第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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いつかあの海で。この後どんな展開になるんでしょうか。個人的には艦これが戦争をモチーフにしている以上救いのない展開で行ってほしいなと思っていますけど救いがある展開はそれはそれでいいのかなとも思います。


初陣

私達がスリランカについてから出撃までの期間はかなり短かった。1日とと立たないうちに敵艦隊発見の報告を受け私達はこれを撃滅するために出撃した。

 

「まさかきて早々に襲撃してくるとはインド洋の深海棲艦はサービス精神が旺盛やな」

 

「インド洋派遣艦隊の哨戒網が優秀と見るべきなのか、それともそれほど高い頻度で深海棲艦が出現していると見るべきなのか。判断に迷うところね」

 

前者なら偵察の手間が省けるし後者ならそれはそれで比較的楽に深海棲艦艦隊の居場所を掴めるから私達にとっては好都合ね。

 

「どっちにしろ哨戒だけは優秀って事やな」

 

いくら黒潮でもここに四水雷戦の艦娘がいれば言わないとは思うけどもう少し言葉を慎んで欲しいわね。

 

「深海棲艦の出現頻度が高いなら哨戒は関係なくないですか?」

 

「雪風、黒潮の皮肉よ。真に受ける必要はないわ」

 

黒潮の毒舌もどうかと思うけど雪風もここまで素直だと逆に心配になるわね。将来詐欺とかに引っ掛からないといいけど…。いや、雪風は総じて運がいいからギリギリで回避しそうな気もするわね。

 

「それと黒潮、できればそう言う言葉は慎みなさい。後輩達が真似して他の艦娘の前でそんな事を言ったらどうするのよ」

 

特に狭霧なんかはただでさえ血の気が多いのだし真似したら面倒な事になるわ。

 

「別にええやん。もしそれで相手の艦娘がブチギレてうちらを追い抜こうとすれば艦娘が1人強くなる言う事や。逆にそれで落ち込んで何もせんならそれはそれで役立たずが1人割り出せたっちゅう事やろ」

 

「……逆上して殴りかかってきたらどうするの?」

 

「そんなもん返り討ちにしてしまいや。ウチとしてはそれが一番好きやな。楽やしなによりストレスの発散になるしな」

 

最近は雪風や狭霧の影に隠れて忘れがちだけど黒潮も大概血の気が多い事を忘れていたわ。

 

「アンタそれが一番の目的じゃない。弱いものいじめなんかで栄光ある二水戦の名を辱めるようなことをしないで欲しいわね」

 

「はいはい。自分かてその立場やなかったらおんなじこと言ったくせによう言うわ」

 

「何か言った?」

 

返答次第ではここで沈めてやろうかしら。

 

「何でもあらへんよ」

 

なんだかんだで長い付き合いの黒潮が私の思惑に気が付かないはずもなくそう言ってあっさりと引いていった。残念。

 

「陽炎教官そろそろ深海棲艦が見つかった地点に到着するっぽい」

 

「ありがとう夕立」

 

黒潮と無駄話をしすぎたわね。まさかもう敵の発見地点の近くにきていたなんて。

 

「全艦、敵との接触が近いわ。警戒を厳にして見つけ次第すぐに報告をしなさい」

 

東南アジアと違って障害物となる島が少ないこのインド洋では奇襲なんてものは成立しない。いや、厳密には航空機と潜水艦による攻撃は奇襲となり得るけど対空能力の高い秋月型もいる事だしさしたる問題にはならない。潜水艦も大型艦があるならともかくこっちは小回りきく駆逐艦、潜水艦に撃沈されるなんて事は有り得ない。もし潜水艦に沈められる二水戦がいたら敵より先に私が撃沈してやるわ。とはいえ指揮艦の務めとして注意喚起くらいはしないといけないわね。

 

「敵潜水艦の出現地域と離れているとは言え存在しないとは言えないわ。潜水艦の存在にも留意しつつ警戒に当たりなさい」

 

それから深海棲艦との接触まではそれほど時間はかからなかった。10分後、左翼にいる不知火が指揮する第二中隊から敵の偵察機を発見したとの報告と同時に一つの砲声と左翼前方の上空で爆炎が上がり戦隊に緊張が走った。

