第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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国葬後

国葬なんて大仰な事を言っているけど結局のところただの葬式だ。

参列者こそ豪華だけどやる事は変わらない。強いて言うなら友人代表として連合艦隊旗艦漣が弔辞を読んだ事が生前の伊58の発言から少し意外に感じたくらいだろうか。

 

「意外とあっけないものだったわね」

 

待ち時間2時間に対して葬儀の時間はざっと3時間強と言ったとこだろうか。

 

「葬式だからな、そう長々とするものでもないだろう。

那覇泊地なら所属艦娘が張り切って準備するだろうが今回は政府の用意した葬儀委員会が取り仕切ったからな。こんなものだろう」

 

艦娘の国葬は慣例として所属する鎮守府、または泊地で行われる事が慣例だ。そしてその準備は所属する艦娘達が中心となって行われるから自然と準備には力が入る。

本来なら伊58が所属していた那覇泊地で国葬をするところだけど今回の一件から海上を移動する事は危険と判断され東京、日本武道館で行われる事になった。

潜水艦隊からは不満の声が上がったけど水葬に関しては那覇泊地に棺を運んで行われる事で妥協点を見出した。

そしてその潜水艦隊からの参加者は伊58の娘の大鯨と伊58の死を伝えてきた伊19、なんと彼女は潜水艦隊の副司令官だった。伊58とほぼ同世代で艦歴なんて私の倍以上ある大先輩だ。

 

「その代わり沖縄だとこんな数の一般人は集まらなかっただろうし伊58もそこに関しては喜んでるんじゃない?」

 

瑞鳳の言うように日本武道館から横須賀鎮守府に続く道の沿道は人で埋め尽くされ軍と警察が共同で警備に当たっていた。

確かに沖縄だとこれほどの数の一般人が集まる事はなかっただろうけど

 

「葬式というより各国の有名艦娘見たさな気がしないでもないわね」

 

日本武道館を出たでち公の棺は海軍幕僚部庁舎前を通り横須賀基地へと向かう。後方を大鯨、伊19の乗る車が追従し前方を連合艦隊旗艦が乗る車が先導する。

旗艦の姿を見たくて沿道に集まった人も多いだろう。

 

「ドイツ大洋艦隊旗艦のBismarckやイギリス本国艦隊旗艦のWarspite、アメリカ太平洋艦隊旗艦Saratoga。ビッグ7こそきていないけどみんな実力者揃いだね」

 

「実力者揃いと言ってもSaratoga以外は現場を離れて随分経つし本当に実力のある艦娘はきてないわね」

 

欧州は深海棲艦と戦う事が殆どないから当然と言えば当然だけど世界最強の潜水艦の葬式だ、もう少しましな艦娘が来てもいいと思う。

 

「あれ見て、現役最強の潜水艦のドイツ潜水艦隊旗艦じゃない?」

 

揶揄うような声音で瑞鳳が指し示す先にはドイツ海軍の潜水艦娘、U-511がいた。

 

「自称でしょ」

 

「少なくとも現役潜水艦艦娘の中では戦闘経験も実績も一番多い。あながち間違いではないだろう」

 

司令のU-511を擁護する言葉に思わず鼻で笑った。

 

「散兵線が基本だったでち公の現役の頃と群狼が主流の今の艦娘じゃその戦闘経験も実績も何もかもが違いすぎるわよ」

 

「そうだね。なんならウチの潜水艦隊の古参潜水艦娘の方が強いんじゃないかな?」

 

「否定はしないがドイツが誇る潜水艦娘だ。もう少し評価してやってもいいんじゃないか?」

 

私と瑞鳳の反論に司令は苦笑いを浮かべた。

 

「ドイツが潜水艦の本場だったのは艦娘が出現する以前、100年以上前の話よ。今は日本の方が潜水艦の質も数も上じゃない」

 

15年ほど前までは潜水艦の運用方法が明確に定まらず、潜水艦娘も前線に出て戦っていたけど今は潜水艦の役目がオリョクルにほぼ固定されている。

当時の日本は主に散兵線と呼ばれる方法で基本的に1隻で深海棲艦と戦うことになる関係から潜水艦娘1隻毎の練度が高かった。

それに対して現在、世界的に主流の群狼戦術は複数隻で敵艦を取り囲みタコ殴りにすると言うものだから1隻ごとの練度が高くなるはずがない。

 

