ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第二十話『動き出す黒き翼』

 明香音とのデート中に立ち寄ったファミレスで、俺は偶然にもイッセー達と遭遇してしまった。

 遭遇と言っても隣の席になってので軽く挨拶しただけだ。立ち入った話は聞いてないし、肩入れもするつもりもないのだが…。

 どういうわけか、明香音がゲームの話と勘違いして、少し情報を拾ってしまった。

 聖剣エクスカリバーの破壊。

 また厄介事に巻き込まれてるようだ。

 

 しかし、聖剣エクスカリバーか。

 俺でも知ってる超有名な剣の名前だな。

 それを破壊とは穏やかではない。

 

 穏やかではない、と言えば…。

 木場の過去話にもつい耳を傾けてしまった。

 掻い摘んで言うと、木場は過去に教会で行われていた『聖剣計画』なるものの被験者であり、聖剣への適合を目的とした研究らしい。詳しくはわからんが…その計画で失敗作としての烙印を押された木場やその仲間であった子供達は処分されることになったという。

 酷い話だとは思う。

 

 だが、だからと言って俺が首を突っ込んでもいい話ではないだろう。

 そもそも俺は部外者だ。

 まぁ、盗み聞きしたようなもんだから悪いとは思うが…。

 

 その話を聞き、イッセーと塔城と共にいた男が号泣していた。

 記憶を漁ってみて気付いたが…確か、生徒会役員の『匙元士郎』、だったと思う。 

 何故、生徒会役員が学園の問題児と行動を共にしているのかがいまいちわからんが…。

 というか、こいつも木場の話を聞いてたということは、もしや悪魔の関係者か?

 

 そんな今更の疑問を抱きつつ、明香音がパフェを食べ終えたのを確認した俺は…

 

「じゃ、そろそろ行くか」

 

「うん」

 

 会計を済ませて明香音と共にファミレスを後にした。

 

 あまり長居しても仕方ないからな。

 まぁ、聞いてしまったことを他言する気は毛頭ないけど…。

 釘を刺されるくらいは覚悟しとくかな。

 

 とは言え、だ。

 今はこの穏やかで満たされた時間を有意義に過ごしますかね。

 束の間の時間かもしれないが…。

 

 それから数日後の夜。

 ちょっとどころじゃない騒動が起こるとも知らずに…。

 

………

……

 

・???視点

 

 その夜、俺は唐突に目が覚めた。

 いや、正確には『懐かしくも迷惑極まりない戦争バカの波動』を察知して起きてしまったのだ。

 

「ふぅ…まさか、この町からドンパチを始める気か?」

 

 俺はそう呟きながらベッドから身を起こし、隣で寝ている嫁を起こさないようにして寝室の窓へと移動する。

 

「迷惑極まりないね、まったく…」

 

 しばし窓から外の様子を見ていると…

 

「あなた…?」

 

「おっと、起こしちまったか?」

 

 我が愛する嫁が起きてしまったようだ。

 

「どうしたの? こんな夜更けに…」

 

「なに…ちょっとばかり古い馴染みの中でもとびきり迷惑な奴の波動を感知してな」

 

「古い馴染みって…もしかして…」

 

 嫁はそれだけで察してくれたようで、俺を心配そうな目で見つめてくる。

 

「あぁ…俺のご同輩(・・・)さ」

 

 俺は肩を竦めて嫁にそう告げる。

 

「……行っちゃう、の…?」

 

 嫁はどこか別の心配をしたような視線を送ってくる。

 

 嫁には色々と打ち明けている。俺がどういう存在で、どういう生き方をしてきたか、そういう過去なんかもな。ま、子供にはまだ言っちゃいないが…。

 

「さて、な。行くべきか、行かぬべきか…正直、迷ってる。とは言え、この空気は放置もできそうにない」

 

 俺は窓から見える月を眺めながらそう答える。

 

 現状、この町を縄張りとしているのは『リアス・グレモリー』だ。

 その兄貴は冥界でも名高い魔王ルシファーの座に君臨する傑物。

 貴族様のプライドも加味すると、魔王に救援は出さない……いや、配下の誰かが既に連絡している可能性もあるか…。

 あいつは戦争バカだが、実力もあるから始末に負えん。不満が溜まりに溜まって遂に暴走でもしたかね?

 今の若い世代であいつを止められるかと問われれば…無理だろうな。せいぜい魔王が救援に来るまでの時間稼ぎが関の山かね?

