ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~ 作:伊達 翼
季節は夏。
制服も夏服へと変わった今日この頃。
そして、近々駒王学園では『公開授業』というイベントがある。
平たく言えば、授業参観みたいなものだな。普通の授業参観と違う点を挙げるなら、この公開授業は中等部の学生も親同伴で高等部の様子を見に来てもいいというかなり自由度の高いイベントである。
見られるこっちとしては気楽にしたいもんだがね?
とは言え、まだ当日まで日がある。
別に見られて困ることもないが…親父と母さん、さらには夜琉や雪絵なども来そうだな…。
明香音の方もおじさんとおばさんが来るようだし…。
………ウチの家族はともかく、おじさんとおばさんは未だ新婚と言っても通用しそうなほどラブラブだからな…。明香音みたいな娘がいるとは思えないほどイチャつくから、明香音としても恥ずかしいだろうな。
いや、いずれ正式に俺の義父と義母になる存在だ。俺としてもかなり恥ずかしく思えてきたぞ…?
………うん。この考えはもうやめておこう。なんだか、頭が痛くなってきた。
そういえば、俺達のクラスに二人ほど転入生がやってきたのは比較的記憶に新しい出来事だ。
とは言えど、この間のコカビエル襲撃事件に関連したことなんだがな…。
というのもコカビエルが神の死を暴露したことで、それを聞いていた教会に属していた戦士が二人ほど異端認定されたのだとか…。
それが何を隠そう転入してきた二人のことである。
その内の一人『ゼノヴィア』という女戦士は悪魔に転生していた。
かなり思い切ったことをする。教会の信徒から悪魔への転生…神の不在を知ったからといって敵だった悪魔になるかね、普通…。まぁ、俺の知ったこっちゃないんだが…。
ちなみにグレモリー先輩の騎士になったと、イッセーから少しだけ話を聞いている。
そのせいかどうかは知らんが、ゼノヴィアの言語がわかるようになった。まぁ、何を言ってるかわからんかったから、こっちとしてもありがたいが…多分、そんなに接触はしない…と思うが…こればかりは俺もわからん…。
それともう一人の女戦士。俺に白い包み…おそらくアレが聖剣だったんだろうな…を突きつけてきた女も、駒王学園に身を寄せることになっていた。
あっちは日本語もできていたので意思疎通は問題ないのだが、流石に悪魔への転生はしていない。
敵だった陣営に好き好んで降るような真似はしないとのことだ。
とは言え、彼女も神の死を知ったからか、教会からは異端認定されたようなのでこの町でひとまず暮らすことにしたらしい。
ちなみに名前は『
あと、先日の事件の中心にあった聖剣エクスカリバーだが、神の死を知らずに済んだもう一人の女戦士が教会へと全て持ち帰ったそうだ。
聞けば、その残った女戦士はイッセーの昔馴染みらしいが…。
ま、俺は会うこともないだろうから知ったこっちゃないか。
今回、俺に収穫があったとしたら…焔鷲の姿を見れたことと、あいつらにも固有能力があるのを知ったことくらいか…。あとは、おじさんの件かな。
変にオカルトな世界に関わったせいか、俺の中の常識が悲鳴を上げている気がする…。
ま、神器なんてものを身に宿したせいとも言えるが、こればかりは授かった我が身を不幸に思おう。
いや、ただ単に不幸と言うのもおかしいか…。天狼や焔鷲みたいな超常的存在と巡り会えたのだ。それを不幸の一言で片づけるのはよろしくない。
何より、俺は天狼を見て目を奪われたわけだし…焔鷲についても、やはり目を惹く存在というのがわかった。グレモリー先輩達、異形やそれに近しい存在からしたらかなり凄い存在らしいのだが…。
ま、宝の持ち腐れと言われても仕方ないのかもしれないけどな?
それはともかくとして…おじさんだよなぁ…。
まさか、異形の者だったとは…。
あの後、個人的におばさんも交えて少し話させてもらったが…明香音本人にはまだ話してなかったようだ。まぁ、知ってたらそれはそれで怖い気もするが…。
おばさんの意志の強さも垣間見た気がするけど…。
しかし、そうなると…明香音も長命種ってことになるのか…。
俺は普通の人間だし、いつかは死別するのかもしれない。
それが怖くもあるが…明香音を残して先に逝くことを考えると、やや憂鬱だ。
今はまだそこまで深刻ではないし、俺も死ぬ気は毛頭ないが…いずれはしっかりと話さないとならないよなぁ。
そんなことを考えながらも、俺は今日を生きていく。
………
……
…
・ゼロ視点
「いやはや、まさかこんなマンションに堂々と居座るとはな…」
俺はとあるマンションの一室の前までやってきていた。
もちろん、明日香には留守番を頼んでいる。あいつの前に嫁を出して色々とツッコまれるのも嫌だしな。
ピンポーン。
俺は呼び鈴を鳴らすと、しばらく玄関の前で待つ。
すると…
ガチャ。
「これはこれは…また随分と懐かしい奴が訪ねてきたもんだな」
そう言って俺を出迎えたのは…年齢的に中年ながらワル系のイケメンのような相貌の浴衣姿の男だ。
「白龍皇に伝言は伝えたはずだぜ?」
そう、今回の目的。こいつに会うためにここまで来た。
「聞いてるよ。いずれ挨拶に来るってな。ゼロ」
