ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第二十四話『お隣さんの事情と真実』

 コカビエル襲撃事件から数日後。

 

 俺はお隣の天道家に足を運んでいた。

 いつもなら依頼を片付けるのだが、今日は明香音が友達と放課後のショッピングに向かったため、これ幸いにと俺も帰宅すると、すぐにお隣の天道家へとお邪魔していた。

 

「いらっしゃい、忍君」

 

「どうも、明日香さん」

 

 挨拶も程ほどにしていると…

 

「あの人が待ってるわ」

 

 明日香さんが俺を家に招き入れてくれた。

 

「……わかりました」

 

 俺もおじさんには聞きたいことが山ほどあるが…それができるのは明香音が帰ってくるまでの短い間だろうな。

 

 そうして俺は明日香さんに案内され、天道家のリビングへと足を踏み入れた。

 

「よっ、来たな」

 

 そこには、昔からいつもと変わらない感じのおじさんがソファーに座っていた。

 

「お茶を用意してくるね」

 

「悪いな、明日香」

 

 少し込み入った話になるのがわかってるのか、明日香さんはキッチンに向かう。

 程なくして明日香さんが三人分のティーカップをお盆に乗せてリビングに戻ってくると、おじさん、俺、自分の順にティーカップを置いていった。

 ティーカップの中身はハーブティーらしい。

 

「さて…時間もないことだし、手短に済まそうか」

 

 ティーカップのハーブティーを一口飲んでからおじさんが切り出した。

 

「コカビエルのアホが暴露した通り、俺は人間じゃない。天使と悪魔のハーフだ。ま、堕天してもう随分と長いけどな」

 

「なら、明日香さんは…?」

 

「私は、正真正銘の人間よ。この人とは、高校の時に出会ってそこからの付き合いなの」

 

「え…高校?」

 

 明日香さんの言葉に驚いていると…

 

「恥ずかしい話だが、悪魔の血が混じってるせいか、見た目をある程度コントロールできてな。それで、何度目かわからん学校生活を送ってたのさ。ま、戸籍なんかも色々と細工してな?」

 

 そう説明された。

 

「狼夜伯父さんが聞いたら、こってり絞られそうな案件ですね…」

 

 おじさんの言葉に俺の顔は引きつっていただろう。

 まぁ、狼夜伯父さんも親父と同じでオカルト関係で事件を片付けられるのが嫌いだからな…。

 

「ま、それまでは勝手気ままの自由気ままに過ごしてたんだけどな」

 

 そう言ってカラカラと笑うおじさんに何とも言えぬ感情を抱いていると…

 

「それで、卒業間際に明日香の妊娠がわかってな。一度は姿を消そうとも考えてたんだが……できなかった。こいつを一人にさせるのが嫌だったんだ。だから、明日香には全てを話した。俺がどういう存在かを、な」

 

「最初は全然わかんなかったけど…それでも、この人の眼は真剣で、翼なんかも見せてもらったの。でも、私もこの人と離れたくないって思ってたから…」

 

「………………」

 

 一見、惚気話にも聞こえるが…二人にも色々な葛藤があったんだろうな……きっと…。

 

「寿命の違いから、きっと私の方が先に死んじゃうと思うんだ。でもね、私は来世があったとしても、きっとまた同じ人を好きになれるって信じてるんだ。だから私がおばあちゃんになって死んだとしても…またこの人に会いたいなって…」

 

「………………」

 

 明日香さんの言葉を聞き、俺は唖然とした。

 

「ククッ…明日香って、結構心根が強いんだぜ?」

 

 どこか誇らしそうであり、気恥ずかしそうにしながらもおじさんはそんなことを言う。

 

「俺は明日香と共に生きることを決め、そうして生まれたのが明香音だ。あいつは…人間の血を半分引いているが、言わば天使と悪魔のクォーターだ。俺が堕天してるから、おそらくは堕天使の血脈になるんだろうが…」

 

