ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第六話『一夜明け…』

 翌日。

 

「う、う~ん…」

 

 なんだか、妙な気怠さを感じつつ俺は目を覚ます。

 

 なんで、こんなに頭が重いんだ?

 え~っと…昨日は確か………そうだ。明香音に告って、その勢いのままなんか我が家でお祝いパーティーだのが開かれたんだ。

 で、無礼講だなんだと親父とおじさんが酒盛りして…俺もそれに巻き込まれたんだ…。あ~、だから、こんな妙に頭が重いのか…。しかし、別段気持ち悪くはないな。二日酔い、ではなさそうだから単に酒に慣れてないから、その反動ってとこか? にしても、バレなきゃいいって発想はいいのかね?

 

 そんな、割とどうでもいいようなことを考えつつも、起きようとしたが…なんか、違和感があるような…?

 

「……へ?」

 

 そういや、眼を開けずにいたので、眼を開けて天井を見たところ…変な声を漏らしてしまった。

 

 いや、よくあるような目を覚ましたら知らない天井、ってわけではない。むしろ、これは知ってる天井だ。が、俺の部屋(・・・・)の天井ではない。うん、それは確かだ。だったら、誰の部屋か?

 

 俺がそんな妙に冷静な思考を巡らせていると…

 

「ん…」

 

 隣からよく知る声が聞こえてきた。声というか、吐息というか…そんな類のものだ。

 

「………………」

 

 俺は、スッと声の聞こえた方に顔を向けて確認すると…

 

「すぅ…すぅ…」

 

 目の前に明香音の顔がありました。

 

 ………………。あ~、もしかして、俺…やっちゃった?

 

 と思いつつも、明香音の顔を見た瞬間、昨夜の出来事がフラッシュバックし始める。

 

 どうしよう。物凄く恥ずくなってきたんだけど…!?

 昨日の内に進むだけ進みましたってか!?

 てか、どんな顔して家に帰ればいいんだよ!?

 

 今頃になってそんな羞恥心が湧き上がり、身悶えたくなったが…明香音が隣にいる以上、下手なことして起こしても悪い。なので、俺は百面相してた…と思う。

 

 ………………やっぱ、婚約指輪の一つでも買おうかな?

 

 そんなことを考えていると…

 

「んっ…ぅぅん…」

 

 明香音が目を覚まし始めたらしい。

 

「おはよ、明香音」

 

「んにゅ…おはよぅ。しぃ君…」

 

 俺の言葉に答えると、明香音が身を起こそうとして…

 

「えへへ…しぃ君だぁ~…」

 

 それを中断して俺に抱き着いてきた。

 

「っ……」

 

 だ、抱き着くのはいいんだが…いや、今の状況ではよくないな…。

 その、胸の感触が直に当たるというか…。朝ということもあって色々とヤバい…。

 だが、耐えろ俺…。ここで欲望に負けたら……いや、もう昨日の時点で負けてはいるのか?

 と、ともかくだ…。こんな朝っぱらから盛ってみろ。両家の親から生温かい目で見られるのは必至だ。それは勘弁願いたい…。

 いくら親公認の仲になったとはいえ、節度は守らなければ…。

 

 俺はなんとか自らの欲望を抑え込むと…

 

「あ~、その、なんだ。明香音、そろそろ着替えないか? いつまでもこの格好ってのも、な?」

 

「ふぇ?」

 

 どうやらまだ寝惚けているようだが、自分のあられもない姿と俺の顔を見比べていくと…

 

「………………っ!?!?////」

 

 ボムッと音がしそうなほど顔を真っ赤にして状況を把握したらしい。

 

「悲鳴は上げるなよ?」

 

 俺は苦笑しながらも今にも大声を出しそうな明香音の唇にそっと指を押し当てていた。

 

「~~~っ////」

 

 明香音は声にならない悲鳴を上げながらも、どこか幸せそうな表情をしていた。

 

………

……

 

 その後…とりあえず、俺は散らかってた服を着直してから明香音の部屋を出て、一度我が家に戻ることにした。

 明香音の部屋を出て、玄関に向かう途中でおじさんと遭遇したが…無言のままサムズアップされてしまった。

 正直、何か言ったら負けな気はしたので、何も言わなかったが…。すれ違い様に肩をポンポンと叩かれてしまった。

 

「……また、あとで明香音を迎えに来ます…」

 

 しかし、それだけ伝えて俺は逃げるように天道家から飛び出した。実際に見たわけじゃないけど…多分、おじさんはニヤニヤしてたと思う…。それなりの付き合いだからわかる。あの人は、そういう人だ。

 

 今日も今日とて学園に行かなくてはならないのだ。いくら心身共に結ばれたとはいえ、揃って休むわけにもいくまい。変に勘繰られるのも嫌だし、何より後ろめたいことなんてないしな。

