ハイスクールD×J~噛み砕け、俺のジョーカー!~   作:伊達 翼

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第七話『悪魔との接触』

 放課後。

 

「………………」

 

 俺は真っ白になって机に突っ伏していた。

 

 転校生でもあるまいし、質問攻めをすな…。

 

 授業が終わり、休み時間になる度に女子達から明香音との関係を根掘り葉掘り聞かれてしまい、昼休みには明香音手製の弁当を愛妻弁当と言われてからかわれ…男子達からは授業中もずっと怨嗟の視線を受ける羽目になった。

 

 いや、自業自得とは思うけどさ…。

 流石にこれはキツい…。心身共に疲れるわ…。

 

 放課後になった今も、男子共からの視線は怨嗟に満ちていたが…。

 

 とりあえず、話題を振ってきたイッセーは一発殴ろう。その後に依頼報告をしてやる…。

 うん、そうしよう。

 

 と、俺がプランを練っていると…

 

「失礼します。兵藤一誠君はいるかな?」

 

 などと教室の扉の方から礼儀正しい声が聞こえてくる。

 

 なんだ?

 イッセーに用事?

 

 突っ伏した体勢から顔だけそちらを向けると…

 

 あいつは…同じ学年の木場(きば)祐斗(ゆうと)じゃないか。

 学年一の爽やかイケメンが、なんだってイッセーに…?

 

 そうこうしている内にイッセーが木場の前まで行く。

 

「俺が兵藤一誠だけど?」

 

「どうも、兵藤君」

 

「それで、何の用だよ?」

 

「リアス・グレモリー先輩の使いで来た。って言えば、わかるかな?」

 

「っ!」

 

 イッセーと木場がそのように会話している。

 

 イッセーからしたら目の敵にしていると言っても過言ではないだろうに…。

 どういうことだ?

 今朝、先輩と一緒に登校してたのも何か理由があんのか?

 

 などと考えていると…

 

「わかった。俺はどうすればいい?」

 

 イッセーがなんか承諾したっぽい。

 

「僕と一緒にきてくれないかな?」

 

 木場は笑顔でそんなことを言う。

 

『イヤぁぁぁぁ!!!』

 

 すると、突然女子共が騒ぎ出す。

 

 まぁ、木場はモテるって話だからな。

 そんな木場の誘いを受けたイッセー…。

 腐った人達的にはあまり良い組み合わせとは言えないのか…。

 知りたくもねぇ世界だけどな。

 てか、俺も依頼報告しないとじゃねぇか…。

 

 変な世界に関心はないが、こちとら依頼を受けた身だ。さっさと片付けてしまおう。

 

「ちょい待て」

 

 木場とイッセーが共に歩いていくのに俺が待ったをかけた。

 

「? 何かな?」

 

「忍、なんだよ?」

 

 木場とイッセーが揃って首を傾げ、俺の方を見る。

 

「木場はともかく、イッセー。テメェは依頼人だろうが!」

 

 俺がそう言うと…

 

「……ぁ…」

 

 と小さく反応する。

 

「おい! 依頼しといて忘れてたのか!?」

 

 その反応に思わず、俺が怒鳴ると…

 

「あ、いや…最近、色々あったから、すっかり忘れてて…わりぃ…」

 

 何ともバツが悪そうな表情でイッセーが頬を指で掻きながら謝ってくる。

 

「依頼? あぁ、もしかして君が噂の探偵同好会の?」

 

 木場もどこか納得した様子で、俺に問い掛けてくる。

 

「そうだよ。探偵同好会の紅神忍だ」

 

 一応、名乗ってはおく。

 

「僕は木場祐斗。よろしく、って言えばいいのかな?」

 

「さて、今後関わるかわからんし、好きにしろ。で、だ。依頼の報告するからイッセーを連れてかれちゃ困る」

 

「僕も彼を連れてくるように言われてるんだけどね」

 

 などと会話していると…

 

「兵藤を巡る三角関係!?」

「なに、この展開!?」

 

 再び女子共が湧き上がる。

 

 腐った妄想はやめい!!

 俺には明香音がいるんじゃ!!

