第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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一時はハーメルのランキングを席巻していた艦これも今となっては限られた作品がランキングになるくらいになって随分経ちますね。寂しいものです。
ウマ娘とかワンピースがアニメや映画の影響でハーメルで作品数がグッと増えたことを考えると艦これ二期でワンチャンランキングになるような良作が増えないかななんて思ってます。いや、もちろん今更新されている作品も面白いものはあるんですけどそれ以上に新作が読みたい。
もしくは更新停止中の面白い作品が更新してほしい。


会議

必要に応じて各地へ派遣される第二艦隊が司令部のある呉鎮守府にいる事は珍しい。他の艦隊では鎮守府で海を眺めているだけの大型艦も比較的運用コストの低い軽空母や高速戦艦が中心である事から激戦区のテコ入れのために投入される事も多く練度も高い。

そんな第二艦隊が今日は珍しく呉鎮守府に全員が揃っていることもあって戦隊の旗艦と司令で会議が開かれる事になった。

 

「Hey 陽炎!一人無様に生き残っていたから座れた二水戦旗艦の椅子の座り心地はどうですか」

 

久しぶりに顔を合わしたと思ったら少しカタコトの日本語でふざけた事をぬかしてくたのは第三戦隊旗艦を務める金剛だ。

 

「アンタの汚いアメリカ訛りの英語を聞いた時の気分って言ったらわかるかしら」

 

彼女とは私の父と彼女の父親が兄弟関係にあって一応従姉妹になるが見てわかる通り昔からものすごく仲が悪い。

 

「Oh 陽炎には人の心がないのデスカ!?」

 

「頭沸いてんの?汚いって言ったでしょ」

 

私の父の家系は代々外交官になる人が多くて彼女の父親も例に漏れず外交官だった。私の父がイギリスに行ったのに対して彼女の父親はアメリカに赴任していた。話し言葉に英語を混ぜる事が多い金剛型の中で彼女は父親についてアメリカに行っていた事もあり比較的綺麗な英語を話す。ただしアメリカ英語だけど。

 

「American Englishほど綺麗な英語はこの世にないですネ!」

 

「そうかしら。テキサスとかすごく聞き取りにくいんだけど」

 

そんなに多くのテキサス訛りの英語を話す人と会ったことがある訳ではないけどとにかく聞き取りにくい。私が英語ネイティブではないのもあるかも知れないけど同じアメリカでもあんなに違うのね。

 

「テキサスはアメリカではないです」

 

さっきまでのカタコトの日本語はどうしたのよ。

 

「アメリカじゃないならなんだって言うのよ」

 

「テキサスはテキサスです。テキサス語を話します」

 

「ならアメリカ英語も英語じゃなくてアメリカ語でいいわよね」

 

「それは違いますネ。American EnglishはEnglishデース!」

 

意味わかんない。

 

「はぁ、もういいわ」

 

相手するのも嫌になる。

 

「やっとわかってくれましたか」

 

「馬鹿の相手は疲れるから部屋に帰って休む事にするわ」

 

「私の眼の前から消えてくれるのなら何処になりと行くといいデスネ」

 

会議なんて言ってるけど内容はただの食事会なんだし帰れるなら早く帰ろ。明日も仕事だし。

 

「って誰が馬鹿ですカ!?」

 

「あんた以外に誰がいるのよ」

 

私の言葉を聞いた金剛が掴みかからんばかりの勢いで詰め寄ってきた。

 

「HAHAHA!いい度胸デ〜ス。どっちが馬鹿かその頭に叩き込んでやるデスネ」

 

「あら、随分と大口叩くじゃない。たかが金剛型のくせに」

 

今にも殴り合いに発展しそうなその場は、私と金剛の間に差し出された卵焼きによって一時終息する様子を見せた。

 

「あの、卵焼き食べりゅ?」

 

料理の準備をしていた瑞鳳だ。

 

「Hey 瑞鳳。怪我したくなかったらそこを退くのデース」

 

「け、喧嘩はダメだよ」

 

「Oh!瑞鳳にはこれが喧嘩に見えるですカ?だとしたら目ん玉入れ替えた方がいいですネ!」

 

私にとっては好都合な事だけど金剛の言動は良くないわね。

 

「瑞鳳は現第二艦隊の旗艦。その言葉はまずいんじゃないかしら?」

 

二水戦旗艦だった川内さんは第二艦隊の旗艦も務めていた。彼女が轟沈した以上その役目は第二艦隊に所属する戦隊の中で最も階級の高い艦娘に引き継がれる事になり引き継いだのがこの第三航空戦隊旗艦の瑞鳳だった。

 

「別にいいよ。そのうち陽炎さんに旗艦を変わるんだから」

 

ちょっと、なんでそんなこと言うの。仮にも旗艦なんだから堂々としなさいよ。

 

「やめてよ。二水戦の旗艦代理だって嫌々引き受けているのよ。そんなものまで引き受ける訳ないでしょ」

 

確かに今の階級は私の方が上だけど今更そんなもの引き受けるつもりはない。

 

「その通りデース!このクソ女の下につくなんてワタシのPrideが許しまセーン」

 

「…アンタを部下にできるなら引き受けるのもいいわね」

 

前言撤回。このクソ女を自由にできるなら引き受けるのもいいかもしれないわね。こき使ってやるわ!

