ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~ 作:伊達 翼
例のレーティングゲームが終わり、幾日が経つ。
イッセーはゲームが終わった直後から二日間は昏睡状態だったらしいが、二日経った夜に目覚めたらしい。
ちょうど、その頃にはグレモリー先輩とライザーの婚約パーティーが催されていたとのこと。
ま、俺には関係ないので、その辺はどうでもよかったのだが…。
ただ、話はここで終わらなかったようだ。
目覚めたイッセーが婚約パーティーに殴り込みをかけ、ライザーと一騎打ちをしたのだと…。
話を聞いた俺は正直、よくやるな、と…呆れ半分、感嘆半分ってとこだったな。
詳しくは知らないが、イッセーは神器の中に眠るドラゴンに左腕を代価に支払い、力を得たという。
そして、ドラゴンの力に加え、悪魔の弱点である十字架をドラゴンの腕と化した左手に持ち、聖水なんかも利用してライザーを倒したのだという。
その後、グレモリー先輩を婚約パーティー会場から連れ去ったそうだ。
なんとも劇的なこって…。
しかし、悪魔社会の婚約はどうなるのだろうか?
ま、俺には関係ない話だから…というのは、どうも早計だったらしい。
………
……
…
後日、俺は旧校舎…オカ研の部室に呼び出されていた。
「何か御用で?」
面倒そうにオカ研の部室に入った俺に対し、デスクに座っていたグレモリー先輩は一枚のカードを見せてきた。
「これ、何か知っているかしら?」
それはライザーが持っていた紅蓮のカード!
何故、先輩が…?
「!? そ、それは…」
それを見た瞬間、珍しく動揺してしまった俺の姿を見て、グレモリー先輩は軽く溜息を吐いていた。
「ライザーが家を通して私に送ってきたのよ。『このカードをあの人間に渡してやれ。俺にはもう必要のないものだ…』ってメッセージ付きでね」
ライザーめ…余計なことを…。
いや、だが…あの時、カードのことは先輩にも見られてたしな…。
いずれにせよ、繋がりがバレてたかもしれないか…。
ちっ…せめてゲーム中にライザーの手から奪っておければ…。
後悔先に立たず、とはよく言ったもので、俺は少しだけ後悔していた。
「最近、似たようなカードを見たから、もしかしてとは思ったけど…これもあなたの神器なの?」
グレモリー先輩の核心を突いてきた質問に俺はどう答えるか悩む。
どうする?
下手な返答でカードを隠されても困る。
かと言って、正直に話して素直に渡してくれるかどうか…。
「……………」
俺が色々と考えてて黙っていると…
「……受け取りなさい」
そう言ってグレモリー先輩は紅蓮のカードを投げてきた。
「!?」
俺も反射的にその紅蓮のカードをキャッチすると、怪訝そうな表情でグレモリー先輩を見る。
「どういうつもりで?」
真意がわからないからこそ、投げかけた質問にグレモリー先輩は…
「これは報酬と、謝罪よ」
そう答えていた。
「謝罪…?」
報酬はともかく、謝罪だと…?
「えぇ。この間のゲームに参加してくれたことへの報酬として、そのカードは渡してあげる。それと、結果的に巻き込んでしまったことへの謝罪も込めて今回は何も聞かないでおいてあげる。けど、二度目はないわ」
「……………」
悪魔が謝罪、ね…。
それを聞いて、俺はどこか拍子抜けな気分になってしまった。
「用件はそれだけよ」
話は終わったとばかりにグレモリー先輩はデスクで何やら書類を見始めてしまった。
「礼は言わないですよ」
それだけ言い残し、俺はオカ研の部室からさっさと退散するのだった…。
………
……
…
図らずも紅蓮のカードを手に入れた俺は…
「とりあえず、話してみるか」
紅蓮のカードを左手に持ち替え、胸ポケットにしまっていた天狼のカードを右手で取り出す。
「なぁ、天狼。こっちのやつってもう起きてるのかな?」
『主の手に渡った以上、目覚めているはずだが……おい、鳳の。起きているのだろう?』
天狼が紅蓮のカードに封印されている存在に声をかけると…
『ん、その声…狼?』
紅蓮のカードから声が聞こえてきた。
聞いた感じ的にはどこか若そうで、男っぽいな。
『あぁ、久しいな。鳳の』
『お久しぶりです、狼。僕らが目覚めたということは…?』
『そうだ。遂に我等を目覚めさせるだけの強い想いを持った者が現れた。それが、目の前のこの男だ』