 

「できれば命令があるまでは撃墜しないで欲しいわね」

 

私が指示をする前に不知火の部隊の誰かが主砲で撃墜したみたいね。

偵察機の帰る方向を見れば敵の大体の方角がわかるし奇襲が成功するかもしれないという間違った認識を植え付ける事ができるかもしれないのに、本当血の気が多いわね。

 

「部下というのは上司に似るんでしょうね。口より先に手が出たみたいです」

 

「部下がそうならないように貴女も自重しなさいよ」

 

まったく、みんな血の気が多いから私が頑張って抑えないといけないわね。

 

「上官も手が出るのが早いですからそれは難しいですよ」

 

……?

 

「ああ!一水戦時代の上官の話ね!!安心しなさい、今の上官は私よ。きっと二水戦の指揮艦に相応しい艦娘になれるわ!」

 

なんせ私ほど理性的で冷静な艦娘はそうはいないもの。きっと不知火も私みたいな艦娘になれるわ!

 

「……黒潮、どうにかしてください」

 

「ウチに任せるな。自分で何とかせい」

 

両翼の2人が私を間に挟んで話をしているのに話に加わらないのは疎外感が凄いわね。

 

「陽炎教官、派遣艦隊の哨戒部隊が敵と再接触する事に成功したみたいです」

 

「場所は?」

 

インド洋派遣艦隊との連絡を担当していた狭霧の報告に私は条件反射で尋ねた。

 

「ここからだと十時の方向に約5キロ、およそ16ノットで南下中との事です」

 

人が海面に立った時に見える限界距離はざっと4.6キロと言ったところ。5キロ先にいるのなら相対速度次第ではあるけど比較的すぐに目視できるできるだろう。

 

「全艦、第三戦速。敵の尻を蹴飛ばしに行くわよ!」

 

艦娘も深海棲艦も後方からの攻撃には弱い。この好機を逃すではないだろう。

 

「それと狭霧、派遣艦隊司令部に連絡して航空機による援護を要請して」

 

「了解です」

 

航空援護がなくてもなんとかなるかもしれないけどあるとないでは私達の負担が大きく変わる。これが第二艦隊であれば尚良かったけど派遣艦隊でも最低限の仕事はできるだろう。

 

「二時方向、敵艦隊です!」

 

発見したのは巻雲だった。巻雲の言う方を見れば確かに30隻前後の艦隊が南下しているのが見えた。想定していた位置関係ではなかったけどこれでも十分先手が取れるわね。

 

「艦隊を単縦陣に再編成するわよ。第一中隊を先頭に第三、第二中隊の順で敵艦隊に肉薄雷撃を行い魚雷発射後はそのまま離脱し敵艦隊の状況に応じて再攻撃の指示を出す」

 

後方からの雷撃は比較的避けられにくいとされている。艦娘や人型の深海棲艦は船舶と違って自分の目で見て魚雷の位置を確認しなければならないが基本的に背中には艤装がある。そのため後ろを見るには体ごと振り向く必要があるけどそんな事をすれば船足が遅くなるから基本的にはしない。部隊単位で行動していれば各艦が腰から上を動かして必死で警戒するけどそれでも真後ろの警戒は疎かになることが多い。

今回は真後ろとまではいかなかったけど十分警戒が薄いところから攻撃できたからこの一撃で後方にいた駆逐イ級や軽巡ホ級など6〜10隻を撃沈、その他駆逐艦、軽巡洋艦4〜7隻に手傷を負わせる事に成功した。

 

「敵が単縦陣やったせいで撃破した敵に魚雷が当たって思ったほど被害が出とらんな。どうする陽炎」

 

「敵は私達の艦隊よりも少なくなっている。このまま再攻撃を仕掛けても問題ないでしょう。なによりここで引いても敵の航空機による攻撃の可能性を考慮すればもう一当てしてしまった方がメリットが大きいわ」

 

「それもそうか」

 

「全艦反転!再攻撃するわよ!」

 

右側に舵を切って大きく弧を描きながら反転すると眼前には乱れた陣形を必死に再編しようとする戦艦棲姫とその艦隊の姿があった。

 

「今度は離脱をせず敵を徹底的に叩くわよ。全艦突撃!」

 