 

 だが、ここで反論してみろ。また今日のような状況が続くことになる。耐えろ、耐えるんだ俺…。

 

「そんな…しぃ君が…」

 

 って、なんでお前まで悲しそうな顔をする!?

 

「お前まで毒されるな!? 安心しろ。俺にはお前がいる!」

 

 反射的にそう叫ぶと…

 

「しぃ君!」

 

 感極まったように嬉しそうな表情で俺の背中に抱き着いてくる彼女様…。

 

 ……はっ!?

 しまった。また、反射的に言ってしまった…。

 

「……もう行ってもいいかな?」

 

 木場にまるで茶番でも見るかのような視線を向けられる俺。

 

「だから待てぃ! 依頼の結果報告だけさせろ!」

 

 もう面倒だから、このままぶちまけてやろうか?

 

 と俺が自棄を起こそうか、真剣に悩んでいると…

 

「わかった。なら、忍も一緒に来てくれ」

 

「え?」

 

「なぬ?」

 

 イッセーからの突然の提案に木場も意表を突かれたのか驚き、俺も勝手についてっていいのかと疑問を抱く。

 

「でも、部長からは君だけをって…」

 

 木場が難色を示す中…

 

「他の奴等に聞かれたくねぇんだよ。先輩のところに行く途中までならいいだろ?」

 

 イッセーも依頼の内容が内容なので、他人に聞かれたくないのだろう。

 

「……いいだろう。依頼人の要望とあれば、俺に異論はない。人気がなくなった頃合いを見て報告してやる。木場、お前も依頼内容については黙ってろよ?」

 

「……ふぅ。仕方ないな。僕もそれでいいよ。これ以上、遅れたら僕も怒られるしね」

 

 俺が妥協するのを見て、木場もそれに同意したようだ。

 

「なら、さっさと行こうぜ?」

 

 そう言ってイッセーが木場と俺に言ってくる。

 

「すまんが、明香音は先に帰っててくれ。こればかりは公私をしっかりつけないとな」

 

 真面目な表情で未だ背中に抱き着いてる彼女様に言うと…

 

「うん。わかってる。気を付けてね?」

 

 流石にそこは理解のある彼女様。すぐに離れてくれた。

 

「じゃ、行ってくるわ」

 

「うん」

 

 そのやり取りを見てた一部の人間が…。

 

「新婚か?」

 

 と呟いていたが…

 

 ……ツッコまねぇからな!?

 

 俺はツッコミを拒否した。

 

………

……

 

 そうして俺とイッセーは木場の先導で、校舎裏にある旧校舎と呼ばれる場所だった。

 

「旧校舎か…まぁ、ここでなら報告してもいいか」

 

 人気は木場以外感じない。なら、とっとと報告して帰るに限る。

 

「それで…天野夕麻についてだが…」

 

「っ!」

 

 俺が依頼について口を開くと、何故か木場が反応する。なんでだ?

 

「何かわかったのか?」

 

 イッセーはそれに気付いてないようだが…まぁいい。さっさと話して…。

 

「悪いけど…紅神君。その話は中でしようか?」

 

 俺が話を続けようとした矢先、そう言って木場がやけに鋭い視線を向けてくる。

 

 ……こいつ、何者だ?

 歩き方からして、ただのイケメンじゃないってのは何となく察してたが…。

 もしかして…?

 

「は? どうしてだよ?」

 

 イッセーが意味がわからなそうに木場に問うが…

 

「いいから。ちょっと部長に相談しないといけない案件みたいだしね」

 

 木場はそう言って先導を再開する。

 

「あ、おい!?」

 

 イッセーは俺の報告を聞きたそうにしてたが、俺は仕方なく黙って木場についていくことにした。イッセーもそんな俺達に慌ててついてくる。

 

 さっきも言ってたが、部長だと…?

 リアス・グレモリー先輩の事か?

 部長、それに旧校舎…。

 そういえば…一つの部活が旧校舎を使ってると聞いたことがあるな…。

 確か…。

 

 そんなことを考えながら木場の後をついていくと、木造二階建ての旧校舎の二階の奥の教室で立ち止まることになった

 その教室の戸のプレートには…『オカルト研究部』の文字があった。

 

 オカルト研究部。

 なんというか…物凄く雰囲気がマッチしてるな、とは思うが…。

 さて、オカルト研究部の部長がイッセーに何用なのか?

