第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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なんか書けてしまった…。まだ完結してないの色々あるので超不定期更新です。


第二水雷戦隊壊滅ス

02:30

日本海軍の水雷戦隊の最精鋭、第二水雷戦隊臨時旗艦を務める私、陽炎は窓の外がまだ真っ暗な時間に目を覚ました。

すぐに敷布団を畳むと顔を洗い歯を磨く。クローゼットから制服を取り出し普通の陽炎型の制服と違い袖に2枚の桜と2本魚雷を基調としたマークのワッペンが付けられた白のカッターシャツ、グレーのスカート、グレーのベストとスパッツ、そして白いハイソックスを手早く履く。姿見の前に立ち白いリボンで髪の毛をツインテールにして最後に黒い指抜きグローブを手にはめるといつもの私の姿の完成。ここまでおよそ5分。

そのままローファーを履いて部屋を出ると早足で食堂に向かう。

食堂の扉を開けると既に数人の艦娘が席についてご飯を食べていた。

 

「おはようございます」

 

間宮さんに挨拶をしながら朝食の載った盆を受け取ると急いで席につきかきこむように食べる。ご馳走様を言いお盆を返すとこれまた早足で職員室に向かう。

現在時刻は02:43。予定時間には間に合った。

 

「おはようございます陽炎さん」

 

職員室の扉を開き敬礼をすると答礼と挨拶を返したのは川内型軽巡洋艦二番艦の神通さんだ。この人は二代前の第二水戦戦旗艦で引退してからはこの第二水雷戦隊教導隊の司令艦を務めている。

 

「おはようございます!」

 

「慌てなくてもまだ全員揃っていませんから今日の予定でも確認してゆっくりまっていてくださいね」

 

「はい。ありがとうございます」

 

全員が揃うまで1分も掛からなかった。

 

「全員揃いましたね。親潮さん、予定通り総員起こしをお願いします」

 

しばらくするとスピーカーから総員起こしを告げるラッパの音と予定を変更し制服でグランドに整列するよう親潮が告げる声がスピーカーから響いた。

 

「では皆さん、いきましょうか」

 

神通さんの号令の下私たちは本来なら1分ほどで着く距離のグラウンドに早足で向かった。もちろんそんなに早く着くけばグラウンドに誰かいるはずもなく私たちはだけが真っ暗ななか立って待つ事になる。

4分後にはいくつかの班が集合を伝え6分後には全ての班がグラウンドに整列する事になった。

 

「遅い!」

 

全員が揃うと神通さんは朝礼台に登ると怒鳴り声を上げた。

 

「総員起こしから全員揃うまで何分かかったと思っているんですか!」

 

宿舎からグラウンドまで歩いて2分ほどかかることを考えると全員揃うまで6分というのはむしろ早い部類ではある。今回に限ってはそんなこと関係ないのだけど。

 

「その遅さでは今後の訓練に不安が残ります。全員グランドを走りましょうか」

 

神通さんの号令を理解するのに少しの間があったがそこは皆艦娘。すぐに列になってグランドを走り始めた。

 

「何楽をしようとしているんです。全力で走りなさい!」

 

一周1000メートルはあろうかというトラックを全力疾走するのはいくら艦娘とはいえかなり苦しいし訓練学校でもグランドを走るといえば掛け声を上げながらランニングすることを指す。彼女達は一瞬唖然とした様子で神通の方を振り向いたがその表情から本気であることを悟ったのだろう。次の瞬間には彼女達は全力で走り始めた。

 

「そこの巻雲!」

 

艦娘は機械ではなく特別な手術を受けたただの人だ。故に個人差というものがあり走るという行為ではそれは顕著に現れる。他の班員よりも一際走るのが遅かった巻雲が隊列から離れ他の班に先を譲るように外側に逸れたのを見つけ私は声をかけた。

 

「はい!」

 

「貴女の所属する班は?」

 

駆け寄る私を直立して待つ巻雲に私は所属する班を訪ねた。

 

「13班です!」

 

「13班、ここに来なさい!」

 

私の怒鳴り声が響く中他の教員艦も隊列から離れた候補生を見つけては声を掛け班員を呼び戻し始めた。

 

「貴女達は海上で部隊の仲間が隊列から落伍したら置いていくよう習ったの?」

 

私の問いかけに夕立が答えた。

 

「作戦行動中なら護衛をつけた後方に下がらせるっぽい。けど泊地に移動中なら護衛してみんなで移動するっぽい!」

 

「ぽいではなく下がらせるの!そして今回の場合はゴールにつく事が目標よ。言い換えれば泊地への移動といえるわ。落伍した艦を全艦でもって護衛し共にゴールを目指さなければならない。そんな事もわからないの?全員腕立て500回!」

 

さて、本来第二水雷戦隊に所属する私がどうしてこんな事をしているのか。それは遡ること1ヶ月前のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああもう最悪!」

 

ドックに放り込まれた私は子供のように手足をバタつかせ全身を使って不機嫌さを表した。

 

「いや〜ホンマついてへんなぁ」

 

そんな私にニヤニヤとイヤらしい笑いを浮かべて私に声をかけたのは私が司令艦を務める第十八駆逐隊に所属する陽炎型三番艦黒潮だ。

 

「何よその顔」

 

