ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第十五話『状況は圧倒的に不利。だが、まだ手がないわけではない』

 かくしてレーティングゲームは始まった。

 

 序盤は様子見なのか、どちらも派手な動きはない。

 しかし、だからと言って俺が先輩の言うことを聞くかと言えば、答えはノーだ。

 俺は勝手に巻き込まれた身だ。間が悪いと言われれば、それまでだが…。

 それならそれで連絡の一つくらいしてくれてもいいだろうに…。こちとら、依頼を受けてるんだからな。

 スカウト中だか何だか知らんが、俺は悪魔に与する気はない。

 こんな茶番に付き合うのもどうかと思うが、これを依頼の延長と考えてしまい、仕方なくゲームに参加することにした。不本意だがな?

 しかしながら俺はポリシーを曲げない。自分でも欠点だとは思うが…親父に叩き込まれたこの信条だけはどうにも曲げられないようだ。

 

 そんなことを考えながら、俺は運動場へと向かう道を進む。

 

 作戦会議の際、先輩や木場の予想では、それなりの戦力がいるとか言ってたな?

 まぁいい。この溜まりに溜まった鬱憤を晴らすには良い機会だろうさ。

 

 と、その時…。

 

「随分と大胆な奴もいたものだ」

 

 前方の運動場からいくつかの気配を感じる。その内の一人が俺の気配に気づいたのだろう。こちらに向かってくるのが見えた。

 

「生憎と、俺は正規の眷属じゃない。先輩の命令を聞く義理はないんでね」

 

「騎士のスピードだけを得ただけのただの人間が、よく吠える」

 

 見れば、女なのは確かだが、顔の半分にだけ仮面を被っている。

 

「一応の礼儀だ。名乗っておく。俺は紅神忍。探偵だ」

 

「探偵? 確か、便利屋だったか?」

 

 どいつもこいつも探偵を何だと思ってやがるんだ!

 

「その認識は改めてほしいがな」

 

 俺は渋い表情を作る。

 

「? よくわからんが、まぁいい。私は『イザベラ』。ライザー様の戦車だ」

 

「そうかい。まぁ、どうせ短い付き合いだ。一つ、手合わせを願おうか」

 

 そう言って俺はその場で軽くジャンプを繰り返し、身体を動かす準備をする。

 

「手ぶらの騎士、か。まぁいい。あちらの戦力は少しでも削っておこう」

 

 言って相手の戦車…『イザベラ』と名乗った女も構える。

 

「「………………」」

 

 黙ってお互いに隙を窺うが…俺も相手も隙らしい隙を見せないため、なかなか動けない。

 

 なら、ここは騎士のスピードとやらを試すか。

 特例で駒の特性とやらが俺には反映されてたはずだ。

 

 ある程度、距離があったものの、俺は一歩踏み出すと共にイザベラの懐に入る…!?

 

「ッ!?」

 

 相手の懐に入った俺はそのまま正拳を突き出すが…

 

「?」

 

 イザベラはどこか不思議そうにその正拳を見る。俺の正拳はイザベラの脇をすり抜けている。見事に空振った…。

 空振った俺はすぐさま正拳を引っ込め、一足飛びに後退した。

 

「……もしかして、自らのスピードに驚いているのか?」

 

 相手にそんな風に心配されるような声を掛けられてしまった…。

 

「ぐっ…」

 

 まさにその通りなのだが…指摘されると、物凄く恥ずい。

 

 息巻いて出てきておいて、この体たらく…。

 少々…いや、だいぶ甘く見てた。

 騎士のスピードとはここまでの速度が出るものなのか…。

 自らが体感すると、こんなにも違うものか…。

 

「いや、まぁ…普通の人間ならさもありなん、か」

 

 イザベラもどこか残念なモノを見るような目を俺に向けてくる。

 

「悪いことは言わない。早々に退場した方がいい」

 

 そう言ってイザベラは元来た道を戻って運動場へと戻ろうとする。

 

 だが、今のでだいたいのコツは掴めた。

 それにこの程度の速度で動じてどうする。

 俺はこれよりも速い存在を知ってるじゃないか。

 

 俺は胸ポケットにいる存在を思い出しながら、一つ深呼吸をする。

 

「すぅ……ふぅ……」

 

 ……よし。気持ちは落ち着いた。

 

「天狼」

 

 俺は落ち着いた心で、胸ポケットにいる天狼に声を掛ける。

 

『なんだ?』

 

「力を貸してくれ」

 

『今更だな。どうかしたのか?』

 

「なに、ちょっと目が曇ってたみたいでな。鬱憤を晴らすにしても、やり方ってもんがあったなと」

 

『そうか。ならば、我は何をすればいい?』

 

「決まってるだろ?」

 

 俺は胸ポケットから天狼の封印されたカードを取り出し、天に掲げる。

 

「一緒に駆け抜けてくれ。『召喚』ッ!」

 

 そして、天狼をカードの中から召喚する。

 

『いいだろう。我が主(・・・)よ!』

 

 顕現した天狼がそう答えると共に…

 

『ウオオォォォォンッ!!!』

 

 気高き雄叫びを上げる。

 

「なんだ!?」

 

 運動場に向かう道を戻っていたイザベラが天狼の雄叫びを聞きつけ、こちらに振り返る。

 

「さてと…一つ、駆け抜けるか!」

 

『うむ。む…?』

 

 と、俺達が駆け出そうとした矢先、天狼が何やら鼻をスンスンとしている。

 

「どうした?」

 

『いや、随分と懐かしい匂いを感じてな。発信源は…あそこか?』

 

 天狼の視線を追うと、そこには新校舎があった。

 

 あっちは…確か、ライザーの本陣がある生徒会室の方か?

