ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第二十三話『相反する存在』

 これからコカビエルと対決すべく宙を歩くおじさんの背を見送る俺は今、自分の無力さに苛立ちを覚えていた。

 自分勝手なことはわかっている。けれど、思ってしまうのだ。

 俺に力があれば、と…。

 

 いくら天狼達と合身しようが、結局のところ俺はただの人間だ。

 親戚の伯父さんに武術の手解きや対人戦の心構えなんかは教わった。しかし、それは同じ人間という括りの中でなら効果を発揮するようなものだ。

 相手が異形の者では…おそらく役には立たない。役立つ場面も、あるにはあるかもしれないが…そんなのは限られていて少ないことの方が多いだろう。

 

 そんなことを思っていると…

 

「そう悲観そうな顔をするなよ、忍」

 

「っ!?」

 

 軽くこっちを振り向いていたゼロおじさんから言葉が掛かり、俺は驚く。

 

「大丈夫だ。お前は強くなる。なんたって、この…」

 

 俺の方に顔を振り向けているおじさんに対し、コカビエルが光の槍を投げてきていた…!?

 

「おじ…!?」

 

ギュインッ!!!

 

 俺が何かを言う前に、おじさんは右手を前に向けたかと思えば、コカビエルの光の槍が一瞬で消えていた。

 

「俺が義父になるんだからな? そこで見てな。お義父さんの戦いぶりを、な?」

 

 ニッと笑うおじさんは、それだけ言うと、改めてコカビエルに向き直っていた…。

 

………

……

 

・ゼロ視点

 

「ったく、不意打ちすんなら、もっと力込めたらどうだ?」

 

 俺は、忍に声をかけた後、改めてコカビエルのアホと対峙した。

 

「ゼロ…!! 相も変わらず、力だけはあるようだな…!!」

 

「そりゃあ、まぁ…無駄に力があり過ぎるからな。隠すのも一苦労よ。ま、テメェのせいでそれも水の泡だけどな~?」

 

 などと言いながらもお互いに一定の距離を置いている。

 

「何故、それだけの力がありながら、その力を振るわない!! 貴様が動けば、新たな戦争も夢ではないものを…!!!」

 

 お~、お~、相変わらず戦争したがりだな、こいつ…。

 

「嫌だね。俺は俺のために力を使う。戦争なんてクソ面倒なことに傾ける思考はないね」

 

 俺は肩を竦めて、やれやれといった感じでコカビエルの言葉を否定する。

 

「第一、俺には家庭があんの。人を愛することを知った今、テメェのくだらない事情に巻き込まないでほしいね」

 

「人を愛する、だと? ククク…アーーーッハッハッハ!! お前が? 人を愛するだと?」

 

「………………」

 

 俺の言葉に大笑いするコカビエルの二の句を俺は黙って待つ。

 

「ククク…俺を笑い殺す気か? 貴様のような存在が、人を愛せるわけがない。貴様を愛するとは、そいつはとんだアホなのだろうな!! それか、事情を何も知らぬ愚か者だ!! 貴様がここにいるということは、その愚か者も近くに…いや、この町にいるのだろう? ならば、まとめて葬って…」

 

 コカビエルが何やら喚いているが、もう聞くに堪えんかった俺は…

 

「黙れや、アホが…」

 

ゴパンッ!!!

 

「がッ!?」

 

 黄金のオーラを纏った右拳でコカビエルの顔面を殴っていた。

 

「なに、吹き飛びそうになってんだ?」

 

 だが、俺は殴った瞬間、左手で奴の胸倉を掴み、吹き飛ぶのを阻止する。

 

「ブランクあるし、久々の戦いだから、勘を取り戻そうかとも思ったが…やめだ、やめ」

 

「ぎ、様…!!!」

 

 流石に俺もキレる時はキレる。

 俺が無表情なのに対し、コカビエルは怒気を孕んだ激情の顔だったが…そんなのはどうでもいい。

 

「テメェ、自分が何を言ったか、わかってるのか?」

 

 正直、自分を抑えるつもりはない。このアホは…俺の逆鱗に触れたわけだしな?

