第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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出撃準備

会議室扱いになっている司令がいるテントにはすでに第二艦隊の指揮艦と由良が集まっていた。

 

「司令、漣達の動きはどうなってる!?」

 

Jervis達の前では落ち着いている様に装っていたけどその実私は焦っていた。漣の動きが予想よりも早かったからだ。

 

「神通の報告によると漣は麾下の艦隊を80隻程度の艦隊5つに分けてそれぞれ別方向に向けて進軍を開始した」

 

「厄介なことになったわね」

 

龍鳳の報告では漣の元に辿り着いたのは約200隻だった。だけどそれは潜水艦の展開が済んでから合流が確認された数で、それ以前に合流した艦娘は含まれていないから実際はもっと多い。この報告から推測するに合流している艦隊は最低でも300隻、もし拠点に1個艦隊規模の艦娘が残っていたらその数は400隻を超えてもおかしくない。脱走したと言われている艦娘は500隻だけど大半はまともに航行できない置き物連中、これだと合流した艦娘があまりにも多すぎる。多分判明していない脱走した艦娘がかなり存在するのだろう。

 

「敵拠点に艦娘は残ってる?」

 

「いないそうだ。漣の奴は物資が足らぬと見て早々に泊地を占領するつもりの様だ」

 

余程物資が少ないのかそれとも元から1ヶ月待たずにある程度の数が集まれば仕掛けるつもりだったのか、個人的には後者の様な気がするけどどうなんだろうか。

 

「漣が小笠原諸島の姪島を拠点に選んだのには相応に理由があったはずやのにそれを放棄するってどういう事なんや?」

 

「そんなの姪島が仮の拠点に過ぎずはなから長期間そこで籠城する気がなかっただけですネ」

 

黒潮の疑問に答えたのは金剛だった。

 

「小笠原諸島に拠点を置くメリットなんてこちらから容易に反撃出来なくするくらいしかないし、金剛の言う通りどこかのタイミングで大きめの泊地を占領する気だったんでしょうね」

 

物資を奪って姪島に帰ってくれた方が包囲戦をできるから個人的には助かるのだけど、こうなってはそれはもう期待できないだろう。

 

「それで、どれが漣の率いる本隊かわかっているの?」

 

5つ全てを私達だけで撃破する事は時間的に不可能に近い。だけど漣の部隊さえ撃破してしまえば後は烏合の衆、この反乱を終結させることができる。

 

「目星はついている様だが断定はできていないみたいだな」

 

「ならそれぞれが目的としているであろう泊地の見当はついてるの?」

 

せめて目的地だけでも目星がついていれば迎撃するにしてもしやすくなる。

 

「不明だ。5つの艦隊が扇状に広がりそれぞれ別の泊地を目指しているせいで明確な目的地を推測することが困難だ」

 

「扇状なら両端は最北端と最南端の泊地を目指していると仮定するのが道理ではないですか?」

 

不知火の意見に私は懐疑的だった。

 

「そもそも泊地を目指ざしてるんじゃなくてそれら全てが囮という事も考えられるわ」

 

「どれか1つに攻撃を仕掛けた途端全ての艦隊が進路を変えて不知火達を攻撃するということですか?」

 

「そうよ。素直に泊地を占領しに来たと考えるのは安直すぎるんじゃないかしら」

 

もし私達の撃破が狙いなら泊地を防衛すると言う方針そのものが破綻してしまう。

 

「仮にそうだとしてもこちらから攻撃しなければ漣達は泊地を占領し物資を手に入れます。攻撃する以外の選択肢は無いのでは?」

 

「だけど敵が反転して私達に全戦力を叩きつける可能性を考慮するのは重要な事よ。敵が反転して私達の側背から掣肘する事を考えずに作戦を立てては反転してきた時対処しきれないわ」

 

私達の数的な優位性はあくまで漣が部隊を分けた事による一時的なものでしか無い以上は、これを最大限に活かすために全ての可能性を考慮に入れた上で作戦を立てる必要がある。

 

「そんなの取れる手段は二つくらいしか無いデース。一つは敵が泊地を襲っている間に漣の本隊を叩く、もう一つは敵同士が最も離れたタイミングで漣の本隊を攻撃、他の艦隊は潜水艦艦隊に遅滞戦闘を命令してできる限り撃破までの時間を稼ぐ。これくらいしかないデスネ」

 

「前者は信頼できない泊地とその所属部隊に遅滞戦闘を、後者は信頼のおける潜水艦艦隊に遅滞戦闘をさせるという違いしかないわね。だけど取れる作戦はそれしかないでしょうね」

 

「やけど泊地所属の艦娘って言っても精々20隻が限度、潜水艦は150隻おる言うても速度差がありすぎるから振り切られたりそもそも発見できんかもしれへんしで上手く行かへんのちゃうか?」

 

どちらにも相応にメリットデメリットがある。前者は戦力としてあまり信用できないし後者は纏まった数をぶつける事ができないしできたとしても無視して進軍されたら意味がない。

 

「それなら潜水艦隊による足止めを行う艦隊と泊地に足止めさせる艦隊の二つを作るのはどうですか?」

 

「由良の提案は悪くないと思うけど潜水艦に足止めされた事で違和感を感じて合流されたら厄介よ。できればある程度敵の作戦通りに行動させた上で漣を攻撃したいわ」

 

