ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第五話『あいつに、この想いを告げて…』

 翌朝。

 

コンコン。

 

「お兄ちゃん。朝ですよ? 起きてください」

 

 ノック音と共に雪絵の声が部屋の外から聞こえてくる…。

 

 ん、んん?

 もう、朝か…。

 

「ふわ、ぁ…~。あぁ、今起きるよ…」

 

 俺は欠伸を噛み殺しながら、ベッドから起き上がる。

 

 昨日は遅くに寝たから、まだ眠い…。

 が、そんなことも言ってられん。

 今日も今日とて学園に行かなくてはならないのだ。

 ………悪魔の根城だと天狼は言っていたが、信じたくないもんだ…。

 しかし、昨日遭遇した出来事を鑑みても信憑性がないわけではない。

 

 やや憂鬱な気分になりながらも、俺は学園に登校すべく身支度を整える。

 

 制服は予備を使えばいいな。

 あとは…。

 

 予備の制服に着替え終えた俺は勉強机の上に置いてある天狼が封印されている白銀のカードを胸ポケットに入れる。

 

『む? 何処へ行くのだ?』

 

 天狼も起きてたようで、質問してくる。

 

「駒王学園…要するに学校だな」

 

『学校?』

 

 俺の言葉に天狼は疑問符を浮かべているようだ。

 

「そっちはそれを知らんのか…」

 

『生憎と昨日目覚めたばかり故な。今の世は知らぬ』

 

「そうかい。簡単に言えば…俺みたいな歳の人間の子供達が集まって勉学に励む場所だな。まぁ、勉学の他にも色々とあるが…」

 

『ほぉ、斯様な場所もあるものなのだな』

 

 俺の説明に天狼は感心したようにしているが…

 

「ただ…その場所は昨日お前が悪魔の根城とか言ってたとこだがな…」

 

 次の言葉を聞いた瞬間…

 

『危険ではないか! 貴様、我の忠告を無視する気か!?』

 

 そう叫ぶ。

 

「まぁ、落ち着けって。悪魔の領域ったって、俺は一年も普通に通ってた場所だぞ? そんなすぐに危険に見舞われるってことはねぇよ。例えば、お前と会話してるのをその悪魔の関係者とかに聞かれない限りはな?」

 

『ぐぬっ…』

 

 俺が落ち着いた風に言うと、天狼も反論がないのか唸ってしまう。

 

「普通の人間は神器なんて存在すら知らねぇしな。多分、知ってるのはそういう悪魔とかに通じてるような奴等だろ?」

 

『それは…そうなのかもしれんが…』

 

 今の世、ってのは天狼にはわからないだろう。なら、ここは俺が気を付けておくべきだろう。

 

「ともかく、俺も注意してるから…学園にいる間は大人しくしててくれ。わかったな?」

 

『……危険だと感じたら、すぐに我を呼べ。昨夜も言ったが、今の宿主では死にに行くようなものだと…』

 

「あぁ、わかってるよ」

 

 そんな事態にはならないと思いたいが、そうも言ってられんか…。

 

 とりあえず、天狼には家族の前でも大人しくしててもらうことを約束させ、学生鞄を右手に持って一階に降りていく。

 

 

 

 ダイニングに行くと、親父がコーヒー片手に新聞を読んでいて、母さんと雪絵が朝飯の準備をしていた。夜琉はもう部活の朝練に向かったのだろうな。

 

「おはよ。親父、母さん、雪絵」

 

 ダイニングテーブルの俺の席に座ると、皆に朝の挨拶する。

 

「あぁ、おはよ。雪絵に起こしてもらうとは、珍しいな?」

 

「ちょっと色々と考え事してたら遅く寝ちまってな…」

 

 親父が話し掛けてくるので、俺もそんな風に返していた。

 

「ふむ? そんな難しい依頼なのか?」

 

「まぁ、難儀な依頼なのは確かかな。でも、なんとかするよ。依頼人のためにもさ」

 

 親父の問いにはそう答える。

 

「そうか。ま、何かあれば相談くらいは乗ってやるよ」

 

「その時は頼むわ」

 

 親父の一言に俺もそう返すが…流石にこれは言えねぇよな…。

 第一、親父はオカルト云々で事件が解決されるのを嫌うからな…。

 

