第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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次から少し更新ペースが落ちるかもしれません。


逮捕

第二水雷戦隊教導隊での訓練終了まで残り二週間となり私達は追い詰められていた。

 

「いい加減夕立の尻尾は掴めましたか?」

 

神通さんの苛立たしげな言葉に皆はこぞって視線を逸らした。

コンコンと神通さんが机を指先で叩く音が響く中口を開いたのは電だった。

 

「ここまで尻尾を出さないとなると証拠を掴むのは諦めるべきなのです」

 

悔しいけど電の言う通り4人全員ではなく3人を確保して罰則を与えるのが現実的ね。

 

「では諦めて残りの3人だけに報いをくれてやると?」

 

よくよく考えたらこの班、全員残ってるのよね。巻雲なんかは体力がないからそのうち脱落すると思っていたのだけど何故か残ってるわね。

 

「それは二水戦らしくないのです。部屋に押し入ると同時に夕立も確保、証拠を見つけ出すか自白させるかして犯人と確定させてやるのです」

 

いや、それはダメでしょ。

 

「流石にそれは不味いんじゃないかしら。後で捏造したとか言われたら面倒な事になるわよ」

 

「夕立は黒だからそんな事は起こるはずがないのです。それとも陽炎は他にいい案を持っているのですか?」

 

「せっかく味方になったのだし不知火の情報を使いましょう」

 

私は苦し紛れにそう言った。

 

「その不知火が碌な情報を持っていなかったと言うのにですか?」

 

そうなのよね。ギンバイした物を横流ししてもらっていたとは言えギンバイ犯本人と面識があったわけじゃないみたいだし。

 

「ならもう突撃あるのみなのです」

 

「ちょっと待ちなさいって!」

 

引退して二水戦所属ではなくなったとはいえ元二水戦が証拠もなしに夕立をしょっぴいたりしてもしも無実だったりしたら私達二水戦にまで批判が及ぶ事は想像に難くない。

 

「そもそもここまで尻尾を出さないとなると押し入ったところで必ずしも証拠があるとは限らないわ」

 

「その時はその時なのです」

 

「いやそれじゃあダメでしょう。……まさか捏造するつもりじゃあないでしょうね」

 

「…証拠は必ず出てくるから安心するのです」

 

捏造するって事じゃないのそれ。

 

「夕立は候補生の中でも特に優秀よ。このままいけば間違いなく二水戦に正式に所属する事になるわ。ここで証拠の捏造なんて事して二水戦に不信感でも持たれたらたまったもんじゃないわ」

 

「巧妙に証拠を隠した上で二水戦に入られた方が問題なのです。二水戦に入隊した後に教導隊での経験から陽炎達を見くびるような行動を取られる方が問題なのです」

 

それは一理あるけど私が力を見せつければいいだけだ。

 

「私の力を信用していないと?」

 

私の問いかけに電は挑発的な笑みを浮かべた。

 

「そうだと言ったらどうするのです?」

 

言ってくれるじゃない。そこまで言った以上は責任をとってもらわないと私のプライドが許さないわ。

 

「表に出なさい。その身に思い知らせてあげるわ」

 

いくら先輩とはいえ容赦はしないわよ。

 

「望むところなのです。先輩として陽炎を教育してあげるのです」

 

「やめなさい2人とも」

 

椅子から立ち上がり部屋を出て行こうとした私達を止めたのは神通さんだった。

 

「電、現役の頃ならいい勝負ができるかもしれませんが今の貴女では勝負にならないでしょう」

 

神通さんの言葉に電は顔を背けた。

 

「陽炎も今の電では貴女に勝てるはずがないのにあまり挑発しないでください」

 

「別に艤装を使うわけじゃないから今の電でも十分戦えるわ」

 

艤装を使うのならともかく素手で戦うつもりだったから技術面で攻められればいい勝負になると思うのだけど。

 

「自分を過小評価しすぎですよ陽炎。たしかに電は駆逐隊司令まで務めた歴戦の二水戦ですが全盛期の実力は貴女に劣ります」

 

そんな事はないと思うけど…。

 

「電は現役時代は現役トップクラスの駆逐艦娘でしたが歴代でもトップクラスの実力を持つ貴女相手ではどう足掻いても勝てませんよ。全盛期でもいい勝負はできても勝つ事は決してできないでしょう」

 

「買い被りすぎよ。昔の一、二水戦の人の方が私より強いわ。実戦経験が違い過ぎるもの」

 

昔の一、二水戦は毎日のように出撃してはたくさんの戦果を上げていた。電もキャリアの晩年はともかくそれ二水戦に入ったばかりの頃は毎日のように出撃を繰り返していたはずだ。それに比べて私は多い時でも一週間に一度、少ない時期だと二週間に一度くらいしか出撃機会がない。それで私が歴代トップクラスなんて有り得ない。

 

「時に陽炎、貴女は艦娘になる前と後で見た目に大きな変化はありましたか?」

 

随分と話が変わったわね。

 

「髪が赤くなったくらいだけどそれがどうしたのよ。今は関係ないじゃない」

 

「艦娘になる前と後の差異が少ない方が強い艦娘になる傾向がある事は知っていますか?」

 

私は髪が赤色になっただけだったけと人によっては骨格まで変わると聞いたことがある。みんな自分が艦娘になった時の話はあまりしないからよく知らないけど。

 

「聞いた事があるわ。けどあんなの都市伝説じゃない」

 

