する。

 

「よっ、こんなところで作戦会議かい?」

 

 俺はその三人の人影に声を掛ける。

 

「紅神君!?」

 

「……どうして?」

 

「忍、来てくれたのか!」

 

 人影…木場と塔城は俺が来たことに驚いていたようだが、イッセーは喜んでいるようだ。

 

「ま、ダチの力になると言ったしな。それに堕天使には借りがある。その借りを返さないと、ちと気が済まないのさ」

 

 俺はそう言うと、肩を竦めてみせる。

 

「にしても、戦力が三人とは…グレモリー先輩はどうした?」

 

 俺はその場の面子を見ながら素朴な疑問を尋ねる。

 

「……用があるって、朱乃さんと出て行ってな」

 

「ふ~ん? それでよくここに来れたな?」

 

 今の口振りじゃ、直訴は失敗に近かったようだが…。

 

「部長が、遠回しに許可をくれたからね。まぁ、僕と小猫ちゃんでフォローしろってことなんだろうけど…」

 

「なるほど」

 

 となると、何か裏があるのかな?

 

 木場の説明に俺はそのように考える。

 

「それで、紅神君も戦力に数えていいのかな?」

 

「ま、悪魔や堕天使に比べたら、生身の人間なんざ物の数じゃないだろうが…少なくとも、伯父から一通りの武術は習ってる。足手纏いにはならないつもりだぜ?」

 

 これらがどこまで通用するかはともかく、な?

 

「そう。まぁ、エクソシストみたいな人間もいるから、最悪はそちらの相手もしてもらえると助かるよ」

 

「……期待しないでおきます」

 

 木場はともかく、塔城はなかなか辛辣だな。ま、間違っちゃいないか…。

 

 

 

 それから俺達は、木場からこういう『はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)』について簡単なレクチャーを聞き、教会の入り口へと歩を進める。

 目指すは聖堂地下の儀式場とのことだ。

 

 そして、俺達は頷き合うと、教会内に踏み込む。

 見た目は普通に見えるが、奥に鎮座する十字架に磔にされた聖人の頭部が破壊されていた。

 

 やれやれ。堕天使ってのは元々神に仕える者と聞いていたが、こんなことまでするのか…。

 正直、宗教にはそんな興味はないが、罰当たりもいいとこだろうさ。

 ま、だからこそ堕ちたんだろうが…。

 

 そんなことを考えていると…

 

パチパチパチ…。

 

 どこからともなく、拍手する音が聞こえてきたので、俺を含めて全員が立ち止まると、奥の柱の陰から動きやすそうな神父の格好(と言っていいのか、俺にはわかんが…)をした少年が現れる。

 

 こいつがエクソシストのはみ出し者…はぐれエクソシストか。

 近そうな年齢に見えるが…纏う雰囲気は、なかなかの鋭利さを感じる。

 

「対面、再会、大喝采! ってな!!」

 

 ……えらくハイテンションな野郎だな…。

 

 そのイカれたテンションのエクソシストを見て、俺達は身構える。

 

「おんや~? クソ悪魔だけかと思えば、人間様が混じっているじゃ、あ~りませんっか!!」

 

 はぐれエクソシストは目敏く俺のことを発見すると、大袈裟なリアクションを取る。

 

 こいつ、このテンションを維持し続ける気か?

 正気…いや、既に正気を捨てたのか?

 

 そんなことを考えていると…

 

「でもま、悪魔に関わるような人間様だ! キッチリ、カッチリ、殺してやんよッ!!」

 

 そう言ってはぐれエクソシストは刀身のない剣の柄と銃を取り出す。

 

「忍、気を付けろ。あいつ、光の弾丸を撃ってくるから銃声がしねぇんだよ!」

 

「いくら生身の人間でも堕天使の光を受けたら致命傷になる。気を付けて!」

 

 イッセーと木場が知識のない俺に警告を発していた。

 

「ハッ! そんなことも知らねぇド素人を連れてきて、何の意味があるんだよ!! この『フリード』様が細切れにしてやんよ!!!」

 