 今更、一緒に登校するくらい、いつものことだ。いつものこと。

 

 などと色々と言い訳を考えていた俺は我が家の玄関の前で途方に暮れていた。

 

 とは言え、だ…。

 正直、家が隣なのが恨めしい…。

 いや、だからこそ明香音に出会えたのだから、そこに不満を持ってはいけない。うん。

 だが…。

 

 不審者の如く玄関前でウロウロしてると…

 

「ドアホぅ。近所に変な誤解を招くし、近所迷惑だからさっさと入れ」

 

 玄関から出てきた親父に頭を小突かれた上に、首根っこを掴まれて家の中に半ば強制的に入れられてしまった。

 

「うぐぅ…」

 

 俺にも心の準備ってのが~…。

 

 と思っていたら、玄関にはニコニコ笑顔の母さんと、嬉しいのか悔しいのか何とも複雑そうな表情の夜琉と雪絵が待っていた。朝だってのに勢揃いじゃねぇか…。

 

「あ~…その、ただいま…?」

 

 何故か最後に疑問符をつけて帰宅の挨拶をする俺。

 

「はい、おかえりなさい。忍くん」

 

 母さんがニコニコ笑顔のままそう言ってくれる。

 

「「………………」」

 

 双子は何も言わないと思いきや、ただ一言…

 

「「おめでと(うございます)」」

 

 祝福の言葉をくれてから、リビングの方へと揃って歩いていった。

 

「……サンキュな、二人とも…」

 

 その背に声を掛けるが、双子は振り向くことはなかった。

 

「ま、あいつらも兄離れしないとだからな」

 

「あの娘達は忍くんが大好きだものね」

 

 などと両親が話している横で、俺は…

 

「着替えてくるわ」

 

 いつも通りに振る舞おうと、そう決めた。

 

「おう」

 

「着替え終わったら、朝ご飯にしましょうね」

 

 その言葉を背に受け、俺は二階の自室へと向かう。

 

 

 

 それから駒王学園の制服に着替えた俺は…

 

「天狼。起きてるか?」

 

 白銀のカードの中にいる天狼に話し掛ける。

 

『うむ。伴侶との蜜月は過ごせたのか?』

 

 こいつ、いきなりぶっこんでくるな…。

 

「……まぁ、ぼちぼちとな。それはともかく、お前と同じ封印された存在だっけか? どう捜したもんかね?」

 

 俺は話も手短に本題に移ることにした。

 

『ふむ? 捜してくれるのか?』

 

 意外そうな声音で天狼が問い掛けてくる。

 

「ま、乗り掛かった舟というか…初めて目覚めたんだろ? なら、そいつらも目覚めてる可能性は十分にある。だったら、見つけてやらないとな?」

 

 天狼一人…一人? 一匹? 一体? まぁ、一体が妥当か…ってのも寂しいだろうしな。

 

『それはありがたい申し出だが…当てはあるのか?』

 

「情報や手掛かりがないんじゃ、いくら探偵でも見つけるのは難しい。だから、ちょっと危険を冒す」

 

 天狼の質問にそう返す。ま、問題はまだあるが…とりあえず、捜してみるかね。

 

『危険? お前…まさか?』

 

「その、まさかだ」

 

 天狼も俺の真意を察したようだが、こればかりは譲る気はない。

 

『……何故、我等のためにそこまでする? お前に利益はなかろう?』

 

 天狼の疑問は当然だろう。俺に益はない。ただ…

 

「ま、あんま危険な場所に行って明香音を心配させるのも嫌だが…なんていうかな。見てみたいんだよ」

 

『見てみたい?』

 

 俺の言葉に天狼は疑問符を浮かべている。

 

「あぁ。お前だってあんな神秘的で雄々しい姿なんだ。他の連中にだって興味が湧くさ」

 

 そう。あの天狼の姿は俺の脳裏に焼き付いている。いつでも呼び出せるとはいえ、あの姿の狼が…今は俺と共にあるんだ。他の連中だって、それ相応の姿形をしているに違いない。そいつは是非にも拝みたいってもんさ。

 

『やはり、変わり者だな』

 

 呆れた口調で天狼は言ってくる。

 

「そんな変わり者が、今は宿主なんだろ?」

 

『……そうだったな』

 

 そうして天狼との話を終えた後、俺は学生鞄を持って朝食を食べに一階へと降りる。

 

………

……

 

「いってきます」

 

 朝食を食べた後、俺は家を出て隣の家に向かう。明香音を迎えに行くためだ。

 

「ぁ、しぃ君…」

 

 と、ちょうどタイミングよく明香音が家から出てきた。

 

「よっ」

 

 そうして、明香音と共に登校するのだが…

 

「どうした? 妙に距離なんか取って?」

 

 何故か、明香音が俺から少し距離を取って歩いていた。

 

 ?