「何より群狼を使う潜水艦が仲間との連携を誇るのではなく個人の武を誇るなんて愚かな事この上ないわ」

 

「当面の脅威がなくなり予算を減らされたドイツ海軍が、艦娘五大国と呼ばれた栄光を維持するための手段にされているだけでU-511が積極的に喧伝しているわけではないだろう」

 

確かに彼女自身ではなくドイツ海軍の広報が最強って自称してるみたいだけど……

 

「艦娘五大国と言っても実質は三大国とその他2カ国だったじゃない」

 

艦娘五大国と聞き1番初めに思い浮かぶのがアメリカ、イギリス、日本、ドイツ、ロシアだけど北極海の奪還以来その呼び名が使われる事はめっきり減った。

元々五大国のうちアメリカ、イギリス、日本とドイツ、ロシアの差は大きかった。この2カ国に並ぶほど強力な艦娘を有する国としてフランス、イタリアが挙げられるけど五大国の構成国がこの2カ国になる事も少なくなく呼び名としては寧ろ艦娘七大国、あるいは艦娘超大国と四大国と呼ぶ方が適切と言えるかも知れいない。

 

「まぁ、否定はしない」

 

そう言って司令は肩をすくめると煙草を咥えた。

 

「潜水艦最強とかどうとか今の対深海棲艦の戦略、戦術においてはさして重要なものでもないからな」

 

昨今の潜水艦の使い方のトレンドはオリョクルによる資源収集特化。

余程戦力に余裕がないとなれば前線に出す事もあるけど今の情勢でそれはあり得ない。例外として深海棲艦の輸送妨害に心血を注ぐドイツが南大西洋で小規模だけど潜水艦による通商破壊をしているけどそれが唯一の事例だ。

 

「だから世界最強とか言ってると余計に滑稽に思えるのよね」

 

「潜水艦が強さを誇ってもしれてるしね。負けるのなんか対潜手段を持たない戦艦や正規空母くらいだよ」

 

「そもそも潜水艦が正面切って戦うなんて有り得ないだろう。どちらが勝つかなんて考えるだけ無駄だ」

 

今の時代、潜水艦は主役ではないのだから最強が誰かという談義自体が無意味だ。

 

「しっかし本当、今日は色んな艦娘が来てたわね。

おかげで随分疲れたわ」

 

さっきあげたのだってほんの一部だ。日本の番号付き艦隊、第八以外の全ての艦隊の旗艦とその提督。ロシア、フランス、イタリアの主力艦隊の旗艦。その他にも艦娘保有国の旗艦が参加していたから私は彼女達に挨拶されたりしたりで大忙しだった。

 

「日本の第二艦隊旗艦だからね。大抵の艦娘が格下になるから仕方ないよ」

 

瑞鳳はニッコニコしながらそう言うけどできれば旗艦なんて譲らないでほしかった。

瑞鳳の言う通り、日本の第二艦隊旗艦ともなればアメリカ、イギリス以外の国の艦娘のトップに匹敵する。だから基本的に私は挨拶しに行く側ではなくされる側だから移動や挨拶するために順番待ちをする事はない。ただ次から次へと艦娘や各国の大使が来るせいで気が休まる時間がなかった。

おまけに瑞鳳はいつのまにか部屋から出て近くの喫茶店でパフェを食べていたと言うしほんとうにムカつくわ。

 

「ていうかアンタ今日参加した理由は旗艦になったばかりの私のサポートでしょ?

もう少し手伝ってよ」

 

「あれロシア北方艦隊の旗艦じゃない?」

 

「ちょっと、無視しないでよ!」

 

しかも北方艦隊旗艦なんて今のロシアじゃただの名誉職じゃない!そんなに気にするような艦娘でもないでしょ!!