 下品な笑みを浮かべたはぐれエクソシスト…『フリード』というらしい…が俺に向けて銃口を向ける。

 

 細切れと言いながら銃を向けるとは、やはり頭がイカれてやがる。

 

「ッ!!」

 

 しかし、俺は臆することなく前へと走り出す。

 

「ワッツ!?」

 

 まさか、銃口を向けておいて俺が向かってくるとは思わなかったのか、フリードも驚いている。

 

「…な~んちゃって!!」

 

 が、フリードはすぐさま俺に向けて発砲する。イッセーの言う通り、銃声もせずに光の弾丸が俺に向かってくる。

 

 銃声がするなら、まだ対処のしようもあるもんだが…。

 

ズザアァァ!!!

 

 俺は走った勢いのまま、スライディングする要領で光の弾丸を回避すると、そのまま近くの長椅子の足に手を掛けて横に移動し、長椅子の物陰に潜む。

 

「はぁ~~~!? な~に、避けちゃってくれてんの!? 人間様の分際で!!」

 

「テメェも人間の端くれだろうが!」

 

 フリードの言葉に思わず、そう返していると…

 

「俺様をそんじょそこらの人間と一緒にすんじゃねぇよ!!」

 

 殺意の籠った言葉が返ってきた。

 

 あ? どういう意味だ?

 

 俺が意味が分からないと思いながら、長椅子の陰から少しだけ顔を出すと…

 

神器(セイクリッド・ギア)ッ!!」

 

 その間にもイッセーが左腕に例の赤い篭手を出現させ…

 

「小猫ちゃん!」

 

「……はい」

 

 木場が腰に帯びていた剣を抜き、塔城は自身の倍はあるだろう長椅子を持ち上げてフリードに投げつけていた…?!

 

 あの小柄な体型のどこにそんだけのパワーがあるんだよ!?

 

 そして、フリードが長椅子を避けたところで、木場がフリードに仕掛ける。

 

 つか、眼で追えなかった。なんだ、あのスピードは?!

 

 俺は目の前で起きてる、この超常的な戦闘風景に唖然としてしまった。

 

 これ…ホントに俺ってば必要だったのかしらん?

 

 今更ながらとんでもない場面に首を突っ込んでしまったと、少し後悔し始めてしまった。

 

『やっと気づいたか、宿主よ』

 

 そんな俺に天狼が話しかけてくる。

 

「今回に限っては浅はかだったかな…。ちょっと反省…」

 

『まぁいい。それがわかったのなら、早めに我を出すことだな。宿主を守るくらいの働きはしてやる』

 

「そいつは頼もしいね」

 

 そんなことを言いながらも俺は戦闘の様子を観察してみる。

 

 木場とあのフリードって奴の剣戟は現状互角っぽい。

 しかし、木場の剣がフリードの光の刀身を吸収し始めた頃合いで、イッセーがフリードに向かって突撃する…!?

 それにフリードも光の弾丸を撃って迎撃する。

 ただ、その際…

 

「プロモーション! 『戦車(ルーク)』ッ!!」

 

 イッセーが叫ぶと、光の弾丸がイッセーの身体を貫くことなく霧散していく…!?

 

「プロモーションだぁ!? まさか、『兵士(ポーン)』か!?」

 

 ???

 さっきからなんだ?

 『兵士(ポーン)』に『戦車(ルーク)』、それにプロモーション?

 どっかで聞いたような………………あ、チェスか?

 いや、しかし…なんだってチェスの単語がこんなとこで?

 

 ※この時点で、悪魔社会のことを知らない俺からしたら疑問符だらけでしたよ。

 

 しかし、それはともかくとして…イッセーの一撃にフリードは吹っ飛ばされていた。

 

 

 

 その後、多勢に無勢と感じたのか、フリードは目くらましを使って逃亡してしまった。

 いや、まさか本当に逃げるとは…。

 俺も逃げた方がいいかね?

 いや、ここまできたら一蓮托生。

 俺も一仕事くらいしますかね。もちろん、天狼を呼んでだけどな?

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