第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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いつかあの海で、来週ですね。
あと2話で終わるみたいですけど……


作戦開始

いよいよチャゴス諸島奪還、及び戦艦棲姫撃破の為の作戦が開始された。

作戦は二水戦を先鋒に中堅は日本海軍インド洋派遣艦隊、後衛にイギリス東洋艦隊と続く。

先鋒たる私達二水戦が迎撃に出る深海棲艦艦隊を撃破しインド洋派遣艦隊がチャゴス諸島に残る深海棲艦に対して艦砲射撃を加える。深海棲艦が陸に上がる事は稀だけどチャゴス諸島のように深海棲艦の前線基地となっていると砲台小鬼などが陸に配置されている可能性は高くなる。事実、チャゴス諸島には多少の砲台小鬼が確認されている。

インド洋派遣艦隊が砲撃する間その周囲の警戒を二水戦が、迎撃を東洋艦隊が担当する。正直警戒と迎撃の両方を二水戦が担当してもいいのだけどもし想定以上の敵がいたら流石に手が足りない。何より東洋艦隊なら出番を作らないといけないからこういう役割になった。

 

「さて、奴さんはどう言う方針で来るやろな」

 

「普通に考えれば3通りの方法がありますが…」

 

不知火が問いかけるように視線を向けてきたけどここは敢えて答えない。

 

「私の考えを言ってもいいけどここは訓練も兼ねて親潮と雪風の意見を聞きましょう」

 

2人ともゆくゆくは水雷中隊を指揮する事になるだろうしこれくらいは答えられないと話にならない。

 

「それもそうですね。雪風、どう思いますか?」

 

不知火が副隊長の雪風に問いかけると自信満々と言った様子で答えた。

 

「全艦隊で突撃して真正面から私達を撃ち破る作戦に出てくると思います。数の上ではどうせ負けている以上は二水戦、インド洋派遣艦隊、東洋艦隊各個に対して出せる全力で対決して3連勝しようとしてくるに違いないです」

 

雪風らしい積極的な考えね。成功すれば戦略的大勝利を得る事ができるけど失敗すれば戦略的に大敗する事になる危険な作戦だ。

 

「親潮の意見はどうや?」

 

「雪風さんの作戦はあまりにも危険すぎます。戦略的敗北を喫しない為にも敵はケルゲレン諸島へ全軍での早期撤退を考えるのではないでしょうか」

 

戦術的には敗北を認めつつも将来的な戦略的勝利の目は残す、親潮らしい答えね。けどこれまでの深海棲艦のインド洋での活動を見るに深海棲艦の指揮艦、戦艦棲姫はかなり積極的な指揮をとっているから消極的なこの作戦は選びにくいのではないだろうか。

 

「2人の意見はよくわかったわ。じゃあ最後にそうね………狭霧、アンタはどう思う?」

 

不知火が、黒潮と2人の部隊から代表者が意見を言った以上は私の対からも代表者を出さないと公平性に欠ける。私の指揮下の艦娘の内、狭霧と敷波以外の全員が、雪風か親潮のいずれかに近い性格の持ち主ばかりで、消去法で狭霧しかいない。敷波は変なこと言い出しそうだから選択肢には入らない。

 

「私ですか!?」

 

頷いて答えると狭霧は目線を泳がせ少し考えた後言った。

 

「雪風教官も親潮教官も極端すぎると思います。敵は我々二水戦とほぼ同数とは言え、練度では大きく劣ります。正面からぶつかれば勝ち目は万に一つもなく、損傷艦が多い中の早期撤退は二水戦による追撃を振り切れない可能性が高いです。であればある程度要塞化の済んでいるチャゴス諸島の砲台小鬼と連携して、我々を漸減しつつ小規模な戦闘を繰り返すことが考えられます。しかしこれは援軍がある前提で成り立つ作戦なのでどこかで見切りをつけて主力を逃すのではないでしょうか」

 

流石は狭霧ね。普段の言動に似合わず座学の成績はいいから1番敵が選びそうな作戦をすぐに出してくれる。というより雪風も親潮も中隊の副隊長としてもう少し広い視野を持ちなさいよ。

 

「狭霧の意見はもっともよ。私達としてもそれをされて嫌なのがその作戦ね」

 

それを想定しているからこそさっき言った作戦になっているわけなんだけど、今回の作戦の意図に気付いていたわけではなさそうね。

 

「だけど1つ、間違っているわね。敵にも援軍になり得る艦隊はいるわよ」

 

