ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第十二話『間が悪いって、このことなんだろうな…』

 例の堕天使との一件から早一ヶ月弱。

 

 俺達は再び穏やかな日常を送っていた。

 ただ、イッセーの周りは騒がしくなっていた。

 というのも新しく転入してきたアーシアさんがかなりの美少女ということもあるが、イッセーと共に登校する光景を目撃され、また周囲に衝撃を与えているようだ。

 

 まぁ、そのおかげというかなんというか…俺と明香音の関係についてはそれほど言及されなくなった。

 むしろ、今はイッセーの方に注目がいったので、そちらの方が大変そうだ。

 

 アーシアさんはイッセーの家にホームステイしているというし、アーシアさん自身もおそらくはイッセーを好いているのだろう。

 既に何回か告白も受けたそうだが、その全てを断っているようだ。

 

 あと、聞いた話では、最近イッセーはグレモリー先輩に鍛えられているそうだ。

 イッセーの持つ神器『赤龍帝の篭手』の能力の都合上、イッセー自身の力が増せば増すだけ倍加で得られる力も幅も膨れるから、だそうだ。

 そのためか、イッセーは朝早くからグレモリー先輩に色々とトレーニングを課せられているのだとか…。

 

 それと、俺は悪魔社会についての情報もグレモリー先輩からある程度聞くことになった。

 これだけ関わって何も知らないのでは、また変なことに首を突っ込まれても困ると認識されたのだろう。

 まぁ、俺も今回くらいにしておきたいが、天狼の仲間を捜す手前、悪魔の事情くらいは知っておきたかったので、素直に聞いたのだが…。

 

………

……

 

 曰く、古くて純血種の悪魔は過去の大戦時。

 天使、悪魔、堕天使の三大勢力による大規模な戦争で、その大半が死亡したり、行方不明になったりしたのだという。

 また、その戦争で四大魔王と呼ばれる存在も死亡し、今は新しい代の四大魔王が冥界の悪魔領を統治しているのだとか…。

 

 だが、長い時を生きる悪魔の出生率はあまり良くないらしく、別の方法で勢力の拡大を行う必要があった。

 それが様々な種族を悪魔へと転生させるというシステムであり、その要とも言える代物が『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』。

 先の一件でアーシアさんを蘇生させ、悪魔に転生させたチェスの駒。それが『悪魔の駒』だ。

 

 上級悪魔として認められた貴族が持つとされる『悪魔の駒』。

 それは主となる悪魔を『(キング)』に見立て、実際のチェスと同じく最大で十五人もの配下を置く少数精鋭制度。

 王となる悪魔には『女王(クイーン)』一個、『戦車(ルーク)』『騎士(ナイト)』『僧侶(ビショップ)』が各二個ずつ、そして『兵士(ポーン)』八個の計十五個の駒が与えられるのだとか。

 ただ、転生させる者にも価値というものがあるらしく、アーシアさんは僧侶一個で事足りたようだが、イッセーが転生するには兵士の駒八個分を消費する必要があったらしい。なんでも、イッセーの中に眠っていた神器の影響なのだとか…。

 ちなみに他にも例があり、戦車や騎士、僧侶の駒を二個消費しないと転生できない事例もあったようだ。

 駒の価値は兵士換算で言うと、女王が九個分、戦車が五個分、騎士と僧侶が三個分といった価値がある。また、兵士には敵本陣と定めた場所で他の駒へと『昇格(プロモーション)』する能力があり、一概に弱いということはない。

 

 余談だが、転生悪魔でも実績を積むことで上級悪魔へと昇格することがあるという。

 転生した時点では下級で始まるが、実績を積んでいけば中級、上級へと昇格していき、上級となったら新たな王として眷属を持つことができるようだ。

 そうやって悪魔は数を増やしていったようだ。まぁ、中には転生したにも関わらず、主の元を離れて好き勝手生きるような者も少なからずいるらしいが…。そういう者の末路は決まって抹殺されるのだとか…。悪魔社会も厳しいもんだ。

