ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第十一話『一体何がどうなってるのやら…普通の人間には理解が難しい世界だった…』

 結局、教会での初戦は足手纏いになってしまった俺。

 その反省を活かし、祭壇にあった隠し階段から地下へと突入する前にカードから天狼を召喚しておいた。

 

『ふむ。堕天使の匂いか。数は一つのようだ。それ以外は人間が多数…はぐれエクソシストだろうな。それと…地下の奥に女の匂いが一つ』

 

 地下の階段を下る中、天狼が匂いで索敵を行っていた。

 

「目的は一番奥の女性ってことでいいのか?」

 

 天狼が索敵した情報を聞いた俺の質問に木場が頷いてくれた。

 

「アーシア…待ってろよ…!」

 

 当のイッセーはかなり意気込んでいる様子だ。

 

 

 

 それから俺達は地下の一本道を突き進み、奥の部屋へと辿り着いて、いざ中へ踏み込もうとした矢先…

 

ギィィ…

 

 奥の扉が勝手に開き、そこから…

 

「いらっしゃい、悪魔の皆さ…ん?」

 

 天野夕麻が邪悪な笑みを浮かべながら、俺達の到着を出迎えていたが、その中に俺がいたことが意外なのか、語尾に疑問符を浮かべていた。

 

「お前は…あの時、取り逃がした目障りな人間…!」

 

 どうも向こうも覚えていたようだ。

 

「どうも。この間の借りを返しに来たぜ?」

 

 とりあえず、俺も前に殺されそうになったからな。そのお返しをしないと気が済まない。ま、そのおかげで大事なことに気付いたんだが…それはそれ、これはこれだ。

 

「ふん、人間如きが、そんな使い魔を連れただけで粋がっちゃって…」

 

『………………』

 

 使い魔呼びが気に障ったのか、天狼が天野夕麻を睨む。

 

 一方で…

 

「アーシア!!!」

 

 部屋の奥で十字架に磔にされている少女を見て、イッセーが叫ぶ。

 

「……Issei…?」

 

 遠目で見た感じ、だいぶ疲弊しているように見える。

 つか、外人か…どうやらイッセーの名を呼んだようだが…。

 

「あら、残念。感動の対面だけど、少し遅かったわね。もう儀式はおしまいよ!」

 

 天野夕麻がそう言うと、磔にされた少女から光が発せられる…!

 

「アーシアッ!!」

 

 それを見てイッセーが駆け出すが、はぐれエクソシストに邪魔される。

 

「天狼!」

 

『うむ』

 

「……邪魔です」

 

「これだけいるなら、最初から最大で行こうかな。僕、神父は大嫌いでね!」

 

 イッセーの道を切り拓こうと、木場、塔城、天狼がはぐれエクソシストの一団と交戦を開始する。

 

「死ねぇぇ!!」

 

 当然、俺に襲い掛かってくるはぐれエクソシストもいる訳で…

 

「ふっ…!」

 

 俺は伯父さん仕込みの体術で、襲ってくる奴を地に倒して鳩尾に正拳を叩き込み、その意識を刈り取る。

 

『随分と優しいものだな』

 

 そんな俺の戦いを見て、毛を血で染めた天狼が言ってくる。

 

「俺は戦士じゃなくて、探偵だからな」

 

『その甘さがいずれ命取りとなるぞ?』

 

「そうかもな。いや、そうだな」

 

 天狼の言っていることは正しい。こんな戦闘に介入しておいて、このザマではいずれ…。

 とは言え、天狼が人を殺めるのなら、俺も間接的に人を殺める側になるのかね…?

 

 そんなことを考えている間にも事態は進んでいて、天野夕麻がアーシアと呼ばれた少女から何かを摘出したようだった。

 

「アレは…?」

 

『どうやら、あの少女も神器持ちのようだな。しかし、人為的に神器を摘出するなど…』

 

 俺の疑問に天狼が答える中、イッセーがアーシアの元へ駆け寄り、救助する。

 

「無駄よ、無駄。神器を抜かれた人間は死ぬもの。あなた達の行為は無駄だったのよ!!」

 

 そして、天野夕麻は高笑いをしながら俺達を見下している。

 

 ったく、胸糞が悪くなるぜ…!