惜しいわね。ここまで考えれていれば100点満点だったんだけど。

 

「一応40隻を超えるであろう敵の潜水艦がいるから油断していると文字通り足元を掬われるわよ」

 

潜水艦の魚雷が駆逐艦に命中すると足元を掬われるどころの話ではない。かなりの高確率で轟沈する事になる。

 

「ソナーを装備している子は対潜警戒を厳に、それ以外は対水上、対空警戒を厳に一羽の鳥でさえ見逃さないつもりで警戒しなさい」

 

もしも見逃すようなら……

 

「もしも奇襲を受けるような事があったら、もう一度教導隊での訓練をやり直させるからそのつもりでいてね」

 

ニッコリと笑顔で言ってやるとみんなの顔が引き攣った。私だってあんな訓練もう一度やりたいとは思わない。だって明らかに二水戦での生活よりもキツイ6ヶ月だったんだもの。この子たちの反応も当然と言えた。

 

それから暫くして会敵した深海棲艦は予想に反して積極的な作戦に打って出ていた。チャゴス諸島の島陰が見え始めると同時にその前におよそ30隻の深海棲艦の艦影が出現した。

 

「陽炎教官、正面に敵艦隊です」

 

「予想外ね。まさか二水戦相手に正面決戦を挑んでくるなんて」

 

正直1番ないだろうと思っていた行動なだけに対応に迷う。

 

「一度後退してインド洋派遣艦隊と合流するんか、それともこのまま突き進むんかどっちにするんや?」

 

どちらにも相応のメリットとデメリットがある。前者は合流すれば少ない犠牲で確実に勝利できるけど合流後、必ずしも深海棲艦が同じ行動をとるとは限らないことから敵艦隊撃破の機会を逸する事になりかねない。

対して後者は二水戦に多少の被害が出る事が予想される上に前者ほどの戦果を上げられない可能性が高いが確実に敵と交戦できる。

 

「私達の戦略目標は敵旗艦戦艦棲姫の撃破。正面の敵の数は見た感じ敵残存艦隊のほぼ全軍。おそらく戦艦棲姫もいるでしょう。なら自ずと答えは出てくるわ」

 

今更後退してインド洋派遣艦隊と合流するなんてできるはずがない。

 

「隊列を変更するわよ。私を先頭とする第一中隊を中央に右翼第二中隊、左翼に第三中隊。第一中隊が敵中央に突撃し敵を攪乱、その間に両中隊は翼を伸ばして敵を半包囲するわ」

 

数の上では互角だから、やや困難な作戦だけど私達二水戦ならできる。そう信じて私は命令を下した。

 

「第一中隊、全艦最大船速。敵の中央を突破するわよ!」

 

命令を下すと同時に速度を上げ不知火、黒潮の部隊が左右に分かれて展開していく。敵も私達の意図を読んで部隊を3つに分けようとするけどその鼻先に第二、第三両中隊が魚雷を放ち行動を阻止した。

 

「第十四駆逐隊は右の部隊に、第十五駆逐隊は左の部隊に対して各駆逐隊司令の判断で雷撃!」

 

不知火と黒潮が行った阻止攻撃は、敵を多少足止めする事には成功したけどそれだけだった。遠距離雷撃だったから仕方ないこととは言えその殆どが避けられ足止めの効果は薄かった。

 

「第十四駆!正確でなくとも構わない、混乱する敵右翼部隊に雷撃開始!!」

 

磯風、夕雲の2人の駆逐隊司令の判断は違った。敵の陣形が乱れたばかりの今が好機と果断即決での攻撃を行ったのは磯風だ。それに対して夕雲は熟慮断行、磯風の攻撃から5秒ほど遅れて指示を出した。

 

「敵左翼の前方50メートル地点に一斉雷撃」

 

夕雲の指示は敵が混乱から立ち直り進撃を再開した際の未来位置を予想した雷撃だった。2人の判断はどちらも正しいとは思うけど今回に限っては磯風が正解を引き当てた。

 

「敵駆逐2隻、巡洋艦1隻への命中を確認!駆逐2隻は撃沈確実!!」

 

磯風の十四駆逐がそれなりの戦果をあげたのに対して夕雲の十五駆逐は一本の魚雷も命中しなかった。

夕雲の指示が悪かったというわけではない。むしろ指示が悪かったのは私の方だろう。十四駆逐の魚雷が先に敵右翼部隊へと到達した事で左翼部隊に雷撃に対して警戒感を抱かせる事になり、夕雲が予想していた地点に敵がこなかった。けど敵は回避行動をとった事で行動が遅れ、結果的に目的は果たしていた。