「そうとも限らないんですよ。例えば初期艦の5隻は艦娘になる前と後では髪色以外は全く姿が変わらなかったと言います。今でも現役の初期艦を見ればあながち間違いではないと思いたくもなりませんか?」

 

たしかに、初期艦が強いのは確かだけどだからといってそれが姿が変わらないからというのは短絡的と言うしかない。

 

「そもそも初期艦が私達と完全に同じ方法で艦娘になったわけではないんじゃない?数十人とも数百人とも言われる最初の実験の数少ない生き残りが5人の初期艦だったわけだから初期艦と私達では艦娘になる方法がどこか違ったから強いと言った方が理屈としては正しいと思うわ」

 

私の反論に暫く考えるようなそぶりを見せた後、神通さんは言った。

 

「たしかに初期艦についてはその通りかもしれません。しかし実際のところ、一、二水戦の艦娘は艦娘となる前と後の差異が小さい傾向にあるとも言われています。統計をとったわけではないのでわかりませんけどね」

 

知らなかったわ。もしそれが本当なら艦娘になる前にある程度なった後の強さが予見できると言うことになるわね。

 

「話が逸れましたね。夕立の件ですが陽炎の言う通り3人のみを捕まえ夕立については証拠が出れば確保する方向でいきましょう」

 

「いいのですか?」

 

「夕立を確保するのは二水戦に対して舐めたマネをしたことに対する報復的な意味合いが強いです。現二水戦旗艦の陽炎が不要だと言っている以上私達がとやかく言う必要はないでしょう」

 

厳密には教導隊に対してだけど私達現役の二水戦もいるし教導隊を通って二水戦になると考えれば二水戦を舐めていると考えていいだろう。というか間宮羊羹を取られた復讐じゃなかったのね。

 

「ただし陽炎、夕立に関しては入隊後責任を持って貴女が必要な処置をとってくれますね」

 

当然ね。証拠がないとは言え夕立が関わっているのはほぼ確定している。二度とあんな事ができないよう徹底的に調教してやるわ。

 

「もちろんよ。栄光ある二水戦で下品なマネはさせないわ」

 

正直電の言う通り証拠を捏造してでも捕まえたいところではあるけどそれは間違いなく今後の二水戦に悪影響を及ぼす。

 

「ならいいです」

 

そう言うと神通さんは勢いよく立ち上がった。

 

「では皆さん、3ヶ月近くも我々を嘲笑ってきた不届き者たちを捕まえに行きますよ」

 

この日狭霧、敷波、巻雲の3人が食堂と工廠からのギンバイ、及び禁制品の持ち込みで拘束された。もちろん3人とも抵抗していたけど現役の二水戦がいる教官側に敵うはずもなくそのまま営倉にぶち込まれた。

 

「ちょっと痛いじゃないですか!」

 

「うるさいのです!」

 

営倉へと引きずられるように連れて行かれる狭霧が抗議すると電の拳が狭霧の脇腹に飛んだ。

 

「間宮羊羹を盗んでいながら今更丁寧な扱いを受けられるとは思わないことなのです。お腹を掻っ捌いて食べた羊羹を取り出してもいいのですよ」

 

「そんなのもう消化されていますよ!」

 

「知ったことじゃないのです!」

 

「陽炎教官、手錠が痛いのでもう少し緩めてくれたら嬉しいんですけど…」

 

私が連行する敷波がおずおずとそう申し出てきた。

 

「手錠が緩いの?アンタも真面目ねぇ」

 

そう言って更に手錠を強く閉めてやったわ。

 

「ちょ、痛い!痛いですって!」

 

狭霧なんかよりコイツの方が油断ならないから緩めるなんてもっての外よ。

 

「黒潮教官どうすれば許してくれますか〜?」

 

「大人しく営倉入ればそのうち許してくれるで。それか他の共犯者の名前を吐くかやな」

 

「そんなのいませんよぅ」

 

黒潮の方は巻雲が既に諦めているみたいで比較的穏やかに連行されている。

 

「教官もしかして私達二水戦にはもうなれませんか?」

 

「それは今後の行動次第よ」

 

そうは言ったものの、多分この3人は二水戦に入るだろう。巻雲だけ少し危ないけど狭霧と敷波は二水戦に相応しい実力を兼ね備えている。そもそも残りの2週間足らずでそう多くの候補生を落とせるはずもないし合格は確実だろう。絶対に言わないけど。

 

「陽炎教官、じつは今回の件全部狭霧が主導していてアタシと巻雲は指示に従っていただけなんですけど…」

 

「ちょっと敷波アンタ何言ってるのよ!相談したときアンタもノリノリだったじゃないの!どう考えても共犯じゃない!」

 

唐突な敷波の裏切りに狭霧が吠えた。手錠をされているから掴みかかる事はしなかったけどもししていなかったらそうしていただろう。

 

「アンタ達はどちらも同じ候補生である以上そこに主従関係なんて発生しようがないでしょう。よって全員共犯よ」

 

そう言うと狭霧は小さくガッツポーズし敷波は肩を落とした。

正直誰が主犯とかどうでもいい。ギンバイをしたと言う事実は変わらないのだから全員平等に罰則を与えてやるわ。




没案

「教導隊や!

黒潮が怒鳴りながら強く拳を扉に叩きつけた。

『ちょっと待ってほしいポイ〜!』

「早よ開けんかい!ゴラァ!」

再び黒潮が拳を叩きつけると扉が開き夕立が姿を現した。

「早よ開けんかい!」

一瞬頭に思い浮かんで即没にしました。
電でやるのも考えたけどなのですじゃあちょっと迫力足りませんからね。
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