 それに天狼が懐かしいと感じる匂い…?

 まさか…?

 

 俺はある可能性を天狼の言葉から察し…

 

「天狼。俺達は意外とツイてるかもしれないな?」

 

『主?』

 

「この場にいるかもしれねぇぜ。お前の仲間がな…!」

 

『ッ! そうか…この匂いは奴等の内の…』

 

 天狼が俺の言葉でその可能性に気付いたのを確認すると…

 

「じゃあ、改めて行くぞッ!!」

 

『応ッ!!』

 

 俺と天狼は揃ってこちらに再度向かってくるイザベラを無視して運動場を駆ける。

 

 俺のスピードに天狼が合わせてくれてる。

 やはり、こいつの最高速度はこんなもんじゃないらしい。

 

「くっ…速い…! 『カーラマイン』!!」

 

 イザベラが声を上げると、俺の前に一人の騎士らしい甲冑を装備した女が現れる。

 

「ここは通さんぞ!」

 

 相手の騎士…カーラマインとかいう女が剣を持って俺の前に立ち塞がるが…

 

「悪いが、押し通る! 天狼!」

 

『応ッ!』

 

 俺は走る速度を落とさず、天狼と共に一気にカーラマインの左右から通り抜けようとした。

 

「この程度で抜けられると思うなっ!!」

 

 だが、相手も腐っても騎士。俺の速度に追従して剣を振るってくる…!

 

「ちっ…!」

 

 俺は、舌打ちしながらも振るわれた剣の軌道を読み、身を捻って躱す。その際、制服の裾に剣が掠って斬り傷ができたし、足も少し止まってしまったが…その反動を利用し、カーラマインに回し蹴りを放った。

 

「くっ?!」

 

 甲冑部分に蹴りが入ったため、俺も痛かったが…まぁ、相手を吹き飛ばせたから良しとする。

 

「カーラマイン!」

 

「大丈夫だ。それよりも奴を!」

 

 吹き飛んだカーラマインをイザベラが受け止めていたが、これで俺の行く手を阻む奴はいない、はずだ。

 

『主!』

 

「ッ!!」

 

 しかし、天狼の叫び声に俺も咄嗟に反応し、横に倒れ込むように飛ぶ。

 すると…

 

チュドンッ!!

 

 今さっきまで俺のいた地点に小規模だが、確かに爆発が起きていた…!?

 

「なんだ!?」

 

 受け身を取りつつすぐさま体勢を整える。

 

「今のを避けますか。騎士の特性を与えられただけの人間風情が…」

 

 俺は、声のする方…空を見上げる。そこにはよく言う魔導師っぽい格好をした女が浮遊していて、俺に片手を差し向けていた。

 

「ユーベルーナか。助かる…」

 

 ちっ。今の爆発を避けたせいで、カーラマインとイザベラも追いついてきてしまったようだ。

 

「騎士単騎での特攻に何を手こずっているんですの?」

 

 そこに新たな声が聞こえてくる。随分な大盤振る舞いだな…。グレモリー先輩と木場の予測は正しかったということか。

 

『主よ』

 

 そうしている内に天狼も俺の傍に戻ってくる。

 

「しかし、ただの人間がそんな存在を従えているとは…もしかして、神器保有者なのかしら?」

 

 新たに聞こえてきた声が俺と天狼を分析するようなことを言ってくる。

 チラッとそちらを見れば、ドレス姿の女…どちらかと言えば、少女の類か…がいた。なんだろうか、この違和感…この場にそぐわない気がする。これから戦うってのにドレス姿というのも変な気が…。

 

 俺が怪訝に思っていると…

 

「レイヴェル様はお下がりを。ここは私達が…」

 

 空にいたユーベルーナとかいう女が、ドレス姿の女にそう言っていた。

 

 同じ眷属なのに、様付けだと…?

 余計に意味がわからなくなった。

 

 まぁ、それはともかくとして、相手が三人。いずれも格上と考えた方がいいか。

 ただでさえ、俺は生身だというのに、この状況はマズい。

 制空権も握られており、魔力とかいうものの攻撃もあると考えれば、絶対絶命に近いだろう。

 

 しかしながら…

 

「天狼」

 

 俺の心は不思議と落ち着いていた。

 

『なんだ?』

 

 天狼が俺の声に答える。

 

アレ(・・)をやる」

 

『今、ここでか?』

 

「あぁ。でないと、お前の仲間の所在も確かめられないしな」

 

『ふむ。確かに』

 

 俺の言い分に天狼も頷いてくれる。

 

「何をゴチャゴチャと…」

 

 俺と天狼の会話が聞こえたのか、ユーベルーナが怪訝そうに呟く。

 

『ならば、我が力…主に預けよう。だが、気をつけよ。我等の力は生半可ではないのでな?』

 

「上等だ!」

 

 そして、俺は…天狼から教わった力ある言葉を口にする。

 

「『合身(・・)』!」

 

『ウオオォォォォン!!!』

 

 俺の言葉に呼応するかのように、俺と天狼は…その存在を重ねる。

 

 

 

 さてと…いっちょ派手にやるか!

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