 思いっきりオカルト方面な今回の依頼は流石に言えないな、と俺は考える。

 

 

 

 それから母さんと雪絵の用意してくれた朝飯を食べ終えると、俺と雪絵は揃って駒王学園に登校する。その際、隣の家から明香音も出てきたので一緒に登校することになる。

 

「最近、しぃ君分が足りないよ~」

 

 そう言って明香音が俺の腕に抱き着いてくる。

 

「なんだよ、その『しぃ君分』ってのは?」

 

「しぃ君から貰う元気の源だよ?」

 

「そんな未知の物質はない。あと、言い方に気を付けろ」

 

 明香音とのそんな何気ないやり取りだが、なんだか妙に落ち着いてしまう。昨日の今日ってのもあるんだろうが…。

 

 そっか。これが俺の…。

 

 そんな風にある事実を認識する。

 あと、雪絵からの視線が妙に厳しい気もしないでもないが…とりあえず、俺達は駒王学園までやってきて、雪絵と別れる。俺と明香音は高等部だが、雪絵は中等部だからな。当然と言えば、当然だ。

 

 教室に向かう間も、明香音は俺の腕を放してはくれなかったが…まぁいいか。

 どこか諦めというよりも、それが自然なことだと思えてしまい、俺は敢えて明香音を引き剥がすことはしなかった。

 

 ただ…そんな状態で二人揃って教室に入ったもんだから男子からは睨まれるわ、女子からは好奇の目を向けられるわ…ある意味で大変だった気もする。

 

『さっきの女子(おなご)は、お前の伴侶か?』

 

 天狼からも小声でそんな質問が来る始末…。つか、伴侶言うな…。まだ(・・)だから…。

 

「うるせぇ…」

 

 なので、俺は誰にも聞かれないように小声で返していた。

 

………

……

 

 そして、この日も何事もなく過ごし、お昼休みは明香音お手製の弁当を頬張りながら依頼のことを考える。

 

 さて、いい加減、依頼の結果を言わないとか。しかし、イッセーに何と言えばいいものか…。

 お前が捜してた女は堕天使だった。だから下手に近付くな。

 ………………完全に頭のおかしい奴の言葉にしか聞こえねぇな…。

 

 自分で脳内シミュレートしてみるが、言葉にしてみると胡散臭いことこの上ない…。

 

 第一、探偵がオカルトを引っ張り出すのもどうかと思うしな。

 いや、そういう依頼が皆無ってわけでもないし、オカルト全体を否定する気もないが…。

 

 そんなことを考えていると、イッセー達の話し声が聞こえてくる。

 どうやら松田の家で、エロDVDを鑑賞するらしい。

 相変わらずというか、なんというか…。

 

 とりあえず、依頼報告は明日の放課後にでもするかね。今日中にやっておきたいこともあるし…。

 

「しぃ君、帰ろ?」

 

「あぁ、いいぞ」

 

 明香音の帰りの誘いを受ける俺の返事に…

 

「え? 調査はいいの?」

 

 明香音も驚いたような反応をする。ダメ元で言ったのか?

 

「依頼人には明日、結果を伝えることにした。てか、もういねぇし…」

 

 そう言いながらイッセー達の姿を探すが、既に教室内にはいなかった。

 

「ふ~ん? そうなんだ。じゃあ、一緒に帰れるね♪」

 

「そうだな」

 

 嬉しそうに俺の腕に引っ付く明香音を見ながら、俺はそんな明香音の姿が微笑ましく見えた。

 

 

 

 それから俺達は揃って帰路につく。

 帰り道は会話もそれなりにあったが、他愛のない内容だ。俺達にとってはいつものことだ。しかし、そんな『いつものこと』が今は大切に想えてならない。だからこそ、俺は…。

 

 そうして家の前に辿り着くと…

 

「あ、もう着いちゃった…」

 

 明香音はそんなことを言いつつも…

 

「じゃあね、しぃ君。また明日ね?」

 

 明香音はいつものようにそう言って俺から離れると隣の家へと入ろうとして…

 

「明香音」

 

 俺はそんな明香音の手を握ると、その足を止めさせた。

 

「? どうしたの?」

 

 不思議そうな表情で首を傾げる明香音を見て…

 

「………………」

 

 昨日感じた生きることへの欲求と今朝感じた『ある想い』を思い出しながら覚悟を決める。

 

