第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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今回長くなりすぎたので途中で切っています。


第一水雷戦隊 前編

「どうして神通さん達は第一水雷戦隊が嫌いなんですか?」

 

ある日の休日、それは雪風の何気ない一言から始まった。

思わず私は部屋の扉を開けて廊下に誰もいないことを確認して黒潮は素早く窓とカーテンを閉めた。

 

「雪風、絶対に他の教艦の前でその話をしてはダメよ。不知火の話くらいなら大丈夫だと思うけど絶対にそれ以上掘り下げるのはダメ」

 

「どうしてですか?」

 

「親潮も知らないの?」

 

箝口令が敷かれているとは言え噂くらいは聞いたことがありそうだけど。

 

「ウチと陽炎は横須賀の第一訓練学校出身やけど親潮は舞鶴の第四、雪風は桂島の第二出身やから知らんのも無理はないやろ」

 

「噂も聞いた事ないのね」

 

「そらそうやろ。第一出身者でも最近の奴は噂さえ聞いた事ないやつの方が多いらしいで」

 

「そうなの?」

 

言われてみれば訓練学校の頃は詳細は知らなかったし今となっては噂さえ残ってなくても不思議ではないのかもしれないわね

私も詳細を知ったのは二水戦に入ってからだったし。

 

「じゃあ黒潮説明してあげてくれる?」

 

あまり楽しい話ではないから正直話したくはない。

 

「ウチ詳細知らんからできへんで」

 

「知らないの?」

 

意外ね。二水戦としては私が先輩だけど艦娘としては黒潮が先輩だからどこかで聞いていると思っていたわ。

 

「箝口令のせいで中々外には伝わってこんかったうえにウチが二水戦入った時にはもう当時の事を知る人はおらんかったからな。その頃には触れたらあかん雰囲気やったから自分で調べようとしてデータベースで検索したりもしたけど出てこんし諦めたわ」

 

「へー、そうだったの」

 

私の隊長だった村雨は聞けば普通に話してくれたけどものすごく苦しそうな顔をして語るものだからそれ以来私は私他の人に倣ってこの話に触れる事はなかった。先輩達がいなくなってからも一水戦の話はタブー視していたから黒潮みたいに当時者だった艦娘がいなくなってから入ってきた人は一水戦の話は厳禁という暗黙の了解しか知らなくなっていた。

 

「いいわ、10年前何があったのか話してあげる」

 

私はタバコを一本取り出して火をつけ、大きく息を吸うとため息をするように煙を吐き出した。

 

「と言っても私も当事者じゃないし教えられなかった部分は自分で調べたりしたものだから多少曖昧な部分もあるわ。それでもいい?」

 

3人は顔を見合わせると頷いた。それを確認して私は話を始めた。

 

「始まりは11年前当時の一水戦の旗艦が交代した事まで遡るわ」

 

当時の一水戦は二水戦と並んで日本、いや世界でもトップクラスの力を持つ部隊だった。ただ一水戦と二水戦の戦い方は全然違ったわ。

個人の力量こそを至高とする一水戦、対して二水戦は今と変わらず隊員同士の連携をこそ最も重要なものだと考えていたわ。だから一水戦は常に殺伐とした雰囲気を纏っていたそうよ。

 

「陽炎お姉ちゃん質問いいですか?」

 

「いいわよ」

 

「一水戦と二水戦、どっちが強かったんですか?」

 

私もこの話をされた時質問したけどやっぱりそこは気になるわよね。

 

「個人では一水戦が圧倒的に強かったそうよ。けど駆逐隊規模なら互角、中隊以上の規模なら二水戦が圧勝してたみたいね」

 

聞いた話だと一対一だと一水戦は約9割の勝率を誇ったみたいだから圧倒的ね。逆に中隊規模だと二水戦は9割勝てたみたいだけど。

 

「一水戦が個人主義的な考えだったのは分かりましたけどそれと旗艦が交代したこととどう繋がるんですか?」

 

親潮はいい質問するわね。それこそがこの事件の根幹だ。

 

「当時としては珍しく大尉から少将までを深海棲艦の討伐スコアではなく部隊運営や作戦立案といった裏方での功績によって昇進した天龍がいたわ。彼女は実力はともかく部隊の指揮能力や運営がとにかく上手かったそうよ」

 

佐官は能力も見つつ昇進する事が多いけど未だに尉官の間はスコアによる昇進が大多数を占める。

 