 そっちの方が気になるな。

 

 そんなことを考えていると…

 

「部長。彼を連れてきました。それと…ご報告が…」

 

 引き戸となっている入り口から木場が中にお伺いを立てていた。

 

「どうかしたの?」

 

 この声は、確かに今朝聞いたリアス・グレモリー先輩の声と同じだった。

 

「実は、彼が探偵同好会に依頼を出していたらしく…探偵同好会の方も何かを掴んでいそうな雰囲気だったので、お連れしました」

 

「なんですって?」

 

 木場が俺の事を伝えると、中から聞こえる声も些か低くなった気がする。

 

「僕の勝手な判断で連れてきてしまい、申し訳ありません。ですが…」

 

「……いいわ。探偵さんもお通ししなさい」

 

 木場の報告を聞いて少し間があったものの、俺も入室していいようだ。

 

「では、二人とも。こちらへどうぞ」

 

 そう言って木場が引き戸を引いて中へと入り、俺達もその部室に入るのだが…。

 

 なんだ、こりゃ?

 

「お、おぉ…」

 

 部室内に入った俺とイッセーは部室内の内装に驚いていた。

 

 床一面に巨大な…円陣。魔法陣とかいうやつかね?

 床の他にも壁や天井にも見たことない文字が記されている。

 ソファにデスクもいくつかあり、明らかに普通を通り越して豪華な仕様だ。

 さらに奥のデスクに一人、その後ろに控えるように一人、さらにソファにも一人、部員らしき女子生徒達がいる。

 ここがオカルト研究部か…。

 

 などと珍しいもの見る感じで部室内を見物していると…

 

「ようこそ、オカルト研究部へ。兵藤一誠君。イッセーと呼ばせてもらうわね? そのイッセーはともかく…探偵さんはどうしてここへ来たのかわかるかしら?」

 

 一番奥のデスクに腰掛けた、この部室の主であろうリアス・グレモリー先輩はイッセーを歓迎したようだが、俺には厳しい視線を向けている。

 しかし…よくよく見ると、先輩の髪が濡れているような…?

 

「さて…思い当たる点といえば…一つしか思い浮かびませんね?」

 

 そんな些細な疑問はともかくとして、俺には思い当たる節が一つだけあった。

 

「「「………………」」」

 

 木場も含め、グレモリー先輩の後ろにいる黒髪ポニーテールの女子生徒…グレモリー先輩と並び駒王学園の二大お姉さまの片割れである三年生の『姫島(ひめじま)朱乃(あけの)』先輩と、ソファに座って羊羹を黙々と食べている小柄な女子生徒…無表情ながら可愛いと評判らしい一年生の『塔城(とうじょう)小猫(こねこ)』もどこか俺の事を警戒しているように見える。

 

 ま、部外者なんだからそんなもんだろうが…。

 しかし、イッセーを歓迎するとは、どういうことか?

 謎は深まるばかりだが…。

 

「それは、一体どんな理由かしら?」

 

 俺が思案していると、グレモリー先輩が問い掛けてきた。なので、俺は…

 

「天野夕麻」

 

「「「「っ!」」」」

 

 その名を出した瞬間、部室内の空気が変わるのを肌で感じる。グレモリー先輩を含めた四人の部員から何やら怪しげな気配を感じる。

 

「ちょ、忍。お前、何もこんなとこで言わなくても…」

 

 イッセーだけは俺に文句を言っているが…この際だ。もうちょい踏み込んでみるか。

 

「イッセーから依頼を受け、俺はイッセーの辿ったデートの軌跡を追いました。すると先日、天野夕麻に会いましてね。命からがら逃げてきたんですよ?」

 

 俺がそう言うと…

 

「え!? お前、夕麻ちゃんに会えたのか!?」

 

 イッセーが露骨に聞きたそうに俺に詰め寄ってきたが…。

 

「……あなた、何者?」

 

 低めの声音でグレモリー先輩が俺に質問を投げかけてくる。

 最初から歓迎されてはいなかったようだが、今の俺の発言でどうにも敵意に近いものを向けられてしまったらしい。

 木場も俺とイッセーの後ろに回り込んで、退路を断つような動きを見せる。

 

 ふ~ん? その辺の心得も持ち合わせてるってか?

