ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第十六話『切り札を切ったはいいが…相手の思惑に乗せられた気分だ…』

 『合身』。

 それは俺に宿っている神器(そういや、未だ正式な名前すら知らんな)。

 神器の中に封印された天狼達をカードという媒介から呼び出す『召喚』と、カードの中へと戻す『帰還』。それらに続く第三の能力。

 この能力は、神器保有者と封印された存在を一つの存在に重ね合わせるというものだ。

 つまり、俺の肉体に天狼達を憑依させる、というのが俺としては一番しっくりくる。

 何より、合身することで俺は…。

 

 ぶっつけ本番で試したことは反省するが、この場を乗り切るにはこれしかない。

 そして、天狼の仲間とやらの所在も確認するには、今の俺だけでは力不足だ。ならば、天狼の力を借りる他ない。

 

 そういうわけで、俺は天狼との合身を選択した。

 しかし、なんというか…。

 

ピク、ピク。

フサァ…。

 

 自分の肉体に新たに生えた狼耳と狼尻尾には、正直まだ慣れそうもない。

 それに心なしか嗅覚も鋭くなったから、ちょっと戸惑う気持ちの方が強い。

 

「獣人!?」

「いや、狼の姿がない!」

「まさか、憑依したとでもいうのか!?」

 

 俺の変化を見て、相対している三人が驚いている。

 

 ま、俺自身もこの身に起きた事実を受け入れるに少し時間が必要っぽいが、そんな感傷に浸ってる場合でもあるまいか。

 

 俺はその場で二、三回ほど軽くジャンプして自らの身の軽さを確認する。

 

 思った以上に身体が軽い…。

 騎士の速度でもかなりのものと思っていたが、天狼の速度はもっと上なのだろうか?

 そう考えると、むやみやたらに使うのもかなり危険なのでは?

 あの速度…天狼自身なら耐えられるだろうが…俺の身には荷が重いだろう。

 最初、天狼が俺を連れて堕天使共から逃げてくれた際も俺は気絶してしまったし…。

 出力は抑えめにして慣れていかないと…おそらく俺の肉体が先に参るな。

 

 そんなことを考えていると…

 

『主よ。先にも言ったが、我等の力は人の身である主には危険な類の代物だ。十分に注意せよ』

 

 俺の頭ん中に天狼の声が響いてくる。

 

 オーライ、天狼。

 やはり、その感覚に間違いはなかったか。

 とは言え、天狼の力の一端には触れておかないと、今後何かが起こるとしても大変だからな。

 いきなり全力、なんてことはしない。せいぜい一割か、それ未満だ。じゃなきゃ俺の身が持たん気がするし、下手に力を使って逆に動けなくなる、なんてのも避けたい。

 

「狼が憑依したところで、所詮は人間。早々に退場願いましょうか」

 

 ユーベルーナとかいうのが、空から俺に手を向けて魔力を収束していく。

 

 ん?

 なんか魔力とやらが見えるようになったか?

 これも合身した影響なのか?

 まぁいい。見えるのなら見えるで、対処がやりやすくなったと考えればいいか。

 

 などと考えていると、左右からイザベラとカーラマインの気配と匂いがしてきた。

 

 やはり、カーラマインの方が速いか。

 挟撃と言えど、騎士と戦車では役割が違うということか。

 これでイザベラではなく、もう一人の騎士ならタイミングも合いそうなものだが…。

 

 そんな思考を巡らせている合間にも着々とユーベルーナの魔力とカーラマインの剣、イザベラの拳が迫ってくる。

 

「ふっ…!」

 

 俺は先に迫るカーラマインの剣の腹を回し蹴りで軌道を逸らす。

 

「っ…こいつ!?」

 

 逸らされた剣の軌道を修正しようとするカーラマインを横目に俺は、その勢いのまま軸足を変えた蹴りでイザベラの拳を正面から受け止める。

 

「なにっ!?」

 

 戦車の攻撃力を受け止めるにゃこうするしかないとはいえ、結構な衝撃だな…!