 とは言え、何事にもイレギュラーはあるもんだ。

 思わぬ展開であいつの計画が阻止される可能性も無きにしも非ず、だが…。

 

「………うん?」

 

 窓から外を見ていた俺の視界の隅に深夜にも関わらず、駒王学園の方に走る影が一つあった。

 

「波動の位置的に駒王学園の方、か」

 

 さて、どういう訳だか知らないが…俺も動かざるを得ないかね…。

 

「………俺の隠居生活もおさらば、かね?」

 

 と、口にした俺は…

 

「ちょっくら行ってくる」

 

 そう言ってクローゼットからもう着ないと思っていた、古い装いを引っ張り出す。

 

「ありがとな。いつも綺麗にしてくれてよ」

 

 その装いの綺麗さを見て、嫁に礼を言う。

 

「……必ず、帰ってきてね?」

 

 嫁は今にも泣きそうな表情でそう言ってくる。

 

「なに、すぐ帰ってくるつもりでいるさ。あのバカを殴った後にな?」

 

 嫁にニカッとした笑みを向けながら俺はその装いを身に纏う。

 

 さてはて…どういう因果が、動いているのやら…。 

 

 そう思いながらも俺は、長年隠してきた黒き翼を再び広げた(・・・・・・・・・)

 

………

……

 

 俺は今、深夜にも関わらず駒王学園へと向けて走っていた。

 

 ったく、なんだってんだよ。

 天狼と焔鷲が何かを察知したらしく俺を叩き起こしたかと思えば、どこか空気が重苦しく感じたので家族には黙って外に出たのだが…。

 

「すんすん………って、合身もしてねぇのに、匂いでわかるはずもねぇか…」

 

 普通の人並みの嗅覚で状況がわかるはずもなく、そこで天狼と焔鷲を召喚しようとしたが、こんな場所ではマズいと思い、仕方なく駒王学園の方へと走っていた。

 天狼と焔鷲も駒王学園の方から異質な力を感じると言っていたし…この場合、致し方ないと考えて向かうことにした。

 

 自分から首を突っ込むようなことをするとは…。

 はぁ…我ながら嫌になるね、まったく…。

 

 そうして駒王学園の方まで走ってきたら、何やら光の壁っぽいものが張られているのに気づく。

 

 なんだ、こりゃ?

 

 俺は走るのをやめ、その光の壁沿いに歩くことしばし…。

 校門前に複数の人物が集まっているのを見つけた。

 

 あれは…グレモリー先輩に、生徒会長?

 何故、生徒会長までここにいるんだ?

 

 不思議に思いながらも俺は近くにあった電柱の陰に隠れるようにして様子を窺っていたのだが…。

 

「アンタ、ここで何してんの?」

 

「!?」

 

 すぐ後ろから声をかけられ、俺はすぐさま振り向くと、そこには…

 

「動くな…」

 

 この前見たイッセー達とファミレスで食事してた内の一人…白フードの下にシスター服を着用した女だ。

 俺の耳でも日本語を話しているのはわかったが…その手には白い包みに覆われた…『何か』が俺の首を貫かんばかりの勢いで寸止めされていた…。

 

「っ…」

 

 振り向いたのは仕方ないにしても、物騒なことこの上ない。

 

「? 見た目は一般人…のはずだけど、肝が据わってるわね?」

 

「最近、色々とあったからな。おかげで変に肝が据わっちまったのさ」

 

「ふ~ん…」

 

 興味なさげな女の反応を見て、俺は…

 

「一応、その物騒なもんは引いてくれないか? 肝は据わってても、小心者でね」

 

 一先ず、白い包みを引っ込めさせるように提案していた。

 しかし…

 

「アンタが向こうのスパイ、って可能性もあるわよね?」

 

「生憎とそういうのは専門外だ。俺は探偵だからな」

 

「探偵…? ますます胡散臭くなったわね」

 

「やれやれ…どうしたもんかね…」

 

 困ったことに俺は不審がられていた。

 ま、かく言う俺も相手の事を不振がっているのでお相子とも言えるが…。

 

「俺なんかに構ってていいのかい?」

 

「………………」

 

 俺の言葉に目の前の女はしばし考えた後…

 

「そうね。こっちにも任務があるし、不確定要素はあるけど…単なる人間がいたところで戦力にもなるはずもないか…」

 

 そう言って女は白い包みを下げる。

 

「ふぅ…」

 

 あまり生きた心地がしなかったものの、ひとまずは何とかなったか。

 

「って言って素直に下ろすと思った?」

 

 と思ったのも束の間、すぐさま白い包みを俺に向け直してきやがった…。

 

「任務があるんじゃねぇのかよ…」

 

「一般人がこんな危険なとこにくるわけないでしょうが…しかもアンタ、なんかそれもわかってる風だったし…」

 

 さて、本格的にどうするかな…。

 

 

 

 かくして俺はこれからどうしようかと頭を捻るはめになった。

 やっぱ、来なきゃよかったな。

 とは言え、危険が迫ってるのがわかっているのに何もしないってのもなぁ…。

 まぁ、何ができるのかはともかくとして…。

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