 にしても、凄ぇ迫力…。

 だが、これはチャンスでもある。

 天野夕麻を知っている。つまり、ここには俺の知りたい情報が眠ってる可能性が高い。

 

 そう考えた俺は、無抵抗を表すため、両手を挙げるポーズを取る。

 

「ただのしがない探偵、だったんですがね」

 

 グレモリー先輩の問いにはそう答えておく。

 

「ただの探偵が彼女から逃げ切れたっていうの?」

 

「実際、一度は死を覚悟しましたがね。でも、俺はこうして生き残りましたよ」

 

 グレモリー先輩の厳しい視線を受けつつ、俺は質問にそう返す。

 

「……何が言いたいのかしら?」

 

「じゃあ、単刀直入に聞きますが…神器(セイクリッド・ギア)って言葉をご存じですか、悪魔(・・)さん?」

 

 腹の探り合いもしてもいいが…俺は大した情報を持ってる訳ではない。なら、さっさとカードを切るに限る。無論、大事なカードはまだ取っておくが…。

 

「「「「っ!?」」」」

 

 俺の言葉にオカルト研究部の眼が驚きに変わる。

 

 ビンゴ。いや、反応からして部員全員が悪魔か?

 悪魔がオカルト研究部に在籍しているとは、何の冗談なのか…。

 天狼に聞いてなかったら、俺も酷く混乱していただろうな…。とは言え、まだ半信半疑なんだが…。

 まぁいい。これで少しは情報収集もしやすくなるかもしれん。

 

「あ、悪魔? それに神器って…忍。お前、何を言って…?」

 

 勝手に話を進める俺達に意味が分からないといった感じでイッセーが声を掛けてくる。

 

「……目的はなに?」

 

 グレモリー先輩の態度は変わらないものの、こちらの話を一応は聞いてくれるようだ。

 

「別に大したことじゃないですよ。俺が欲しいのは、情報です」

 

「情報?」

 

 俺の答えに怪訝な様子のグレモリー先輩。

 

「えぇ、あまりにも知らないことが多くて困ってるんですよ。だから、ここはある程度の事情を知ってそうな悪魔から情報を聞こうかと思いましてね」

 

 天狼には渋い反応をされたが、ここまできたらやるしかない。

 

「……その悪魔から情報を得るのに、あなたはそれ相応の対価を用意しているのかしら?」

 

 グレモリー先輩の挑発的な言葉に…

 

「こちとら、ただの人捜しの依頼で死にかけたんだ。正直、割に合わない。その理由も知らないままで泣き寝入りしろと?」

 

 そんなのは御免被ると言わんばかりに言い返す。

 

「……知らない方が身のためだとは思わないのかしら?」

 

「生憎と、こっちも中途半端な知識を得た上に、ちょっとした事情でマークされてる可能性も高い。そんな状態で、今更知らないふりをしても自殺行為だと思いましてね」

 

 おそらくは警告のつもりなんだろうが、俺は既に戻れないところまで来ていると自覚している。

 

「よく回る口ね」

 

 どこか呆れたようにグレモリー先輩は言ってくる。

 

「俺も命は惜しいんでね。なりふり構ってられませんよ」

 

 明香音との日常を守るためなら、俺は茨の道だって進む覚悟がある。

 

「………………」

 

「………………」

 

 しばしグレモリー先輩と俺の睨み合いが続く。

 

「「「「………………」」」」

 

 この場にいる他の四人も固唾を飲んでその様子を窺っている。

 

 と…

 

「……いいわ。どうやって、その中途半端な知識を得たのかも気になるし、下手に野放しにはできなさそうだから、ある程度の質問には答えてあげる」

 

「そいつはどうも」

 

 質問に答える、か。ま、何もわからないよりはマシだな。

 とりあえず、一歩前進だ。

 

 

 

 こうして、俺はイッセーが呼ばれた席に同席することになった。

 部員達からはあまり歓迎はされていない様子だがな。

 そういえば、何故イッセーがこの場に呼ばれたのか。

 それが謎のままであったな。

 ま、それもすぐにわかることか…。

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