どちらもカードの中にいるものの、しっかりと言葉で会話しているようだ。そして、天狼は俺の事を紅蓮のカードに封印された…鳳、とやらに紹介していた。
『この方が…? ただの人間にしか見えませんが…?』
おそらくカードの中から俺を見て鳳は首を傾げているんだろうな。
「初めましてだ。俺の名は紅神忍。ただの探偵、って言ってもわからんか。ただの人間だよ」
『タンテイ?』
「ま、それは追い追いな。姿を見たいんだが…流石にこの場じゃ厳しいか」
『? 何か問題でも?』
俺が鳳を召喚せずにいると、鳳から質問が入る。
『うむ。我も最近になって知ったが、今の世はどうやら超常的な力への認識が希薄らしくてな。我々のような存在は肩身が狭いのだ。他の超常の存在も、仮の姿で人間の生活圏で活動しているようだしな』
『僕らが長く眠り過ぎた、ということですか?』
『そうなるな』
天狼の言葉に、やや沈んだ気配を見せる鳳は…
『……他の皆さんは?』
天狼にそんな質問をしていた。
『不明だ』
『そう、なんですか…』
天狼のキッパリした言い方にさらに沈んだ様子の鳳。
『だが、悪いことばかりでもない。こうして我等が目覚め、再び集まれたのだ。他の連中もいずれ主が見つけてくれるだろうよ』
その鳳に対し、天狼はそのように言う。
それはちょっと期待が過ぎるぞ、天狼さんや。
『主?』
『付き合いはまだ短いが、こやつの人となりは見させてもらった。その上で、我は主と認めている。名も貰ったしな』
怪訝そうな反応をした鳳に天狼がさらに付け足す。
『名を!?』
『うむ。今は主の名付けた天狼を名乗っている』
『いいなぁ~』
とこか少年のような声音で鳳が言葉を漏らす。
力はあるが、名のない存在…。
天狼を名付けた時もそうだが、やっぱり名前がないというのは物悲しく感じる。
これほどの力を持った存在なのに名もなく、その上で封印までされてしまったのだから…。
しかし、その一方で疑問もある。
どうして神器なんてものに封印されたのだろうか?
それに聖書の神とやらがそれほどの力を持っていたのならば、別に神器なんてものを作らなくてもよかったのではいのだろうか?
聞いた限り、神器は人間にしか宿らないというし…。
……何か見落としているような気もするが…。
ともかく、今は鳳の名前を考えるか。
そんな風に考えた後…
「鳳、ってことは鳥なのか?」
『あぁ、こやつは焔の鳥。不死鳥とは異なるが、我等はその姿を見て鳳と呼んでいる』
「ふ~ん…焔の鳥、か…」
本当なら姿を見てから名前を決めたかったが…。
「『
『焔の鳥』という響きからインスピレーションを受け、名付けてみたが…はたして気に入ってもらえるかな?
『焔鷲…』
「気に入らないなら別のも考えるが?」
鳳の反応をどう捉えたものかと思っていると…
『よいのではないか?』
「天狼?」
天狼が援護してきてくれた。
『我は良い響きで、お前に合っていると思うぞ?』
『おおか…いえ、天狼…』
『後はお前が気に入るかどうかだ』
天狼の言葉を聞いてしばらく、鳳は考え込んでいたようだが…
『………わかりました。焔鷲の名、ありがたく頂戴いたします』
「いいのか?」
名付けておいてなんだが、こんな簡単に決めてもいいものか?
いや、天狼の時もわりと簡単に決めたような…。
『はい。名前の善し悪しは僕にはわかりませんが…焔鷲という響きは嫌いではありませんから』
この丁寧な言葉遣いから鳳…いや、もう『焔鷲』か…は紅蓮のカードの中でお辞儀してるかもしれないな…。
「すまんな。本当なら姿を見てから決めたかったんだが…お前達を出せる場所がなぁ」
こればかりは本当に申し訳なく思う。
『事情は承知しておりますから、お気になさらず。しかし、今の世、ですか…ちょっと気になりますね』
『お前は好奇心が強い方だったからな。とは言え、我等の姿は人目につきやすい。しばしの我慢だ』
『わ、わかってますよ』
そんな会話を微笑ましく聞きながら、俺は…
「これからよろしくな、焔鷲」
改めて焔鷲に挨拶をしていた。
『はい!』
それに対し、焔鷲も元気よく返事をしたのだった。
ともかく、これで二体目か。
正直、姿をまだ見れないのが残念でならないが…。
今は俺も我慢だな。
にしても、あと五体か…。まだまだ先は長そうだ。