第二水雷戦隊壊滅ス   作:鉄玉

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暫くは後日談です


一ヶ月後

漣の反乱は彼女の死をもって終結した。それから1ヶ月も経てばその全貌もだんだんと明らかになってきた。

反乱参加艦娘は446隻。内訳は駆逐艦283隻、重雷装巡洋艦含む軽巡洋艦48隻、航空巡洋艦含む重巡洋艦が42隻、航空戦艦含む戦艦が24隻、軽空母含む空母が38隻、補給艦や工作艦、水上機母艦などその他艦娘が11隻。

このうち私達と戦ったのが第一艦隊の駆逐艦(空母の護衛艦だった12隻含む)54隻、重雷装巡洋艦含む軽巡洋艦7隻、重巡洋艦12隻、航空戦艦含む戦艦4隻、空母6隻、そして連合艦隊旗艦漣の合計83隻。その内轟沈したのが駆逐艦15隻、軽巡洋艦2隻、重巡洋艦3隻、戦艦1隻、空母2隻の計23隻で損耗率約27.7%。

対する私達第二艦隊、第四艦隊の被害は第二艦隊駆逐艦9隻、重巡洋艦3隻、第四艦隊駆逐艦5隻、重巡洋艦1隻の合計18隻で損耗率が約20.4%。

 

反乱全体で見るとこの他に反乱軍183隻、友軍は16隻の被害を出している。全体で見ると私達の大勝利と言っていいけど第一艦隊との戦いでは辛うじて勝利を手にしたなすぎない。特に私たちの被害の内駆逐艦7隻、巡洋艦3隻は黒潮が率いた左翼部隊で、この部隊だけだと損耗率は62.5%。巡洋艦に至っては1隻を残して全滅している。それに対し第一艦隊は漣の直属部隊が漣含め駆逐艦7隻、戦艦1隻、空母1隻の轟沈で損耗率約52.6%が最大で部隊ごとに見ると私達の方が損害が大きい。

第四艦隊も結局は、体勢を立て直した敵中央部隊の逆撃で、元々損害を受けていた艦娘を中心に6隻が轟沈している。最後は第一艦隊が底力を見せたと言えるだろう。

 

その反面、ここ以外では終始優勢に事は進み特に13隻という1個水雷中隊しかない戦力で、1隻大破した以外は被害を出さずに100隻近い艦娘の撃沈に貢献した第二水雷戦隊教導隊の活躍は凄まじい。彼女達が相手した艦隊が文字通りの寄せ集めだった事も原因ではあったけど、全盛期二水戦を彷彿とさせる活躍に一部からは現役復帰を望む声が上がったほどだった。

 

だけどこれはあくまでも漣達と合流して、直接反乱に参加した艦娘の話。漣討伐後に各地から寄せられてきた報告によると、行方不明艦娘は1500隻を超えた。もちろん、今更報告をよこしてきた馬鹿共には罰を与えている。だけどその数が多すぎたせいで厳正に処罰したのは泊地の艦娘全てが行方不明になっていたくせに報告をせず、深海棲艦からの脅威に対抗できず泣きついてきた本物の馬鹿くらいのものだ。

 

「みんな馬鹿ばっかりね」

 

新たにもたらされた報告は駿河湾に餓死した艦娘が打ち上げられたという報告だった。まともに航行できないくせに一丁前に海に出て彷徨い、遭難し最後は餓死するか、脱水症状で死んで浜に打ち上げられる。漣との戦いが終結してから1日1件は必ず寄せられる報告だ。

 

「馬鹿な報告を聞くのが嫌なら連合艦隊旗艦なんてやめてしまえばいいんですよ」

 

思わず呟いた独り言に答えたのは音もなく部屋に入ってきた不知火だった。

 

「代理をつけなさい」

 

「第四代連合艦隊旗艦への就任は確定でしょう。なんせ先代旗艦漣を倒したんですから」

 

「わからないわよ。連合艦隊旗艦の職務を廃止するって案もあるし必ずしも私が旗艦になるとは限らないわ」

 