「あぁ、だから会いに来たぜ。『アザゼル』」
そう言い合い、俺達は拳をコツンと合わせるのだった。
ま、これも一つの旧友との再会ってやつだな。
それから俺はアザゼルが間借りしているマンションの部屋の中へと案内される。
「相も変わらず、多趣味なのかい?」
部屋の中にあった遊び道具の数々や釣り道具などを見て、俺はアザゼルに尋ねる。
「あぁ。最近は悪魔を一人呼んでパシらせたり、一緒に遊んだりしてな?」
「おいおい。いくら悪魔の領域で、呼び出せるからって…」
それを聞いて俺はその悪魔の小僧が気の毒になった。
「しかし、おかしな小僧なんだぜ? 魔力量が少ないのか、チャリでやってくるんだからよ。それが現赤龍帝ってんだから笑えたわ」
「赤龍帝…って、あぁ…あの時の若さ爆発の…」
俺の赤龍帝に関する印象を聞き…
「なんだよ、若さ爆発ってのは?」
面白そうに笑いながらアザゼルが聞いてくる。
「欲望を叫ぶのは若者の特権な気がしてな」
「じじくせぇな」
「ほっとけ。所帯持つとそんなもんだろ?」
俺の答えになってない返答にアザゼルはそう言ってきたので、俺もそんなことを口にする。
「さて、生憎と俺は女を囲っても所帯を持ったことがないんでな」
「そうかい」
そんな会話をしつつアザゼルの淹れたコーヒーを互いに一口飲む。
「コカビエルのアホは?」
「コキュートス行きだ。あいつはちぃっとやり過ぎた」
「そうか…」
「別にお前さんが気にすることでもないだろうに…」
「わかっちゃいるが、一応これでも堕天使の一人としては、な?」
「そうだな…」
しばらく感傷に浸っていると…
「なぁ、ゼロ」
「うん?」
「戦争なんてのはもうコリゴリだ」
「そうだな…」
「俺はこの機会に、和平を提案するつもりだ」
なんとアザゼルはそんなことを口にしていた。
「へぇ…それはまた…」
「意外か?」
「まぁな。とは言え、心情的にはわからんでもない」
アザゼルの言葉に俺は頷きながらも同意する。
「俺達、古き存在は、あの戦争を知ってる」
「俺は直接介入した訳じゃないが…あの惨状は覚えてるよ」
「お前の存在は…まぁ、色々と縛りがあるからな」
「その縛りが嫌で逃げてたんだがな…」
アザゼルの言葉に俺は苦笑しながら答える。
「それが表舞台に戻ってきたか…」
「好きで戻ってきたわけじゃない。未来の息子が巻き込まれてたからな」
「未来の息子、ね」
「家族ぐるみの付き合いで、娘もかなり好いてるし、何より結婚前提で付き合ってるんだぜ? もう、未来の息子と言っても過言じゃねぇよ」
「そうかよ。だが、何故こっちの世界に巻き込まれたんだ?」
俺の言葉を適当に流したかと思えば、核心を突いてくる。
「それがな…どうも、あいつには神器が宿っていて…それが神滅具の可能性が高いんだ」
「ほぉ? そいつは興味深い。『
おそらくアザゼルでもまだ捕捉していない神滅具を挙げたんだろうが…。
「それが…ちょっと不思議でな」
「? どういうことだ?」
「俺も神滅具の可能性が高いとは言ったが、どの特徴とも一致しないんだよ」
「具体的には?」
「発現した形状だな…印象的に一番近いのは…『
「おいおい、そいつの持ち主はもう俺が裏方要員として色々と手を回してるんだぜ?」
俺の挙げた例にアザゼルがそう言ってくる。
「そうなのか? だが、あくまでも俺の印象って話だ。だからお前にも聞きたくてな」
「ふむ。実際に見んことにはなんとも言えんが…最たる特徴は?」
「カード状の媒介が出現し、その中にとんでもない存在が封印されてる。そして、それを自由に呼び出したり戻したり…しまいには合身なんて能力もあるらしい」
「………なに?」
俺の説明にアザゼルの表情が驚愕に彩られていく。
「未来の息子が言うには、カードは全部で七枚あるらしいが…今手元には二枚しかないんだと」
「………………」
「アザゼル…?」
「そいつは…まさか…眉唾もんだと思ってたが、本当に実在したとは…」
「?」
アザゼルが自分の世界に入ってしまったため、少々手持ち無沙汰になってしまった俺は首を傾げるくらいしかできなかった。
「ゼロ…」
「ん?」
「そいつと、会わせてもらえないか?」
なんと、アザゼルが忍に会いたいと言い出した。
「それは構わんが…あまりこっちの世界に関わらせたくないんだけどな…」
「快楽主義のお前にしては珍しい」
「快楽主義でも節度は守るさ」
忍は嫌がるかもだが、神器をよく知るためには必要なことか…。
それにアザゼルなら下手なことはしないだろ。
俺だってダチと敵対したくはないからな。
「もし、俺の考えが当たってるなら…否応なくこっちに関わるぞ?」
「………………」
アザゼルの言葉に俺はしばし考え込む。
「………わかったよ。俺の方でセッティングしてやる。ただ、この町は悪魔の嬢ちゃんの領域だろ? そんなに派手に動いてもいいもんか?」
「その辺は大丈夫だろ。今度行われる三大勢力の会合が、駒王学園で開催するからな」
「そういうことなら、まぁ…」
アザゼルの言葉に俺も頷くしかなかった。
さてはて、忍をなんて言って呼び出すかね。
前に軽く話したが、堕天使にあまり良い感情は持ってなさそうだが…。
俺も今は堕天使なんだ。
なんとかするかね。