「彼女が一水戦の旗艦となったのだけれどこれには大きな反発があったの。上層部としては深海棲艦の討伐スコアによって指揮官に相応しくない能力の艦娘が昇進する事を防ぐ為に今後能力によって出世していく事を艦娘に知らしめる意図があったそうよ。

ただその為の最初の部隊に一水戦を選んだ事が間違いだった。自分達よりもスコアが少ない天龍が自分達の上官になる事を一水戦は許さなかった。それまでは中隊長の中で模擬戦を行い最も強かった者を旗艦として推薦してそれを上層部が認める形をとっていたらしいからそれを急に変えられたらムカつきもするわよね」

 

「けど上層部からの命令ならしゃあないやろ」

 

「そうね。だから一度上層部に抗議した以外は上層部に対しては何もしなかったそうよ」

 

「なんか含みのある言い方やな」

 

勘がいいわね黒潮。

 

「代わりの捌け口を自分達で用意したのよ」

 

「……まさか!」

 

ここまで言えば黒潮はわかったみたいね。

 

「そう、新しく旗艦となった天龍よ。名目上は訓練と言っていたみたいだけど実際はただのリンチだったそうよ。毎日轟沈寸前まで痛めつけられては入渠するのを一年近く繰り返していたらしいわ」

 

「天龍には悪いけどストレス発散できてるんやったらなんで一水戦はあんな事したんや?」

 

「天龍が配属されて一年後、凄惨なリンチの末、天龍はとうとう命を落としたわ」

 

「上官を殺したんかっ!?」

 

私の言葉に親潮と雪風は息を呑み黒潮は驚き声を荒げた。

 

「今も昔も上官殺しは大罪、死刑もしくは無期懲役になる。流石精鋭部隊とでも言うべきかしら、天龍を殺した後の一水戦の行動は素早かったわ。

僅か10分足らずで横須賀基地内にあった小型船8隻に物資を載せると死んだ天龍が率いていた第一中隊がその船を牽引して海堡に移動させ基地としたの。

そんな事をして第一艦隊が驚かないはずもなくそれから20分後には天龍の死体が発見されたわ。殴られたせいで顔はもはや判別できないほどに潰れていたから制服に付いていた部隊章で一水戦の天龍であると判別したそうよ」

 

天龍が死んでから30分後に死体を見つけたのは早いと見るべきか遅いと見るべきか…。

 

「アホやな。天龍殺して直ぐならまだ実行犯の首くらいでなんとなったかもしれんのに…」

 

「調査報告書によれば天龍の日記の記述から一水戦全員が暴行に加わっていたみたいよ。もしかしたらこの時も誰がとどめを指したのか、実行犯が誰かわからなかったんじゃないかしら」

 

下手をすれば全員の首が物理的に飛ぶ。いや、上層部はこの頃艦娘の昇進に関して改革を始めようとしていたらしいから見せしめに飛ばす可能性は高いと考えたのかもしれない。

 

「じゃあなんで海堡に行ったんですか?」

 

「それにどうして物資まで持っていったんでしょうか?」

 

雪風と親潮はなんと言うか…純粋ね。

 

「親潮と雪風はいい子ね。性格の悪い黒潮は言わなくても分かっているみたいよ」

 

「アホか。ウチは元々事件のあらましは知ってんねん」

 

それは知っていたのね。いや、よくよく考えたら私もそれは訓練学校時代に噂で聞いていたわね。

 

「あら、知ってるなら2人に教えてあげて」

 

「…このまま座して死を待つくらいならいっそ反乱でも起こしてまえって話や」

 

目を瞑り眉を顰めると吐き出すように黒潮は言った。

 

「反乱?」

 

「一水戦がですか?」

 

親潮と雪風は信じられないとばかりに目を見開いている。

 

「公式には反乱の文字は使われていないわ。

それにこの事件だけは正式名称で調べないとデータベース上に出てこないように細工をしているみたいだから黒潮みたいに闇雲に調べても絶対に検索に引っかかることはないの」

 

ほんと、どれだけ知られたくないんだか。

 

「せやから調べても出んかったんか。なら正式名称はなんなん?」

 

「艦娘乙事件。それが正式名称よ」

 

「乙って甲乙の乙やんな。なら甲事件はなんや?」

 

やっぱりそれ気になるわよね。

 

「潜水艦艦隊司令官の伊58が主導した未成年艦娘への補償、あれが甲事件よ」

 

本当かどうかはわからないけど元々この事件も甲事件じゃなくて別の名前があったけど乙事件と一緒に世間の目に触れないようにするために名前を変えたって話もある。こっちは上手くいかなかったみたいだけどね。

 