 

「十三駆逐隊は突撃と同時に戦艦棲姫に対して魚雷を斉射する、絶対に当てなさいよ!」

 

魚雷を撃ったばかりの十四、十五駆逐隊は次弾の装填が終わらないから雷撃できない。私と十三駆逐だけでも戦艦棲姫を沈めることはできるけど、護衛の深海棲艦の存在を考えると沈められる可能性は五分といったところだろう。

 

「陽炎教官、敵の発砲炎を確認!」

 

「まだまだ距離はある、無視して突っ込みなさい!」

 

艦娘というものは実在した軍艦から名前をとっているわけだが、当然何もかもが同じというわけではない。姿形は違うしその戦闘方法も交戦距離も違う。

元となった軍艦達は主砲に角度をつけ曲射により砲戦距離を伸ばしたけど、それをするには高い位置に設置された大きな測距機が必要不可欠だ。けど艦娘や深海棲艦はそれに必要な高さも大きさも足りない。もちろんレーダーを使えばそんなもの関係なく出来るけど、その他の機能が制限されるから護衛をつけている大型艦でないとできる事ではない。だから艦娘と深海棲艦の砲戦は曲射ではなく水平射撃が基本となる。

今の敵の砲撃も距離が開いているおかげで水柱は見当違いのところに上がった。

 

「水平射撃ができる距離になるまではこんなもの脅威でもないわ。気にせず突き進むわよ!!」

 

「教官、無茶ですよ!」

 

「無茶なものですか!今の砲撃を見てなかったの!?」

 

後ろから聞こえた狭霧の声に振り返らずに答えた。

 

「いや、それとこれとは……」

 

尚も食い下がる狭霧を夕立の声が遮った。

 

「敵、発砲したっぽい!」

 

「この距離で当たるはずないでしょ!突き進むわよ!!」

 

見当違いの方向に水柱を上げる敵の砲撃も距離が近づくと水兵射撃に移行して精度が上がってくる。そこでようやく新たな指示を出した。

 

「敵の砲口ををよく見て砲撃に合わせて回避運動。訓練と同じように焦らず、冷静によ」

 

私達に向けるのは戦艦棲姫とその直属部隊10隻の深海棲艦。数としては敵の方がやや少ないから、下手をすると敵からの攻撃を受けない子もいるだろう。それならば問題なく避けられるはずだ。

 

「教官!!」

 

撃たれた砲弾のほぼ全てが私の周囲に着弾し水柱を上げた事に狭霧達が悲鳴に近い声を上げた。

どうやら私は敵の指揮艦を見誤っていたようだ。私がこの部隊の隊長と見るや砲撃を集中して指揮系統を崩壊させようとしてきた。

 

「問題ないわ。このまま必中の距離になるまで接近するわよ!」

 

悲しいかな、練度が高くないせいで砲弾がバラけていて余裕で避けることが出来る。なんなら私に砲撃が集中したおかげで他の子達が無傷の状態で雷撃できるから大歓迎だ。

 

「今よ!十三駆、魚雷を斉射しなさい!」

 

2度ほどの砲撃を回避した後、私は雷撃指示を下した。

間に入って庇おうとしたタ級に3本の魚雷が命中し撃破、さらに戦艦棲姫に対して6本の魚雷が命中。戦艦棲姫は叫び声を上げながら海中へと沈んだ。

 

「このまま敵の背後に出て半包囲するわよ」

 

敵とチャゴス諸島の間に入る事は陸からの砲撃に晒される可能性があるけど敵が陸に逃げる余地を残すよりは攻撃されるリスクを取った方がいい。その方が確実に敵を殲滅できる。

 

「さあ、敵を殲滅するわよ!」

 

この日、インド洋を荒らした戦艦棲姫とその艦隊は完全に壊滅し、同時にチャゴス諸島の奪還に成功した。見方によっては1ヶ月ほど前の状態に戻っただけとも取れるけど、敵の水上艦艇がほぼ全滅した事を考えると寧ろ状況は良くなったと見るべきだろう。

また、戦艦棲姫と直接戦闘を行った第二水雷戦隊は被害ゼロでありその復活を世界中に見せ付けることになった。

しかしこの戦いは深海棲艦だけでなく、人類も大きな痛手を被ることとなった。ビッグセブンが1人、戦艦Nelsonが轟沈した。

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