 

 また、そんな悪魔社会では、この少数精鋭制度を用いた競技『レーティングゲーム』が盛んに行われているらしい。

 発端は貴族同士の眷属自慢から始まり、それが徐々にルール化していき、様々な条件や時間制限を設けることで幾多のバリエーションを築き、今では大小様々な大会も開かれているほど悪魔社会ではポピュラーであり、大衆にも人気のある催しとして認知されているのだとか。

 

 ただ、こういった悪魔の事情を知る人間はそれなりにいるらしい。

 例えば、異形に関わるような家系とか…駒王学園にもそういった悪魔事情に詳しい生徒はいるような話し振りだったな。

 いや、そういう事情を抱えた者が駒王学園の門を叩くことが多いのかな?

 

 その真偽はともかく、意外と悪魔や異形の存在というのは、身近にあるのだと痛感させられた。

 かく言う俺も神器持ちだしな…。

 

………

……

 

 ま、そんな悪魔の事情を知ったからと言って、俺の生活が激変するわけでもない。

 いつものように学園のちょっとした依頼を受け、それを解決して依頼人に報告する。そんな日々が続いている。

 とは言え、ちょっとだけ変わったこともある。

 

 というのも、オカルト研究部から依頼を受ける頻度が増した。

 これまでは特に関わりがあるような間柄ではなかったのだが、先の堕天使との一件もあって気にかけてくれているのかもしれない。ありがたいような、そうでもないような…。

 ま、ある種の近所付き合いみたいなものだろう。

 それに依頼と言っても、大半が雑事に近いことばかりだ。

 

 ちなみにだが、探偵同好会を設立した当初、俺はよく運動系の部活の助っ人なんかもしていたりする。探偵は別に『何でも屋』というわけではないのだが、引き受けた依頼はちゃんと果たすのがポリシーであるため、怪我をしてた部員に代わり練習試合に出場したりもした。ただまぁ…自分で言うのもなんだが、これでも運動は得意な方なので、探偵同好会を廃業して部活に正式に入ってくれとの勧誘も受けたこともあったりする。しかし、俺は今もこうして探偵同好会を続けている。

 ま、部活に青春を注ぐのもアリなんだろうが、俺はこちらで活動している方が性に合うのだ。

 

 何故、こんな余談を挟んだのかというと…実はオカルト研究部からの依頼を受けたためか、運動系の部活から再び助っ人の依頼、他の文系の部活からも雑事を頼まれることが増えたのだ。

 何度も言うが、俺は探偵であって『何でも屋』ではないんだがな…。しかし、引き受けてしまった依頼はきっちりこなさなくてはならない。こればかりは曲げられない。

 

 なので、最近彼女様である明香音は少しご機嫌斜めである。

 俺の探偵業のことを理解はしてても、会える時間が減ったと不満があるそうだ。

 いやはや、彼氏としては面目ないな…。

 ちゃんと明香音との時間も作らないとな…。

 

 

 

 と、考えていた矢先のことだ。

 

 今日も今日とて、オカルト研究部から引き受けていた依頼を片付け、その報告に旧校舎へと移動してきたのだが…

 

ガタンッ!!

 

 オカルト研究部の部室から何やら何かが壁にぶつかる音が盛大に響いてきた。

 

 何事だ?

 

 俺は部室の中で誰かが喧嘩でもしてるのかと思ったものの、さっさと依頼完了の報告をしたかったので、オカルト研究部の部室に入るのだった。

 

「ちぃっす。探偵同好会です。この間の…」

 

 そう言って俺が部室に入ると、何故か見知らぬ一団がグレモリー先輩達と対峙していて、デスクの一つが壊れてイッセーが壁の方で倒れていて、アーシアさんに治療されていた。

 

 ………………はい?

 

 まさかの事態に俺は一瞬心身共にフリーズしてしまった。

 見れば、見知らぬ一団はホスト風のキザったらしい男が一人に、あとは美女美少女が十五人もいた。

 

 えっと…外部の人間の来客中だったのかな?

