ルフィの母親が求道心、探究心溢れたプラント星出身のサイヤ人だった件 作:メカ好き
夜中、屋敷では執事のメリーとクラハドールが話をしていた。
「ん?これは・・・」
するとクラハドールは背の低い開きの上に置いてあるラッピングされた箱に気が付く。
「ああ・・・それは、お嬢様からあなたへのプレゼントですよ。明日はあなたがこの屋に来てからちょうど3年目になりますからね。記念日というやつです」
「記念日・・・」
クラハドールはそう言って箱を開け、中から新しい眼鏡を取り出した。
「あなたの今の眼鏡はよくズレる様なので、なんとお嬢様が設計して特注なさった品なんですよ!ホントによく気のつく優しい方だ・・・」
「記念日というなら、確かに・・・明日は記念日だ」
「え?」
急に口調が変わったクラハドールに思わず疑問の声が出るメリー。それに構わずクラハドールは窓から見える三日月を見ながら続ける。
「今夜は三日月ですね。こんな夜は胸が高鳴るというか・・・血が騒ぐというか・・・」
そう言うと彼は眼鏡を箱ごと床に落とすと、それを踏み潰した。
「な!!!く・・・クラハドールさん!?あなた!!お嬢様のプレゼントに何を!!!」
「プレゼントなら受け取りますよ。だがこんな物ではなく・・・この屋敷まるごとだ・・・!!」
「!?」
「もう芝居を続ける意味はあるまい。あと数時間でどうせ事故は起こるのだから」
そう言いながらクラハドール、否キャプテン・クロは何処からか指の部分に刀のような長い刃が付いた手袋『猫の手』を取り出し嵌める。
「実に長かったよ、3年間は・・・」
「・・・!!お嬢様逃げ」
バキャァン!!!
ドォン!!!
ガラスが割れる音と同時に響き渡る破壊音。メリーの目に写ったのは残った部分を探すのが難しい程の大穴の開いた壁と、黒く染まった拳を振り抜いた姿勢の麦わら帽子を被った少年だった。
「ビックリしたー!!思った以上に速いんだもんよ!!!思わず『桜拳』使っちまった!!!」
「生きてるかな〜」と呑気に穴から出ていくルフィ。メリーは短時間で色んな事が起きすぎて、ただ去っていく後ろ姿を見送る事しか出来ない。
「メリー!クラハドール!どうしたの、何が・・・ッ!?」
すると先程の破壊音で起きたのか、屋敷の主であるカヤが部屋にやって来た。
「これって・・・メリー!?大丈夫!?」
「お嬢様、私は大丈夫です」
「・・・クラハドールは?」
「ッ!」
カヤの問いかけにメリーは一瞬躊躇するも、そんな事をしている場合ではないと真実を告げる。
「分かりません。しかし、この様な事になる前に、私はクラハドールに殺されかけました」
「え?」
何を言われたのかわからないのだろう。しかし、メリーは自分の主に真実を伝える。
「奇妙な武器を慣れたように使っていました。恐らくは海賊・・・私はあと一歩で斬り裂かれる所で謎の少年に助けられました。私には速すぎて見えませんでしたが、認識した時には少年が拳を振り抜いた姿勢で私を守るように立っており、つい先程クラハドールの生死の確認の為に出ていきました」
「生死の確認って・・・」
「お嬢様、酷な事ではありますがあの少年にも手加減の余裕は無かった様です。素人の私ですらクラハドールの速さは尋常では無いと認識した程です。少年も尋常ではありませんでしたが私を庇いながらでしたから・・・」
「・・・」
カヤはショックのあまり言葉が無かった。脳裏に過ぎるのはクラハドールとの思い出。なぜ彼が・・・。そんな思いに駆られて気付けば走り出していた。
「お嬢様!?危険です!!」
メリーもすかさず後を追った。
一方ルフィは自分が殴り飛ばしたキャプテン・クロのところに居た。桜拳を放つ瞬間に気と覇気を出来るだけ抑えた事で失敗した一撃になったおかげか、内臓を派手に痛めたのか血溜まりが出来る程吐血しているものの生きていた。ルフィの手加減が間に合わなかった場合、良くて上半身と下半身が泣き別れ、悪ければ消し飛んでいただろう。
そも、桜拳とはサヤが海軍大将や四皇クラスを相手する為に考案した技だ。流桜による拳撃に膨大な気も覇気に添う様に流し込む事で、必殺クラスの気功波と同等の威力の一撃を叩き込むという技である。無論、自然系の能力者にとっては悪夢そのもので、現海軍大将全員がサヤの桜拳により一撃で沈んだ経験が必ずある程である。
しかも、桜拳の恐ろしいところは威力だけではない。この技は極めればノーモーションで放つ事が可能で、更には様々な派生技や強化技を作る事が可能なのだ。既にサヤやルフィ達三兄弟によって様々なバリエーションが編み出されている。
