第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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「いつかあの海で」個人的にはなかなか面白いかなと思っているのですが皆さんはどう思いましたか?


卒業式

今は卒業式の真っ最中、今日この日をもって第二水雷戦隊教導隊での教官任務も終わりを迎える。長いようで短かった4ヶ月が過ぎ去り遂に第二水雷戦隊が復活する日が来たんだ。

新生・第二水雷戦隊を構成するのは第二水雷戦隊教導隊で最後まで残った候補生は32人。想定の1.5倍ほど多いけど許容範囲だろう。

新生・第二水雷戦隊では私、不知火、黒潮を隊長とする3つの水雷中隊を編成して親潮、雪風は不知火と黒潮を副隊長として支える形を取る。親潮と雪風は水雷中隊を率いるには流石に経験が浅すぎる。私以外の4人はそれぞれ駆逐隊司令を兼任するけど私は全体指揮をしなければならない関係から駆逐隊の司令は兼任せず3個駆逐隊12隻を指揮下に収める。

そんな事を考えていると神通さんの演説が終わり変わって私が前に立つ番になった。

 

「第二水雷戦隊教導隊の候補生の諸君、卒業おめでとう。今日この日をもって貴女達は候補生から二水戦の艦娘に正式に任命される事になるわ」

 

今眼下にいる候補生32人は全員が私の指揮下に収まる事になる。私が指揮した数は最高でも3人。一気に10倍以上の人数の指揮艦となった。

 

「先に言っておくと貴女達の今の実力を評価したから二水戦への配属が許されたのではないわ。貴女達全員よりも残存する二水戦4人の方が強い、だから強さを評価対象とするのであれば貴女達は評価対象外よ」

 

私の言葉で狭霧が青筋を浮かべ、夕立が獰猛な笑みを浮かべるのが視界の隅で見えたけど些細な事ね。

 

「それでも二水戦が貴女達を求めたのは偏に深海棲艦を倒すためよ。いくら私達が強かろうと残存部隊4人では数が足りない。最近では不知火が新たに加入したけどそれでも全く足りない。二水戦全盛期には5つの水雷中隊全てを上はベーリング海から下は南シナ海まで小隊ないしは中隊単位で派遣して各地で大戦果を上げ続けていたわ」

 

それは私が二水戦に入る前の話で、私が入ってからは基本、一個中隊が呉に常駐していたからそんなにも激務ではなかったけど。

 

「今、我が国は大きな岐路に立たされているわ。10年前に第一艦隊が壊滅し半年前には第二水雷戦隊が壊滅した。艦娘の数こそ増えてはいるけどその質は年々低下していく一方よ」

 

もっとも、その数の力で二水戦は負ける事になったのだから数というのは侮れない。予備兵力という性質上二水戦には無縁なものとは言え少し羨ましくもある。

 

「私達二水戦に求められるのは迅速に戦場に駆けつけ、味方を救うことよ。今の私達では救うことはできても数の関係で迅速さがない。けど貴女達が加入し力を磨くことで在りし日の二水戦のように各地の戦場を駆け巡ることができるようになるでしょう」

 

多分、私の代で元の二水戦のような精強さを取り戻すのは無理だと思う。それでも日本最強の名を冠するのが二水戦であり続ける事ぐらいはできるだろう。今現在かつての二水戦ほどの実力を持った部隊は存在しないからだ。不知火のように個人の実力が高いものは二水戦以外にも存在するけど部隊単位となるとからきしだ。強いて言うなら三水戦だけどそれでさえ二水戦一個中隊と互角と言ったところだろう。それほどまでに私達と他の部隊では実力差があった。

 

「今の貴女達にの力には期待をしないけど未来の貴女達には期待してもいい。そんな気持ちで私は貴女達の入隊を許可したわ」

 

人によっては私のこの言葉でやる気を失い二水戦を去ろうとする者もいるかもしれない、けどそれならそれでいい。必要なのはどんな事があろうともやる気を失わない艦娘だ。こんな事でやる気を失うならきっと派遣された戦地での環境が劣悪だったりしたら簡単に士気が下がるような人材だろう。そんなの二水戦には不要だ。

 

「ここから先は教導隊での日々よりもさらに厳しい毎日が繰り返されるわ。それも4カ月どころか二水戦を離れるまでずっとよ。それに耐えられないと思うものは今すぐここを離れなさい」

 

ここまで来て立ち去るような艦娘がここにいるとも思えないけど一応形式上は言っておくべきだろう。

 

「あまり舐めないでくださいよ」

 

そう言ったのは狭霧だ。こんな事を言われて黙っている性格ではない事はわかっていたけどこの場で反論するとは思ってもみなかったわ。

 

「私はただ純然たる事実を述べただけで舐めているわけではないわ」

 

今現在の狭霧達の評価なんてその程度のものよ。新人の二水戦としては及第点を与えれるけど二水戦としてはまだまだ認められるない。それは事実だしあの程度で堂々と二水戦を名乗られては歴代二水戦に申しわけが立たない。だからせめて根性だけでも二水戦の水準に達する者に残ってもらう必要がある。

 

「私達があの程度の緩い扱きを絶えられない腑抜けだとでも言うんですか?」

 