 

「イザベラ! そのまま押さえろ!」

 

 カーラマインが叫びながら剣を再び振るってくる。

 

「よっこらせ、っと!」

 

 俺はイザベラの拳を足場にしてその場で一回転しながら…

 

「返すぜ!」

 

 空から迫ってきたユーベルーナの魔力を蹴り返す。

 

「なっ!? 魔力を蹴り返した!?」

 

 俺の行動に驚いたようだが、そこは腐っても女王…俺が蹴り返した自分の魔力を回避しやがった。

 ついでに…

 

「人の拳で曲芸をするな!」

 

 イザベラが怒りで力を込めてきたので、その前に片足で跳躍して迫るカーラマインの肩を踏み台に一時的に離脱する。

 

「くっ…!」

 

 カーラマインの方も急に標的がいなくなったから素早く剣を引いていた。

 

「ふぅ…」

 

 一旦距離を取った俺は深呼吸を一つする。

 

 体力やこういう場面の対処にはそれなりに自信はあるが、流石に人じゃない存在相手だと、どうなるか予想がつかん。このままだとジリ貧かな?

 さっさとここを突破して天狼のお仲間の所在を探りたいんだがな…。

 

 そんなことを考えていると…

 

「ライザー様? はい、はい……わかりました」

 

 空に鎮座していたユーベルーナの耳元に何やら魔法陣ってやつが浮かぶと、誰かと会話しているようだ。

 まぁ、十中八九相手の王…ライザーってやつとだろうが…。

 

 すると…

 

「少々遊びが過ぎたようです。私はそろそろあちらに向かいます。ここは任せしますよ?」

 

「向こうも動いたということか」

 

「……………」

 

 ユーベルーナの言葉にイザベラは答えるが、カーラマインはどこか苦々しい表情だった。

 

 向こう?

 ………あ~…やっとグレモリー先輩達が動いたのか…。

 

 俺はここでこれがレーティングゲームとやらの試合中なのを思い出した。

 

「それと、そこの人間」

 

 さらにユーベルーナは俺を呼びつける。

 

「なんだ?」

 

「ライザー様からの伝言です。『人間風情がよくやる。俺のとこまで来てみろ。直々にその実力を見定めてやるよ』とのこと」

 

「はっ! 随分と上から目線な鳥野郎だな?」

 

「……伝言は伝えました。イザベラ、カーラマイン。後は任せます」

 

 俺の挑発を意に介さず、ユーベルーナは体育館の方へと飛び去っていた。

 

 戦力が減ったのは嬉しいが、ゲームである以上は決着が必要か。

 引き分けはありえないだろうしな。

 となると、グレモリー先輩達が取る手立ては限られてくる。

 一番は敵の王を取ることだが、それまでにどう敵の目を掻い潜るのかによるか…。

 人数的にもグレモリー先輩達が圧倒的に不利だしな…。

 

 決着が着く前に、俺もあの鳥野郎のところに向かうとするかな。

 最悪、カードさえ手に入れば俺は問題ないし。

 

 俺がそんな風にプランを練っていると…

 

ドオオオオォォォォォンッ!!!

 

 体育館方面から凄まじい音が聞こえ、地響きを感じる。

 

 天変地異か何かか?

