ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~ 作:伊達 翼
季節は春先。
場所は駒王学園、昼休みの教室内での出来事だ。
「『
俺は目の前の男子生徒から聞いた少女の名前を呟く。
「本当なんだって! だから調べてくれよ!」
机を挟んで迫る男子生徒…名前は『
「まぁ、落ち着けって。依頼は、その夕麻って娘を捜せばいいのか?」
俺はイッセーを落ち着けるように
「あぁ。こうなったらお前が頼りだ。報酬は弁当のおかず三品でどうだ!?」
随分と盛ってきたな。それだけこいつも必死ってことかね?
「わかったよ。とりあえず、捜すだけ捜してみるが、捜した結果、見つからなかったらどうする?」
一応、依頼は受けることにしたが、仮に何も出てきてなかったらどうする気だ?
「その時は……もう一品、追加で出してやるよ」
イッセーはそう言ってくる。
白飯だけ食う気か? まぁ、それだけイッセーも本気なのだろう。まぁいい。少し調べてみるか…。
「オーライ。じゃあ、その夕麻って娘の特徴を教えてくれ」
「! ありがとよ!」
それから俺はイッセーからその『天野夕麻』の特徴を聞くのだった。
………
……
…
俺の名前は、『
駒王学園高等部二年生で、駒王学園には高等部から入学している。
で、入学した当初から『探偵同好会』ってのを立ち上げた探偵見習いだ。
え? なんで『同好会』なのかって?
単純に俺しかいないからだな。探偵なんてやる物好きはこの学園には俺しかいなかったってことだろう。
それはともかくとして、俺が受ける依頼は落とし物の捜索や、特定人物の身辺調査なんかが主だな。
え? 金を取るのかって?
いやいや、学生の身分で本職の探偵でもあるまいし、金なんて取らねぇよ。依頼報酬は昼飯のおかず一品やお菓子とかで手を打ってる。報酬が飴玉一つって時もあったな。ま、学園内で探偵の真似事してると、そんなもんだろ。
とは言え、実は俺の親父はれっきとした本職の探偵なのだ。
たまにアルバイトと称して探偵の手伝いなんてさせられることもあったからな。ま、学園で探偵をやってるのもその延長みたいなもんさ。
ただ…俺が小学生に上がった頃くらいかな?
親父から探偵としての心構えや技術、さらにはサバイバル術なんかを叩き込まれ、父方の伯父からは色んな武術の稽古だとしごかれ、母方の叔母には経済や帝王学なんてのを半ば強制的に学ばされた。
なんでこんなにも俺に期待が向けられるかと言えば…近場の親類では俺しか男児がいないのが、おそらく理由だろう。俺の下には妹が二人(二卵性の双子)、伯父さんとこには双子と同い年の従妹、叔母さんとこには俺と同い年の従姉しかいない。
なんで、こうも偏ったかね? 別に女系の一族ってわけでもあるまいし。
と、また話が逸れたか。
まぁ、そんな感じで俺自身も駒王学園で探偵なんかして色々と経験値を稼いでる訳だ。別に親父の跡を継ごうとかは考えてないが…。ま、何事も経験ってやつだな。
で、だ。
今回の依頼は人捜し。
対象は『天野夕麻』という女子高生、らしい。
らしい、というのは目撃証言がイッセーのものしかないからだ。
これは少し難儀な依頼になりそうな予感だ。
と、今回の依頼人も軽く紹介しておこうか。
名前は『兵藤一誠』、通称『イッセー』。
この近辺では名の知れた男だ。しかし、名の知れたと言っても良い意味ではない。悪い意味で、だ。
というのも、イッセーは重度のおっぱいフェチで、松田と元浜という悪友達と共に駒王学園では『変態三人組』として有名なのだ。特にイッセーは近隣の学校にもその悪名を轟かせているのだから、友人としては心配でならない。
イッセー達と知り合ったのは駒王学園に入学してからだ。同じクラスになり、俺が探偵同好会を設立した当初、覗きを繰り返す男子達を調べてほしいとの依頼もあり、接触したのが始まりだ。
特にイッセーはエロに対する情熱が異常なだけで他の部分は割と紳士的というか、常識人である。会話してみてそれがわかったが、問題はそのエロに傾ける素行である。何度か注意してみたが、それも虚しく奴等は犯行を続けている。
ただ、最近のイッセーは妙な部分がある。今朝も普通に挨拶したのだが、どこか気怠そうなのだ。
気になったので、依頼を聞くついでに最近のことを聞いたのだが、どうもすっかり夜型の人間になってしまい、朝…というよりも陽の光が辛いのだそうだ。むしろ、夜の方が活力が湧いてくるとのことも言っていたが…。
これも例の天野夕麻が原因かもしれないと本人は語っている。
しかし、そんなことがありえるのか?