 

「私はもう旗艦じゃないからいいじゃん」

 

川内さんの後を継ぐ前からずっと真面目だったのにどうして急にこんな不真面目になるのよ。

 

「陽炎、瑞鳳は三航戦の旗艦に任命された時からずっと気を張っていたんだ。せっかく肩にの荷が降りたんだ、少しくらい自由にさせてやれ」

 

「まだ三航戦の旗艦じゃない」

 

「半年もすれば呉の訓練学校の校長になることになっている。少しくらい多めに見てやれ」

 

訓練学校の校長ですって!?

 

「ちょっと聞いてないわよ!」

 

「言ってなかったからな」

 

「だから今は提督と一緒に必死で後任の軽空母艦娘を探しているところなんだよ」

 

「それならさっき控室で話題になったんだから言ってくれでもいいじゃない。2人とも人が悪いわよ」

 

丁度引退について話していたのにどうしてそれを言ってくれないのか。やっぱり私以外の第二艦隊の指揮艦連中は碌な奴がいない。

 

「で、後任人事はどうなってんのよ」

 

「さっぱり。なんなら隼鷹一隻にして隼鷹引退後は三航戦は欠番にする案も出てるよ」

 

「それは不味くない?」

 

四航戦も後任が中々見つからないし下手すれば航空戦力全滅もあり得る。

 

「最悪正規空母まで手を広げるっていうのは……」

 

「それも検討したが第五航空戦隊と取り合うことになる。第一艦隊と揉めるのは避けたい」

 

「いよいよ大型艦娘の不足が問題となってくるわね」

 

私達水雷戦隊だけでも戦えなくはない。けど大型艦がいるのといないのとではやはり戦いの難易度が大きく変わる。

 

「水雷戦隊だけでもどうにかなると言えばなるが……」

 

「大規模作戦がしにくくなるのよねぇ」

 

東南アジアの奪還。主力となったのは第二艦隊、特に第二水雷戦隊だ。けど戦艦、空母が大量に入り乱れた大規模な艦隊決戦となれば、二水戦だけでは勝ち切るのは難しい。

私が唯一参加した二水戦全軍が集った大規模戦闘、それは第二艦隊のほぼ全てが参加した戦いでもあった。あの経験で私は水雷戦隊だけではあまりにも規模が大きすぎる戦闘は勝ち切ることが不可能に近いことを学んだ。

両軍合わせて200隻を超える戦闘は二水戦の練度以前に弾薬が足りず駆逐艦程度なら一撃で葬れる戦艦、重巡洋艦はその打撃力を持って私達の継戦能力を高めた。

空母だって遠距離から敵の中枢部に対して電撃的に攻撃を仕掛け指揮系統を麻痺させようとしたり重要な役割を担った。

 

「各地の部隊を一時的に指揮下に収めることもできるが、流石にそれは避けたいか」

 

「そうね。練度も不明、信頼関係もないとなればどう運用していいかわかったもんじゃないもの」

 

「この際妥協するしかないけど、それは嫌だなぁ」

 

歴史ある四航戦が自分の代を境に弱体化するのはやはり物悲しいものがあるのだろう。

 

「二水戦だけでも大変なのに第二艦隊の事まで頭を悩まさないといけないなんて……」

 

「それについては私がなんとかするから大丈夫だよ」

 

「本当に?」

 

「本当、本当。だって元々陽炎さんにこの話するつもりなかったんだよ。なのに提督が口を滑らすから」

 

そういえば提督が瑞鳳が校長になるって言ったから判明したんだったわね。

 

「すまん、つい口が滑った」

 

「陽炎に少しでも負担をかけないようにって話だったのに」

 

第二艦隊の指揮艦はまともなのが私以外いないって言ったけど前言撤回。

やっぱり瑞鳳は優しくて最高だわ!

 

「後任が見つからなかったら陽炎に丸投げしようとも言っていたがな」

 

司令の言葉に瑞鳳はそっぽを向いて下手くそな口笛を吹き始めた。

やっぱり前言撤回。第二艦隊は私以外まともな指揮艦がいないわ。




いつかあの海での世界線だと陽炎はどうなったんだろう。
触雷して沈没?
いずれにしてもアニメで動く陽炎が見たい。いや、一期でいたけどもっと見たい。
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