「明香音は…このことを…?」

 

「まだ言ってないし、知らない。あいつには平穏に過ごしてもらいたいからな。第一、力が覚醒もしてないから、翼の数もわからんし…」

 

 やはり、明香音には伝えてないのか…。

 

「でも、よく今まで感知されませんでしたね? ここって悪魔の縄張りなんじゃ…」

 

 ふと疑問に思ったことをおじさんに聞いてみる。

 

「伊達に長生きはしてなくてな。これでも完全隠蔽する術を開発してるんだよ。明香音がよくしてるリストバンドがあるだろう?」

 

「えぇ…外ではずっとしてますね」

 

 俺は明香音が身に着けてるリストバンドを思い出す。

 

「アレに術式を刻んでる。だから、あいつが内包してる魔力や光力なんかは感知されないんだ。ま、外せば終わりだから外に出る時は徹底させたけどな?」

 

「あのリストバンドにそんな効果が…」

 

 思わぬ事実に驚く。

 

「だからこそ、この十数年をここで過ごせたわけだが…コカビエルのアホのせいで水の泡だぜ。ま、幸いなのが俺しかまだバレてない点かね?」

 

 やれやれとした感じで肩を竦めるおじさん。

 

「俺達の簡単な事情はこのくらいだな。次はお前さんの番だぜ?」

 

「…はい…」

 

 俺は春先に起きた堕天使との一件と、その中で神器に目覚めたことや俺に宿った神器の特徴なんかをおじさんに話した。

 

「ふむ…神器の発現時にカード状の媒介を出現させ、その中に封印された存在を出し入れし、さらには合身なんて能力まである。そして、カードは全部で七枚だが、今手元には二枚しかない、か…」

 

 俺の話を聞き、難しい表情を見せるおじさん…。

 この反応を見る限り、かなりマイナーな神器なのだろうか?

 

「俺も神器にそこまで詳しいわけじゃないが…これだけは言える」

 

「それは…?」

 

「お前のは神滅具(ロンギヌス)の可能性が高い」

 

「神滅具…?」

 

「あぁ…普通、神器は一つの能力しか備わっていないんだが、神滅具は二種類以上の能力を併せ持つのも特徴だ。その名の通り、神をも滅ぼす具現ってな。現存するのは…確か、十三種だったはずだが…」

 

 神をも滅ぼす具現…。

 また仰々しい名前だな…。

 しかも十三種類もあるのか…。

 

 俺がおじさんの言葉にそんな感想を抱いていると…

 

「ただいま~」

 

 玄関の方から明香音の声が聞こえてきた。

 どうやら、時間切れのようだ。

 

「……仕方ねぇ。今度アザゼルに聞くか。忍、悪いが、話はまた次の機会にだ」

 

 おじさんも明香音の声が聞こえたようで、話はまた今度になった。

 

「わかりました」

 

 俺もおじさんの提案に頷いていると…

 

「あれ? しぃ君?」

 

 リビングに入ってきた明香音が俺に気付き、首を傾げる。

 

「おかえり、明香音」

 

「う、うん、ただいま…って、なんか変な感じだね?」

 

「そうか?」

 

 そんな風に会話していると…とても明香音が堕天使と悪魔のクォーターとは思えなかった。

 しかし、仮に明香音が真実を知った時、俺はちゃんとこいつを支えられるのか…。

 それが不安でならなかった…。

 

 

 

 後日。

 休日と言うこともあって俺と明香音はイッセーに誘われる形で、イッセー達と遊んでいた。

 その中には木場や塔城の姿もあったが、特に気にすることなく半日ほど遊び倒した。

 

 こういう日常がずっと続けばいいな、と漠然的に考えていた俺だったが…。

 そんなのお構いなしに事態は動き出すのだと、痛感することになる。

 

 そして、俺は…その事態の中で『ある選択』を迫られることになる。

 その選択が、俺の今後を決めるターニングポイントの一つだとは、露知らずに…。

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