狭霧の言葉に、今度は私たちの側が殺気立った。言うに事欠いてこの狭霧は私達の訓練が緩いと言いやがった、怒らないわけがない。

 

「そう、そんなに私達の訓練は楽だった?」

 

とはいえ私までそれに乗るわけにはいかない。仮にも二水戦の旗艦、トップがそんなに短気ではいざという時に正確な判断ができない。ここは冷静に狭霧に対して応じるべきだろう。

きっと同じ旗艦だった神通さんも同じような態度をとっているに違いないと視線を動かせばそこには叢雲と電に両脇から押さえつけられながら憤怒の表情を浮かべた神通さんがいた。

 

「叢雲、電手を離しなさい!!」

 

「そう言うならまずはその拳を下ろすのです!」

 

電の言葉に叢雲が頷いて同意し押さえつける力をさらに強めた。

 

「ちょっと!叢雲痛いじゃ無いですか!」

 

叢雲は神通さんの抗議を無視して私に視線を向けると無言で狭霧達の方を顎で示した。

 

「貴女がどんなつもりでそんな事を言っているのかは知らないけど、もしもそれが挑発のつもりならあまり上手いとは言えないわ。子犬にいくら吠えられようとも可愛らしいとしか思えないもの」

 

子犬と例えられた事に狭霧は顔を真っ赤にして今にも飛びかかりそうな雰囲気を醸し出している。

 

「けどもしそれがただの挑発ではなく事実であるとすれば貴女は中々見込みがあるわ」

 

視界の片隅で雪風が信じられないもの見るような目で私を見てきているけど今は無視だ。

 

「何故なら貴女は今の段階で既に二水戦として各地を転戦するだけの体力と気力を持っている事になる、今すぐにでも一緒に戦地に赴きたいくらいよ」

 

もちろん、それが事実であればの話だけどね。

 

「二水戦は仲間との信頼関係が何よりも重要と考えているの。だから私は新たに二水戦に入った貴女の言動も無条件で信頼することにするわ」

 

唐突に変わった話に困惑したような表情を浮かべる者もいる中、当の狭霧は私の言いたい事を理解したらしく顔を青くした。

 

「実は早速二水戦に出撃するよう要請が来ているのよ」

 

そんなに厳しい任務でもないけど、取り敢えず連携を確認するために二水戦全員で行く予定だった任務だから、別に狭霧の言動は関係ない。だけどこう言えば勝手にいらない事を言ったから出撃するはめになったって勘違いするでしょ。

案の定狭霧は肩を落としているし他の子達も狭霧に同情したような視線を送っている。

 

「狭霧の意見もある事だし貴女達全員を連れて出撃するわね」

 

すると同情するような視線が即座に怒気を纏った視線へと様変わりした。実際は違うけど無関係だと思っていたのに出撃する事になったから狭霧のせいで自分達までトバッチリを受けたと思っているのでしょうね。

 

「返事はどうしたの?」

 

軽く睨みつけてやると敬礼と共に了解という返事が返ってきた。巻雲なんかはすこぶるやる気が無さそうだったけど今回は見逃すしましょう。

 

「さて、それじゃあ各々の所属する部隊と隊長を発表するわ」

 

そう言って私がそれぞれの所属する水雷中隊と駆逐隊を発表していくとその度にホッとしたような吐息やショックで息を呑む音が聞こえてきた。雪風の部隊所属になった艦娘からは悲鳴が上がる事もあった。

 

「さて、最後に夕立、狭霧、敷波、巻雲の13班だけど…」

 

憂鬱だわ。最後までこの4人はどの隊で面倒を見るのか押し付けあっていた。あまりにも問題児すぎて指揮するのが面倒臭いというのが理由だった。

 

「貴女達は夕立を司令として第十三駆逐隊を編成し、私が指揮する第一中隊に配属するわ」

 

そう言うと狭霧と敷波が露骨に嫌そうな表情を浮かべ夕立は獰猛な笑みを浮かべ、巻雲は何故か瞳をキラキラさせていた。

 

「ここでの生活が天国だったと感じるくらいビシバシと鍛えるつもりだから覚悟しなさいよ」

 

いや、違うか。

 

「そういえばここでの訓練は楽だったって言ってたわね。なら予定よりもっと厳しい訓練ができそうね」

 

覚悟しなさいよ問題児共。面倒だけど私の指揮下に入ったからにはしょうがない。他の連中じゃあやらないような厳しい訓練を経験させてあげるわ。

 

「望むところです!ここの緩い訓練に飽き飽きしていましたから楽しみにしています」

 

狭霧も難儀な性格してるわね。顔を青くしてるのにそんな虚勢貼らなくてもいいじゃない。

 

「言ったわね。途中で根を上げて泣いたりしないでよね」

 

まぁ、だからと言って手心を加えてやる気はないんだけどね。

 

「以上で私の演説は終了するわ」

 

私の演説が卒業式の最後の工程だったからこれで一度解散する事になる。本来なら候補生、もとい新生・二水戦が解散後に教官達で式場の片付けをするけどその前に…。

 

「神通さん、いい加減怒りを治めてくださいよ」

 

神通さんの怒りを治めないといけないわね。一体どれほどの時間がかかるのかと想像すると私はため息を禁じ得なかった。




とりあえず教導隊での話は終了ですね。次回からは新生・二水戦でのお話になると思います。
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