「そういえばここまでまだ二水戦が出てきてないですけどいつ出てくるんですか?」

 

「もう少し先よ。と言うよりまだ事件は始まってさえないのよ」

 

「やっぱりあの噂はホンマの事やったんやな」

 

黒潮の言葉に頷いて私は話を続けた。

 

「海堡に向かったのは第一中隊に所属する艦娘は8隻。じゃあ残りの艦娘は何をしたと思う?」

 

答えは簡単。

 

「一水戦を捕殺するために出撃してきた第一艦隊を迎撃するために横須賀鎮守府の近くに残っていたのよ。死体発見後直ぐに8隻の重巡が即応したけど当然のように横須賀湾の前には機雷を敷設していたからそれに引っかかった重巡艦娘3隻が大破。それで乱れた艦列に魚雷を叩き込んで重巡2隻が轟沈、3隻が大破したわ。大破した艦娘はこの後雷撃で止めを刺されたそうよ」

 

第一艦隊には16隻の巡洋艦が所属していたからこの攻撃で四割強の巡洋艦を失った事になる。ただこの時は2個戦隊が演習中で外洋に出てこの場に居なかったから残る巡洋艦の戦隊は後一つだけだ。

 

「更に一水戦は、横須賀鎮守府に艦砲射撃を実施したわ。これで出撃準備をしていた一航戦の加賀、瑞鶴が轟沈した他に第一訓練学校にも撃ち込まれたせいでこちらにも被害が出たわ」

 

第一艦隊に所属する一、二、五航戦のうち五航戦は他の鎮守府との演習のために出払っていたから2個航空戦隊4隻がその時第一艦隊が横須賀に保有していた航空戦力だった。その内の半分がこの攻撃でやられた事になる。

 

「重巡戦隊に遅れて第一戦隊、第二戦隊の戦艦、そして後方から艦載機を射出しながら第二航空戦隊も出撃したけど悉く魚雷で撃沈されて海の藻屑と消えたわ」

 

当時から大型艦や中型艦の積極的な運用をしていなかったみたいだけどこの一件が尾を引いて今の海軍は過剰なまでに水雷戦隊偏重になっている。大型艦では水雷戦隊に勝てないと言うのが上層部の考えだ。

 

「二航戦は艦載機を出せたんですよね?なら、一矢報いる事はできなかったんですか?」

 

「残念ながら全機撃墜されたみたいよ」

 

流石は二水戦と双璧を成すだけあって強かった。対空能力の高い秋月型もいたみたいだし当然といえば当然だけど轟沈した二航戦を思うとやるせない気持ちになる。

 

「横須賀に残る艦娘は雷巡が2隻だけ。天龍の死体発見から1時間38分後の事だったそうよ。ここにきてようやく上層部は事態を把握したわ」

 

天龍の死から約2時間。本当なら上層部は死体発見後直ぐ事態を把握すべきだけどこれ程までに報告が遅れたのは第一艦隊司令部が発覚を恐れて内密に処理しようとしていたからだと言われているわ。

 

「ここでやっと二水戦の出番になるわ。その時呉には二水戦の全艦娘が集まっていたから上層部は出撃を命じたわ」

 

「第二艦隊での出撃にはならなかったんですか?」

 

「上層部はこれ以上の中、大型艦の消耗を避けたかったみたいよ」

 

維持費の関係からその多くを陸軍と空軍に出向させているから当時と今では艦娘の数が増えた割には海軍の大型、中型艦娘は増えていない。

ただ当時と今では損耗に対する回復力は大きく違う。今の海軍は艦娘を喪失しても出向している艦娘を戻せば数だけはどうにかする事ができるけど当時はそれができなかったから第二艦隊の大型艦を出さなかったのではないだろうか。

 

「一、二航戦が沈んだのってようするにアウトレンジで攻撃できんかったからやろ?なら普通に空母出せばよかったんちゃうん」

 

たしかに一、二航戦の轟沈は空母の交戦距離ではなかった影響が大きいでしょうね。

 

「私の想像だけど時期が悪かったからだと思うわ。この時ちょうど大型艦の数が増えて一部を陸軍と空軍に出向させ始めたばっかりだったのよ」

 

「下手すりゃ出向させる分が無くなるって事か?」

 

「後は単純に教艦の手が足りなくなるとかじゃないかしら。その頃は手の空いてる艦娘は手伝ったりしてたみたいだし」

 

今よりマシとはいえ暇を持て余していたのはたしかだったみたいだし回復力のなさと人手不足のダブルパンチで出さなかったとみるべきね。




そういえば艦これ2期始まりますね。
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