 

「寝言は寝て言えデース」

 

「私が寝言を言っているように見えるのならアンタの目は腐っているんでしょうね」

 

「なんですって!」

 

「そこまでだ2人とも」

 

再び一触即発な雰囲気を漂わした私達を止めたのは第四航空戦隊旗艦の日向だった。

 

「会議の準備ができた。全員席につけ」

 

「…命拾いしたですネ」

 

面白いこと言うわね。

 

「あら、今のやり取りの何処に命の危険に陥るような事があったのかしら」

 

私が挑発してやると金剛は鬼のような形相で睨みつけてきた。

 

「金剛、その辺にしておけ。陽炎もあまり挑発してやるな」

 

日向に続いて部屋に入って来た司令がため息をつきながそう言った。

 

「けど提督!」

 

「金剛」

 

「…わかりました」

 

金剛が不承不承ながらも了承してやっと食事会が始まった。

 

「陽炎さん、二水戦の立て直しは上手くいっていますか?」

 

質問して来たのは私の斜め前に座っていた第12戦隊旗艦の高雄だ。

 

「まずまずと言ったところかしら。本来なら半年のカリキュラムを四ヶ月に短縮しているからその分キツめの訓練内容にしているんだけど思ったほど脱落者がいないのよね」

 

現在3ヶ月目に突入しているけど人数はまだ60人ほどいる。この段階で40人まで絞っている予定だったから順調とは言い難い。

 

「手緩い訓練してるんじやないデスカー」

 

日向を挟んで隣に座っていた金剛が茶々を入れてきた。

 

「そう思うなら一度訓練を受けてみればいいわ。もっとも、アンタじゃ一日も持たないと思うけど」

 

戦艦と駆逐艦じゃ訓練内容が全く違うから当然と言えば当然だけどこう言えば金剛は間違いなく噛み付くだろう。

 

「やめておきますネ。ギンバイが横行しているような所に行きたいと思うほど私は酔狂な性格してないデース」

 

言ってくれるじゃないの。

 

「まだ泳がしているだけよ目星はついているわ」

 

「ならさっさと捕まえればいいですネ。なのにしないと言うことは泳がしているのではなく証拠がなくて困ってるんじゃないないデスカ〜」

 

なかなか痛いところついてくれるじゃない。

 

「……後1人が巧妙なのよ」

 

「はっ!たかだか候補生が時に遅れをとるなんて二水戦も落ちたものですネ!」

 

「金剛、陽炎少しは静かにしろ。酒が不味くなる」

 

「ごめんなさい日向。それならそこのアメリカかぶれを黙らせてくるから少し席を外すわね」

 

言われてみれば間に挟まれている日向は迷惑極まりないわね。黙らせてくるとしましょうか。

 

「いい度胸ですネー。海の底に沈めてやりマース!」

 

「2人とも席に戻れ。久しぶりに第二艦隊の旗艦が揃ったんだ。今日くらいは休戦してもバチは当たらないだろう」

 

やはりと言うべきか私達を止めたのは司令だった。

 

「提督!私は戦争してるんじゃないデスネ!」

 

「そうよ、この第二艦隊の旗艦が揃うと言う喜ばしい出来事をさらに素晴らしい出来事で祝福しようとしているだけよ」

 

「その素晴らしい出来事が終わった後、金剛はこの場にいるのか?」

 

「さぁ?海の底に沈んでいるか、ドックに入渠しているのかどちらかじゃないかしら」

 

たかだか金剛型如きの装甲なら酸素魚雷で一発よ。

 

「陽炎表に出ろデース!」

 

「言われるまでもないわ!」

 

私が立ち上がって金剛を海の底に沈めに行こうとした時、首筋に冷たい何かが当てられた。

 

「静かにしろと言ったのが聞こえなかったのか」

 

そう言ったのは右手の刀を金剛の喉元に、左手の鞘を私の首筋に向けた日向だった。

 

「随分と物騒な物を持ち込んでいたのね。気が付かなかったわ」

 

「席についてからは椅子に立てかけていたが料理を運んでいた時からずっと腰に差していた」

 

…頭に血が上りすぎていたみたいね。てっきり刀は持っていないと思っていたわ。

 