 しかし、十五人?

 はて、最近聞いたことのあるような人数だが…?

 

 そう思いながらも俺は場違い感があったので、そっと引き戸を閉めて退散しようとしたのだが…。

 

「お待ちなさい」

 

 何ともクールビューティーな声をする銀髪のメイドさんに呼び止められてしまった。

 

「あ、すみません。間違えました。お取込み中のようなので、これで失礼しま~す」

 

 などと言って俺はさっさと退散しようとするが…

 

「二度は言いませんよ?」

 

 酷く冷たい声音に俺は引き戸を閉める手を止めてしまう。これは…殺気。このまま帰ろうとしたら、殺される…?

 背中に尋常でない悪寒が走ったので、仕方なく俺は部室に入室した。

 

「お嬢様。こちらの方は?」

 

 メイドさんはグレモリー先輩に問いかける。

 

 また、変な時に来ちゃったな…。

 

 そんな風に俺が後悔していると…

 

「彼は……私の眷属候補よ。なかなか首を縦に振ってくれないから困ってたのよ」

 

 などとグレモリー先輩がメイドさんに答える。

 

 え…なにそれ?

 初耳なんですが…?

 

 困惑する俺にグレモリー先輩が視線を向け…

 

『いいから、今は合わせなさい』

 

 と目で言ってきたように感じた。

 

「まぁ、グレモリー先輩には色々とお世話になってますけど…」

 

 下手なことを言うと、ボロが出そうなので適当に合わせておく。

 

「ただの人間が眷属候補、ね。そいつ、本当に使えるのか?」

 

 ホスト風の男が俺を品定めでもするかのように見てきながら、そんなことを言ってくる。

 

「試してみたら?」

 

「ほぉ? なら、ミラ。もう一度だ」

 

「はい、ライザー様」

 

 男の言葉に一人の小柄な少女が棍を俺に向けてきたので…

 

「何のつもりで…?」

 

 向かってきた棍を紙一重で回避して疑問を投げかける。

 紙一重だったので、頬に掠ってしまったが…まぁ、観察してれば回避できない訳ではない。

 これも伯父さんにしごかれた成果だ。

 あの人、手加減とかしてくれねぇし…。

 

「ほぉ。さっきの小僧よりはできそうじゃないか」

 

「え、えぇ…だからこそ、スカウトしている最中なの」

 

 男の言葉に、グレモリー先輩が若干驚いたようにしつつも答える。

 

 ???

 さっぱり状況がわからん。

 俺、試されたよね?

 

 状況が呑み込めずにいると…

 

「面白い。十日後のゲームには勧誘中というそいつも連れてきて構わんぞ?」

 

 男は愉快そうにそんなことを言ってくる。

 

 ゲーム?

 何の話だ?

 

 意味のわからない言葉に、俺はもうちんぷんかんぷんである。

 

「次はゲームで会おう。リアス」

 

 そう言って男は十五人もの美女美少女と共にその場から魔法陣の中へと消えてしまった。

 

「………………」

 

 グレモリー先輩はどこか苛立ちを思わせる表情をしていた。

 

「では、お嬢様。彼も急遽参加するというのなら、上に指示を仰いでおきます。こちらにも準備があるので、これにて…」

 

 メイドさんも魔法陣で何処かへ消えてしまった。

 

 どっちも悪魔の関係者なのは理解したが…俺にはサッパリ状況がわからん。

 誰か説明してくれると助かるんだけどな…。

 

 そんな淡い期待を抱きつつ、周囲を見るが…かなり重たい雰囲気であった。

 

 

 

 こうして俺は、なんだかよくわからない内にグレモリー家とフェニックス家が行うという非公式の『レーティングゲーム』に参加する羽目になった。

 しかもグレモリー先輩の眷属(仮)として…。

 なんで…?

 俺、依頼報告に来ただけなんだけどな…。

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