漣が死んだ事で連合艦隊旗艦は空席になった。面倒な事に漣の次の連合艦隊旗艦の最有力候補が私だった。消えない傷を負ったとはいえ、漣を倒した事で私は名実共に日本最強の名を手に入れた。今は呉から横須賀に移動して連合艦隊旗艦代理の任につき職務を代行している。連合艦隊旗艦という役職が廃止されるにせよされないにせよ、似たような立場に置かれる事は間違いない。

 

「不知火こそ第二水雷戦隊旗艦の椅子の座り心地はどう?」

 

「代理ですよ。まだ陽炎から正式に渡されていません」

 

「第二艦隊旗艦だけでも大変なんだから二水戦の旗艦だけでも引き受けてくれていいんじゃない?」

 

「第二艦隊旗艦代理も金剛が務めていますよね?」

 

呉では金剛が第二艦隊旗艦代理に、不知火が第二水雷戦隊旗艦代理の任につき私に代わって艦隊を運営している。他にも親潮と雪風もそれぞれ中隊長として水雷中隊を率いる事になった。

 

「暫定的だけど名誉ある第一艦隊旗艦でもあるのよ。その分の仕事も多くて大変なのよ」

 

「反乱に参加しなかった数隻しか所属艦娘がいないのにですか?」

 

第一艦隊は現在、旗艦である私を除いて駆逐隊が一つしか存在していない。たった4隻の駆逐艦を除いた全てがあの反乱に参加したからだ。因みにその唯一残った駆逐隊が不知火の率いていた第十一駆逐隊で4隻のうち3隻は不知火の元部下だ。

 

「それでもやる事は多いのよ。所属艦娘の減少に伴う穴埋め、あるいは部隊の解体のための手続きとか色々あるのよ」

 

二度も反乱騒ぎを起こした第一艦隊は解体する動きが出始めている。そもそも殆ど出撃がなかった第一艦隊を残す理由も元旗艦だった漣がいたからだ。いなければ早々に解体されていてもおかしくなかった。

 

「第二艦隊をそのまま第一艦隊に名称を変更して運用するという案もあると聞きましたが?」

 

「司令が却下したわ」

 

元第二艦隊司令長官だった司令も今は連合艦隊司令長官代理の任についている。前司令長官は漣の反乱を防げなかった事から更迭、第一艦隊司令長官も同じく更迭。軍政方面から司令長官を出す案もあったけど結局実戦部隊から司令長官を出す事になり司令がその職に就く事になった。

 

「英断ですね。第二艦隊が第一艦隊になったところで第一艦隊のした事が消えるわけではありません」

 

「なにより第二艦隊を第一艦隊の代わりにしようの言う考えが気に入らないわ」

 

第一艦隊と第二艦隊では元々の役割が違いすぎる。日本の矛である第二艦隊と日本の盾であった第一艦隊とではたとえ名称を変え、役割を変えたとしても元の第二艦隊の気風が簡単に抜けるわけがなく数年単位での艦隊の再編が必要になる事は間違いなかった。

 

「そもそも本土防衛のための艦隊なんてもはや必要ありません。陸、空軍への出航組と泊地の艦娘で本来は十分なはずです」

 

いくら弱いと言っても最低限主力部隊が帰ってくるまでの間支えるくらいの戦力はある。個人の力は弱くとも数が集まればその限りではない。

 

「結局のところ本土防衛の為の部隊は、人々が安心感を得る為以上の効果はありません。あるだけ無駄です」

 

「入れ替わりの激しい他の部隊と比べて、入れ替わりの少ない本土の艦隊は反乱が起こりやすくなるし、この際第一艦隊は欠番にした方がいいわね。本土には第二から第五艦隊がいるわけだし」

 

「第五以外は基本海外ですけどね」

 

「第三は日本にいるわよ」

 

厳密には第二艦隊も日本にいるにはいるが大抵の場合そのほとんどは海外で任務についている。同じく第四艦隊も母校は舞鶴だがほとんどのメンバーはスリランカにいる。

 