「せっかく4年ぶりの二水戦所属艦全員での作戦やったのにわざわざウチに駆逐隊司令を譲ってくれるなんて優しい姉やなぁと思ってな」

 

「まだ正式に決まったわけじゃ無いでしょ」

 

「冗談やって」

 

ムカついて近くにあった桶を黒潮めがけて投げたけどあっさりと黒潮には避けられた桶は甲高い音を立てて浴室の床に落ちた。

 

「はぁ、深海棲艦と戦って入渠するならともかく機雷で大破するなんて」

 

「まぁ機雷はしゃあないわな。先頭に立つ司令艦の宿命みたいなもんや」

 

ちょうど私が二水戦に入った時、その一度目の任務が全員での大規模作戦だったけどあれは楽しかった。

この作戦の前に参加した作戦が戦闘任務ではなかったから不完全燃焼だったところに今回の大規模戦闘、これを逃せば数年は無いだろうからすごくショックだ。

 

「調子はどうですか陽炎さん」

 

ドックの扉を開けて入ってきたこの人は私の所属する水雷中隊の中隊長をしている神通さんだ。

水雷中隊とは駆逐艦四隻を定員とする駆逐隊を2つ〜4つを束ねた部隊で基本軽巡洋艦が指揮する。水雷戦隊は駆逐隊が12個に5隻の軽巡洋艦を定員としていて今は珍しく軽巡洋艦が5人揃っている。ちなみに第二水雷戦隊24年の歴史で軽巡洋艦、駆逐艦の定員が揃ったことは一度もない。

 

「明日の任務には参加できないそうです」

 

「それについては親潮さんから聞きました。

十八駆逐隊は2隻になりますが今作戦では他隊に編入せず2隻で運用する事に決定しました。

私達が帰ってくるまで暇を持て余すでしょうから本作戦とは別に貴女に任務を与えます」

 

「任務ですか?けど私は入渠中で…」

 

「もちろん入渠が終わってからですよ。私達が帰ってきた時の祝勝会の準備をお願いします。今回は無礼講で酒も大量に用意するようにと。姉さんの奢りだそうです」

 

「気が早くないですか?」

 

「おや?私達が負けるとでも?」

 

「いえ全く思ってません」

 

私達第二水雷戦隊は同数の戦艦が相手でも勝つことを目標に鍛え抜いてきた海軍きっての最精鋭、世界最強の水雷戦隊であるとまで評される部隊だ。今回の相手はたかだか戦艦6隻を中核とする40隻程度の艦隊で他に確認されている巡洋艦を主力とした敵の別働隊を入れても精々60隻。空母がいない敵ならば二水戦全軍を持ってすれば容易に撃破できる数だった。

 

「ただ今回は第八艦隊との合同作戦なのが気になります。あの艦隊はできて日も浅いですし所属する艦娘も寄せ集めの弱兵にすぎません。数だって定数の半分以下です」

 

第八艦隊はトラック泊地を主要泊地とし東南アジアの深海棲艦と戦うために3ヶ月ほど前に新設された艦隊だ。艦隊の基本構成は前衛を務める一個水雷戦隊53隻、主力に巡洋艦6個戦隊、戦艦を中核とする戦隊または正規空母、軽空母、水上機母艦、航空戦艦、のいずれかからなる航空戦隊を合計5個戦隊。これに主力の護衛を務める駆逐艦が加わり90隻前後の艦娘からなる部隊が艦隊と呼ばれる。

けど第八艦隊は巡洋艦4個戦隊と駆逐隊が2個、戦艦が4隻と軽空母が2隻。主力も少ないが何より前衛を務める駆逐艦が圧倒的に足りていない。そこで即応待機していた第二艦隊に所属する第二水雷戦隊に声がかかりソロモン海峡で敵艦隊と戦うため遥々ラバウル基地にまだ来ていた。

 

「それでもこの程度の敵なら容易に蹴散らせます」

 

「手柄は第八艦隊のもんになるけどな」

 

黒潮が面白くなさそうな表情で言った。

 

「マスコミ向けには第八艦隊が撃破したと発表されますけどスコアについてはキチンと処理されます。何度も言っているでしょう?」

 

「けどウチら華の二水戦が脇役扱いされてるみたいで気分悪いわ」

 

「その気持ちはわからなくもないですけどこの東南アジアの平和が第八艦隊によって守る事ができると内外にアピールする必要がありますからね」

 

「まぁ気にくわんけどやるしかないかぁ。陽炎祝勝会楽しみにしてるで」

 

第二水雷戦隊24年の歴史の中で毎年の離脱者は平均5.4人。病気や怪我などの死亡以外の理由で離脱する者を除いた数、つまり平均死者数は3.2人。一割ほどの損耗率だが即応部隊として使われる事が多い二水戦は必然的に激戦区に投入される事が多くその中でこの損耗率は驚異的といえた。

だから私は作戦に参加できないことを不満に思ったけど祝勝会の準備は怠らなかった。たとえ作戦が失敗して轟沈艦が出たとしてもその子の弔いを兼ねてパーティーをすればいいと思ったし大半は無事帰ってくるだろうと思っていたから。

 

翌日パーティーの準備をしていた私は部屋に駆け込んできた第八艦隊の大淀の口から第二水雷戦隊が2隻の駆逐艦を残して壊滅した事を知った。

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