第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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アニメ4話まで時間が空くんですね。


新生第二水雷戦隊、抜錨

「みんな、おはよう!待ちに待った新生・第二水雷戦隊初じめての出撃ね!!」

 

そう言って私がドック内にに並ぶ二水戦を、つまりつい先日まで私の生徒だった艦娘達を見渡すと異様な顔をした艦娘が1人、狭霧だ。

 

「ち、ちょっと!狭霧その顔どうしたの!?」

 

狭霧の右目は遠目からでもわかるくらい青く腫れ上がっていた。おそらく殴られたのだろう。

 

「っ!?!?!?」

 

私の声に狭霧は一瞬顔を真っ赤にした後、何かを思い出したかのような表情を浮かべすぐに顔色を青に変えた。

 

「な、なんでもありません!」

 

「なんでもないわけないじゃない。一体誰にやられたのか話しなさい。二水戦に喧嘩を売った報いを受けさせてやるわ」

 

教導隊の時ならともかく今の狭霧は二水戦で私の部下だ。狭霧に売られた喧嘩は私に売られたも同然だ。

もしも狭霧が敵わない相手でも私なら勝てる。そう思って握り拳を作ると狭霧はさらに顔を青くした。

 

「本当に、本当に大丈夫ですから!コレは夕立達と飲んでる時にできた怪我ですから!!」

 

「飲んでる時?」

 

昨日は教導隊から卒業した日だから打ち上げをしていてもおかしくはないけど…。

 

「ちょっと酔いが回って転んでしまったんです」

 

いや、その怪我でそれはないでしょう。

 

「転んだって…。明らかに殴られてない?」

 

なによりみたいに艦娘がお酒に酔うって話はあまり聞いたことがないしまし狭霧がそうなら多少噂になっていそうなものだけど…。

 

「喧嘩とかしたの?」

 

「いえ、そう言うわけではありません。ただ話が弾んでしまっただけです…」

 

本当かしら。

 

「なら夕立が傷ひとつないのはどう言うわけ?まるで貴女だけ一方的に殴られたみたいよ」

 

狭霧と夕立の実力は拮抗している。両方とも怪我をするならともかく狭霧だけが一方的に怪我をするなんてまず有り得ない。

 

「それは…その…」

 

なんか怪しいわね。

 

「まぁまぁ陽炎、狭霧もこう言っとる事やしその辺にしときや」

 

さらに狭霧を追求しようとする私をなにやら胡散臭い笑みを浮かべた黒潮が止めた。

 

「なんで止めるのよ」

 

ていうかその胡散臭い笑いをやめてよ気持ち悪い。

 

「人には言いたくないことの一つや二つあるやろ。それを無理矢理聞くんは良くないんとちゃうか?」

 

「それはそうかもしれないけど…」

 

黒潮の言うことも一理あるけど狭霧は私の中隊の艦娘だ。できればなにがあったのかくらいはちゃんと把握しておきたい。

 

「何より上官がプライベートな事まで踏み込むんで聞くん、うちはあんまり好きちゃうな」

 

コレが普段通りの顔で言ってるのなら頷きたくもなるけど

 

「その胡散臭い笑い方してる時って大体何か悪い事をしているのよね。まさか狭霧に何かやったんじゃないでしょうね」

 

「ウチはなんもしてないで」

 

なぁ狭霧、と黒潮が狭霧に同意を求めると顔を青くしたまま狭霧は勢いよく首を上下に動かした。絶対なんかやってるじゃない。

 

「黒潮」

 

「なんや、疑っとるんか?」

 

「当たり前じゃない」

 

疑わない要素がどこにもない。

 

「嘘やないで、ウチはなんもやっとらん。強いて言うなら後処理をしただけや」

 

「後処理?」

 

「あれや、ゲロの処理とかそんなんや」

 

ゲロの処理って…。

 

「狭霧吐いたんだ。大丈夫だった?」

 

私もよく吐くからその気持ちは分かる。吐いたらスッキリしてさらにお酒が飲めるようになるから吐く時の不快感を除けばいいことしかないのよね。

 

「私が吐いたわけじゃ…」

 

「そうなんや。狭霧のやつ夕立に殴られた拍子に吐きおったんや」

 

「ぽいっ!?」

 

突然悪事をバラされた夕立が奇妙な叫び声を上げた。

 

「夕立、アンタなにしてんのよ」

 

まったく、私もそんなにお酒は強くないけどそれがわかっているから控えてるのに。

 

「あんまり酷いようだと禁酒させるわよ。お酒でハメを外して二水戦の評判に傷がついたらどうするのよ」

 

今現在、世間での二水戦の評価はあまりよくない。別にそれ自体はいいけど実力や実績以外のことで評価を落とすような事はしてほしくない。

 

「なによ狭霧その目は。言いたい事でもあるの?」

 

なにやら狭霧が物いいたげな視線を寄越してきていたから私がそう尋ねると狭霧は目を細めた。

 