「台湾の高雄、沖縄、佐世保に分散配置されてるじゃないですか」

 

「佐世保と沖縄は日本じゃない」

 

「そもそもあの艦隊の役割は本土防衛ではなく日本海の防衛でしょう。本土防衛が目的ではありません」

 

日本の一大資源地帯である日本海。そこを防衛するための部隊が第三艦隊だ。

 

「そうね。第三艦隊の任務に日本本土の防衛はない。同じように第二艦隊にも第三艦隊にも日本海と太平洋の守護という任務はあっても日本本土の防衛任務はない。だけどそれは第一艦隊にも言える事よ」

 

「第一艦隊の役割は第二艦隊が受け持たない紀伊半島より北の太平洋側地域の防衛。本土自体の防衛は陸、空軍の役目で我々海軍はあくまでも深海棲艦を上陸させないため部隊で、本土の防衛というよりは本土に近づかせないための部隊。実質的にそれは本土防衛のための部隊といえますが最終防衛ラインは陸、空軍です」

 

「最終防衛ラインが脆弱な陸、空軍の担当になっているのは問題だけどそれは私達海軍が頑張ればいい話。そもそも第一艦隊が出撃した事自体随分と前の話だしやっぱり必要ないわね」

 

演習を兼ねて時折小規模な部隊を各地に投入して第一艦隊の力を知らしめることはあったけどそれは本来必要なものじゃない。絶対に第一艦隊が必要な出撃機会というのはもう10年近く起きていない。

 

「思うに今の第一艦隊に必要なのは、有事の際に日本本土の泊地を指揮して深海棲艦を迎撃する司令部としての能力なのではないでしょうか」

 

「面白い意見ね。だけどそれをしようにも本土の泊地に所属する艦娘は軽巡洋艦以下が殆どで重巡洋艦以上の打撃力があまりにも低すぎるわ」

 

本土の泊地には戦艦と正規空母はいない。それらの力は陸、空軍の存在から必要ないからだ。

 

「ですから陽炎の連合艦隊旗艦としての最初の任務は本土の泊地の再編成ではないですか?」

 

「嫌な事言わないでよ。そんなの気が遠くなるわ」

 

本土に一体幾つの泊地があると思っているのよ。いや、本土だけじゃない。再編するとなれば本土以外からも艦娘を持ってかないといけないから規模はかなりのものになるわね。

 

「頑張ってください」

 

「アンタも手伝いなさいよね」

 

「不知火は二水戦の旗艦として練度向上、それと指揮艦クラスの轟沈率の高さをどうにか改善したいですからそんなの無理ですよ」

 

指揮艦の轟沈率の高さ。それは度々二水戦の問題として話題に上がっていた事だ。私はそれに対して何も思わなかった。むしろそれが伝統で良い事とさえ思っていたけど多分、いや確実にこれは良くない事だ。私は二水戦のそう言った悪いところも含めて好きだったけど不知火はそんな元二水戦じゃない。寂しい事だけど私は、いや二水戦は変わるべきなのかも知れない。そしてそれをできるのは私ではない。

 

「そう。なら仕方ないわね」

 

「貴女の好きな二水戦を変える事を反対しないんですね」

 

「私の好きだった二水戦はもういない。復活させようとは思っていたけどそれは私のエゴよ。今の私は二水戦だけを見るわけにはいかないの。だから、もういいわ」

 

二水戦が変わるのは寂しい。だけどそれは必要な変化だ。旧二水戦の関係者は今の二水戦に2隻しかいない。それも二水戦の中で新人に分類された2隻だ。彼女達に二水戦の復活は無理だろう。二水戦の意思を完全に継ぐ現役の艦娘はもう私しかいない。

 

「だけど長い現役期間の間でいつか必ず二水戦を復活させてみせるわ」

 

「……そうですか」

 

不知火はどこか複雑そうな表情を浮かべていた。

 

「そういえば陽炎、そろそろお見舞いに行く時間ではないですか?」

 

不知火に言われて時計に目を向けると次の予定の時間が迫っていた。

 

「そうね。ちょっと出かけてくるわ」

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