敵にこちらの想定外の行動をされるより敵の想定通りでもある程度こちらでも行動の予測がつく方が対処しやすい。

 

「泊地の連中は信用できない。司令、私は潜水艦艦隊での遅滞戦闘を具申するわ」

 

「最初からそのつもりで潜水艦艦隊については用意していた。既に神通に命じて予想進路に網を張っている」

 

「流石司令ね。本隊の目星はついているのよね」

 

漣達が横須賀に到着するのにおそらく1日から2日かかる。けど私達が迎撃位置に着くのにもどんなに早くても半日はかかるから早めに出撃して迎撃体制を整えたい。

 

「ついているがあまりに根拠が薄い」

 

「今更そんなこと言わないでよ」

 

「この作戦なら強襲を受けた時最も対応がしやすい場所、つまり中央に漣は陣取っているのではないかと神通は言っている。つまるところ敵の作戦から予想を立てたに過ぎない」

 

「それは根拠が薄いんじゃなくてただの推測じゃない」

 

予想外だった。てっきり第一艦隊の艦娘がいたとかもう少しちゃんとした根拠があるものだとばかり思っていたわ。

 

「その推測を裏付けるために神通は一当てしたいらしい」

 

「漣の所在を確かめるためだけに潜水艦を使うなんてその後の遅滞戦闘の効果が薄くなるわよ」

 

「そうじゃない陽炎。神通は潜水艦娘ではなく自分たちで一当てするつもりらしい」

 

その言葉に思わず頭を抱えた私を誰が責められるのだろうか。

これが大先輩である神通さんでなければ口汚く罵っているところだけどそれを辛うじて押し留めて無言で足をジタバタするだけだった私を誰か褒めて欲しい。

 

「あの人達なら泊地所属の艦娘程度なら負けないとは思うわ。だけど第一艦隊ともなれば流石に無理よ。大人しく私達の到着を待ちなさいよ」

 

「それについては神通から伝言がある」

 

「どうせ碌な事じゃないんでしょ」

 

「『待つのはいいですがあまりに遅い様だとメインディシュを食べ遅れますよ』と言っていた」

 

「あの人達が漣達に勝てるわけないわ」

 

全盛期ならともかく衰えた今じゃ足止め、それも轟沈前提での足止めがやっとのはずだ。

 

「そうだな。漣達第一艦隊でなければ可能性はあるかもしれないが流石に第一艦隊はなぁ」

 

「第一艦隊がどれか分かっていないのに攻撃を仕掛けては敵が作戦を変更する恐れがありますネ。今すぐに止めるべきデス」

 

「中止するように要請はした。その上でさっきの発言だ」

 

「ウチらが間に合わんかった時に攻撃する言う意味で強気な事言っただけでいくらなんでも本当に攻撃する気はなかったんちゃう?」

 

黒潮の言う通りならどれだけいいことか。

 

「本当にそう思うの? あの神通さんよ。やると言ったからには絶対にやるわ」

 

「けど中止するよう命令したんやったらやらんやろ」

 

「第二艦隊司令官に教導隊への指揮権はない。元第二艦隊所属だから何かと言う事を聞いてくれるがその気になればこちらの要請など無視できる」

 

呉鎮守府の敷地内に教導隊が存在するからなにかと勘違いされがちだけど教導隊の教官連中に対する指揮権を司令は持っていない。

現役艦娘が教官であればその限りではないけど今の教官連中は全員引退艦娘だ。あの人達の行動を制限する術はない。

 

「叢雲に期待するしかないわね」

 

「そうだな」

 

「何呑気な事言ったんねん。ならすぐに出撃してあの人ら止めなあかんやろ!」

 

「今更出撃したところで追いつかないわよ」

 

神通さん達の位置から漣達と接触を図ろうとすれば数時間でそれが可能だ。だけど私達は神通さん達と合流するだけで1日高い時間を必要とする。焦っても無駄だ。

 

「だけど漣達への対処を考えればいつまでも呉にいるわけにもいかないのも事実ね。司令、どのあたりに展開するのがいいと思う?」

 

「どこに展開しようとも対応できない部隊が必ず出てくるがその中でも最も対応しやすい場所、東京湾か駿河湾あたりでの待機が一番いいんじゃないか?」

 

「泊地でもなく沖合でもなく湾内待機にした理由は?」

 

「泊地そのものは信用できないがかと言って沖合だと補給に難がある。不意打ちをされにくくされても対応でき、補給も受けやすい湾内での待機が最適だろう」

 

敵の両端の部隊に対する対応が甘くなるけどそれらに関しては第三と第五艦隊が対応してくれると信じましょう。仮に負けても私達が着くまで足止めはできるしね。

 

「ならそれで行きましょう。各員に食事と仮眠を取らせた後出撃するわ」

 

「神通さんの件はどうするんや?」

 

「どうせ漣達と戦うのは暫く先よ。神通さん達の行動ですぐに出撃する必要があるかと思ったけどこの際あの人は無視して私達は私達のすべき行動をとるべきよ」

 

私の言葉に黒潮が納得すると司令が解散を宣言し皆この決定を部下達に伝えるためにテントを去った。

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