「別に何も。ただ一度ご自分の胸に手を当てて考えた方がいいのではないかなと思っただけです」

 

「あら、たしかに私はお世辞にも酒癖がいいとは言えないけど滅多に飲まないから問題はないわ」

 

失礼な話ね。狭霧達と違って私はちゃんと自分を管理できているわよ。

 

「なによ黒潮。文句あるの?」

 

今度は黒潮が何か言いたげな視線を向けてきていたから声をかけると黒潮はフイッと視線を逸らして言った。

 

「べっつにぃ〜。何も言いたいことなんかあらへんわ」

 

その言い方、絶対なにかあるじゃない。

 

「言いたいことがあるなら言えばいいじゃない」

 

「いやええわ。こんな人があるところで言うことちゃうしなにより折角やったことが全部無駄になる」

 

「別に構わないわ。言いなさい」

 

何をやったのか知らないけど無駄になるかどうかは旗艦である私が決める。どうせそんなに大したことでもないだろうしね。

 

「二水戦の恥部をを晒すんは流石に気が引けるわ」

 

「いいから言いなさい」

 

「しゃあないなぁ」

 

黒潮がそう言って私を手招きしてきたから近寄ると耳に口を寄せて小さな声で言った。

 

「昨日狭霧らもおんなじ居酒屋におったんや」

 

「あら、そうなの。けどそれがどうしたって言うのよ」

 

「酔っ払ったどっかの誰かが狭霧相手にダル絡みしよったんよ。そん時の傷が目のアレや」

 

やっぱり狭霧嘘ついてたんじゃない。

 

「夕立がやったんじゃなかったの?」

 

「ちゃう。酔っ払いにやられたんや」

 

「一体どこのどいつなの?」

 

二水戦に舐めた真似してくれた報いを受けさせてやるわ。

 

「ここのコイツや」

 

そう言って黒潮が指差したのは私だった。

 

「……もしかしてまたやっちゃった?」

 

私の問いかけに黒潮は小さく頷いた。

 

「やからここで狭霧に本当の事言わすわけにはいかんから口止めしとったんや」

 

たしかにここで二水戦旗艦の醜態を公表すれば私への信頼の低下は免れないわね。口止めした黒潮に感謝しないと。

 

「ちなみに昨日はどれくらい酷かった?」

 

「それは知らん。狭霧が是非にって言って陽炎の相手を1人でしてウチらは楽しく飲んどったからな」

 

元凶の私が言った義理でもないけどまさか自分を犠牲にして仲間のことを助ける、狭霧がそんなにも仲間思いだったなんて。

 

「そう、狭霧には悪い事をしたわね」

 

今度何かお礼をしなくちゃいけないわね。

 

「狭霧、詳しい事情は黒潮から聞いたわ。問い詰めて悪かったわね」

 

「いえ、わかってくれたならいいです」

 

狭霧はとても疲れた顔でそう言った。随分と負担をかけたみたいね。

 

「今度何か奢るわよ。昔私が二水戦の先輩から教えてもらったおすすめのバーがあるんだけどそことかどう?」

 

忙しかったせいもあって最後に行ったのは一年前とかだけどまだあるかしら。

 

「あ、あ、あ、アンタは……」

 

狭霧が何かを言う前に黒潮が私の耳元で囁いた。

 

「自分の酒癖忘れたんか。そんなの喜ばれるわけないやろ」

 

言われてみればそうね。

 

「狭霧、なにか欲しいものとかやって欲しい事ってある?」

 

なら本人になにをして欲しいか聞いた方が早いわね。

 

「結構です!」

 

そんなに強く拒否しなくてもいいのに。

 

「陽炎少しは考えろ。事情知らん奴からしたらなんで狭霧が贔屓されるんやって思うやろ?」

 

今日は黒潮に助けられてばっかりね。

 

「ごめんなさい狭霧。さっきのもなしで」

 

「いえ、大丈夫です」

 

物凄い形相でこっち睨みつけてるのに大丈夫ってどう言うことよ。やっぱりなんかして欲しかったんじゃないの。

 

「あー、その…ごめんね」

 

よくよく考えたらまだ昨日のことについては謝ってなかったわね。

 

「…分かってくれたらそれでいいんです」

 

あの気が強い狭霧があそこまで憔悴するなんてよっぽど昨日の私は酷かったみたいね。

……もしかしてさっき言ってたゲロ吐いたって言うのも私?ヤバイ、全然覚えてない。というかそもそもお酒を飲んだという記憶がない。

 

「黒潮、私本当に昨日飲んでたの?」

 

「いつのまにかウーロンハイ飲んで出来上がっとったで。ただ割と早い段階で狭霧に絡んどったからその後何があったかは知らんな」

 

何があったのか知っているのは狭霧しかいないというわけね。今度時間がある時何があったのか聞かないといけないわね。

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