「そんな事よりもこの刀を退けて欲しいですネ」

 

こちらに身を乗り出したような体制だった金剛の首元に刃が来ていて一歩でも動いたら綺麗に研がれた日向の刀に首を切られそうにやっていた。

 

「ならば座れ。そして大人しく飯を食べろ」

 

「分かったですネ…」

 

私と日向は同じ艦隊の仲間以上の関係はないけど金剛と日向は違う。金剛も日向も同じ舞鶴訓練学校出身の艦娘で直接の先輩と後輩の関係にある。その上金剛の一番初めの配属先の上官も日向だったから本当に頭が上がらない。第二艦隊での立場は同じ旗艦だけど今も階級は日向の方が上だしなおさら逆らえないでしょうね。

 

「陽炎もあまり金剛を揶揄ってやらないでくれ。コイツは頭に血が上りやすいんだ」

 

「それって歳上の金剛が配慮するべきじゃないかしら?」

 

一歳だけではあるけど歳上なんだし少しは落ち着きという物を見せてもいいと思うのだけど。

 

「歳は上でも中身は陽炎の方が歳上だろう」

 

日向も中々酷いこと言うわね。金剛が淑女がやってはいけない顔してるわよ。

 

「分かったわ。できる限り配慮するわね」

 

あ、金剛の箸が折れたわね。

 

「金剛、行儀が悪いぞ」

 

「すみません日向。艦娘になって以来力の制御がちゃんとできてないですネ」

 

いや、それは訓練学校で真っ先に練習させられることじゃない。

 

「それはすまない。随分長く一緒にいるが知らなかったな」

 

日向もそれでいいのね。天然というかなんというか…。

 

「ところで陽炎。金剛のように煽るわけではないがギンバイ犯は早く捕まえた方がいいんじゃないか?こう言ってはなんだが世界にその名の轟く二水戦がたかだかギンバイ如きに遅れを取るようでは旗艦の陽炎の評価が悪くなるぞ」

 

「私が指揮艦になった事で二水戦が悪く言われる事は本意ではないわ。けどそんなものは他の実績で黙らせればいいのよ」

 

「なんとも二水戦らしい返答だが言っては悪いが既に二水戦の評価は過去最悪にまで落ちている。その評価がますます悪くなるぞ」

 

世界最強と言われた二水戦が壊滅しその立て直しかどうなるかを注目している人間は多い。仮に元の二水戦に匹敵する実力を得る事ができた時、同じ訓練を課す事で自国でも同等の実力を持った水雷戦隊を作ろうとしている者達や立て直す艦娘の実力を測ろうとする者達は私の動向に注目している。その人達の中で私の評価は下がり続けていると日向は言いたいわけだ。

 

「今更でしょう。過去最悪に落ちた評価がさらに落ちたところで過去最悪と言う評価は変わらない、言いたい奴らには言わせておけばいいわ。所詮他人の評価よ」

 

何も知らない奴らに好き勝手言われるのは不愉快ではあるけど放置が一番。どうせ私より弱い奴らが吠えてるだけなんだから。

 

「仮にも第二艦隊所属なんだ。我々の評価にも関わってくる」

 

「あら、さっきは私の評価とか言ってたのに結局は自分の評価が悪くなるのが嫌なの?」

 

金剛と違ってそんな事を気にするタイプには見えないけど。

 

「まさか。ただ日本に貢献するために戦い、死んでいった者達を愚弄するかのような言動を許したくはないだけだ」

 

「なら大丈夫よ。立て直したら直ぐに黙らせられるだけの成果を上げるから」

 

前線で戦うこともできずに後方で囀るだけの小鳥如き、気にする必要はないわね。

 

「なんだ、立て直すための臨時旗艦だと聞いていたが結局やるつもりなのか?」

 

「……今でもやる気はないわ。けど私以外に人がいないのも理解はしているわよ」

 

私よりも階級の高い現役の軽巡、駆逐艦娘は一水戦と三水戦の旗艦以外は現役引退直前の艦娘しか残っていない。一水戦と三水戦の旗艦も私より歳上だしもしかしたら私と同年代の艦娘では私が一番階級が高いかもしれない。となると二水戦旗艦の座にふさわしいのは自然と私しかいなくなる。

 

「なら決まりだな。みんな!」

 

そう言うと日向はお猪口を手に持って立ち上がった。

 

「陽炎が二水戦の旗艦を正式に引き受けるそうだ!」

 

「…ちょっ、ちょっと待ちなさいよ!誰もそんな事…」

 

私の抗議の声は金剛以外の歓声にかき消され聞き届けられる事はなく、なし崩し的に私は立て直した後も二水戦の旗艦を務めることが決定したのだった。




おかしいなぁ。別に金剛とこんなにやりあうつもりはなかったのに…。
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