俺は首を傾げながらも、この友人からの依頼を引き受けることにした。
………
……
…
その日の放課後。
俺は早速調査に乗り出そうとして、教室の自分の席を立った……のだが…。
「しぃ~くぅ~ん♪」
そう言って俺の左腕に抱き着いてくる女子生徒が一人…。
「っと、明香音か。驚かすなよ」
俺は抱き着いてきた女子生徒の名を呼びながら…特に驚いたわけでもないが…そう答える。
「えへへ。だって、しぃ君を見てたら…つい、抱き着きたくなっちゃったんだもん♪」
そう言って女子生徒は俺の左肩に自分の頭を置いてスリスリしてくる。
「まったく、お前ってやつは…」
こんな教室内でそんな愛情剥き出しの行為をすな。見ろ、イッセー達や他の男子共が俺を睨んでくるだろうが…。
この女子生徒の名前は『
昔、俺の家の隣に引っ越してきた一家の一人娘で、俺と明香音は所謂『幼馴染み』という間柄だ。
同い年ではあるが、明香音は女子校時代の駒王学園…幼年部から通っていて、俺は別の幼稚園や小学校に通っていたので、よくある幼稚園から一緒のクラスだった、ということはない。
強いて言うなら、俺が駒王学園に入学し、明香音も高等部に上がった際に初めて同じクラスになったくらいの程度だ。まぁ、二年生になった今でも同じクラスなんだが…。
ただ、幼稚園くらいの歳までは毎日のように一緒に遊んでいたのだが、小学生の頃から親父や親類から色々とやらされてた俺と遊べなくて不満を抱いてたらしい(これは明香音の父親であるおじさんに聞いた情報だ)。さらに言えば、同じ学校じゃないので、登下校も別々にしていたからそれも不満に思ってたらしい(これもおじさん情報)。
そして、駒王学園の高等部にそれぞれ進学した今、登校に関しては毎日のように一緒にしている。しかし、俺が探偵同好会を設立したために放課後はたまにしか一緒に帰れないのが不満のようだ(これは明香音本人から直に聞いた…いや、聞かされた、の方が正しいか)。
そんな俺への愛情表現が激しい明香音だが、普段は友達も多く何かと気配りのできる心根のしっかりしてる娘だ。そのため、駒王学園の二大お姉さまと呼ばれる三年生の二人とは違った学園アイドルとなっているようだ。
それにこう言ってはなんだが…明香音は高二にしてはスタイルがかなり良いからな。まぁ、乳製品が好きだったり、あの母親の血を引いてるからなぁ。
見た目もかなりの美人さんなのだが、毛先の方が紅く染まった金髪と、ちょっと珍しい髪の色合いなのだが、それがまた明香音の魅力になっているのだろう。ちなみに髪型は黒いリボンでポニーテールに結っている。
っと、考え事も程ほどにしないとな。いつまでもこのままでは調査に向かえない。
「明香音。悪いが、俺はこれから調査に行かないとならなくてな」
「え~、またなの?」
さっきまでご機嫌だった様子の明香音も、俺の言葉で不満そうな膨れっ面になる。
「悪いな。これも活動の一環なんだよ」
「むぅ~」
やんわりと明香音の説得を試みるが、頬を膨らませるだけで納得してないようだ。
「わかったわかった。今度、埋め合わせするからよ。それで勘弁な?」
そう言って俺は明香音の頭を右手で撫でてやる。
「……約束だからね?」
「あぁ、約束だ」
明香音の確認するような言葉に俺も頷く。
明香音との約束を破ったなんて日には、俺の身に(ある意味での)危険が迫るからな。しっかりご機嫌取りはしとかないと…。
「じゃあ、ちょっくら行ってくるわ」
そう言い残し、俺は明香音の手から抜け出して教室を出る。
「あ、しぃ君。気を付けてね!」
背中に明香音の声が掛かり、俺は軽く手を挙げて答える。
さ、改めて調査開始だな。
ただ、この時の俺は…まさか、あんなことになるなんて夢にも思わなかったんだ…。
そして、それが…俺の波乱の人生の第一歩になることも…。