 

『……宿主よ』

 

 俺の思考を察したのか、天狼が話しかけてくる。

 

「なんだ?」

 

『力を、求めるか?』

 

「なに?」

 

『我を……』

 

 俺が天狼の次の言葉を聞いていると…

 

「『レイナーレ』ぇぇえええ!!!」

 

 イッセーの怒りに満ちた絶叫が響き渡る。

 

 『レイナーレ』?

 それが天野夕麻の本当の名か?

 

「小猫ちゃん! 紅神君! 僕達で兵藤君の道を作る!」

 

 そんなことを考えていると、木場からそんな提案を受ける。

 

「……了解」

 

「わかった! 天狼!」

 

『やるかどうかは宿主の判断に任せよう』

 

 塔城はすぐに了承したようで、俺も同意して天狼に指示を出す。その際、天狼は俺に決定権を委ねてくれたが…。

 

「兵藤君! 今の内に彼女を連れて早く!」

 

 木場の言葉にイッセーは少し躊躇したようだが…

 

「木場! 小猫ちゃん! 帰ったら、俺の事を『イッセー』って呼べよ! 絶対だからな! 俺達、仲間なんだから!」

 

 イッセーは木場と塔城にそう言った後…

 

「忍も、こんな俺の我儘のためにありがとよ!」

 

「礼なら後でたんまり聞いてやる。いいから、行け!」

 

 そして、イッセーはアーシアって娘を抱えて元来た道をひた走る。

 

「じゃあ、僕達の方もここを片付けようか」

 

「……はい」

 

「あぁ」

 

 そうして、俺達ははぐれエクソシストの残りを片付けるべく行動を開始する。

 いや、しようとしたのだが…

 

キィンッ!!

 

 突如、地下に魔法陣らしきものが現れると、そこからグレモリー先輩と姫島先輩が現れる…!?

 

「これだけの協力者がいたのね」

 

「あらあら、探偵さんまでいますわよ?」

 

 この二人の登場にはぐれエクソシスト達は警戒しているようだが、当の二人はなんか物凄い余裕を感じてしまう。

 そして、はぐれエクソシスト達が狙いを先輩達に向けたが…

 

「消し飛びなさい!」

 

 そう言って背筋に寒気がするほどの、ドス黒い何かをグレモリー先輩が放ち、それに触れたはぐれエクソシスト達は…消えて(・・・)しまった。

 

 な、なんだ?

 あの力は…!?

 

 俺がその光景に戦慄を覚えていると…

 

「それで…何故、探偵さんがいるのかしら?」

 

 グレモリー先輩の矛先は俺に向けられた。

 

「……イッセーに加勢しに来ただけですよ」

 

「ただの人間の分際で?」

 

「それを言われちゃ、立つ瀬がない」

 

 以前勧誘を断ったのをまだ根にでも持っているのか、言葉に妙に棘を感じる。

 

「まぁいいわ。今はイッセーを…」

 

「助けに行きますか?」

 

「いえ、見守りましょう。あの子なら、きっと…」

 

 木場の言葉にグレモリー先輩はそう答えて地上へ向かう通路を優雅に歩き出す。その歩調はゆっくりだ。

 

 ?

 いったい、なんだというのだ?

 

 それから少しすると…

 

『この匂いは…』

 

 天狼が何かの匂いを感じ、上を見る。それと同時に…

 

ガッシャアアアアンッ!!!

 

 ガラスが派手に割れる音が上から聞こえてくる…!?

 

 な、何事だ!?