因みにこの桜拳、ガープは既に彼女との戦い(と言う名の一方的な蹂躙)の最中で修得済みで、それが祟って更に嫌われる原因になってたりする。
閑話休題
ルフィは取り敢えずホイポイカプセルを起動し、出てきた鉄の箱の中から取り出した鉄製の手枷と足枷を使いクロを拘束した。念の為に猫の手も取り上げる。そのタイミングでカヤとメリーが現場に現れた。
「お、来たか」
「あなたは・・・」
「おれはルフィ、冒険団やってんだ。たまたまコイツの計画を聞いてよ。おれの仲間とウソップ達と協力して計画を潰してんだ」
「ウソップさんが!?・・・あの、その計画を聞かせて下さいませんか?」
「こいつらはお嬢様暗殺計画って言ってたな。おれはバカだから難しい事は分からないけどよ、おまえの財産を狙ってたみたいだぞ」
「ッ!?」
カヤは改めて現実を直視させられた。押し黙る彼女に変わって今度はメリーがルフィに質問した。
「そういえばウソップくんはどうしたのですか?」
「ウソップならおれの仲間とクラウ達と一緒に海賊と戦う」
「海賊!?」
「ああ、クロネコ海賊団ってヤツ等が村を襲う事も計画の内だってよ。それを迎え撃つんだ。おれもそっちに向うつもりだ」
そう言ってルフィは拘束したキャプテン・クロを乱雑に持ち上げようとする。
「ちょっと待って下さい!クラハドールと話をさせて貰えませんか?少しだけでいいんです!」
「いいぞ、海賊は日の出に攻めてくるし。時間はある。おい、もう気付いてんだろ?」
「ぐっ」
そう言ってルフィが乱雑にキャプテン・クロを転がすとうめき声が上がった。
「クラハドール!」
「いけません、お嬢様!!これ以上近付いては危険です!!」
カヤは彼に近付こうとするもメリーに止められる。そんな中、キャプテン・クロは転がったままカヤを見上げながら笑みを浮かべた。
「ふ、負けた私を笑いに来ましたか?」
「・・・クラハドール、どうして」
「・・・金と平穏が欲しかったのですよ。憶えていますか?3年間いろんな事がありましたね」
「!」
キャプテン・クロ、否クラハドールの懐かしげな声にカヤは思わず身体に力が入った。
「あなたがまだ両親を亡くし床に伏せる前から、随分長く同じ時を過ごしました。一緒に船に乗ったり、町まで出かけたり・・・あなたが熱を出せば付きっきりで看病を・・・共に苦しみ、共に喜び笑い・・・私はあなたに尽くして来ました!」
クラハドールの言葉で過去の思い出が蘇ったのか涙を浮かべるカヤ。
「夢見るお嬢様にさんざん付き合ったのも、それに
しかしクラハドール、否キャプテン・クロの言葉で
「全ては貴様を殺す、今日の日のためっ!!!」
思い出全てを否定された。
「!!!!」
カヤは思わず涙を零し、下唇を噛み締める。余りにもショックが大きかったのだ。
「かつてはキャプテン・クロを名乗ったこのオレが、ハナッたれの小娘相手にニコニコへりくだって、心ならずもご機嫌を取ってきたわけだ・・・わかるか?この屈辱の日々・・・」
キャプテン・クロはそこで言葉を切ると、ルフィを睨みつける。
「それが全てお前の存在で台無しだ!!何だ!なぜ最弱の海と呼ばれるこの東の海に、お前のような化け物がいる!!?なぜオレの邪魔を」
グイッ
キャプテン・クロの怨み言は胸ぐらを掴み上げられて遮られた。
「・・・ウソップさん?」
ウソップだった。彼の胸ぐらを掴む手は力の入れ過ぎで震えており、その顔は影に隠れて伺えない。
「・・・ウソップ君か。また私を殴るのかね?」
「・・・一応よ、昼間は堅気だと思って手加減してたんだ。なのによ、親父を侮辱するだけに飽き足らず、カヤの心まで傷付けやがって・・・!!!」
「ウソップさん・・・!!?」
ウソップの言葉に、先程までとは違う涙を流すカヤ。
ウソップは右拳を振り上げる。
ここでウソップが使う武器、ライトボウガンについて説明しよう。ライトと名についているがその重量は大変重く、大口径の弾を使う関係上反動も強い。それを扱うウソップが、本気で人を殴ればどうなるか?
バギゴン!!!!
「ッ!!?」
頬の骨を砕かれ、歯を何本も口から飛ばしながら転がるキャプテン・クロ。彼の意識はウソップの一撃にて断たれた。
「ニシシシシ、ナイスパンチ!!」
「アタぼうよ!!コイツを扱うおれの筋力をナメんな!!!」
そう言って力瘤を作ってみせたウソップは、カヤ達に向き直る。
「カヤ、もう今日は休め。海賊はおれ達が何とかする」
「でも・・・」
「キャプテン・クロの事で大分堪えてるだろ?任せとけ、海賊の一人たりともこの村に入れねェよ!!」
そう言って笑うウソップは、正しく勇敢なる海の戦士だった。