 

「っ…舐めるなぁぁぁぁ!!!!」

 

 絶叫と共に、コカビエルが光の槍を背後に形成し、俺へと射出する。

 

「『地』」

 

 紅の混じった黄金の魔力(・・)を即座に展開した俺は、その光の槍を吸収する。

 

「使ったな!! 悪魔(・・)の力を…!!!」

 

「だから?」

 

ドゴンッ!!!

 

 俺はそんなことはどうでもいいと言うようにコカビエルの腹部を思いっきり殴って上空へと打ち上げる。

 

「かはっ!?」

 

 血反吐を吐きながらもコカビエルは言葉を続ける。

 

「貴様の存在がそもそも間違っているのだ!! 天使と悪魔のハーフ(・・・・・・・・・)が!!!」

 

 コカビエルの野郎、敢えて俺の情報を流したな?

 

「今は堕ちた証を持とうと、貴様が天使と悪魔のハーフである事実は消えない!!」

 

「………………」

 

 俺が押し黙っていると…

 

「天使と悪魔の、ハーフですって…!?」

 

「そんな…バカな…!」

 

 この事実に下で色々と準備してただろう悪魔の嬢ちゃんや教会の女戦士が驚いていた。

 

「事実だ! こいつは、大昔の大戦時に生まれた異端にして奇跡の子だ!! 生まれたはいいが、様々な視線に耐え兼ね、自由を求めた奴は堕天し、今まで隠れてきた!! それが今更ノコノコと現れたのだ!!」

 

「プライバシーも何もあったもんじゃねぇな…」

 

 コカビエルが言ったことは事実。

 俺の中には天使と悪魔、その両方の血が流れている。ま、今はもう堕天した身だけどな?

 だからこそ、俺には天使と悪魔に由来する力が内包されているわけだが…。

 その一端がさっきコカビエルの攻撃を吸収した力なわけだけど…ま、別に言わなくてもいいな。

 

「それもこれも、聖と魔のバランスが崩れたのが原因だ!!」

 

 おっと?

 こいつ、そこまで暴露する気か?

 さっき真実に気付いたっぽい奴を自らの手で消したのに?

 

 そんなコカビエルの行動をどこか他人事のように見聞きしていると…

 

「どういうこと…?」

 

 今の発言に悪魔の嬢ちゃんが訝しげな視線をコカビエルに向けていた。

 

「現魔王の妹である貴様も真実を知らぬか。いや、それは当たり前のことだ。この事実は致命的だからな。しかし、ゼロやそこの聖魔剣のような存在がある以上、気付くのも時間の問題か。ならば、教えてやろう! 先の三つ巴の大戦時、古の四大魔王が消えたのと同時に、神も死んだのさ!!」

 

 あ~あ、言っちゃったよ…。

 

『っ!?!』

 

 コカビエルの暴露に俺や、事情をよく知らないだろう忍…あと、龍の力を感じる小僧以外は驚愕の表情を浮かべる。

 

「そんな…嘘だ…」

 

「ゼノヴィア! しっかりしなさいよ!」

 

「………………」

 

 この事実を知り、聖剣デュランダルを持つ少女が膝をつき、聖魔剣の小僧も動揺がある。もう一人の聖剣持ちの少女は、デュランダルを持つ少女に喝を入れてるが、こちらも動揺が隠しきれていない様子だ。

 

「お兄様は知っていたというの? だけど、この事実は…」

 

 悪魔の嬢ちゃんもかなり動揺している。

 

「主は…もう死んで…」

 

「アーシア! しっかりしろ!」

 

 金髪の嬢ちゃんも酷く絶望した様子を見せていて、龍の力を感じる小僧が励ましているが、あまり効果はない。その様子を見るに元は教会の関係者だったか?