「陽炎、八時方向に敵艦隊!数……およそ10隻!」

 

不知火が示した方角を見ればそこには確かに深海棲艦の艦隊がいた。10隻となるとそれはおそらく戦艦レ級の艦隊ね。初めに攻撃した敵艦隊には戦艦棲姫がいたのを確認している。だけど数は30隻前後と少なく多分レ級の艦隊2つを何処かに分離していた。そのうちの一つが指揮艦の危機に駆けつけたというわけだ。となるともう一つのレ級の艦隊も駆けつける可能性を考慮しないといけないわね。

 

「命令を変更するわ。先ほど攻撃した艦隊に主砲と残っている魚雷を斉射し離脱。基地に帰還する」

 

今の二水戦の実力を正確に把握できていれば側面からの敵とも戦う選択肢もあったけど今の状態で無茶は禁物。大人しく引くとしましょう。

 

「では全艦突撃!」

 

結論だけ言うならこの攻撃では敵戦艦棲姫を撃沈できなかった。けど戦艦棲姫の艦隊の6割は撃沈、残りの深海棲艦も戦艦棲姫含め中破ないし大破と打撃を与える事に成功した。欲を言うなら戦艦棲姫を沈めたかったけど戦果としては十分でしょう。

 

「これで司令部は納得してくれるでしょうか」

 

「戦艦棲姫にも手傷を合わせたし艦隊も元の半分強にまで減少し指揮艦の戦艦棲姫も手傷を負った。暫くインド洋での活動は小規模なものになる公算が高いわ」

 

もっとも、司令部がそれで納得するかどうかは別問題だけどそれは帰ってみないとわからない。下手をすれば戦艦棲姫を撃沈しろなんて言われるかもしれないけどその時は多少無茶でもインド洋の深海棲艦の本拠地に攻め込んでインド洋の解放も同時に成し遂げればいいだけの話だ。なんの問題もないわね。

 

「なにより砲弾は余ってるけど肝心の魚雷がない以上戦艦棲姫にとどめを刺す事は難しいのだしこれ以上やる事がないわ。撤退やむなしよ」

 

まさか戦艦相手に駆逐艦の小口径砲で戦うわけにもいかないしね。

 

「自分はちゃっかり魚雷残しとるくせに随分とあっさりしとるな」

 

黒潮の言う通り私は他の子たちと違って魚雷を撃ち尽くさずに一本残している。これさえあれば姿を見せなかったもう一体のレ級の艦隊が来てもある程度では対抗できるからと言うのが大きな理由だけど……

 

「そう言うアンタだって残してるじゃない。なんなら不知火だって残してるし私だけとやかく言われる筋合いはないわ」

 

親潮、雪風も少し残しているしそれ以外にも何人か発射管に魚雷を残している者はいるけど少数だ。

 

「陽炎はウチらと違って最初に突撃したんやからいくらでも敵は選べたやろ。もしもの時のために魚雷残すんもええけどもう少しウチらの事も信用して欲しいわ。どうせ第二、第三中隊は撃破した敵が邪魔で魚雷撃つチャンス少ないから多少余るのは間違いないんやしわざわざ自分が撃つチャンスを消しまで魚雷残さんでもええやろ」

 

黒潮の言う事は正しい。敵の真横からならともかく後方から攻撃したらどうしても撃破した敵が障害物になって魚雷の射線が塞がれるから雷撃チャンスは減る。最初に突撃する第一中隊はともかくその後に続く第二、第三中隊が魚雷を残しているのはそのせいだ。

けどその数は私が想定していたよりも遥かに少ない。たとえ障害物があっても勢いで雷撃した者や障害物に気付かずに雷撃した艦娘がいるからだ。

 

「別に貴女達のことを信用してない訳じゃないわ。私にはもしもの時部下を敵から守る義務がある。だから一本残しておいただけよ」

 

少なくとも今の二水戦は私が期待していたほどの動きはできていない。けどその事実を口に出は事は部隊の士気に関わるからそれは今回の任務が終わった後に鍛え直す事にしよう。

 

「そうか、それならええんや」

 

黒潮にはこの一言で十分だったみたいでそれから黒潮がこの事に言及する事はなかった。

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