「しぃ君?」

 

 俺が何も言わないもんだから明香音もどうしたらいいのかわからないようだったが…

 

「明香音。俺の…恋人になってくれねぇか?」

 

「………………へ?」

 

 たっぷり間を置いてから明香音も目をパチクリさせて変な声を漏らす。いきなりだったから何を言われたのか、わからないようだった。

 

「その、なんだ。いつまでも曖昧な態度もどうかと思ってな。お前が嫌じゃなければ…これから先も俺の隣にいてくれねぇか?」

 

 俺は明香音の眼を真っ直ぐ見て、将来のこと込みで告白した。

 

「え…あの、その…つまり…?」

 

 珍しく俺から言い寄ったせいか、明香音は思考が追い付いてないようだ。ここまで言わないとダメか…?

 

「要するに…結婚を前提にお前とお付き合いしたいってことだ」

 

 言ってしまった。言っちゃったよ。あ~あ、もう後戻りできねぇな。つか、ちょっと我が家とお隣さんからの視線(・・)が気になる。でも、これでいい。昨日の件でわかった。俺は明香音が大切だ。それ相応に好いてますよ。俺が危険な目に遭ったとしても、必ず生きて明香音の元に帰りたいとも思ってたんだ。仮に死ぬ間際になって明香音に想いを告げずにいる、なんて後悔もしたくねぇしな。

 

 そんな矢継ぎ早な思考をしてる合間にも明香音の様子を見ると…

 

「………………////」

 

 どこか呆けたような、それでいて羞恥で顔を赤くした様子だった。

 

「……明香音。返事は?」

 

「……ひゃいっ!?////」

 

 この際だから、返事も聞いてしまおう。まぁ、今夜はきっと両家共に騒ぐんだろうな…。

 

「え、えっと…その…////」

 

 そんな予感を覚えつついると、明香音があたふたし始め…

 

「不束者ですが、末永く愛してくれると、嬉しい、かな?////」

 

 真っ赤な顔でちょっと変則的な返事を言ってきた。これはOKと捉えていいのかね?

 

「あぁ、大切にするよ」

 

 とりあえず、OKという体で話を進めることにした。

 

 すると…

 

「「おめでと~~!」」

 

「っ!?////」

 

 我が家から母さん、隣の家から明香音の母親である『明日香(あすか)』おばさんが出てきて、祝福の声を上げて近寄ってきた。それには明香音もビックリしたようだ。俺は視線に気付いていたのもあるし、もしかしてと思ったので驚きは少ないが…。あと、それぞれの玄関には親父と、明香音の父親である『ゼロ』おじさんの姿もあり、どこかニヤニヤとしているのが見て取れる。

 

 ヤバい…急に恥ずくなってきた。

 視線に気付いた時点で、やめるべきだった? いや、この機会を逃すとまたズルズルと先延ばしにしそうな予感すらあったし…。

 

 見られてたことに気付いて羞恥心MAXだろう明香音が両家の母親二人に抱き締められている中、両家の父親二人が俺に近寄ってきて…

 

「よくもまぁ、こんなとこで告白したな?」

 

「ハハハ、なかなかの漢気だったぜ? こりゃもう赤飯かな?」

 

 そんなことを言われてしまった。つか、おじさんは気が早いと思う。

 

「騒ぐのは良いけど…お手柔らに頼むよ…」

 

 俺は、そう言うのが精一杯だった。

 

 

 

 こうして、俺は晴れて明香音と将来を誓い合う恋人関係になった。

 両家の親から認められていることも考えると、婚約しろ、とか言われそうな気がしてならないが…(あの両家の親なら言いかねない)。

 この場合、婚約指輪を買った方がいいのだろうか? いや、指輪は気が早いか? まぁ、俺の小遣いで買える範囲の代物を明香音に贈ろう。

 そして、案の定というか、なんというか…両家合同でお祝いパーティーが我が家で開かれてしまった。

 主役はもちろん、俺と明香音。

 夜琉と雪絵は揃って複雑そうな表情をしてたが、いい加減兄離れした方がいいと思ってたし、ちょうどいい頃合いだろうさ。

 

 だが、俺達が祝いの席にいた頃、イッセーの身に危険が迫っていたとは、この時の俺には知る由もなかった。

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