ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~ 作:伊達 翼
俺は今、目の前にいる、隣の家に住むはずのおじさんの背中を見ながら混乱状態に陥っていた。
おじさんが、堕天使…?
その事実が、俺にはあまりにも衝撃的で、現状把握をも忘れるほどに混乱していた。
「つ~か、コカビエルよぉ。俺が
「ちっ…相変わらず忌々しい存在が!!」
「戦争バカを拗らせて暴走するよりかはマシなつもりだぜ?」
「減らず口を叩くな、臆病者が!!!」
「どうとでも言いな。今の俺には守るべき家族がいるんでね」
などと口論する二人の様子を見てか…。
「仲間割れ…いえ、最初から敵対しているの…?」
「ゼロ、などという堕天使など聞いたことはないな。聖書にも記されていないはずだが…翼の数的には上級か、幹部クラスか?」
グレモリー先輩がそのように漏らし、校庭の魔法陣の近くにいた初老の男が何やら考察していた。
状況に追っつけずに混乱している俺だが、おじさんが堕天使だって以外にも気になった言葉が一つある。
『俺がどういう存在か』、というものだ。
どういう意味だ?
おじさんにはまだ明かしてない何かがあるのか…?
これ以上、混乱させてほしくはないが…どうも、気になってしまう…。
そんなことを考えていると…
「いずれにせよ、時間の問題だな。陣が完成した以上、この町は崩壊する。止めるにはコカビエルを倒す他ない」
初老の男がそのような言葉を発していた…!?
なんだと!?
この町が崩壊する!?
俺が内心で驚く中…
「やれやれ…また面倒な…」
それを聞き、おじさんは肩を竦めていた。
「『バルパー・ガリレイ』! 僕は『聖剣計画』の…死にぞこないだ。悪魔に転生して生き残った、あの時の子供の一人だ!」
その初老の男…『バルパー・ガリレイ』というらしい…に対し、木場が憎悪を秘めた眼差しでそのように叫ぶ。
「ふむ? あの計画の被験体か。こんな極東の島国で再び会うとは、これも縁か」
そこからバルパーという人物は、聖剣に対して抱いていた憧れが絶望に変わり、自らの欲望を満たす研究のことを、特に罪悪感もなさそうに語った。
掻い摘んで言えば、研究に犠牲は付き物であり、木場やその仲間達も研究のために死んだのだと…。
それからバルパーは異端視され、その研究は『ミカエル』という天使がそういった犠牲を出さないように推し進め、人工的な聖剣使いを生み出すことになったのだとか…。
聖剣の因子を抽出し、他者に与える、ね。
やはり、教会とやらもなかなかにグレーゾーンな行為を行ってるみたいだな。
皆が皆、そうでないにしろ、一部が暴走すれば、それにつられる輩はいるもんだからな。
そして、バルパーは懐から木場達から抽出したという聖剣因子の結晶を、木場へと向けて放り投げていた。放り投げた本人は既に興味なさげだったが…。
「みんな…」
転がってきた結晶を手にし、木場は涙を流していた。
すると、どうだろう。
淡い光が結界内に広がり、木場の周囲に小さな子供のような存在が複数佇んでいた。
詳しい内容の声は聞こえない。
だが、木場は涙し、彼等は木場に何かを託したようにも見えた。
そして…
「なんだ…? この、感覚は…?」
合身している影響か、俺は木場からとてつもないものを感じ取っていた。
『これは…そうか。これが…』
『知識としては知っています。ですが、僕らには縁がなかったもの…それを、彼は成したのですね?』
地上にいた天狼と、俺と合身中の焔鷲が何やら呟いていた。
「どういうことだ?」
俺が二体に問いかけると…
「彼は至ったのさ。神器の持つ者の可能性の扉…それを開けたのさ」
そこにおじさんが答えてくれる。
「おじさん…」
「話はまた後でしよう。今は…コカビエルのアホを何とかしないとな?」
「……わかった」
今は考えるのをやめて、おじさんの言う通り…この町の崩壊を止めないとか。
「『
木場が静かに言葉を紡ぐと、その手には神々しい輝きと禍々しいオーラを宿した一本の剣が握られていた。
「ちっ、フリード!! 統合したエクスカリバーで、奴等を滅せよ!!」
「はいはい、ボ~ス。やっと出番というこってオレ様、頑張っちゃいますよ~ん!!」
そう言うや否や、以前廃れた教会で出会ったはぐれエクソシストの野郎が出てきて、青白いオーラの剣を手に取って木場を迎え撃つ形になる。
が、しかし…。
エクスカリバーを持つフリードと、相反する力を宿した剣を持つ木場…。
その勝負は木場の優勢で進んでいく。
見た限り、フリードは木場の速度に対応できていないようだった。
「クッソが!! あの時、
「生憎と、アンタに使われるほど安くないのよね!!」
木場の速度と同等の速度でシスター服の女がフリードに肉薄していた。
「テメェ!? そいつは…!!」
「そ、これが天閃よ」
あの女の持っているのもエクスカリバーなのか?
「-----」
さらにもう一人の女が剣を片手に、手を宙に向ける。
相変わらず何を言ってるのかは不明だが、そこから空間に穴のようなものが開くと、そこからさらに剣がもう一本出現した…!?
「-----!!」
剣の銘でも言ったのか、他の連中から…
「デュランダルだと!?」
デュランダル。
名前だけなら聞いたことがある。これもエクスカリバーに並ぶ超有名剣のはずだ。
「聖剣のバーゲンセールか?」
おじさんがそんなことを呟いていた。
かくしてフリードとの戦闘はデュランダルの一撃と、木場の剣によってわりと呆気なく決着が着いていた。
介入する間もなく、フリードが沈黙したわけだが、まだ問題は残っている。
コカビエルとかいう堕天使だ。
ただ、バルパーが何やら変なことを呟いていたが、よく聞こえなかったのでわからない。突如としてコカビエルの光の槍をその身に受けて絶命していたらしいけど…。
本当に突然のことに俺は驚いたが…。
「口封じ、か。堕ちて腐っても天使なのかねぇ?」
おじさんだけはそんなことを呟いていた。
「ゼロぉ!! こうなったら、貴様が俺の相手をしろ!!!」
血走った目でおじさんを見据えるコカビエルは、酷く激情に駆られているように見えた。
「ブランクある身に、お前の相手は厳しいんだがな~。ま、この中じゃ俺が一番の適任者、かね?」
周囲を見回しながらおじさんは一歩前に出る。
「おじさん!!」
俺もおじさんの後を追おうとしたが…
「おっと、お前はそこにいな。こっから先は…人外のバトルだからな。足手纏いになるぞ?」
「っ…」
おじさんの言葉に俺は身動きが取れなくなった。
おじさんの言う通り…今の俺では足手纏いになるのは目に見えている…。
しかし、見てるだけっていうのは…。
自分の無力さに拳を握り締めていると…
「イッセー、限界まで力を高めて私に譲渡なさい! 不確定要素の戦力を当てには出来ないわ!」
「は、はい!」
下ではグレモリー先輩達も独自に動き出している。
「さぁてと…気は進まないが、やりますかね…」
そんなことを言いつつも、ゼロおじさんの身体から黄金のオーラが噴き出していた。
黄金の、オーラ…。
本当に、おじさんは異形の存在なのか…。
その現実味が、今の俺の脳内に刻まれていく。
それと、黄金のオーラにも僅かに紅と蒼が混ざっているような…?
なんなんだ…?