 

「神亡き後、ミカエルはよくやっている。しかし、それにも限度はある。神がいなくては純粋な天使は生まれない。堕天使は天使が堕ちれば増えるとは言え…それでも人間がいなくては我々も天使共も増えることは難しくなってしまった」

 

 そう、純粋な天使は種としてはかなり未来が見えない。

 堕天使も、自ら増やす方針でない限りは…。

 だが、ミカエルもアザゼルも、互いに戦争はもうしないだろう。

 悪魔にしても、戦争はしないはずだ。

 三大勢力のいずれも…先の三つ巴の大戦で手痛い代償を払ったのだから…。

 

 俺がそう考えていると…

 

「よくわからないが、お前の勝手な言い分で俺の住む町を、ダチを、仲間を、部長を、アーシアを消されて堪るか!! 俺にはまだハーレムを作るっていう野望があるんだよ!!」

 

 地上から龍の力を感じる小僧がコカビエルに啖呵を切っていた。

 

 熱いね~。青春だね~。その発言はともかくとしてな?

 というか、あの赤い篭手…もしや、赤い龍か?

 しかし、見た限りまだ聖魔剣の小僧のように禁手にはなれていないようだが…?

 

 俺が小僧を見ながらも首を傾げていると、コカビエルの甘言に一瞬固まる小僧の姿が見えた。

 

 おいおい、さっきの啖呵はどこ行った?

 しかし、そこに悪魔の嬢ちゃんの怒声と、何やら変な方向の発言によって龍の力が凄まじい勢いで高まるのを肌で感じた。

 おぉう、マジか…性欲でそこまで力を高めるなんてな…。

 若いって凄いな~。

 

 そんな呑気なことを考えていると、ふと上空から別の龍の力を感じた。

 

「ふふっ、面白いな」

 

 その声と共に白き鎧を纏った人物が結界を破り、この空間へと侵入してきた。

 

 白い鎧に龍の力…白い龍、か。

 赤に惹かれたのか、それとも別の思惑があるのか…。

 

 白い龍の登場に、俺はしばし静観していると、白い龍はコカビエルを瞬時に無力化していた。

 

 これはまた…。

 それにこの力の波動は…。

 とんでもない存在を拾ったな、アザゼル。

 

 白い龍とコカビエルとの会話も少し拾えたので、俺はそんなことを考えていた。

 そうして、白い龍がコカビエルと、地上にいた神父を担いでいるのを見て、あることを思いついた。

 

「お~い、白い龍や」

 

「? 誰だ?」

 

 白い龍が訝しげに俺を見る。まぁ、それはともかくとして…。

 

「そこは気にするな。それよりもアンタに頼みことがあるんだ」

 

「俺に?」

 

「あぁ。アザゼルに伝えてくれ。『ゼロがいずれ挨拶に行く』ってな」

 

 俺は伝言を頼むことにした。

 

「? よくわからんが…アザゼルに伝えればいいのか?」

 

「あぁ。名高い白い龍をメッセンジャーに使う無礼には目を瞑ってくれや」

 

「………いいだろう。不思議な御仁よ。アザゼルにも引けを取らないその翼に免じて、その伝言は預かろう」

 

「そいつはどうも」

 

「では…」

 

 白い龍が去った後、残ったのは力を高めたにも関わらず、白い龍に美味しい場面を奪われた赤い龍と、悪魔の嬢ちゃんや教会の戦士達、そして…。

 

「…おじさん…」

 

 状況が全くわからなくなってしまったような未来の息子だった。

 

「さ、帰るぞ、忍」

 

 そう言って俺は忍の頭をポンポンと撫でるのだった。

 

 

 

 さてと、まずは忍の奴に色々と俺の事情も説明しないとな。

 明香音のことも…。

 全てを話した後、忍は明香音を幸せに出来るかね?

 ま、そこは心配していない。あの二人の事はずっと見てきたんだ。きっと、大丈夫さ。

 

 ………あ、忍のこともしっかり聞き出しとかないとな。

 なんだか、おかしな気配もあることだし。

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