 見た限り、イザベラもカーラマインもあまり動揺してないことから、魔力攻撃の類だと判断できるが…。

 

 すると…

 

『ライザー・フェニックス様の「戦車」一名、「兵士」三名、戦闘続行不能です』

 

 そんなアナウンスが聞こえてくる。

 

 誰がやったか知らないが、派手なこって…。

 

 だが、その次の瞬間…

 

『リアス・グレモリー様の「戦車」一名、戦闘不能です』

 

 グレモリー先輩側も一人、やられたらしい。

 戦車ってことは…確か、塔城か。

 

 だいぶゲームが動いてきたようだな…。

 

「カーラマイン。この人間だけはここで倒しておくぞ。このような者、ライザー様の前に出すわけにはいかない」

 

「……わかっている!」

 

 再び俺とイザベラ、カーラマインとが対峙して戦闘が始まろうとした矢先…

 

「お待ちなさい。二人とも」

 

 ずっと静観していたドレス姿の少女が待ったをかけてきた。

 

「レイヴェル様?」

 

「いかがなさいましたか?」

 

 イザベラとカーラマインが少女…そういや、レイヴェルとか言ってたな…の方を向く。

 

「せっかくお兄様が見定めるとおっしゃってるのですから、ここは通してもいいんじゃないかしら?」

 

 そのレイヴェルの言葉に二人はギョッとしたような表情になる。

 

「人間一人に後れを取るお兄様ではありませんわ。違いまして?」

 

「し、しかし…」

 

 カーラマインが何か言いたそうにしているが、なかなか言葉を紡げずにいるようだ。

 

「それよりも、ここにくるだろう正規の眷属の方が厄介ですわ。戦車の方はいなくなりましたが、まだ騎士と、数になるかはわかりませんが、たった一人の兵士もいます。ここで確実に撃破した方が楽でしてよ?」

 

「それはそうかもしれませんが…」

 

 イザベラがチラリと俺を見る。

 

「頭数で言うなら、この人間も撃破しておいた方が後々楽かと…」

 

「それはそうでしょう。ですが、先程も言いましたが、たかが人間風情にお兄様が後れを取ると思いますか?」

 

「「……………」」

 

 そのレイヴェルの言葉にイザベラもカーラマインも押し黙ってしまう。

 

「多少の余興は必要でしてよ?」

 

 その言葉に…

 

「わかりました。ここはレイヴェル様のお言葉に従います」

 

「イザベラ!?」

 

 イザベラの言葉に今度はカーラマインが驚いていた。

 

 かくいう俺も内心で驚いている。

 どういう風の吹き回しだ?

 

「悔しいが、この人間は筋が良い。時間をかければ倒せないこともないが、他の眷属と合流されても面倒だ。ならば、ここはライザー様の暇潰し(・・・)に付き合ってもらった方がいい」

 

「そういうことですわ」

 

「………承知した…」

 

 イザベラの言葉を肯定したレイヴェルを見て、カーラマインも諦めたように剣を引く。

 

「確かに、こいつで消耗した体力を少し回復もしたかったからな。どれだけの猶予があるか、わからんが…」

 

「そうだな」

 

 そう言うカーラマインにイザベラも同意していた。

 

 つまり…

 

「行っていいんだな?」

 

「えぇ。どうぞ、ご自由に…」

 

 俺は警戒しながらも対峙していたイザベラとカーラマインの間をわざと抜けて運動場から抜け出そうとする。

 

「「……………」」

 

 驚くことに二人からの攻撃は一切なかった。

 

 マジで通すつもりか?

 

 それに驚きつつも俺はチラッとレイヴェルとかいう少女を横目で見る。その視線に気付いてか、レイヴェルは軽く手を振っていたが…。

 

 つか、今更ながら、あいつ…『お兄様』とか言ってたな。

 血の繋がった兄妹か何かか?

 悪魔の少数精鋭制度はそんなのもありなのか?

 もしそれが事実なら…あの鳥野郎、イッセー並みの変態だな…。

 

 敵の眷属構成を思い返しながら、俺はライザー・フェニックスの人物像を再考察していた。

 

 

 

 ともかく、俺は運動場を抜け、新校舎を目指した。

 その途中、ライザー側の兵士が三人撃破されたというアナウンスも入る。

 さて、思わぬ助け舟でここまできてしまったが…まぁいい。

 改めて対面しようじゃねぇか。

 敵の王に、な。

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