 それになんだか違和感があるような…?

 はて、なんだろうか?

 明香音は普通(・・)に歩いているだけなんだが…。

 

 俺がそんなことを考えていると…

 

「その…今更というか…なんというか、恥ずかしくなって…//」

 

 やや頬を染めながら、明香音がしおらしいことを言う。いつもなら、お前からグイグイ来てるだろうに…。

 

「本当に今更だな…」

 

 やれやれと思いながら俺から距離を詰めると…

 

「わわっ…!?////」

 

 明香音の肩に手を回して抱き寄せる。俺の行動に明香音もさらに顔を赤くするが…

 

「俺、わりと執念深いみたいでな。嫌だと言っても、もう放さねぇよ」

 

 少し照れくさくなって、そっぽを向きながらもそう宣言してやる。

 

「ぁ…うん…////」

 

 明香音も一言頷くと、俺の肩に頭を乗せるのだった。

 

 

 

 そんな状態で駒王学園に登校した俺達だが、校門前でとある人物に遭遇した。

 

「イッセー?」

 

「忍?」

 

 そう、イッセーだ。しかも隣には…駒王学園の二大お姉さまとして名高い『リアス・グレモリー』先輩がいた。ただ、先輩の鞄はイッセーが持っているようで、まるで従者か何かのようだ…。

 

「ごきげんよう、探偵さんと…彼女さんかしら?」

 

 その先輩が俺達にも声を掛けてきた。

 

「どうも…」

 

「お、おはようございます…!」

 

 俺は適当だが、明香音は俺の肩から頭を離し、やや緊張気味に先輩に挨拶していた。

 

「仲が良いのね」

 

 先輩は俺達の様子を見て微笑むと、そのまま校門を潜る。イッセーも慌ててその後をついてく。

 

「なんだったんだ?」

 

 何故、イッセーと先輩が一緒に登校してるんだ?

 学園の誇るアイドルと、学園きっての問題児…特に接点はなかったはずだが…?

 

 疑問は尽きないが、とりあえずは俺達も校門を潜って学園の敷地内に入ることにした。そして、俺達が教室に入ると、先に教室に行ってたイッセーが松田と元浜から何やら問い詰められている光景を目にする。

 

 校門前でも他の生徒達が騒然としてたしな。俺としてはわりとどうでもいい問題なんだが…。

 まぁいい。とりあえず、イッセーから受けた依頼の報告はしないとな…。

 放課後にでも、話をつけるか…。

 

 俺はそんな風に考えていたのだが…。

 

「つか、俺の事もそうだが、忍のことも問い詰めろよ!」

 

 イッセーが突然、俺の方を指差してきた。

 

「は? 藪から棒になんでだよ?」

 

 俺は何故標的にされたのか、意味がわからずに抗議するが…

 

「お前だって、さっきまで天道さんの肩を抱いて歩いてただろうが!」

 

 ちっ…。しっかり見てやがったか…。

 まぁ、俺達からも見えてたんだから、そら向こうも当然見てたわな…。

 

 イッセーと先輩の方に注目が集まってたから俺達の話題はないに等しかったのに、イッセーの告げ口によって…。

 

「「「「な、なぁぁにぃぃぃぃぃ!!?」」」」

 

 男子共から怨嗟の声が響き…

 

「ねぇねぇ、明香音。その話、もうちょっと詳しく!」

 

 明香音は女子達に捕まって事情を聞かれるのだった。

 

 ったく、騒がしいクラスだ。

 

「うるせぇ! 俺が俺の女と一緒に歩いてて何が悪い!!」

 

 と、反射的に反論してしまったのがいけなかった。

 

 あ、やっべ…。

 

 だが、気付いた時には既に遅し…。

 

『………………』

 

 男女共にしばしの沈黙の後…

 

「「「「紅神、死ねぇぇぇぇ!!」」」」

 

「「「「きゃあああ!」」」」

 

 そんな叫び声と共に男子達が襲い掛かってきて、女子共の黄色い悲鳴が響き渡る。

 

 くっそ…。

 なんだってこうなるんだよ!?

 

 内心で悪態を吐きながら、俺は襲ってくる男子共の相手をすべく構えるのだった。

 無論、本気で相手するわけにもいかず、上手くいなして朝のSHRまでやり過ごしたが……妙に疲れた。

 

 ちなみに明香音は女子達が囲んで、俺の発言がどういうことかあれこれ聞かれていたので、問題はない…と思いたいなぁ。

 

 

 

 ただ…どうも、この時の俺は見積もりが甘かったらしい。

 その日の放課後に、俺は予期せぬ真実に遭遇することになるのだった。

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