 

「先行します」

 

 すると、木場が先行して地上に上がる。

 

「天狼!」

 

『うむ』

 

 俺もその後を追うが、木場のスピードには追いつけずにいるが、なんとか地上に出ることに成功した。

 そこで目にしたのは、木場がイッセーに肩を貸している場面だ。

 で、あのレイナーレってのは?

 

 不思議に思い、キョロキョロと周りを見回していると…

 

「小猫」

 

「……はい」

 

 上がってきたグレモリー先輩が塔城に指示を出し、壊れた壁の方に向かっていく。

 その間にグレモリー先輩がイッセーに声を掛け、労っている。

 

「……持ってきました」

 

 そして、塔城は気絶しているらしいレイナーレの足を持って引きずりながらグレモリー先輩の前へと文字通り持ってきた。

 

 こうなると、もはや哀れとしか思わねぇな。

 しかし、どうしたらこうなるんだ?

 イッセーが一人で撃破するにしても、実力差があったはずだが…?

 

 俺が疑問に思っている間に、姫島先輩がどうやってか水を作ってそれをレイナーレの顔面に浴びせる。

 

 まぁ、気付けにはいい方法なんだろうが…。

 

 「げほっ、げほっ」と咳き込みながらレイナーレが目覚める。

 

 そこから先は酷いもんだった。

 レイナーレには他にも同調した堕天使…以前俺を襲ったミッテルトやあのコートの男、他にももう一人いたらしい…が助けに来ると思っていたようだが、そいつらは既にグレモリー先輩が消し去ったという。

 レイナーレの独断で進めてた今回の計画をペラペラと喋った後に消されたのだとか…。

 ……アホなのかね? いくらなんでも、情報を喋るのは問題ありだろう。

 

 それを知ったレイナーレだったが、ここにきて逃げたはずのフリードの奴が再登場。

 が、形勢が不利、かつ上司でもあるだろうレイナーレが負けた姿を見て逃亡してしまった。

 その判断力は称賛するが…俺は少しだけ薄情だと思ってしまった。

 ま、生きてさえいれば、何とかなるとは思うけど…あいつのことだし、性懲りもなく現れそう…。

 

 ちなみにだが…イッセーの神器についても判明する。

 『赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)』。

 それは神器の中でも13種しかないと言われる一品にして『神滅具(ロンギヌス)』の名を冠する神器の一つだった。

 十秒毎に力が増していき、極めれば神をも屠るとさえ言われているそうだ。

 

 ただ、それを聞いていた天狼は、なんだか微妙な表情をしていた。どうした?

 

 そして、最後の足掻き…いや、悪足掻き、というべきか。

 天野夕麻を再び演じてイッセーに助けを乞うたのだ。

 見るに堪えないとは、正にこのことだな。

 イッセーは涙をこぼしながらも、グレモリー先輩に彼女の処理を頼んでいた。

 

 その後、アーシアって娘の亡骸を前にイッセーが悲しんでいるが、そこにグレモリー先輩がアーシアさんの元へと歩み寄ると、懐から先輩の髪と同じ紅色のチェスの駒を取り出していた。

 

 だから、なんでチェス?

 

 俺の疑問をよそにその駒をアーシアさんの遺体に置き、さらにレイナーレが持っていた彼女の神器も返す。さらに何らかの言葉を唱えると…

 

「……あ、れ…?」

 

 なんと、生き返ったぞ!?

 しかも言葉がわかる!?

 どういう原理だ!?

 

 傍から見てた俺は驚愕の表情をしてたに違いない。

 

「イッセー、さん…?」

 

 イッセーを見上げたアーシアさんをイッセーが優しく抱き締めていた。

 

 

 

 これで一件落着、と言っていいのかね?

 結局、天狼の言ってたアレ(・・)は使わずじまいだったし、堕天使に借りを返せなかったような気もするが…。

 まぁいいさ。イッセーのあの顔を見れただけでもな。

 

 その後のことだが、アーシアさんは駒王学園の、イッセーが在籍する俺達のクラスに転入し、イッセーの家にホームステイすることになったそうだ。

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